著者
石野 光則 池野 栄一郎 鈴木 智隆 竹村 昭宣 北原 辰郎 新関 武史 山内 聡 久保田 功
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.993-999, 2015 (Released:2016-08-15)
参考文献数
5

症例1 : 高血圧, 糖尿病, 喫煙歴のある87歳, 男性. 繰り返す安静時胸痛のため近医を受診し, 不安定狭心症の疑いあり当院へ紹介された. 前医ではわずかであった心電図でV2−4誘導の2相性T波は当院ではより顕著になっていた.  症例2 : 高血圧, 脂質異常症のある61歳, 男性. 胸痛のため近医を受診し, 心電図変化あり不安定狭心症のため当院へ紹介された. 前医で認めていたV2−4誘導で2相性T波変化が当院では消失していた.  症例3 : 高血圧, 脂質異常症のある62歳, 男性. 安静時胸痛のため当院を受診した. 症状は消失していたが心電図でV2−3誘導に2相性T波の陰転化あり入院した. 入院後の胸痛時にはT波の変化は消失し, 翌朝にはV2−3誘導に2相性T波の陰転化がさらに深くなっていた.  3症例とも緊急冠動脈造影を行い, 左前下行枝近位部に高度狭窄を認め同部位へ治療を行った. Wellens症候群とは不安定狭心症の中で, 胸痛を一度自覚した後の症状が消失した時間帯に前胸部誘導でT波に心電図変化を示す症候群である. その心電図変化は症状の消失した時間帯に変化をきたすため見過ごされることが多い. 胸痛を初診する可能性のある医師に対しての本疾患の周知・啓蒙を行っていくことの重要性を感じたため報告をする.
著者
清水 雅俊 奥野 恵子 島 尚司 正井 博之 三輪 陽一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.53-58, 2006-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
13

症例は41歳女性.20歳代後半で退職してから午前4時に入眠し,12時に起床するという生活が続いており,また,同時期からストレスや寒冷時に動悸を自覚していた.24時間心電図検査における心拍数の平均は97/分であり,覚醒時には大半が100/分以上で睡眠中には70台にまで減少するという日内変動を呈していた.さらに,強い動悸を自覚した際には心拍数200/分の発作性上室性頻拍が認められ,この出現と停止は突然であり,基本調律である洞性頻脈との間に連続した心拍数の増減は認められなかった.各種精査の結果,洞性頻脈は二次性のものではなく,起立試験で体位性頻脈も否定された.本症例はinappropriate sinus tachycardiaに発作性上室性頻拍の合併したものと診断された.電気生理学的検査において内因性心拍数は113/分と予測値95/分より増大しており,発作性上室性頻拍は左室側壁部の潜在性ケント束による房室回帰性頻拍と判明した.同束に対してはカテーテル心筋焼灼術がなされ,ベラパミル120mg/日の開始によって心拍数は平均90/分に減少(最低67,最大120)し,房室回帰性頻拍の再発は認められていない.明け方前に入眠して昼頃に起床するという概日リズム障害は睡眠相後退症候群と診断され,ビタミンB12投与が開始された,inappropriate sinus tachycardiaや睡眠相後退症候群は,社会適応に重大な障害を起こし得るものである.どちらも,比較的新しい疾患概念であるので,広く認識されて適切な治療がなされることが望まれる.
著者
安東 克之 伊東 康 藤田 敏郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.241-246, 1984-03-25 (Released:2013-05-24)
参考文献数
32

甲状腺機能亢進症における循環動態異常は交感神経充進状態に類似している. そこで,本症における交感神経系の役割を調べる目的で, 7名の本症患者にプロプラノロール 60mg/日を 3 日間投与し, 循環動態, ホルモン動態の変化について検討した. プロプラノロール投与により, 心拍出量, 心拍数は有意の減少を認めたが, 一回拍出量は変化しなかった. さらに, 血漿ノルエピネフリン濃度も有意に低下し, 血漿ノルエピネフリン濃度と心拍出量の間には有意の正の相関が認められた.血漿レニン活性も有意の減少を示した. 以上のことから, プロプラノロールは甲状腺機能亢進症の循環動態異常を改善し, これには効果器のβ受容体阻害作用に加えて, 中枢神経系を介するノルエピネフリンの放出の抑制やシナプス前 β 受容体遮断によるノルエピネフリン遊出阻害作用も重要な役割を果していることが示唆された. また, レニンーアンジオテンシン系の関与も考えられた.
著者
鮎澤 衛
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.228-235, 2021-03-15 (Released:2022-03-28)
参考文献数
27
著者
吉永 敏子 福田 信二 伊達 敏明 高橋 徹郎 松田 泰雄 三浦 俊郎 矢野 雅文 山川 克敏 楠川 禮造
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.981-986, 1989-08-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
11

