著者
西田 律夫 桑原 保正 深海 浩 石井 象二郎
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 20 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.372-379, 1976-09-20 (Released:2017-08-18)

From the cuticular wax of the female German cockroach, Blattella germanica (L.), two components of sex pheromone responsible for male wing-raising were isolated as crystalline forms, and characterized as 3,11-dimethyl-2-nonacosanone (Compound A, Ia) and 29-hydroxy-3,11-dimethyl-2-nonacosanone (Compound B, Ib). Compound A and B independently elicits the wing-raising behavior, and Compound B is almost 10 times more active than Compound A. Both of synthetic compounds also exhibited the identical biological activity to those of natural ones, respectively. Besides Compound A and B, a minor component of the pheromone Compound C) was detected, and was identified as 29-oxo-3,11-dimethyl-2-nonacosanone (Ic). Of two asymmetric carbon atoms in Compound A, carbon-3 was concluded to be S-configuration. Several analogues of the pheromone were synthesized in order to figure out the effect of structural modification of the pheromone on the biological activity.
著者
花木 瑞穂 村上 一馬 赤木 謙一 入江 一浩
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP43, 2015 (Released:2018-10-01)

【緒 言】 アルツハイマー病(AD)の原因物質と考えられている42残基のアミロイド b タンパク質(Ab42)は,分子間 b シート構造を形成することによって凝集し,脳内に蓄積する.近年,この過程で形成される凝集中間体であるオリゴマー(2あるいは3量体を基本単位とした2 ~ 24量体)が神経細胞毒性を示すことが知られている.Ab42の凝集はAD発症の15年以上前から起こる最も初期の病理変化であることから,凝集を阻害する化合物はADの予防薬となる可能性がある.野菜や果物に含まれるフラボノイドの多くはAb42の凝集抑制能を示すことから注目されているが,その抑制機構の詳細は不明な点が多い. 本研究グループはこれまでに,マリアアザミ種子のメタノール抽出物であるシリマリンが,in vitro及びin vivoにおいて抗AD活性を示すことを明らかにするとともに1),シリマリン中のAb42凝集抑制活性成分として,カテコール構造を有するフラボノイドである (+)-タキシフォリンを同定した2).さらに,(+)-タキシフォリンは,溶存酸素により酸化されてo-キノン体を形成し,Ab42の16あるいは28番目のリシン残基(Lys16, 28)と共有結合(マイケル付加)することによって,凝集を抑制することを明らかにした3)(図1).一方,カテコール構造をもたない一部のフラボノ 図1. カテコール型フラボノイドによるAb42凝集抑制機構3).Lys残基は分子間 b シート領域に含まれることから,付加体を形成することで分子間 b シートの形成を阻害していると考えられる.図2. 非カテコール型フラボノイドの構造およびフラボノイド非存在下/存在下での1H-15N SOFAST-HMQCスペクトル.黒はフラボノイド非存在下でのAb42(25 mM)のスペクトル,灰色は各種フラボノイド存在下(500 mM)でのAb42のスペクトルを示す.Kaempferoloxはケンフェロール酸化分解物を表す.イドにも凝集抑制作用が認められている.本研究グループの先行研究において,非カテコール型フラボノイドはリシン残基を標的とせず,別のメカニズムを介して凝集を抑制している可能性が示唆された3).本研究は,非カテコール型フラボノイドによるAb42凝集抑制機構を分子レベルで解明することを目的としている.【方法および結果】1. モリンおよびダチセチンによるAb42の凝集抑制機構の解析 本研究では,タキシフォリン(25 mMのAb42の凝集能を50% 阻害するのに要する濃度:IC50 = 33.0 mM)と同程度の凝集抑制能をもつ非カテコール型フラボノイドとして,モリン(IC50 = 30.3 mM),ダチセチン(IC50= 55.4 mM),ケンフェロール(IC50= 75.1 mM)に着目した(図2).まず,空気酸化による凝集抑制能への影響を調べるため,チオフラビンT蛍光法を用いて,低酸素条件下(デシケーター中アルゴン雰囲気下)における凝集抑制能を調べた.その結果,いずれも通常の酸素濃度下と同様に凝集を抑制した.また,モリンとダチセチンのUVスペクトルは48時間(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
藤間 達哉 Matthew Logan Justin Du Bois
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 56 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.Oral26, 2014 (Released:2018-07-19)

