著者
西田 亮介
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.596-598, 2018-06-15

近年,密接になっている情報化と政治の関係について簡潔に概観する.SNSなどが身近なものになり,また選挙といった政治的選択に付随する情報収集における重要な存在になるなかで,SNSを使った政治的介入に対する懸念が高まっている.これらの主題を扱うにあたって,世界的に問題視されている近年のケンブリッジ・アナリティカ等の事例を紹介する.その後,技術的な規制は不可能ではないが,言論の自由といった民主主義国固有の前提条件を毀損しかねないという懸念やディジタル・ゲリマンダリング等の議論に言及し,近い将来の国内における懸念事項として憲法改正の国民投票運動の例を挙げた.
著者
太田 憲 室伏 広治
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.1228-1234, 2014-10-15

スポーツの研究によって運動スキルの理解が進んでも,そのスキルをヒトに伝達・伝承することは必ずしも容易ではない.この問題に対応するため,まず運動スキルを数理的に解明することが重要であるが,スポーツのような運動の場合,そのスキルは身体や用具のダイナミクスに強く拘束されるため,ダイナミクスベースで運動スキルを記述した.そして,この運動スキルの数理的な理解に基づいた運動スキルの可視化やその伝達方法の開発を行っているが,その数理をスキル獲得の支援に結びつけるフレームワークをサイバネティック・トレーニングと呼んでいる.ここではハンマー投競技向けのスキル獲得支援システムについて紹介する.
著者
和田 勉
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.393-396, 2020-03-15

スリランカの学校を訪問視察した報告を記す.Vishaka Balika Vidyalaya,Sapugaskandaは小中高一貫の女子校であり,コンピュータ教室での授業を見学した.授業はシンハラ語と英語が併用されている.Saegis Campusは外国の大学の国内校・専門学校・外国語学校を兼ねた学校であり,CS, IT, 経営,ビジネスなどのコースがある.Mahinda Rajapaksa CollegeはSenior Secondary卒業後に入学する学校でありUniversityへはさらにその後に入学する.韓国の援助で作られたICT教室がありMicrosoft Showcase Schoolに選出されている.
著者
稲葉 利江子
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.428-431, 2019-04-15

本稿は,大学ICT推進協議会(AXIES)が2017年度に実施した日本の高等教育機関等におけるICT活用教育の推進に関する悉皆調査の結果を基に,大学においてICT環境の導入状況を紹介したものである.特に,LMSとeポートフォリオの導入状況について概要を述べたあと,前回調査から2年間でどのような変化が見られたのかについて説明を行った.具体的には,前回調査と比較し,「入学手続きシステム」と「機関が提供している公式SNS」の導入率が増加している傾向にあることが明らかとなった.これは,入試方式の変化や大学広報のSNS利用などの社会的な変化に伴い増加していることが推察される.その他の悉皆調査の詳細結果については,AXIESのWebサイトを参照いただきたい.
著者
齋藤 衛
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.468-474, 2013-04-15

日本国内におけるDDoS攻撃とその対策の状況と,これから解決すべき課題について紹介する.攻撃については,日本におけるDDoS攻撃の変遷,DDoS攻撃の発生件数,攻撃規模の変化について触れ,対策の状況では,多くのISPで提供しているDDoS攻撃対策のサービスについて概観した後,DDoS対策の限界と副作用について述べる.最後に,国内ISPのユーザ同士で互い攻撃しあうような状況が,より大規模に発生した場合,その対処において解決すべき,これからの課題を提示する.
著者
世永 玲生
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.1106-1110, 2016-10-15

いわゆる「ソシャゲ」の歴史は浅く,まだ10年もたっていない.一大産業となっているこのビジネスモデルは,「3つの行動」を元に設計された,実に合理的な仕組みを持っている.本稿では,筆者の家庭用ゲーム・スマートフォンアプリ・ソシャゲでの経験を踏まえ,その歴史と構造について述べる.黎明期からどのようにソシャゲが進化し,各ジャンルが成立し,そして現在の形になっているか,またこれから先ソシャゲはどうなっていくのかにも触れさせていただいた.
著者
和田 雅昭
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.222-225, 2019-02-15

