著者
青柳 将 栗田 僚二
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

脂質ナノチューブと集電体のナノ炭素材料の複合化を検討して、複合体上での酵素反応を電気化学測定により評価した。また脂質ナノチューブの代わりにアミノ基含有高分子を電極表面に塗布して、その効果を検討した。その結果、ビリルビンオキシダーゼ(BOD)を使用したカソード反応には電流値が増大する効果が確認されたが、フルクトースデヒドロゲナーゼを用いたアノード反応には電流値が減少した。さらに集電体のナノ炭素材料の種類や表面官能基についてそれぞれ検討を行った。また、高耐久性の人工耐熱性BODについても検討行ったところ、キトサンの添加により大きな電流地を得た。
著者
湯田坂 雅子 横山 敦郎
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ナノカーボン(NC)は体内でマクロファージに取り込まれることが多く、過剰に取り込まれると細胞死をひきおこす。細胞死が起こる際には、活性酸素(ROS)産生が亢進するので、そのメカにズムについて検討した結果、ROS産生亢進はミトコンドリアの膜障害が関係していることが明らかとなった。NCによる細胞死メカニズム解明と同時に、NCの表面被覆剤を検討し、表面被覆剤の量に最適値があること、表面被覆剤が細胞死を起こす場合があることなどを明らかにした。また、マクロファージによる貪食を阻害する効果的なNC表面修飾剤を見出し、その効果を細胞実験とマウス実験で確認した。
著者
渡部 謙一
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 機能検証フェーズ 試験研究タイプ
巻号頁・発行日
2019

電磁波の振幅と位相の相関を利用して、高級ウニの殻を割ることなく非破壊・リアルタイムに歩留り(生殖巣重量の割合)を判定する技術を実現する。この非破壊判別により非適合品の廃棄ウニを減らす目的である。
著者
清水 祐公子 大久保 章
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

デュアルコム分光装置を用い、気体分子の振動回転スペクトル観測により温度計測を行う手法を提案し、研究を進めた。これは、気体分子の回転振動バンドの多数の吸収線の強度分布が、温度の関数となっていることを利用して温度を求める方法であり、我々はこの温度計測法を「Rotational state Distribution Thermometry: RDT」と名付けた。デュアルコム分光によりアセチレン分子の精密なスペクトルを得るとともに、RDT法により不確かさ1 K以下という良好な温度測定結果を得た。その一方で、RDT法において、分子種ごとの高精度な温度測定をおこなうためには、温度決定の不確かさをさらに低減させることが必要であった。そのため本年度は、偏波保持光ファイバーを用いた光コムによるスペクトル変化の抑制と、ガス分子の温度の精密制御を行った。通常は光コムからの出力をファイバアンプで増幅し高非線形ファイバーでスペクトルを拡大して分光に用いるが、偏波保持化により、ファイバーアンプを介さず広帯域化でき、周囲の環境(温度、気圧、振動等)の変化による偏波状態の変動を抑制することができた。また、分子温度の精密な制御をおこなうため、温度安定化モジュールの制作を行い、高精度に温度安定化可能な恒温槽に挿入した。恒温槽は液体循環式であり、- 30 oC~110 oCの温度範囲を約1~5 mKで制御した。直径15 mm、全長10 cmの分子が封入された吸収セルを銅製の均熱ブロックの中に設置し、50 mK程度で温度安定化させた。しかしながら、温度安定化されたセル内の分子から取得した吸収スペクトルのベースラインはまだ不完全であった。この原因は循環式水温層の振動によるものであると考えている。現在、振動の影響を直接受けない光ファイバー型のモジュールを製作している。これにより、1桁以上不確かさを低減させる。
著者
石戸谷 重之 遠嶋 康徳 坪井 一寛 後藤 大輔 丹羽 洋介 村山 昌平 田口 彰一 松枝 秀和 森本 真司
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