【研究背景】 Batrachotoxin(1)はコロンビア産矢毒蛙から単離されたステロイドアルカロイドであり、電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)に選択的に作用する強力な神経毒である(Figure 1)1)。Navは興奮性神経細胞における活動電位の発生と伝導において中心的な役割を果たし、てんかん、不整脈、無痛覚症等の疾患にも関わりが深いことから、Navを標的分子に含む医薬品が数多く開発されてきた。しかし、巨大な膜タンパク質であるNavと小分子との相互作用はX線結晶構造が解明されていない現状では予測が困難であり、合理的なデザインによる医薬品創出の障害となっている。本天然物はNavに結合することで、不活性化機構の消失、活性化の膜電位依存性の変化、シングルチャネルコンダクタンスの低下、イオン選択性の変化等、独特かつ多様な機能変化をもたらすことから、古くから研究対象とされてきた2)。しかし、乱獲によって産生する矢毒蛙が絶滅危惧種に指定されたことでその供給が困難となり、Navに機能変化をもたらす詳細な作用機序は明らかとなっていない。このような背景に加え、ステロイド骨格にホモモルホリン環が形成された特徴的な縮環構造は他に類を見ず、合成化学における格好の研究対象とされてきた。生合成前駆体であるbatrachotoxinin A(2)のprogesteroneからの半合成がWehrliら(1972年)により3)、全合成が岸ら(1998年)により報告されたが4)、いずれも40工程を越える長大な合成経路であり、天然物やその類縁体供給に活用するには十分なものではなかった。当研究室においても合成研究が行われてきたものの、CDE環を有する中間体の合成経路は既に30段階程度となり、合成を継続するのは合理的ではなかった5)。そこで、合成経路を一新し、batrachotoxin(1)の実用的な合成経路の開発を目指した研究を行った。【合成計画】 Batrachotoxin(1)はbatrachotoxinin A(2, Figure 1)を経て合成することとした(Scheme 1)。その17位−20位炭素間の結合はケトンを足掛かりとした適切なカップリング反応、11位の水酸基はケトンの立体選択的還元、窒素原子はアルデヒドに対する還元的アミノ化反応を用いることでそれぞれ構築できると考え、ケトアルデヒド3を重要中間体として設定した。さらに、C環のケトン部位をアルケンの酸化的開裂により得ることとし、C 環をアルキン部位とアルケン部位を用いて環化異性化反応やラジカル環化反応等により構築できると考えることで、エンイン4をその前駆体とした。エンイン4はアルケニルブロミド5から調製した有機金属種を用い、予め17位炭素の立体 化学が制御されたエノン6に対する立体選択的な1,2-付加反応によって合成可能であると考えた。【ユニットの合成】 Scheme 1に示したエノン6、アルケニルブロミド5に相当するユニットの合成を行った(Scheme 2)。文献既知の方法により2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン(7)から調製した光学的に純粋なアルコール8を用いてエノン10の合成を行った6)。まず、アルコール8のアルケン部位をエポキ(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
繁森 英幸 渡邉 諒子 須藤 恵美 山添 紗有美 成澤 多恵子 堀之内 妙子 渡邉 秀典 長谷川 剛 山田 小須弥 長谷川 宏司
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP49, 2015 (Released:2018-10-01)

植物の具備する屈性現象については、これまで「オ-キシンが光側から影側に移動(光屈性)または上側から下側へ移動(重力屈性)することによって屈曲する」というCholodny-Went 説によって説明されてきた。しかしながら近年、「オ-キシンの横移動は全く起こらず、光側組織で成長抑制物質が生成され光側組織の成長が抑制される結果、光方向に屈曲する」という新しい光屈性の仮説 (Bruinsma-Hasegawa説)が提唱され、重力屈性についても同様に成長抑制物質が関与することが示唆された(図1)1-6)。そこで本研究では、Bruinsma-Hasegawa説に基づき、屈性現象に関わる生理活性物質を用いて、光刺激や重力刺激の感受から始まり、最終的に観察される屈曲といった一連の機序について、化学的ならびに生物学的手法を用いて分子レベルでの解明を行うことを目的とする。本討論会では、ダイコン下胚軸の光屈性制御物質の合成ならびに機能解明およびトウモロコシ幼葉鞘の重力屈性機構の解明について以下に報告する。図1.光屈性の仮説(左図、中央図)と重力屈性の仮説(右図)1.ダイコン下胚軸の光屈性制御物質の合成ダイコン下胚軸の光屈性制御物質として、MTBG、MTBIおよびRaphanusaninを見出した(図2)4)。MTBIおよびRaphanusaninはいずれも光屈性刺激によって光側組織で短時間に増量するが、影側や暗所下では変動しないことを明らかにした。また、光側において短時間で加水分解酵素の活性が高まることも見出した。そこで本研究では、これら光屈性制御物質の合成ならびにそれらを用いて機能解明を行った。図2.ダイコン下胚軸の青色光誘導性成長抑制物質の生成機構・MTBGの合成1,4-Butanediolを出発原料とし、TBDMS基で保護、酸化してアルデヒド体に誘導し、オキシム化に続いて塩素化を行った。このオキシム体をチオグルコシル化し、アセチル化、TBDMS基の脱保護、Dess-Martin酸化によるアルデヒド体への誘導、Wittig試薬によるメチルチオメチル化、アセチル基の選択的脱保護、硫酸エステル化、最後に脱アセチル化を行い、目的とするMTBGを合成した(図3)7)。図3.MTBGの合成スキーム・MTBIおよびRaphanusaninの合成 Thiolaneを出発原料とし、S-メチル化した後にNaN3を用いてアジド化合物へ誘導、この化合物をNCSで処理し加熱還流してビニルスルフィド化合物へ誘導した。これにCS2とPh3Pを用いてNCS化し、MTBIを合成した。MTBIをCH2Cl2中でシリカゲルと作用させることによって目的とするRaphanusaninを合成した(図4)。図4.MTBIおよびRaphanusaninの合成スキーム・MTBG、MTBIおよびRaphanusaninの生理活性MTBIおよびRaphanusaninについてクレス幼根およびダイコン下胚軸を用いた成長抑制活性試験を行った結果、両化合物とも天然物と同様、濃度依存的に成長抑制活性が見られ、また活性の強さもMTBIよりRaphanusaninの方が強かった。一方、Tissue Printing法により、MTBIおよびRaphanusaninをダイコン下胚軸に片側投与すると、青色光照射と同様に投与側でH2O2(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
松尾 洋介 大渡 遼介 草野 リエ 齋藤 義紀 田中 隆
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP33, 2015 (Released:2018-10-01)