マリンITの取り組みにより,これまでにリアルタイムデータの活用,コミュニティ単位でのデータの共有による海洋環境や水産資源などの過去と現在の見える化を実現してきた.しかしながら,水産業の発展のためには,コミュニティの枠を超えたデータの共有によるビッグデータの生成と人工知能の活用による未来の見える化が不可欠である.本稿では,ビッグデータ生成のための仕組みづくりを紹介し,持続可能な水産業を展望する.
著者
河原 達也 筧 捷彦 和田 勉 久野 靖 辰己 丈夫
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.270-277, 2016-02-15

2015年8月末,本会の元会長であり,現在は日本学術振興会理事長である安西祐一郎先生へのインタビューが行われた.安西先生は,現在は文部科学省に設置された高大接続システム改革会議の座長である.本会からは,河原達也(教育担当理事/京都大学),筧捷彦(教育委員会委員長/早稲田大学),和田勉(初等中等教育委員長/長野大学),久野靖(会誌編集委員/筑波大学),辰己丈夫(会誌編集委員/放送大学),および事務局から後路が参加した.
著者
細馬 宏通
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.4-7, 2017-12-15

いまやSNSは多くの人にとって身近なネットワークになっている.その中で,Twitterは,タイムラインに短い文章を埋め込むことができ,不特定多数に開かれており,各参加者が自他の発言を独自のタイムライン上に表示し,書いたり読んだりすることができる点で独自の読み書き環境である.そこで起こる「攻撃的な発言」や「嫌がらせ」に対して運営側は近年,対処を迫られている.多様な発言を分類する明快な倫理的基準を作るのは難しい.重要なことはTwitter Japanの措置がどのように行われ,どのような倫理的判断がそこで行われたかを明快にすること,また,基本的にアカウントの凍結は永久凍結ではなく,一時凍結を原則とし,倫理的基準に関する議論の推移によってアカウントを再び復活できるようにしておくことである.SNSという特定の会社が運営する発言環境や執筆環境が,驚くほど多くの人々によって利用されている現在,そこで行使される倫理的基準は,単なる一会社の判断基準であるにとどまらず,多くのユーザの記憶のあり方に関わっている.
著者
小原 格 中野 由章
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.865-869, 2020-07-15

今までの大会や研究会においても初等中等教育機関の教員が発表することはあったが,平日に休むことや,公立学校教員の身分上の制約などが障害になっていた.そこで,情報処理学会第82回全国大会において,土曜日,および,午後に行われる「中高生情報学研究コンテスト」に先立つ形で「初等中等教員研究発表セッション」を企画し,8名の研究発表が予定されていた.しかしながらコロナ禍により中止となり,このままこれらの研究成果が埋もれてしまうことは,本会や初等中等教育にとって大きな損失になってしまうという危機感の下,本稿では,発表予定者の発表内容を簡単にまとめて記録に残すとともに,知識や実践の共有を図ることとした.
著者
若宮 正子 中野 美由紀(インタビュア)
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.526-534, 2019-05-15

超スマート社会の後期高齢者の在り方を自ら体現され,2019年ソフトウェアジャパンアワードを受賞された若宮様のインタビューです.人生百年時代に超スマート社会を楽しむため,ご自身の愉快で挑戦的な体験談,経験に基づいた人生の秘訣を飾らぬ言葉で語っていただき,そして,ユーザ目線から情報技術者,研究者への温かいコメント,ご要望を頂戴いたしました.
著者
柳澤 大地 西成 活裕
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.570-573, 2017-06-15

