著者
波平 昌一
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

哺乳類の脳の神経細胞(ニューロン)におけるDNA メチル化、及び、DNMT1 の役割を解明することを目的とし、研究を行った。その結果、DNMT1 が発達期において神経突起の伸長に関与すること明らかにした。また、ニューロン特異的なDNMT1 の欠損が、マウスの不安様行動を誘発させることがわかった。これらの結果は、非分裂生のニューロンにおいてもDNMT1 がその機能を発揮し、ニューロンの発達と活動を制御していることを示している。
著者
岩堀 健治
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究において詳細にナノ粒子形成条件を検討する事により直径 12 nm の馬由来フェリチンタンパク質の内部空洞内(直径 7 nm)に温熱効果を発揮すると考えられる酸化鉄ナノ粒子の作製に成功した。作製した本ナノ粒子集合体はネオジウム磁石への吸着が肉眼で観察されるとともに、XRD や EDX 分析、高分解能電子顕微鏡観察等を行った結果、作製されたナノ粒子はマグネタイト (Fe3O4) であることが確認された。また、酸化鉄ナノ粒子以外にも詳細な検討作製条件検討によりフェリチン空洞内への CuS 及び FeS, タンタル (Ta) のナノ粒子の作製にも成功し、現在ひきつづき元素分析及び磁性観察を行っている。さらに最近、より DDS に適しているヒトの心臓由来のフェリチンタンパク質の作製と内部への酸化鉄ナノ粒子の作製にも成功した。今後はこれらの作製したナノ粒子の発熱実験とフェリチン表面への認識ペプチドの結合を行うことでバイオナノ粒子を作製し、機能評価を行う。
著者
和田 七夕子
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1) イネのエピジェネティック遺伝ジャポニカ種イネを5-アザデオキシシチジン処理することにより、人工的な脱メチル化を起こし、10年以上に亘り継代栽培した。このうち表現型の固定が著しいLine-2について、MSAPスクリーニングにより低メチル化領域を単離し、その遺伝について解析をおこなった。得られた遺伝子座のひとつ、Xa21に似たXa21Gは、野生型ではXa21G転写産物は見られず、Line-2でのみ蓄積が見られた。Xa21はXanthomonas orvzaeに対する抵抗性遺伝子である。シザーディップ法による検定の結果、野生型ではXanthomonas oryzaeに対し罹病性であったが、Line-2は抵抗性を示した。Xa21Gの低メチル化と抵抗性はLine-2の各世代において見られた。この結果より、Xa21Gにおいて、メチル化パターンが遺伝すること、それと遺伝子発現との相関が示された。以上の結果をAnnals of botanyに報告した。2) DNAメチル化酵素NtMET1の解析タバコのDNAメチル化酵素であるNtMET1についで解析を行った。過剰発現株を用いた解析より、細胞分裂の異常による形態形成の変化がみられた。細胞分裂の各期におけるNtMET1タンパク質の局在観察の結果、メチル化DNA結合タンパク質MBD5と、細胞内局在の変化において同様の挙動を示した。また、Pull-down法による解析より、NtMET1は、Ranタンパク質を介してMBD5と複合体を形成する可能性が示唆された。以上の結果をAnnals of botanyに報告した。
著者
森 浩禎 BARRY L. Wanner
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

網羅的に遺伝的ネットワークを解明することを目的に、2重欠失株作製の系の開発と解析の評価を行った. 2重欠失の為の既存の欠失株ライブラリーにさらにもう1種類の欠失株ライブラリーの構築、単一欠失の接合による2重化のツールの開発、2重化のhighthroughput化、解析システムのそれぞれの開発を行った. 新規欠失株ライブラリーには、20ntのbarcodeを挿入し、創薬等のhighthroughputスクリーニングへの道も開いた.
著者
中嶋 琢也 河合 壯 長谷川 靖哉 湯浅 順平
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