【序論】紅茶は世界中で広く飲まれる飲料であり、ポリフェノールを豊富に含むことからさまざまな健康維持効果が知られている。紅茶は生茶葉を揉捻して製造されるが、その過程でカテキン類が酵素酸化を受けてテアフラビン類やテアシネンシン類などのさまざまな紅茶特有のカテキン二量体が生成する1)。テアフラビン類 (1–4) はベンゾトロポロン環を持つ赤橙色の紅茶色素であり、カテコール型カテキンとピロガロール型カテキンの酸化的縮合によって生成する2)。テアフラビン類は紅茶製造過程においてさらに酸化されることが知られている3)。我々はこれまでにepicatechin (5) 共存下におけるポリフェノール酸化酵素でのtheaflavin (1) 酸化生成物について検討を行い、theanaphthoquinone (6) やflavanotheaflavin A (8) などが生成することを報告した4)。しかし、ガロイル基を持つテアフラビン類であるtheaflavin-3-O-gallate (2), theaflavin-3′-O-gallate (3), およびtheaflavin-3,3′-di-O-gallate (4) の酵素酸化反応について、これまで十分な検討は行われていない。さらに、1は中性条件下において自動酸化され、ポリフェノール酸化酵素とは異なる酸化生成物bistheaflavin B (16) が生成することが分かっているが5)、ガロイルテアフラビン類2–4の自動酸化生成物は明らかとなっていない。紅茶ポリフェノールとして構造が解明されているのは全体の数パーセントにすぎず、実際の製造過程では非常に複雑な酸化生成物が生じており、その大部分の構造については解明されていない1,6)。これら未解明の紅茶ポリフェノール生成にテアフラビン類のポリフェノール酸化酵素や自動酸化による酸化が寄与していると考えられることから、本研究では5共存下におけるガロイルテアフラビン類2–4の酵素酸化機構および、中性条件下における自動酸化機構について検討した。【テアフラビン類のポリフェノール酸化酵素による酸化機構】Epicatechin (5) 共存下において3位にガロイル基を持つtheaflavin-3-O-gallate (2) をポリフェノール酸化酵素で処理した結果、theanaphthoquinone-3′-O-gallate (7), flavanotheaflavin B (9), およびtheadibenzotropolone A (10)7) が得られた。化合物7はベンゾトロポロン環が酸化を受けてナフトキノン環へと変化したものであり、9はベンゾトロポロン環と5が酸化的に縮合したものである。一方、10は2のガロイル基と5が縮合して新たなベンゾトロポロン環を形成した生成物であった。同様の条件で3′位にガロイル基を持つtheaflavin-3′-O-gallate (3) を酸化したところ、ガロイル基と5が縮合したtheadibenzotropolone F (12) が生成し、ベンゾトロポロン環が酸化を受けたものは得られなかった。 3位および3′位にガロイル基を持つtheaflavin-3,3′-di-O-gallate (4) の場合も3と同様に、ガロイル基と5が縮合したtheadibenzotropolones D (13), E (11), およびtheatribenzotropolone A (14)8) が得られ、ベンゾトロポロン環が酸化を受けたものは得られなかった。さらに、テアフラビン類1–4単独あるいは5共存下における酵素酸化反応について経時的変化を調べたところ、テアフラビン類単独ではポリフェノール酸化酵素によって(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
鈴木 正昭 柳沢 章 野依 良治
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 26 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.569-576, 1983-09-15 (Released:2017-08-18)

The tandem organocopper conjugate addition with α,β-unsaturated ketones/aldehyde trapping of the enolate intermediates provides an efficient way of vicinal carba-condensation. Methyl esters of prostaglandin (PG) D_1, D_2, and I_2 haveb been synthesized on the basis of this strategy. Combination of (R)-4-t-butyldimethylsiloxy-2-cyclopentenone, an organocopper reagent derived from (S,E)-1-iodo-3-tetrahydropyranyloxy-1-octene, and 6-methoxycarbonylhexanal leads in one step to a PG skeleton, 7-hydroxy-11-O-t-butyldimethylsilyl-15-O-tetrahydropyranyl-PGE_1 methyl ester. Dehydration, giving a Δ^7-PGE_1 derivative, followed by tributyltin hydride reduction affords 11-O-t-butyldimethylsilyl-5-O-tetrahydropyranyl-PGE_1 methyl ester. Stereoselective reduction of the 9-keto group, leading to the 9α alcohol, tetrahydropyranyl protection of the hydroxyl function, and desilylation give 9,15-O-bis(tetrahydropyranyl)PGF_<2α> methyl ester. Jones oxidation of the 11-hydroxyl group and removal of the tetrahydropyranyl protective groups completes the synthesis of (+)-PGD_1 methyl ester. The three-component coupling process using 6-carbomethoxy-2-hexynal as α sidechain unit gives 5,6-dehydro-11-O-t-butyldimethylsilyl-15-O-t-tetrahydropyranyl-PGE_2 methyl ester. Stereoselective conversion of the 9-keto group to 9α hydroxyl, removal of the 7-hydroxyl by the Barton's procedure, and partial hydrogenation of the 5,6-triple bond over Lindlar catalyst produce 11-O-t-butyldimethylsilyl-15-O-tetrahydropyranyl-PGF_<2α> methyl ester. (+)-PGD_2 methyl ester is obtainable from this intermediate by the procedure as described above. 5,6-Dehydro-11-O-bis(t-butyldimethylsilyl)PGF_<2α> methyl ester is obtained in four steps from (R)-4-t-butyldimethylsiloxy-2-cyclopentenone via the three-component coupling process. Intramolecular alkoxymercuration of the acetylenic alcohol, followed by reductive demercuration and desilylation has realized a short synthesis of (+)-PGI_2 methyl ester.
著者
北 将樹 武仲 敏子 別所 学 Andres D. Maturana 木越 英夫 大舘 智志 上村 大輔
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 第60回天然有機化合物討論会実行委員会 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.109-114, 2018 (Released:2021-09-26)

