著者
中島 敬二 上田 貴志 植田 美那子 望月 敦史 近藤 洋平 稲見 昌彦 遠藤 求 深城 英弘 河内 孝之 小田 祥久 塚谷 裕一
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2019-06-28

植物は一生を通じて器官や組織を作り続けながら成長する。このような特性に起因して、植物の形態には固有の周期性が現れる。植物の周期形態は遺伝的プログラムや環境変化といった、内的・外的因子により変化し、植物はこれを積極的に利用することで、器官のかたちや細胞の機能を変化させる。植物の形態や成長に現われるこのような「可塑的な周期性」は、植物個体の内部に潜在する未知の周期性とその変調に起因すると考えられるが、周期の実体やそれが形態へ現れる仕組みは不明である。本新学術領域では、植物科学者・情報科学者・理論生物学者が密接に連携して共同研究を展開し、周期と変調の視点から植物の発生原理を解明する。
著者
中村 匡良
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

シロイヌナズナのspiral(spr)3変異体は体軸がねじれるために、葉器官が反時計方向に回転して見え、根は寒天培地上を右方向に向かって伸長し、根の表皮細胞は右向きにねじれる。spr3の原因遺伝子はγチューブリン複合体の一構成員GCP2のホモログをコードしていた。1.AtGCP2は生存に必須の因子である。シロイヌナズナ(At)GCP2ノックアウト株は作出されなかった。atgcp2ヘテロ株の解析から、AtGCP2は雌雄配偶子の形成や発達に重要であり、生存に必須の因子であることが示唆された。2.間期表層微小管はAtGCP2を介して形成される。GFPを融合したAtGCP2コンストラクトをRFPで微小管標識した植物体に形質転換することで、微小管とAtGCP2を同時に生細胞で観察できる植物体を作製した。共焦点レーザー顕微鏡による観察を行ったところ、AtGCP2が既存の表層微小管に出現し、そして40°の角度を持って微小管が文枝形成される動態が観察された。このことから、表層微小管はAtGCP2を含む微小管重合核を介して形成されることが示唆された。3.シロイヌナズナ微小管重合核は微小管形成角度を維持することにより表層微小管構築に寄与する。表層微小管は細胞膜内側で形成されたのち、マイナス端が形成した部位から移動することが特徴的である。また、形成部位から微小管を遊離するには微小管を切断するカタニンタンパク質が関与することが考えられている。事実、シロイヌナズナカタニン変異株の間期表層微小管動態を観察したところ、微小管の形成部位からの遊離は観察できなかった。マイナス端遊離のないカタニン変異株にspr3変異を付与するとカタニン変異株の表現型にspr3の表現型である右巻きねじれが付与された。このとき、表層微小管形成角度はspr3変異株のみのときと同様変化していた。以上のことから、植物細胞の伸長方向には、AtGCP2を含む微小管重合核による40°という高等植物に特徴的な角度を持った微小管形成の維持が重要であることが示唆された。
著者
久木田 洋児
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

改良型NOIR-SeqSの臨床検体における性能評価を行うため、膵癌検体解析用に設計した遺伝子パネルの標的領域について、膵癌患者/健常者集団(第1コホート.膵癌57人、健常12人.)から抽出した血漿DNAを解析した。その結果、膵癌患者31人(54%)、健常者5人(42%)から変異を検出した。最近、癌に特異的な変異以外に、試料の保存中に生じたDNA損傷に由来する塩基変化や正常細胞中に生じた癌に関与しない体細胞変異の存在が指摘されており、健常者で見つかった変異はそれらに該当すると考えられた。癌に特異的ではない変異は癌患者検体の変異検出解析の障害になるので区別して除く必要があり、それを可能にする情報学的なフィルターの開発に取り組んだ。第1コホートを学習データとして扱い、癌体細胞変異を網羅しているCOSMICデータベースから独自基準に従って癌特異的変異を選択し、癌に特異的ではない変異を除くCV78フィルターを考案した。CV78フィルターを使って再解析すると、変異が検出された人数は、膵癌患者19人(33%)、健常者0人となり、癌と関係のない変異を除くことが出来た。この結果を検証するために、前出集団とは別の第2コホート(膵癌患者86人と良性の膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)患者20人)を解析した。改良型NOIR-SeqS単独解析では、膵癌患者62人(72%)、IPMN患者10人(50%)で変異が検出されたが、CV78フィルターを用いると、32人(37%)、1人(5%)になり、CV78フィルター後の変異検出率は独立した上記2集団で同様になった。また、膵癌患者のKRAS変異検出率は他方法を用いた他グループからの報告と同等であったことから、今回開発した改良型NOIR-SeqSとCV78フィルターを組み合わせた変異検出システムが臨床検体の解析に有用であることを確認することが出来た。
著者
飯田 元
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