通常、高分子電解質の交互積層(Layer-by-Layer)法による薄膜の作成には水媒体が用いられるが、水分の存在は薄膜の応用を大幅に制限している。特に、水素貯蔵材料などの禁水系材料や電子デバイスのコーティングには無水条件が望まれ、非水系へのLayer-by-Layer法の展開が必要とされる。我々は、イオン液体がそのイオン組成により種々の物質、特に、ポリマーに対する溶解性を制御できることから交互積層膜作製の媒体として利用できると考えた。さらに、いくつかのイオン液体はセルロースやシルクならびにカーボンナノチューブなど難溶性の物質を容易に溶解できることから、分子性溶媒では達成できない薄膜が作製できると期待される。また、ナノメートルスケールで垂直方向に設計が可能な交互積層薄膜作製法の開発により、イオン液体含有高性能センサー作製のための基礎技術が確立できる。以上より、本研究では、典型的な高分子電解質、カーボンナノチューブならびにセルロースを材料とした交互積層薄膜の作製を行った。いずれの材料においても、規則的な膜厚成長が確認され、特にセルロースにおいては高透明、高強度の薄膜を与えた。
著者
キヤンベル ニツク 定延 利之 柏岡 秀紀
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究のはじめに「対話構造」、「アクティブ・リスニング」を主なテーマとして、招待講演や国内および国際会議での発表を多く行った。本プロジェクトにより、新たな技術を得てはいないが、自然音声対話に関しての合成と認識手法に関して理解を深めることが可能となった。また本研究はEUのプロジェクトであるSocial Signal Processingに影響を及ぼした。さらに大規模マルチモーダルコーパスを数カ国の大学と協力して収録し、ウェブページhttp://www.speech-data.jp/nick/mmx/d64.htmlにそのデータベースを掲載した。最後に本研究で開発された画像処理モジュール、音声処理モジュールを含み、簡単な会話が可能なロボット"Herme"を完成させた。"Herme"は現在アイルランドに展示されており、ロボットとの対話音声コーパスの収録を行っている。
著者
中嶋 琢也 長谷川 靖哉 湯浅 順平 河合 壯
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

電荷の局在状態の光制御を実現するシステムを目指し、ジアリールエテン、ターアリーレン(ジアリールアリーレン)へのイミダゾリウム環の導入を行った。光化学反応に伴い、導入されたイミダゾリウム環は正電荷が非局在化したイミダゾリウム型と局在化したイミダゾリニウム型に相互変換する。本年度は、この正電荷の局在構造変化によるソルバト、イオノクロミズムや反応性の発現など興味深い特徴を見出した。(1)イミダゾリウム置換ジアリールエテンはトルエンからピリジンまで幅広い極性の溶媒中においてフォトクロミック反応を示すことを見出した。閉環体における局在正電荷はルイス塩基結合サイトとして働き、高ドナー数を有する分子やアニオンと特異的に相互作用する。その結果、π共役構造を変化させ、マルチクロミック特性(光、溶媒、イオン応答)を示すことを見出した。(2)ジチアゾリルイミダゾリウムは種々の溶媒中で可逆的にフォトクロミック反応を示し、(1)と同様に、ソルバトクロミズムを示した。この場合、溶媒のドナー数ではなく誘電率に応答した吸収ピークシフトを示した。低極性溶媒中において局在カチオンはヨードアニオンと強く相互作用し、イミダゾリニウムのN(1)-C(2)-N(3)の二重結合性を低下させ、π共役系の縮小により低波長シフトを与えた。さらに、局在カチオンの高い反応性は、強い求核剤であるメトキシドとの求核付加反応によりphoto-gated reactivityとして実証された。
著者
箱嶋 敏雄
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