1.はじめに 新規神経毒の化学的解明は,薬理学,神経科学,精神医学など,広範な生命科学の発展に寄与する.自然界からは様々な生物から有毒物質が見いだされているが,毒を持つ哺乳類は非常に稀であり,食虫目トガリネズミやソレノドン,単孔目カモノハシなどしか知られていない.またこれらの毒は稀少かつ不安定であり,活性物質は長らく未解明であった.トガリネズミは唾液に毒を持ち,ミミズなど獲物を麻痺させる小型哺乳類である.北米に棲息するブラリナトガリネズミBlarina brevicaudaは特に強い毒を持ち,カエルやネズミなど脊椎動物も餌としてしまう(図1).演者らはこれまでに,この種の顎下腺から脊椎動物に対して麻痺と痙攣を引き起こす致死毒ブラリナトキシンを発見し,その構造を分子量35 kDaの糖タンパク質と決定した1).ブラリナトキシンはセリンプロテアーゼの一種カリクレインと高い相同性を示し,またセリンプロテアーゼ阻害剤によりその酵素活性およびマウス致死活性が阻害されることから,致死毒の本体であると結論づけた. 一方で,ブラリナトキシンを獲物に注入してから毒性を示すまで数時間以上かかること,およびトガリネズミが主な餌とするミミズや昆虫など無脊椎動物には効かないことから,この動物の唾液成分にはタンパク毒素とは異なる麻痺物質が含まれると予想し,顎下腺抽出物の分離を再検討することとした.
著者
福井 祐子 田中 良和 久住 高章 岩下 孝 益田 勝吉 野本 享資
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.55-60, 2000
被引用文献数
1

Rose breeders have failed to make blue roses. This has been attributed to the lack of blue pigment in the petals. We revealed that mauve rose such as "M'me.Violet" and "Lavande" contain a small amount of blue pigment other than a red anthocyanin, cyanidin 3,5-diglucoside. The major blue pigment of the rose named Rosacyanin A and the minor red one was named Rosacyanin B. The structures of these pigments were elucidated. A high-resolution mass spectrometry showed that Rosacyanin B had the molecular weight of 419.0409 and molecular formula of C_<22>H_<11>O_9. The NMR data showed that Rosacyanin B had an extremely unique structure whose C-1 position of gallic acid is bound to the C-4 position of cyanidin by C-C bond formation. (Fig.2) Rosacyanin A has λ max 590nm (MeOH) of the ultraviolet and visible absorption spectrum, and a molecular formula of C_<56>H_<37>O_<31> which is calculated from the molecular weight of 1205.1319 obtained from high-resolution mass spectrometry. As a result of the observation of the isotope shift by the DH exchange of the solvent using a coaxial sample tube in ^<13>C NMR, it was found that the 3-position of flavylium of Rosacyanin B is bonded to the hexahydroxydiphenoyl part of Tellimagrandin II which is a kind of ellagitannin with ether linkage. (Fig.4) To our knowledge, this is the first report of the compound whose gallic acid binds to C-4 position of polyhydroxyflavylium. The only similar compound which binds gallic acid to catechin was obtained from Burkea africana and Peltophorum africanum. The dream of blue roses will come true if we can accumulate Rosacyanin A in rose petals.
著者
小栗 友紀 角田 鉄人 加来 裕人 堀川 美津代 稲井 誠 黒田 英莉 鈴木 真也 田中 正己 伊藤 卓也 高橋 滋
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2014

<p> アブラムシの中には鮮やかな体色をもつものも多く,その体色表現にポリケタイド系色素が深く関わっていることが分かってきた.そして当研究室では,これまでにイタドリに寄生するユキヤナギアブラムシ(Aphis spiraecola,黄色)から黄色色素furanaphin<sup>1)</sup>を,セイタカアワダチソウに寄生するセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ(Uroleucon nigrotuberculatum,赤色)から赤色色素uroleuconaphin A<sub>1</sub>, B<sub>1</sub>,<sup>2)</sup>黄色色素xanthouroleuconaphin<sup>3)</sup>を,ソラマメヒゲナガアブラムシ(Megoura crassicauda,緑色)から緑色色素viridaphin A<sub>1</sub> glucoside<sup>4,5)</sup>を単離し構造決定した.その他,megouraphin glucoside A, Bやuroleuconaphin A<sub>2a,b</sub>, B<sub>2a,b</sub>の構造決定も行った (Fig. 1).一方,これら色素はポリケタイドであることから,生物活性も期待された.実際,</p><p>Fig. 1</p><p>ヒト前骨髄性白血病細胞 (HL-60)に対する細胞毒性試験を行ったところ,furanaphinのIC<sub>50</sub>は25 mM,uroleuconaphin A<sub>1</sub>では30 mM,uroleuconaphin B<sub>1</sub>が10 mM,viridaphin A<sub>1</sub> glucosideが23 mMと,弱いながらも細胞毒性を示した.このように当研究室ではアブラムシのもつ色素成分に注目して研究してきたが,今回は無色透明のアブラムシCryptomyzus sp.について調べた.当然のこととして,色素は存在しないと考えられるが,それに代わる何らかの化合物の存在を期待した.</p><p>1. 構造決定</p><p>1-a. 抽出と単離</p><p> Cryptomyzus sp.はヤブサンザシ(Ribes fasciculatum)の葉裏にひっそりと目立たず寄生している無色で透明感のあるアブラムシである.体長わずか0.5-1 mmの極小な昆虫であることから,テントウムシなどの捕食昆虫にとっては極めて発見しにくいものと思われる.このアブラムシを刷毛で掃き集め,エーテル中で潰して成分を抽出した.このエーテル抽出物を順相及び逆相クロマトグラフィーを繰り返し,4種の無色結晶cryptolactone A<sub>1 </sub>(1), A<sub>2 </sub>(2)(A<sub>1 </sub>: A<sub>2</sub> = 6.2:1)およびcryptolactone B<sub>1 </sub>(3), B<sub>2 </sub>(4) (B<sub>1 </sub>: B<sub>2</sub> = 4.7:1)を得た (Fig. 2).当然ながら着色成分は一切得られなかった.</p><p>Fig. 2</p><p>1-b. Cryptolactone A<sub>1</sub> (1)およびA<sub>2 </sub>(2)の構造</p><p> Cryptolactone A<sub>1 </sub>(1)の分子式はCI-HRMSよりC<sub>18</sub>H<sub>30</sub>O<sub>4</sub>と決定した.またIRスペクトルから水酸基 (3407 cm<sup>-1</sup>),カルボニル基 (1712 cm<sup>-1</sup>)の吸収が観測された.<sup>13</sup>C-NMRより18個の炭素シグナルが観測され,DEPTより1個のメチル基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 14.1/0.88],11個のメチレン基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 29.9/2.34 and 2.41, 41.5/1.75 and 1.82, 48.8/2.53 and 2.66, 43.6/2.43, 23.6/1.57, および 22.6, 29.1, 29.2, 29.3, 29.4, 31.8/1.26-1.32],4個のメチン基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 121.4/6.03, 145.2/6.89, 74.8/4.74, 63.7/4.39],2個のカルボニル炭素 [d<sub>C</sub> 164.2 and 212.2] の存在を確認した.またこれらデータから2個のオキシメチン基 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 74.8/4.74, 63.7/4.39],2個のオレフィン炭素 [d<sub>C</sub>/d<sub>H</sub> 121.4/6.03, 145.2/6.89]の存在も確認できた.最終的にHMBC実験の詳細な検討により,化合物1はb-ヒドロキシケトン構造を側鎖にも</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
西村 太一 堀川 美津代 加来 裕人 角田 鉄人 西井 健 前川 春賀 稲井 誠 伊藤 卓也 鈴木 真也 島津 光明 竹林 純 八木 康行
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.PosterP-51, 2013