広汎性発達障害(しょうがい)をはじめとする様々な障害レベルにある、いわゆる自閉症スペクトラムを有する未成年児を対象に、メールやブログ、SNS(ソーシャルネットワーキングシステム)といった電子的コミュニケーション手段に対するリテラシを障害レベルに応じて適切に教育し、また、実践を支援・補完する専用SNSプラットフォームを試作し、模擬的な療育プログラムの思考を通じて評価した結果、発達障害児の療育と社会参画支援のためのSNSプラットフォームが有するべき具体的機能要件および非機能要件をあきらかにした
著者
Artho Cyrille
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
巻号頁・発行日
2015-10-26

IoTや組込み機器など、ソフトウェアが社会基盤を支える時代に必要となるソフトウェアの信頼性を確保する手法について、基本的な考え方を整理し、どのような形で技術を組み合わせて適用すべきかを考える。また、検証技術とソフトウェアのテスト技術を組み合わせて応用する技法について解説する。
著者
中村 哲 岩坂 英巳 根來 秀樹 サクリアニ サクティ 戸田 智基 Neubig Graham 田中 宏季
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

自動ソーシャルスキルトレーナと題して,ソーシャルスキルトレーニング(SST)の過程を人間と対話エージェントの会話によって自動化する研究を進めてきた。これまでに開発したシステムは、自閉スペクトラム症での効果測定をしていなかったという問題があった。最終的な実験的評価として、自動ソーシャルスキルトレーナを使用し、10 名の自閉スペクトラム症者における訓練の効果を調査した。50 分間のシステムを使用した訓練実験により、有意に話のスキルが向上していることを示し、自動ソーシャルスキルトレーニングが有効であることを示してきた。これからも希望者がいつでもどこでも手軽に使用できる SST を目指していく。
著者
横矢 直和 山澤 一誠 岩佐 英彦 竹村 治雄 荒木 昭一 栄藤 稔 栄籐 稔
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

1.全方位ステレオ画像センサの設計・試作まず最初に、2つの異る回転2葉双曲面を接合した複合双曲面ミラーとビデオカメラからなる全方位ステレオ画像センサStereo HyperOmni Visionの設計・試作を行なった。本センサは、現状のビデオカメラを用いる限り、画像の解像度に問題があり、実用化には超高解像度ビデオカメラの出現が待たれる。次に、この解像度の問題を解決するために、ピラミッド型六角錐ミラーと6台のカメラにより側方360度を撮像し、同じ構造を上下対称に配置することによってステレオ撮像を可能にする全方位ステレオ画像センサPYMSを開発した。2.全方位画像からのパノラマ画像及び任意視線画像の実時間生成試作したセンサは単一視点制約を満たすため、任意形状の投影面への1点中心投影像を計算によって求めることができる。本課題では、この画像変換の実時間処理を実現するために、離散的な点での座標変換とハードウェアによる画像変形を組み合わせた手法を開発した。また、画像提示デバイスとして頭部搭載型画像表示装置(HMD)と全周型景観提示システムを用いたテレプレゼンスシステムのプロトタイプを開発し、提案手法の有効性を実証した。3.時系列全方位画像及びパノラマ画像の高能率符号化時系列全方位画像及びパノラマ画像の特性を活かしたビデオストリームからの動き推定法と高能率圧縮符号化方式を開発するとともに、多地点全方位画像から任意視点画像を生成する手法を開発した。4.全方位ステレオ画像からの3次元情報の抽出本研究で設計・試作した全方位ステレオ画像センサは縦方向の視差を有するため、人間への画像提示の観点からは、横視差をもつステレオ画像への変換が必要である。このため、相関法によるステレオマッチングによりシーンの奥行き情報を抽出する全方位ステレオ視のアルゴリズムを開発した。