1) ERMタンパク質とMT1-MMPとの相互作用昨年度に決定したMT1-MMPの細胞内領域とFERMドメインとの複合体構造に基づいて,ビオチン化したペプチドを用いた結合領域の限定や厳密で定量的な結合実験を,BIAcoreを用い手検討して論文作成の準備を進めた.2) Tiam1/Tiam2の結晶構造Tiam1/Tiam2のPHCCExドメインの結晶構造に基づいて,結合タンパク質であるCD44、Par3,JIP2,あるいはephrin B1,2,3やNMDA受容体との相互作用部位の特定の結合実験を行った.その結果,酸性残基に富む2つの配列モチーフを発見した.また,PHCCExドメイン表面の塩基性残基の一連の変異実験をして,CD44などの標的タンパク質の結合部位を同定した.更に,培養細胞を用いたin vivoでの実験で,相互作用の重要性を確認した.これらの成果をまとめて論文を作成して出版した.3) Tiam1/Tiam2-CD44、-Par3,-JlP2複合体の結晶化と構造解析上記の結晶構造研究に用いたTiam1やTiam2のPHCCExドメインと,標的タンパク質であるCD44、Par3,JIP2,あるいはephrin B1,2,3との複合体の結晶化を試みた.タンパク質比,タンパク質濃度,温度等も変化させながら,現有ロボット(HYDRA-II)を使って大規模なスクリーニングを試みたが,構造解析に用いられる結晶は得られなかった.
著者
高木 博史 大津 厳生
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

大腸菌にはシステイン(Cys)をO-acetylserine sulfhydrylase A(OASS-A)によりO-acetylserine(OAS)とSO_4^<2->から合成する経路1と、OASS-BによりOASとS_2O_3^<2->から生成するsulfocysteineを介して合成する経路2が存在する。これまでに経路1の制御機構の解除を中心としたCys生産菌の育種が続けられてきたが、経路1だけでは合成系の強化にも限界がある。一方、経路2はsulfocysteineからCysへの還元に関わる酵素やその制御機構が未解明であるが、経路1と比べ硫黄同化経路でのエネルギー消費が少ないため、その知見を発酵生産へ応用することで、Cys生産性の向上が期待できる。まず、経路1のOASS-A遺伝子(cysK)と経路2のOASS-B遺伝子(cysM)を破壊した二重欠損株を作製したところ、予想通りCys要求性を示したことから、大腸菌のCys生合成経路には1と2しか存在せず、二重欠損株ライブラリーを用いた解析が可能であることが判明した。現在、Keio collectionとcysK破壊株を接合させた二重欠損株ライブラリーを用いて、Cys要求を示す菌株を単離し、新規経路に関与する遺伝子の探索を行なっている。また、すでに高等動物において、glutaredoxin(Grx)がsulfocysteineをCysに還元する反応を触媒することが報告されている。そこで、大腸菌に存在する酸化還元酵素がsulfocysteineからCysへの還元活性を示すかどうかについて評価した。9種類の酸化還元酵素にHisタグを融合した組換え酵素を精製し、酵素活性を測定した。その結果、Grx1,2,3はsulfbcysteineのCysへの還元を触媒することが明らかになった。さらに、in vivoでの効果を確認するために、これら酸化還元酵素をそれぞれ過剰発現させたCys生産菌を構築し、S_2O_3^<2->を硫黄源としたCys生産実験を行った。その結果、Grx1及びGrxと相同性の高い還元酵素NrdHの過剰発現株では、Cys生産量が有意に増加(20-40%)しており、これらの還元酵素の過剰発現がCys発酵生産に有効であることが示された。
著者
岩堀 健治
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、詳細なナノ粒子作製条件の検討を行い、直径12nm内部空洞7nmの球殻状バイオテンプレートであるアポフェリチン内部に、ナノ電子デバイス作製に有用である3種類の新規化合物半導体ナノ粒子(CdS, CuS, ZnS)の作製に成功した。特に、溶液中のアンモニア濃度を調整することにより、異なる粒子径を持ち、異なる蛍光を発するCdSナノ粒子の作製が可能となった。同時に遺伝子変異フェリチンを作製し、フェリチン内部におけるナノ粒子形成メカニズムを明らかにした。さらにフェリチンタンパク質と直径9nmのLisDpsタンパク質をQCM基板上で結合させ雪だるま型バイオナノパーツの試作を行った。
著者
片岡 幹雄 郷 信広 上久保 裕生 徳永 史生 SMITH Jeremy ZACCAI Josep
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