<p> アブラムシの中には色鮮やかな体色をしているものがあり,その体色はポリケタイド系色素由来であることが明らかとなってきた.これら色素の役割として,保護色を構成する要素であることが考えられる.さらにポリケタイドであることから,アブラムシ自身の生体防御物質である可能性が考えられたが,その実験的証拠はなかった.しかし,最近の我々の研究で非常に興味深いデータが得られた.すなわち,エンドウヒゲナガアブラムシから単離された赤色色素uroleuconaphin類 (1-4) をアブラムシに感染能力のある昆虫病原菌二種,不完全菌(Lecanicillium sp.)と昆虫疫病菌(Conidiobolus obscurus)に対して成長阻害活性試験を行ったところ,配糖体 1, 2では活性が無いものの,アグリコン 3, 4では活性を有することがわかった<sup>1)</sup>.アグリコン 3, 4は, 死亡したアブラムシ(感染死)から単離できることから,自らを犠牲にして病原菌の増殖をおさえていることが示唆された (Fig. 1). </p><p> </p><p>Fig.1</p><p> </p><p> 当研究室ではこれまでに、ユキヤナギアブラムシから黄色色素furanaphin (5)<sup>2)</sup>, エンドウヒゲナガアブラムシとソラマメヒゲナガアブラムシからは黄色色素megouraphin glucoside A (6)<sup>3)</sup>, キョウチクトウアブラムシから黄色色素6-hydroxymusizin (7)<sup>2)</sup>,セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシからは上記の色素1-4の他に黄色色素xanthouroleuconaphin (8)<sup>4)</sup>, さらにその配糖体 9と, 7の配糖体10を単離してきた (Fig. 2). </p><p> </p><p> </p><p>Fig.2</p><p> しかし,これらの色素について詳細な生物活性は調べきれていない.サンプル量の確保が難しいことが原因となっている.今回我々はアブラムシ色素のもつ生物学的意味を解明することを目標として,色素の生物活性を多面的に評価することを計画した.また,先に述べたように糖部分の有無で活性に差があることから,他の色素も同様のことが考えられるので,その点についても活性比較を行うことを念頭に,これら色素の大量合成を目標にした.今回合成した色素について,抗菌活性試験,細胞毒性試験,抗酸化能試験,昆虫疫病菌に対する成長阻害活性試験を行ったので報告する.</p><p>1. BF<sub>3</sub>•2AcOHを用いたFries転位</p><p> 先ず,5, 6の合成を計画し,その出発原料として12を選んだ. 12をHWE反応により炭素鎖伸長した後に,脱保護,環化によりアセテート16を合成した.一方,7, 8の合成のために13を出発原料としてフェニルスルホン18に変換後,19とのMichael付加,加水分解,環化により20とし,続く脱離反応によりナフトール体へと導き,フェノール性水酸基をアセチル基で保護してアセテート21を得た (Scheme 1).</p><p> </p><p> </p><p>Scheme 1</p><p> </p><p> 次に16, 21に対してBF<sub>3</sub>•OEt<sub>2</sub>存在下でのFries転位を試み,22,</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
中村 誠宏 吉川 雅之 松田 久司 藤本 勝好 田邉 元三 中嶋 聡一 松本 崇宏 太田 智絵 小川 慶子 村岡 修
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.PosterP-6, 2013