本解説では,セルオートマトンを応用した群集運動モデルの一つであるフロアフィールドモデルについて解説する.セルオートマトンは時間・空間・状態量が離散で,ローカルルールによってアップデートが行われる数理モデルである.フロアフィールドモデルは,セルオートマトンの状態として人がいる・いないの2通りを考え,目的地までの距離と視野の効果を2つのフロアフィールドとして導入したもので,退出におけるクラスター形成や双方向流におけるレーン形成といった実際に観測される現象のシミュレーションを簡単に行うことができる.フロアフィールドモデルはシンプルであるがゆえの長所と短所があるが,本解説ではその議論も行う.
著者
簗瀬 洋平
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.134-141, 2018-01-15

Unityはもっともメジャーなゲームエンジンとして知られていますが,ゲームのみならず建築,医療,自動車,メディアアートなどさまざまな分野で使われており,研究でもバーチャルリアリティを始めとするインタラクティブ分野ではデモンストレーション作成などで数多く使われています.本稿ではUnityについての説明に加え,インストールから簡単なアプリケーション作成までを解説します.
著者
秋葉 拓哉 稲葉 一浩
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1198-1201, 2015-11-15

20年の歴史を持ち「なんでもあり」で有名な ICFPプログラミングコンテストにて,今年,日本チームが優勝と準優勝を達成しました.ICFPプログラミングコンテストの魅力や各チームの戦術を紹介します.
著者
橋本 智志
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.1111-1116, 2016-10-15

家庭用ゲーム産業は1970年代の誕生以来,質的にも量的にも劇的な進化を遂げてきた.本稿では各プラットフォームに見られた特徴を世代毎に俯瞰することで40数年という短い期間に観測された激しい変遷を追い,プラットフォームビジネスの態様を知ることを目的とする.
著者
竹村 昌敏 今泉 英明
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.592-595, 2018-06-15

平成30年の診療報酬改定にオンライン診療が正式に認められ,今後遠隔医療が普及していく流れは不可避なものなった.本稿では,次世代医療として,この遠隔医療とその先の未来に実現される人工知能(AI)に基づく医療技術に関して概説する.遠隔医療に関しては,遠隔医療が発展してきた背景を紹介した上で,大きく医師と患者(DtoP),医師と医師(DtoD)の2種類の遠隔医療形態の利点・欠点を整理し,目指すべき遠隔医療の形を示す.更に,平成30年4月に米国食品医薬品局についに認可された初の機械学習に基づく医療機器を例に,人工知能が活用される医療領域に関して説明し,来たる将来の医療に関して論ずる.
著者
土井 賢治
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.971-973, 2018-10-15

深層学習の画像識別分野への適用事例として,ラーメン二郎の画像から提供店舗を識別するモデルを作成した際の具体的な作業項目や勘所を紹介する.学習データの収集および分類工程においては, クローラーで収集した画像に対するクレンジング処理について重点的に解説する.モデルの学習においては, モデルの識別精度向上につながる各種手法(ファインチューニング, データ拡張,モデルアンサンブル)について重点的に解説する.学習したモデルの評価においては, モデルの各種評価指標の解説および, 作成したモデルの具体的な識別精度を提示する.
著者
松尾 真一郎
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1082-1087, 2015-10-15

暗号技術は情報を守るだけでなく,新たなサービスを実現するためにも利用される.その代表例としてお金を暗号技術を使って表現する電子マネー技術がある.本稿では,1980年代以降の初期の電子マネー技術の検討から,ここ数年話題になっているBitcoinを代表するディジタル通貨について概要を述べると同時に,ディジタル通貨が今後ネットワーク時代の経済を支える新たなインフラストラクチャーになるために,暗号技術をはじめとする諸技術がどのように整備され,発展される必要があるかを述べる.
著者
対馬 かなえ
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.849-854, 2016-08-15

本稿は,プログラミング初心者を対象としたプログラミング入門である.Racketという言語を用いて,未完成のゲームを完成させながら,プログラミングの基礎となるいくつかの要素を学んでいく.前編では,まずRacketのプログラミングの始め方を解説し,プログラムを少し変更して実行結果が変わる体験をしたのち,ゲームの世界を成り立たせている構造体について学ぶ.