黄色ブドウ球菌核酸分解酵素(SNase)を用いて、室温及び25Kでの中性子非弾性散乱スペクトルを広いエネルギー範囲で観測した。蛋白質の非弾性散乱スペクトルとしては、世界最高精度のデータを得ることができた。25Kスペクトルは、定性的に基準振動解析により説明することができ、ピークの帰属が行われた。理論的に予想される振動モードの実在が証明された。しかし、定量的な一致度はよくなく、理論計算に用いられているポテンシャル関数に改善の余地があることを示した。また、室温のスペクトルは分子動力学シミュレーションにより説明されることが示された。SNase野生型とフラグメント(折畳まれていない)についての中性子非弾性・準弾性散乱測定から、折畳まれることによって獲得される特異的な運動は、ガラス転移以上の温度で出現する水によって活性化される非調和的な運動であることが示唆された。蛋白質におけるボソンピークは分子量依存性を示唆し、ボソンピークの起源となる低エネルギー励起は二次構造などに局在したものではなく、分子全体に広がっているモードによることが推測された。また、この性質は、蛋白質を含めソフトマターに共通の性質であると考えられる。蛋白質動力学の不均一性を評価する方法が考察され、バクテリオロドプシンについては、機能との関係が議論された。膜蛋白質と水溶性蛋白質とで不均一性には差があることも示された。ガラス転移は、蛋白質の部位により起きる温度が変わることが、重水素ラベルを用いて示された。これも動力学の不均一性の現れであることが示唆された。
著者
黒川 顕
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

代表者は前年度に特徴的な病原性に関するデータベースは作成完了したが,今年度は病原性という曖昧な表現型にこだわるのではなく,病原遺伝子に着目し,その遺伝子群をターゲットとして比較ゲノム解析をすることで,病原遺伝子の分布や構造を明らかにしようとした.初めとして,病原性大腸菌や腸炎ビブリオ,さらには植物病原菌において代表的な病原因子として注目されている3型分泌装置(TTSS)に着目した.TTSSでは装置を構成する遺伝子群のみならず,宿主細胞に送り込まれる分泌蛋白(エフェクター)こそが病原性として重要であるが,これら分泌蛋白は遺伝子配列レベルでの相同性がほとんどなく,それら遺伝子を予測することは非常に困難であり,世界中で精力的に予測が試みられている.代表者は既知の分泌蛋白遺伝子のN末端50残基のアミノ酸頻度パターンに着目し,ゲノム全遺伝子から多次元尺度構成法(MDS)および自己組織化地図法(SOM)によりクラスタリングすることで,分泌蛋白遺伝子の予測をおこなった.病原性大腸菌O157に本方法を適用し,60個の遺伝子を分泌蛋白遺伝子候補として予測した.これら予測した遺伝子には,既知の分泌蛋白遺伝子だけでなく,共同研究者により実験的に明らかとなった分泌蛋白遺伝子がすべて含まれていることから,本予測法が極めて高いレベルにあることを示唆しており,それら以外の候補も分泌蛋白遺伝子としての可能性が高いと考えられる.このような高い精度をもった予測法は世界的にも例がない.今後は,本方法で予測した遺伝子の抗体を作成し,共同研究者により実際に分泌されているか否かの検証をすると同時に,実験で確認された分泌蛋白遺伝子情報を本方法に取り入れることにより予測精度を向上させ,他の菌種にも応用していく予定である.
著者
鹿野 清宏 猿渡 洋 川波 弘道
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

H17年度に収録した28人からなり、異なる4時期で発声した非可聴つぶやき声(NAM)個人認証データベースをもとにNAMによる話者認証の研究を進めた。さらに、27人の詐称者のNAMを収録して、NAM個人認証データベースを完成するとともに評価を行った。NAMにより個人認証の研究で、研究を担当した小島麻里子(M2)が、暗号と情報セキュリティシンポジウムSCIS2006論文賞を受賞した。(1)Hl7年度に収録した28名のN削個人認証データベースに加えて、27名の詐称者のN削個人認証データベースの収録し、NAM個人認証データベースを完成した。異なる時期の登録データを利用することが大いに有効であることが分かった。(2)NAM音声データベースを用いて、NAM個人認証アルゴリズムの研究および認証能力の評価を引き続き行う。とくに、発声者の登録の負担を減らすことを目指して、1時期あたりの発声数を減らす効果を調べ、1時期あたり2発声程度まで個人認証率が保たれることを確認した。(3)セグメント情報とSVM(サポートベクターマシン)を用いた個人認証アルゴリズムが、NAM音声の認証において、従来のGMM(ガウス混合分布モデル)などよりも飛躍的に高い個人認証能力を持つことが確かめられた。(4)他人がパスワードを発声した場合のNAMの認証能力、本人がパスワードを忘れた場合の拒絶能力を個人認証実験で調べた。個人のNAMマイクによる体内音も収録して、個人認証実験を行ったが、有効な結果は得られなかった。
著者
橋本 隆
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