<p>1.序論</p><p> 花は古くから観賞用のほかに食用や薬用にも供されてきた.中国伝統医学 (中医学) や漢方医学では,紅花,槐花,菊花,金銀花などの花部由来の生薬が処方中に配剤されている.西洋ハーブとしても,マリーゴールド,カモミール,デージー,エバーラスティングなどの薬用花が数多く知られている.欧州においては,アロマセラピーなどにおいて花の精油がしばしば用いられてきた.また,1930年頃にイギリス人医師のエドワード バッチによって花エキスを用いた"フラワーレメディ"の考え方が提唱され,今日でも信奉する人も多い.しかし,花の成分レベルでの薬効解明研究はまだ十分ではない.そこで著者は,伝統医学で用いられる重要な薬用花である椿花 (Camellia japonica, 花部) および蓮花 (Nelumbo nucifera, 花部) の生体機能性成分の探索を行った.</p><p> </p><p>2. 中国産椿花 (Camellia japonica, 花部) の新規サポニン成分とメラニン生成抑制作用</p><p> ツバキ科植物ツバキ (C. japonica) は日本を原産とする常緑広葉樹の一種で, 台湾, 朝鮮, 中国,インドネシア等アジア各地に広く分布する. その花部である椿花は中国では「山茶花」と記載され,古来より抗炎症薬,健胃薬,止血薬および打撲傷の治療 (外用薬) 等に用いられてきた.我々はこれまでに,日本産椿花からノルオレアナン型トリテルペンサポニン camellioside A–D を得て,胃粘膜保護および血小板凝集作用を有することを明らかにした.<sup>1,2</sup> 今回,椿花の生体機能性成分の探索研究の一環として,中国産 (雲南省) 椿花の抽出エキスの生物活性評価を行ったところ,マウスのメラノサイト由来 B16 melanoma 4A5 へのテオフィリン刺激によるメラニン生成抑制作用を示すことを見出したことから,含有成分の探索研究に着手した.すなわち,中国産椿花のメタノール抽出エキスを,酢酸エチル,n-ブタノールおよび水にて分配抽出し,n-ブタノール移行部を各種カラムクロマトグラフィーおよび HPLC を用いて繰り返し分離精製した.その結果,8 種の新規サポニン sanchakasaponin A–H (1–8) および 8 種の既知サポニン 9−16を単離した (図 1).得られたサポニン成分のメラニン生成抑制作用について検討を行ったところ,サポニン 2–6, 8, 10, 12−14, 16 は強い抑制作用 [IC<sub>50</sub>: 1.7−4.7 mM] を示すことが明らかとなり,その作用は positive controlであるアルブチン [IC<sub>50</sub>: 174 mM] よりも強いことが明らかとなった.一方,サポニン 3–6, 8, 10, 16 にはメラノーマ細胞に対する細胞毒性 [10 mM による細胞増殖抑制率: 78.7–88.3%] が認められた.以上の結果から,16位,21位および22位に結合したアシル基の存在は,メラニンの生成抑制や細胞毒性において重要であることが示された.<sup>3,4</sup></p><p>図 1. 中国産椿花の新規サポニン成分</p><p>3. 韓国産椿花 (Camellia japonica, 花部) の新規サポニン成分とメラニン生成抑制および繊維芽細胞増殖促進作用</p><p> 中国産椿花の成分探索と同様の方法を用い,韓国産 (済州島) 椿花のサポニン成分の探索を行った.その結果,2 種の既知サポニン [camellioside A (17), D (19)] とともに2 種の新規サポニン camellioside E</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
上田 恵子 辻森 めぐみ 小谷 真也 千葉 亜希子 増野 和彦 久保 昌一 長井 薫 関谷 敦 河岸 洋和
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.309-314, 2008

The importance of the endoplasmic reticulum (ER) in triggering a specific program of cell death has been recently reported. By triggering apoptosis on neural cells, ER-stress is a major cause of neurodegenerating disease such as Alzheimer disease. The demand for new protective substances to the ER-stress-dependent cell death prompted us to screen the protective activity of mushrooms. On the course of the screening, we isolated new hericenones, 3-hydroxy-hericenone F as a protective agent, along with related compounds, hericenone I and J. The structures of hericenones were determined by NMR and MS spectra. The structure of 3-hydroxy hericenone was elucidated as (8-formyl-3-hydroxy-5-methoxy-2-methyl-2-(4'-methyl-2'-oxopent-3'-enyl) chroman-7-yl) methyl palmitate, which had one additional hydroxy group compared to hericenone F. 3-Hydroxy-hericenone F showed the protective activity dose-dependently, however hericenones F, I and J did not have any activity at the concentration of 10μg/mL. Therefore, we suggested that the hydroxy group of 3-hydroxy-hericenone F was important for the protective activity. This is the first report of a new hericenone which has the protective activity against ER stress-dependent cell death. The further study using more hericenones is needed for the understanding of the structure-activity relationship.
著者
上田 篤志 山本 暁彦 加藤 大輔 岸 義人
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2014