58歳,男性.健康診断にて心拡大,不整脈を指摘され,当科に入院した.胸部X線写真にて心胸郭比は57.7%と拡大を認めた.入院時心拍数は61/分,体表面心電図で明らかなf波およびF波は認められなかった.食道内心電図では心房粗動を認めた.右房内マッピングにより右房高位後壁に電気的活動を認めず,左房は心房粗動を示したが,右房では部分的心房収縮停止が存在すると診断した,右室心内膜生検組織標本にて心筋細胞の変性,肥大,小円形細胞浸潤,脂肪浸潤,小血管新生,小動脈壁肥厚を認め,心筋炎後心筋症と診断した.免疫学的検査で,Tγ細胞,OKT8+T細胞の減少,OKT4/OKT8比の上昇,Clq法による免疫複合体の上昇を認めた.免疫複合体の上昇は,その後の検査においても認められ,持続的な免疫応答の存在が考えられ,心筋障害の進展に免疫学的機序が関与している可能性が示唆された.本例ではさらに三尖弁閉鎖不全,左B6および右B9に円形無気肺を認めた.本例は免疫異常,慢性心筋炎および拡張型心筋症との関連を直接的に支持する例と考えられ,拡張型心筋症の病因への免疫学的機序の関与を明らかにするうえに興味ある例と考えられた.
著者
山内 良太 北村 哲也 大西 史峻 渡邉 清孝 小西 克尚 大村 崇 太田 覚史 森 拓也 伊藤 正明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.416-421, 2018-04-15 (Released:2019-05-09)
参考文献数
10

38歳男性.1998年(26歳)から意識消失発作,高血糖による入院歴がある.難聴や知能低下も認めたことから代謝性疾患が疑われ,乳酸値の高値とミトコンドリア遺伝子3243点変異からMELAS(Mitochondrial myopathy,Encephalopathy,Lactic Acidosis,Stroke-like episodes)の診断に至った.当初より心電図や心臓超音波検査では心肥大の所見を認め心筋症の合併が疑われていた.心肥大の精査のため施行された心内膜心筋生検で変性したミトコンドリアを認めたことからミトコンドリア心筋症と考えられた.明らかな心不全症状は認めなかったが,心臓MRI検査では前壁,側壁,下壁に遅延造影とT2強調画像で高信号を認めた.その後数年間にわたり画像検査でのMELASによるミトコンドリア心筋症の心肥大進行の経過を追うことができた.画像診断を用いた心不全を発症する前の早期からのミトコンドリア心筋症の報告は他に認めず報告する.
著者
神原 啓文 川村 幸子 下田 里美 小野 晋司 野原 隆司
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.253-260, 1993-03-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
30

1990年1年間の京都市消防局救急出動記録より,発症認知時間から24時間以内に死亡した急病患者(突然死)622例を抽出し,解析した.年齢は80歳代が最も多く,以下70歳代,60歳代,50歳代の順で,平均年齢は69.8±28.8歳であった.男性が374例,女性242例で,男女比は1.5,発症は冬に多く,夏は最も少なかった. 発症時刻には, 6~9 時および18~21時の2峰性ピークがみられ,深夜には有意にすくなかった.発症時刻から死亡までの時間は,1時間以内が388例(62.4%)と大半を占めた.発生場所は自宅(83.8%)が最多であった.発生状況としては,就寝中が最も多く116例(18.6%),次いで,安静時69例(11.6%),入浴中64例(10.3%),療養中で寝たきり55例(8.8%)の順であった. 運動中は2 例のみであった.発生時の主な所見としては,意識不明が385例,ついで,呼吸停止,脈拍停止,胸痛,呼吸困難,吐血などを含む容態の急変であった.274例(44.1%)には何らかの既往歴があり,心疾患の既往が88例(32.1%),ついで,脳血管系31例(11.3%),高血圧28例(10.2%),糖尿病18例(6.6%)などであった.死因は心疾患が最も多く363例(58.4%)を占めていた.心疾患の内訳としては心不全が圧倒的に多く,276例あり,ついで心筋梗塞71例,その他となっていた.脳血管系疾患は,118例(19.0%)あり,その内訳は脳内出血70例,くも膜下出血19例,脳梗塞16例の順であった.他に,呼吸器疾患(肺炎,気管支喘息,呼吸不全など),大動脈・静脈系疾患などがみられた.突然死例は高齢者に多く,心疾患が最も重要な原因と考えられた.
著者
澁谷 利雄 水野 杏一 菅原 博子 荒川 宏 里村 公生 五十嶋 一成 大鈴 文孝 青崎 登 栗田 明 細野 清士 山田 堯
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.557-562, 1983-05-25 (Released:2013-05-24)
参考文献数
14