大気中アルゴン濃度は海水温変動に起因してごく僅かに変動するため、高精度観測から広域平均の海洋貯熱量変動の情報が得られると期待される。本研究では開発した大気中アルゴン、酸素および二酸化炭素濃度等の高精度同時観測装置を用いて、つくば市における連続観測と、落石岬、高山市、波照間島、南鳥島および昭和基地において保存容器に採取した試料の分析により大気中アルゴン濃度の広域観測を行なった。各サイトで観測されたアルゴン濃度は夏季に極大値を示す明瞭な季節変動を示し、比較的長期の観測結果が得られているつくば市および波照間島のアルゴン濃度には、海洋観測に基づく全球の海洋貯熱量の変動と相関した年々変動が見られた。
著者
中村 壮伸
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

パーシステントホモロジーが非晶質構造の記述に有効であることを発見した。特筆すべき成果としては、(1)シリカガラス、金属ガラスと呼ばれる質的に異なる形態をとる非晶質構造を統一的に扱うことが可能であること(2)乱れた構造の中に隠された秩序構造を抽出することが可能であることなどがあげられる。さらに乱れた構造の記述手法を用いて物性との相関を議論する枠組みの構築した。具体的にはパーシステントホモロジーのような抽象的に定義された変数に対し、自由エネルギー計算を行う手続きを、確率過程を用いて定式化した。
著者
倉本 直樹 大久保 章 藤井 賢一 水島 茂喜 稲場 肇 藤田 一慧
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

近年、普遍的な基礎物理定数によって、キログラムを定義することが検討されている。これまでに我々は、シリコン単結晶の密度などからアボガドロ定数を高精度に測定し、定義改定実現のための研究を進めてきている。アボガドロ定数測定の高精度化には、密度測定に必要なシリコン単結晶球体体積測定の高精度化が支配的な役割を果たす。本研究ではキログラムの基礎物理定数による定義実現のため、次の研究開発を行う。1) 質量1 kgのシリコン単結晶球体の直径を、ほぼ原子間距離に等しい0.3 nmの精度で測定する青色半導体レーザー干渉計を開発し、球体体積を1.0E-8の精度で決定する。2) 28Si同位体濃縮シリコン結晶を用い、アボガドロ定数を世界最高精度(1.4E-8)で決定する。この目標を達成するために、以下の項目を平成29年度に実施した。1)Si球体直径測定用青色半導体レーザー干渉計開発:426 nm付近で光周波数チューニングが可能なシステムを構築した。光周波数の基準には長さの国家計量標準である「光コム」を用い、モードホップのない20 GHzの範囲にわたる光周波数掃引を可能とした。2)28Si単結晶球体を用いたアボガドロ定数測定:28Si単結晶球体の直径測定、質量測定、表面分析を実施し、アボガドロ定数を世界最高精度(1.2E-8)で決定した。新たなキログラムの定義は、原子の質量と密接に関連するプランク定数となる予定である。科学技術データ委員会(CODATA)は、2017年10月に新たなキログラムの基準となるプランク定数の値を決定した。この値の決定に、本研究で決定したアボガドロ定数から導出したプランク定数も採用されている。これは、1889年に国際キログラム原器によって質量の単位が定義されて以来、130年ぶりとなる定義改定に大きく貢献する歴史的な成果である。
著者
三浦 勉 寺田 宙 太田 智子
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

海産物中のPb-210/Po-210測定の信頼性向上を目指した。金属鉛から調製したPo-210標準液、海産魚乾燥粉末を用いて既開発(Miura et al)のPb-210/Po-210分析法を評価した結果、全分離操作で90%以上のPo回収率が得られ、高い信頼性をもつことが実証できた。よって本分析法を基に標準分析作業手順書を作成した。予備実験で選定したかつお粉末といりこ粉末から調製した共同実験用試料を用いて、3機関が参加する共同実験を実施した。その結果、国内分析機関によるPb-210/Po-210測定値に有意な差は見られず、標準分析手順書の妥当性と国内分析機関の技術レベルが高いことが実証できた。
著者
佃 洸摂
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