<p> ハリコンドリン類は上村、平田らによってクロイソカイメンから単離および構造決定されたポリエーテル系マクロリドである。<sup>2)</sup>その複雑な構造もさることながら、強力な抗腫瘍活性を示すことから創薬研究のシード化合物としての利用も試みられ、ハリコンドリンの右側部分をモチーフとした誘導体であるハラヴェンが2011年に乳ガンの治療薬として上市されている。構造的にハリコンドリン類は、C12およびC13位の酸化度の違いによりA、B、およびCシリーズに分類され、他方側鎖の構造によってノルハリコンドリン、ハリコンドリン、およびホモハリコンドリンに分類される (Figure 1)。これらの組み合わせからなる9種の亜種のうち、ハリコンドリンAを除いた8種類が現在までに単離報告されている。今回、未だ自然界からは単離されていないハリコンドリンAの初の全合成を達成したので報告する。合成のハイライトとしては、(1)Cr触媒によるC13/C14位でのカップリングとビニロガスエステルの面選択的エポキシ化を鍵とするC1–C19フラグメントの合成、(2)不斉Ni/Cr触媒反応<sup>3)</sup>に続くフラン環形成反応及び椎名マクロラクトン化による右側マクロラクトン環の構築、(3)C1–C38とC39–C54フラグメントのNi/Cr試薬による連結、(4)TMSOTfを用いた新規高立体選択的異性化反応によるC38-epi-ハリコンドリンAからハリコンドリンAへの異性化の4点があげられる。さらに合成したハリコンドリンAの構造の正しさを証明するため以下の実験を行った。第一にハリコンドリンAの合成に用いたC1–C38フラグメントから、既知の天然物ノルハリコンドリンA(2)およびホモハリコンドリンA(3)を合成した。第二にハリコンドリンAとその他のハリコンドリン類とのNMRデータの比較を行った。<sup>4)</sup></p><p>Figure 1.Structure of the halichondrin class of natural product.</p><p>(1)Cr触媒的カップリングと選択的エポキシ化によるC1−C19部位の合成</p><p> C1−C19フラグメントはヨウ化アルキン4と臭化ビニル5から合成した(Scheme 1)。これら二つの原料はいずれもNi/Crカップリング反応の良好な基質であるが、Ni触媒の量を低容量に抑えることでヨウ化アルキンのみを選択的に活性化させ、アルデヒドとのカップリング体を91%の高収率で得ることに成功した。生じた水酸基を酸化した後に得られたイノン6を、過剰のピリジン存在下HF・ピリジンで処理することで、三つのTBS基のうち、C9位とC11位のTBS基を選択的に脱保護することに成功した。この過程においてC9位の水酸基はイノン部位にオキシマイケル付加し、C11位の水酸基との水素結合による安定化でE体のビニロガスエステル7が選択的に得られた。ビニロガスエステル7のエポキシ化はジメチルジオキシランを用いることでコンベックス面から選択的に進行し、続く酸によるエポキシドの開環とHFによるTBS基の脱保護を伴うC14位でのケタール化までの3工程をワンポットで行うことで、収率92%でC12、C13位に水酸基を有するハリコンドリンA骨格の構築に成功した。最後にC12/C13位ジオールをp-アニシリデンで保護することにより、C19位でのカップリングの基質8へと導いた。Scheme 1において</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
菅原 孝太郎 北村 嘉章 佐竹 真幸 村田 道雄 橘 和夫
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.433-438, 2011

Our continuous efforts for search of new bioactive compounds led to isolation of a polyene-polyol, prorocentrol, from P. hoffmannianum (CCMP 683). Although a ketone-hemiacetal tautomerism was observed during the course of NMR measurements, NMR measurements in pyridine-d_5/D_2O (6:1) at room temperature gave simplified NMR spectra. Detailed COSY and TOCSY analyses led to four 114 spin-networks, which were constructed to gross structure on the basis of HMBC correlations. The stereoconfigurational analysis of prorocentrol was undertaken by extensive utilization of 2D-NMR methods. The conformation of cyclic ethers in the molecule was analyzed based on NOESY correlations and ^3J_<H,H・> A JBCA method was applied for elucidation of the relative configurations of chiral centers in acyclic portions. Where HETLOC did not give sufficient intensity, qualitative utilization of the relationship between HMBC signal intensity and corresponding ^<2,3>J_<C,H> turned out to be effective especially for the methyl bearing portions. Moreover, the universal NMR database method was also applied on the continuous polyol segments as an alternative way for the JBCA to reveal the relative configuration. As a particular property of prorocentrol, suggestive evidences for an association of prorocentrol and okadaic acid were indicated from chromatographic behaviors and changes of NMR chemical shifts.
著者
山本 恵子 崔 美花 増野 弘幸 山田 幸子
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 43 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.73-78, 2001-09-01 (Released:2017-08-18)

Conformational analysis of the side chain of 1α,25-dihydroxyvitamin D_3 [1,25-(OH)_2D_3, 1] and its 20-epimer 2 revealed that the spatial region occupied by the side chain of these vitamin Ds can be divided to four areas. We designed and synthesized four diastereomers 3-6 at C(20) and C(22) of 22-methyl-1,25-(OH)_2D_3 whose side-chain mobility is restricted in one of these four areas. We tested biological activities of these four analogs. These studies allowed us to propose the relationship between the spatial region of the vitamin D side-chain and the activity, an active space group concept. This concept has been generally accepted as explaining the three-dimensional structure and activity relationship of almost all known vitamin D analogs. We constructed the three-dimensional structure of the ligand binding domain (LBD) of vitamin D receptor (VDR) based on the crystal structure of retinoic acid receptor by the homology modeling technique. We docked 1,25-(OH)_2D_3 1 as a ligand into the constructed VDR-LBD. Three residues forming the hydrogen bonds with the functionally important 1α- and 25-hydroxyl groups of 1 were identified and confirmed by the mutational analysis: the 1α-hydroxyl group is forming pincer type hydrogen bonds with S237 and R274 and the 25-hydroxyl group is interacting with H397. By the computational docking studies based on the mutational analysis of the VDR, we obtained the docking models of the VDR with the functionally and structurally interesting ligands. From these studies we suggested key structural factors to bestow the augmented activities on 20-epi-vitamin Ds.
著者
杵渕 政彦 植松 遼平 谷野 圭持
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2014