γチューブリン環状複合体gTuRCは酵母、動物から植物まで保存されており、γチューブリン2分子とGRIPモチーフをもつGamma-tubulin Complex Protein 2(GCP2)とGCP3それぞれ1分子ずつから成るキャップサブユニット小複合体とさらにGCP4,GCP5,GCP6,GCP-WD(NEDD1)が追加された環状複合体が存在する。我々はアラビドプシスのGCP2とGCP3に蛍光タンパク質を融合させてゲノム制御領域を用いてmCherry-TUB6微小管標識アラビドプシス植物体で発現させ、微小管重合開始点をin vivoイメージングした。大部分のgTuRCは表層微小管上に出現する。そのうち約半分のgTuRCは短時間(5秒以内)に消えるが、残りの約半分は微小管上に出現してから5秒以内に新たな微小管を形成する。新生微小管の6-7割は約40度の角度で伸長するが、それ以外は既存の微小管に沿って伸長し、束化が起こる。カタニン変異株ではgTuRCは重合開始点に留まり、新生微小管が既存の微小管から切り離されることはなかった。従って、カタニンがgTuRCと新生微小管のマイナス端の間付近の構造を認識して、表層微小管の重合開始点からの切り離しを行っていると推測される。アラビドプシスにはEB1a,EB1b,EB1cの3種類のEB1があるが、EB1a,bは主に間期の微小管に局在し、EB1cは核内に局在し分裂期の微小管の機能を制御している。eblc変異株では紡錘体微小管とフラグモプラストの配向が乱れており、微小管薬剤に対して高感受性を示す。EB1cの分裂期微小管制御機能にはその特徴的なC末端が必須であり、EB1a,bでは代替できなかった。
著者
藤川 和利 砂原 秀樹 猪俣 敦夫 垣内 正年 寺田 直美 油谷 曉
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究課題では、複数の4K映像ストリームが混在する環境を対象として、インターネット上のネットワーク機器におけるパケットマーキング機能およびパケット優先廃棄機構を開発し、実証実験を通して開発した機構等の有用性が確認できた。
著者
乾 健太郎
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

商品やサービスなど, 指定されたトピックに関連する個人の経験の記述をWeb文書集合から収集し, 述語項構造に基づく表現形式に構造化するとともに, 事態タイプ(ポジティブ/ネガティブな出来事・状態, 入手・利用等の行為など)や事実性情報(当該事態の時間情報とそれに対する話者態度)といった意味情報を解析する経験マイニングを開発した. 20年度の具体的成果は次の4点である.(1)評価極性知識獲得の大規模実験 : 事態タイプのうち, とくに「遅刻する, 炎症が治まる, 錆が出る」など, 評価極性を持つ出来事に関する知識の獲得に注力し, 大規模なWeb文書コーパスからこれを獲得する実験を行った. その結果, コーパスのサイズを大きくすると, 獲得できる知識の精度, カバレッジともに劇的に向上に, 最終的に1.6億文のコーパスから75以上のカバレッジを85以上の精度で獲得できることが確かめられた.(2)事実性解析モデルの洗練 : 事実性解析については, 2007年度の成果をベースに, 事実性タグ体系の見直しと訓練データの拡張を行った. また, 文中で隣接する事態表現の事実性の間に依存関係があることに着目し, これをFactorial CRFでモデル化することによって解析精度を向上させることができた.(3)公開デモサイト「みんなの経験」の開発 : 以上の成果を利用し, 文書集合から実際に経験情報を抽出し, データペース化するシステムを開発するとともに, これを最近1年半分のプログ記事(約1億5千万記事)に適用し, 約5千万件の経験情報からなる経験データベースを構築した. このデータベースは, 今年度新たに開発した公開デモサイト「みんなの経験」で検索できるようになっている. 同サイトは, プログデータの利用契約の締結に時間を要したが, 2008年12月上旬に無制限一般公開できる運びになっている.(4)民間への技術移転 : 大手Webポータルサイト「@nifty」を運営するニフティ株式会社と連携し, 同社のサービス業務に経験マイニングの技術を導入する準備を進めた.
著者
奥島 葉子 梅田 正明
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