Ear-lobe crease(EC)に関してこれまでにいくつかの報告があるが,詳細なものは少なく,その有用性については議論のあるところである.著者らは,ECの臨床診断学的意義について検討を行った.冠動脈造影で確かめられた冠動脈疾患(CAD)を有する患者82例とCADのない65例を対象に,ECとCAD,冠危険因子および眼底の動脈硬化性変化の関連性について調べた.ECはCAD,男性,喫煙歴と有意の関連があり,かつ加齢とともにECの陽性率が増加する傾向があった.ECとCADの関連をより明確にするため,EC陽性群とEC陰性群の間で性と年齢のm atchingを行い, 再び検討したところ,ECはCADのみと有意の関連があった.よって,ECはCADの有無を予測するのに有用なsignであると思われた.
著者
望月 優作 佐藤 洋 佐野 誠 早乙女 雅夫 漆田 毅 加藤 秀樹 林 秀晴 伊東 宏晃 金山 尚裕
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.1302-1306, 2013 (Released:2014-10-28)
参考文献数
9

37歳の女性. 第 2子を正常分娩後 4日目に意識を消失し, 救急外来を受診した. 血圧40/ -mmHg, 心拍数126/分, チアノーゼを認めショック状態であった. 心電図上は, 完全右脚ブロック, 左側胸部誘導中心のST上昇を示し, 胸部X線では肺水腫を認めた. 心エコー上は, 前壁中隔から側壁にかけて広範な低収縮であった. 緊急冠動脈造影にて左冠動脈主幹部より左前下行枝, 回旋枝にかけての解離を認めた. 主幹部から回旋枝にベアメタルステントを留置したが, 前下行枝の血流は確保されなかった. 緊急冠動脈バイパス術を予定したが, 血行動態の悪化により施行されなかった. 最大CK値は17,742 IU/Lと広範な梗塞であり, 大動脈内バルーンパンピング, カテコラミンの投与によりショックから離脱した. 第61病日に施行した冠動脈造影では, 左前下行枝は再開通し, 解離は自然修復されていた. 妊娠に関連した急性心筋梗塞は非常に稀であるが, 最近の妊婦の高齢化により増加している. 特に, 産褥期は冠動脈解離に注意する必要がある.
著者
久嵜 香 天谷 直貴 絈野 健一 青山 大雪 汐見 雄一郎 玉 直人 池田 裕之 佐藤 岳彦 横川 美樹 福岡 良友 森下 哲司 石田 健太郎 荒川 健一郎 宇隨 弘泰 夛田 浩
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.SUPPL.2, pp.S2_5-S2_10, 2015 (Released:2016-12-16)
参考文献数
6

症例 : 57歳, 女性. 主訴 : 動悸. SLE・高血圧にて当院通院中. 頻回の心房頻拍 (atrial tachycardia ; AT) 発作を認めたためアブレーションを施行. ATは心房頻回刺激により再現性をもって誘発された. 3次元マッピングシステム (CARTO® 3system) を用いて右房心内膜側からactivation mappingを施行. ATはfocal patternを呈し, 冠静脈洞入口部 (CSos) の局所興奮より57ms先行する最早期興奮を三尖弁輪前壁 (左前斜位 : 12時の位置) に認めた. 同部位に頻回の焼灼を試みるも一過性の抑制を認めるのみで根治は得られなかった. 本例は大動脈の著明な蛇行のために無冠尖Valsalva洞が右房前壁最早期興奮部位に近接していた. AT中の無冠尖Valsalva洞内の局所興奮はCSosの興奮に46ms先行していた. 同部位の焼灼でATは直ちに停止し, 以後誘発不能となり再発は認めなかった. His束電位記録部位は最早期興奮部位から35mm離れた部位であった. 本例は, 心外膜側に起源を有した三尖弁輪前壁起源の巣状リエントリー性ATで, 心内膜側からは焼灼不可能で無冠尖Valsalva洞内の焼灼で根治した極めて稀な症例であると考えられた.
著者
中畑 泰和
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.140-144, 2011 (Released:2012-09-20)
参考文献数
17
著者
名取 俊介 小川 晋平 野村 智昭 芳賀 智顕 羽根田 俊 ターリブ アリー 坂本 央 竹内 利治 長谷部 直幸
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.807-812, 2010 (Released:2012-02-28)
参考文献数
28