<p>1. はじめに</p><p>Psiguadial B(1)は、2010年Shaoらによってフトモモ科の常緑灌木Psidium guajava L.から単離・構造決定されたメロテルペノイドである<sup>1)</sup>。1は、セスキテルペンに相当するトリシクロ[6.3.1.0<sup>2,5</sup>]ドデカン骨格および2つの芳香環を合わせ持つハイブリッド型天然物であり、ヒト肝癌細胞に対する抗腫瘍活性(IC50 = 46 nM in HepG2 cells)や増殖抑制作用(IC50 = 25 μM in HepG2/ADM cells)を有する。今回我々は、アセチレンジコバルト錯体の二重環化反応を基軸とする1の全合成を達成したのでここに報告する。</p><p>2. 多環性骨格構築法の設計および予備的検討</p><p>1の逆合成解析を以下に示す。7員環に対してトランスに縮環したシクロブタン環は、中間体2の無水マレイン酸部位を足掛かりに形成可能と考え、2のベンゾピラン環は、2つの脱離基を有するビシクロ化合物3と置換フェノールを連結して構築することとした。3の無水マレイン酸部位は、環状アセチレンジコバルト錯体4の脱錯体化反応によって導入することとし、4のビシクロ[4.3.1]デカン骨格を、中間体5を経由する二重環化反応で鎖状コバルト錯体6から一挙に構築する計画である。</p><p>最初に、鎖状コバルト錯体6の二重環化反応について、中間体5のモデル基質7を用いた予備的検討を行った(次頁表)。まず、ルイス酸として二塩化エチルアルミニウムを作用させたところ、7員環形成に伴い橋頭位にエチル基が導入された9が主に生成した。そこで、他の置換基を有するアルミニウム試薬を種々検討した結果、二塩化(2,4-ジクロロフェノキシ)アルミニウムを用いた場合に、橋頭位に塩素を有する環化体8が良好な収率で得られることを見出した。</p><p>3. 二重環化反応によるビシクロ[4.3.1]デカン骨格の立体選択的構築</p><p>上記の予備的知見を受けて、全合成の鍵工程となる二重環化反応の基質6の合成に着手した。δ−ヘキサノラクトンとベンズアルデヒドをアルドール縮合させた後、接触水素化条件で二重結合を還元した。得られたラクトン10をワインレブアミドの形で開環した後、生じたアルコールをケトン11へと酸化した。メチルプロバルギルエーテルから調製したアセチリドを11と反応させた後、ワンポットでシリル化してTMSエーテル12を合成した。12にメチルリチウムを作用させて得たケトン13を、エノールトリフラート化とTMS基の除去を経てアルコール14に変換した。シリルメチルGrignard試薬とのクロスカップリング反応でアリルシランとし、酢酸エステル15を経てアセチレンジコバルト錯体6を合成した。このものに、先に見出したルイス酸をone-potで作用させた結果、望みとする二重環化体4が一挙に得られた。</p><p>二重環化体4は単一の立体異性体として得られ、橋頭位四級炭素とベンジル基の相対配置は天然物1に対応することが判明した。この立体化学は6員環形成の際に決定されるが、ベンジル基がエカトリアル位にあるイス型遷移状態モデルを想定すると、メチル基よりもはるかに嵩高いコバルト錯体がアキシアルに配向することになる。そこで、この遷移状態モデルを計算化学的<sup>2) </sup></p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
藤岡 稔大 岩元 雅代 岩瀬 由紀子 八山 しづ子 岡部 光 三橋 國英 山内 辰郎
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, pp.165-172, 1988

Dammarane-type triterpene glycosides, named actinostemmoside A, B, C, D, G and H, baccharane-type triterpene glycosides, actinostemmoside E and F, and oleanane-type triterpene glycosides, lobatoside A, B, C, D, E, F, G and H were isolated from the herb of Actinostemma lobatum MAXIM. (Cucurbitaceae). Their structures were elucidated on the basis of the spectral and chemical evidences as shown in the text. The structure of actinostemmoside F was elucidated mainly on the basis of two dimensional-incredible natural abundance double quantum transfer experiment (2D-INADEQUATE) spectrum. Among dammarane-type actinostemmosides, D is the glycoside of the first naturally occurring dammarane having the (20R)-configuration, and actinostemmosides E and F are the second baccharane-type triterpene glycosides isolated from the natural source. Lobatoside B, C, D, E, F and G are cyclic bisdesmosides similar to tubeimoside I isolated from the tuber of Bolbostemma paniculatum (MAXIM.) FRANQUET. (Cucurbitaceae), and this is the second instance of the isolation of cyclic bisdesmoside from the plant kingdom.
著者
波多野 力 貴良 礼子 安原 多恵子 奥田 拓男
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, pp.292-299, 1988

1)Four new hydrolyzable tannins, liquidambin (3), isorugosin A (12), isorugosin B (9) and isorugosin D (13), were isolated from the leaves of Liquidambar formosana. 2) Liquidambin (3), which could be a biogenetic precursor of C-glucosidic tannins, was isolated as an equilibrium mixture. The equilibration was found to be due to hydration of the aldehyde group at C-1 of the glucose residue in 3. 3) Isorugosin D (13), biogenetically producible from two molecules of tellimagrandin II (17), had a valoneoyl group of the orientation different from that of rugosin D (6). Isorugosins A (12) and B (9), monomeric tannins from the same plant, were isomers of rugosins A (4) and B (5) concerning the orientation of valoneoyl group. 4) Rugosins A (4), B (5) and D (6) were absent in L. formosana, and isorugosins A (12), B (9) and D (13) have not been found in Rosa rugosa and Coriaria japonica, which contain 4, 5 and 6. The C-O oxidative coupling in the formation of valoneoyl group in L. formosana, therefore will have been effected by an enzyme different from that of R. rugosa and C. japonica. 5) Cornusiin A, a major component of the fruits of Cornus officinalis, should be formulated as 19, on the basis of the chemical conversion of 19 to isorugosin B (9). Structures of camptothins A and B, which were isolated from the leaves of Camptotheca acuminata, and that of cornusiin C from the Cornus and Camptotheca species, were determined to be 20, 21 and 22, respectively.