昨年度までに得た結果から、栄養源などに応答した根の伸長を制御する根端分裂組織での細胞増殖に、オーキシンによるCDKB2タンパク質の安定性制御が関与する可能性が示唆された。そこでレポーターラインを用いて根におけるCDKB2の領域特異的な発現様式を解析したところ、CDKB2タンパク質は分裂領域でのみ発現して伸長領域では全く発現しないのに対し、CDKB2遺伝子は分裂領域だけでなくそれより基部側の伸長領域の一部でも発現していることを見出した。これらの結果から、CDKB2タンパク質が伸長領域よりも基部側では蓄積しないよう特異的に制御する機構が存在し、さらにこの機構が分裂サイクルからエンドサイクルへの移行の誘導に関与する可能性が考えられる。さらに、MG132処理によっても伸長領域でのCDKB2タンパク質の蓄積が確認できなかったことから、CDKB2の蓄積はユビキチン-プロテアソーム系による分解制御のみではなく、別のタンパク質レベルの制御機構によっても制御を受けている可能性が考えられた。その制御機構の一つとしてタンパク質の安定化が考えられるが、CDKB2タンパク質はSUMO E3リガーゼであるHIGH PLOIDY2(HPY2)によってSUMO化されることで安定化制御を受ける可能性が示唆されている。そこで、HPY2を伸長領域で異所的に発現させる形質転換植物体を作出した。今後、この形質転換体におけるCDKB2の発現様式および根の発達に及ぼす影響を詳しく観察していく予定である。
著者
横矢 直和 竹村 治雄 神原 誠之 山澤 一誠 大隈 隆史 荒木 昭一
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.現実世界と仮想世界の幾何学的位置合わせ拡張現実環境を構築するための最も基本的な課題である現実世界と仮想世界の位置合わせ問題に関して、複数の基本手法を開発した。具体的には、(1)ステレオカメラで取得した現実世界の映像からのマーカと自然特徴点の自動切換え追跡に基づくビジョンベース手法、(2)ジャイロセンサを併用することによる位置合わせのロバスト化手法、(3)赤外線ビーコンやRFIDタグのような環境インフラと歩数計測を用いるセンサベース手法、(4)屋外においてGPSとジャイロセンサを併用する手法等である。2.現実世界への注釈情報の付加現実世界の特定の場所・物に関する注釈情報を提示するためのユーザインタフェースの研究を行い、ユーザの眼前の実物体に対するオブジェクト名の重畳表示とユーザが注視している物体に対する詳細情報の提示からなる2段階情報提示法を開発した。またネットワーク環境において実時間で注釈青報の追加・更新・引用を行うためのネットワーク共有型注釈データベースの設計・実装を行い、複数のユーザが場所に依存した情報の実時間での発信と共有を行うための基本的な枠組みを確立した。3.プロトタイプシステムの開発上記1、2の成果を統合して着用型拡張現実感システムのプロトタイプを複数開発し、実験を通して機能実証を行った。開発したシステムではいずれも、現実世界の映像に注釈を重畳合成したものをユーザに提示するビデオシースルー型拡張現実感方式を採用した。最終的には、屋内外無線ネットワーク環境(IEEE802.11a及びb)での技術デモを行い、着用型拡張現実感システムの可能性を世に示した。