症例は63歳,男性.高血圧,高尿酸血症にて近医通院中だったが内服中のカルシウム拮抗薬を数日間自己中断していた.2009年3月上旬,12時30分ころから前胸部痛が出現し近医を受診した.13時ころ心電図記録中にST上昇とともに心肺停止状態となり,そばに付き添っていた元看護師の妻が心臓マッサージを開始,救急隊到着時の意識状態はJCS III-300,自発呼吸はなかった.自動体外除細動器で心室細動を確認しDC360J×1回で除細動され心拍再開後,前医に搬送された.13時20分,前医到着時は意識清明,自発呼吸も回復しており,心電図のST上昇も消失していた.冠攣縮性狭心症,致死性不整脈疑いで当院に再搬送された.硝酸薬の点滴,カルシウム拮抗薬再開で入院経過中に胸痛発作はなく不整脈も出現しなかった.内服継続下での冠動脈造影,アセチルコリン負荷試験,心室頻拍誘発試験はいずれも陰性であり,植込み型除細動器の植え込みは見送った.冠攣縮自然発作の心電図記録直後に心肺停止となり,bystander(救急現場に居合わせた人)による心肺蘇生と,救急隊による除細動の連携により合併症なく,心室細動から蘇生した稀な症例である.
著者
宗像 亮 小谷 英太郎 西城 由之 渋井 俊之 細川 雄亮 神谷 仁孝 吉川 雅智 堀江 格 上村 竜太 松本 真 中込 明裕 草間 芳樹 新 博次
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.1113-1118, 2008-12-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
18

症例は29歳,男性.以前より安静時胸部違和感の自覚あり.自宅で昼寝中に意識消失し,家人が心臓マッサージを行い救急車を要請.救急隊到着時は心室細動(ventrlcular fibrillation ; VF)で,除細動後に無脈性電気活動となり心肺蘇生術を継続し当院救命センターへ搬送された.収容後もVFは再発を繰り返し血行動態維持に補助循環〔経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support ; PCPS),大動脈内バルーンパンピング(intraaorticballoon pumping ; IABP)〕を要したが順次離脱できた.洞調律復帰後の心電図でST下降を認めたため冠動脈造影を施行.冠動脈に有意狭窄は認めなかったがアセチルコリン(acetylchoiine ; ACh)負荷試験にて左冠動脈に心電図変化を伴うほぼ完全閉塞にいたる冠攣縮が誘発された.諸検査でほかに基礎疾患を認めず冠攣縮性狭心症によるVFと診断した.カルシウム拮抗薬の投与後発作なく,服薬下で再施行したACh負荷試験で冠攣縮が誘発されないことを確認し,植込み型除細動器の植え込みは行わなかった.VF例では救命することに加え原疾患の診断が重要であり,若年者のVF例で原因診断と後遺症を残さず社会復帰をし得た貴重な1例を経験したので報告する.
著者
菊地 淳一 小山 滋豊
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.37-42, 1999-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

急性心筋梗塞を発症し,経過から原発性抗リン脂質抗体症候群と考えられた2症例を報告する.症例1は42歳,女性.脳梗塞,自然流産の既往あり.胸痛のため入院した.喫煙歴あり.心電図上II,IIIでST上昇,V3~V5で陰性T波を認めた.心筋逸脱酵素上昇あり.血小板数減少,APTT延長,抗カルジオリピンβ2-glycoprotein I複合体抗体上昇,抗核抗体陽性.左室造影上心尖部が心室瘤様,心室中隔が低収縮,冠動脈造影では狭窄や閉塞を認めなかった.症例2は25歳,男性.胸痛のため入院した.喫煙歴あり.肥満傾向.心電図でII,III,aVFに異常Q波および陰性T波,I度房室ブロックを認めた.心筋逸脱酵素が軽度上昇.血清梅毒反応生物学的偽陽性,抗カルジオリピンβ2-glycoprotein I複合体抗体上昇,抗核抗体陽性だった.左室造影上,左室壁運動低下,冠動脈造影で右冠動脈近位部完全閉塞を認めた.2例とも抗血小板療法および抗凝固療法を行った.若年発症の急性心筋梗塞例では抗リン脂質抗体症候群の存在を疑い,血栓症の再発予防に努めるべきと考えられた.