認知的尺度に基づく動画検索に関する研究では、動画に投稿された時刻同期コメントを利用し、視聴者が「かわいい」や「高音綺麗」などと言っている動画を探すことを実現した。研究成果をICDMW 2016で発表し、Webサービス「Songriumコメント分析」(http://comment.songrium.jp/)として公開した。N次創作活動のモデル化に関する研究では、派生コンテンツの制作を引き起こした要因を推定するためのモデルを提案した。研究成果をCIKM 2016で発表し、Webサービス「Songrium派生要因分析」(http://factor.songrium.jp)を公開した。
著者
濱崎 雅弘 的野 晃整 大向 一輝 Lynden Steven
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では,Linked Open Data(LOD)の利活用を阻害する最大の要因であるLOD検索の困難さに対して,クエリ共有が有効であることを明らかにするため,(課題1)クエリ生成の支援に有効な共有クエリ推薦技術の研究開発,(課題2)クエリ実行の高速化に有効なクエリキャッシュ技術の研究開発,の二つの研究を実施した.既存のSPARQLエンドポイントのアクセスログ解析,プロトタイプを用いたユーザ評価,さらにはRDF 問合せ最適化のための基礎技術の開発を行った.
著者
藤原 すみれ 光田 展隆 木越 景子
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、一年生植物であるシロイヌナズナにおいて、ある転写因子を強く発現させた際に見られる多年生的形質やその関連因子に着目し解析することで、一年生植物と多年生植物の違いを生み出す未同定の因子を発見・解析するとともに、分子育種等に役立つ知見を得ることを目的として実施した。その結果、当該転写因子は日長や温度といった外的環境による制御およびスプライシングパターンの制御などの内的制御を受けながら多様な役割を発揮し、植物が適切に一年生植物として生長できるように機能することが示唆された。さらに、これらの制御に関与すると考えられる新規の因子を同定した。
著者
本田 智則 田原 聖隆 竹内 憲司 稲葉 敦 西野 成昭
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、分散型電源及び既存電源を協調させつつ、長期安定的に稼働可能な電力システムの構築を目指し研究を実施してきた。再生可能エネルギー発電設備についてのLCA(Life Cycle Assessment)を実施し環境負荷の定量化を行った。また、インセンティブ制度設計にあたっては特に省エネが遅れている家庭部門に着目しHEMSデータを活用しライフスタイル別のエネルギー消費実態を特定すると同時に実験経済学の手法によって電力需用者の省エネインセンティブについての知見を得ることができた。仮想電力取引市場設計にあたっては各市場毎のライフスタイル変容が重要な課題であると言う今後の課題を得た。
著者
羽生 義郎
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究により、免疫系を効率的に活性化するペプチド及び手法を見出した。免疫時に抗原と共にペプチド等の免疫活性化物質を投与する事により、抗原特異的に抗体産生細胞を活性化することに成功した。これにより、抗原特異性及び親和性が高い抗体、すなわち抗原の検出において有用性の高い抗体の生産が可能となった。この免疫活性化法を用いたインビトロ免疫法においては、抗原親和性の高いIgG1抗体が作製可能となり、モノクローナル抗体作製法として期待される。
著者
劉 崢
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、透過/走査透過電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いた金属有機構造体(MOF)材料の構造解析を可能にする手法を開発し、これを新規なMOFとその内包分子の構造解明に活用することで、MOFの開発・応用の発展に寄与するものである。平成25年度は、電子線ダメージを低減しかつ必要な空間分解能を得るための最適なTEM観察条件を明らかにした。26年度は、この最適条件を基に、更に多様な新規に合成されたMOF材料の構造を決定した。27年度は、更に3種類の新規合成MOFに加え、3種類の共有結合性有機骨格構造体材料の構造解析、及びMOF材料空隙中に分子や金属クラスタなどを内包させた複合構造の解析を遂行した。