著者
毛利,勝廣
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, 2001-12-10

名古屋市科学館で行った特別展「宇宙展2000」の中で, 10倍づつ視野を広げながら宇宙の広さを実感する展示,「パワーズ オブ テン」を制作した。展示物の前から出発して宇宙の果てまでを一度に体験できるこの展示は,教育的に大変効果が高いが,その制作は困難で,1977年にアメリカで映画として制作されて以来,本格的な制作は行われてこなかった。今回はその後の最新の宇宙の知見や観測データに基づき,さらに3次元コンピューターグラフィックス(3DCG)を用いることにより,当時はアニメーションによる想像図として制作せざるを得なかった部分についても,科学的に可視化を行った。パネルと動画を組み合わせた展示は,この種の学習に対しては新しい方法であり,大きな教育効果を上げることが出来た。本論では,その範囲の広さから旧来のメディアでは教育が困難であった,宇宙の広さを学ぶための天文教材の開発手法と,科学館特別展での社会教育への利用を通して,その有効性および意義について検証する
著者
戸田 淳
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 = Journal of the Japan Information-culture Society (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.49-54, 2010-09-07
参考文献数
18

インターネット広告は,「広告」と呼ばれていながらもその本質は従来の広告とは大きく異なるものであることを,その歴史研究を通じて明らかにした。なぜインターネット上で広告ビジネスが展開されるようになったのか。その後に生じた広告主やインターネット利用者の姿勢の変化が,広告のあり方にどのような影響を及ぼしてきたのか。こうした点に着目し,わが国のインターネット広告の歴史を検証した。その結果,今後の広告活動においては,その広告効果は広告を掲載するメディアの集客力によって決まるものではなくなり,広告メッセージそのものがコンテンツとしてどれだけの魅力を持っているかにより決定されるものとなっていくであろう,という結論が得られた。
著者
松本 多恵
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学研究
巻号頁・発行日
no.6, pp.25-32, 2015-11-10
著者
謝 小建
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.48-55, 2015

本論文の目的は、オバマ大統領のプラハ演説をどのように報道していたのかを明らかにすることである。特に、「道義的責任」、「広島・長崎」、「北朝鮮」、「中国」という四つのキーワードに焦点を当て、批判的言説分析論を用いて、体系機能文法という分析ツールを利用し、テクスト分析を行った。本研究を通して、論説委員が如何にしてプラハ演説の内容を主観的に取り上げ、イデオロギー的なコメントを出していたのかが明らかになった。
著者
辻本 篤
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.104-112, 2002
参考文献数
33

経営学のリスク・マネジメントを検討する際には,まずその検討範晴とリスク発生要因,管理可能性等の如何を設定しなくてはならない。本稿では,ナレッジ・マネジメントに代表されるような企業組織システムをリスク発生環境の生産要素として検討範曙発生要因とし,管理可能要素とする。企業組織情報を効率的に集約・共有化し処理していく為のシステム構築は,当該機械資本と人的資源(知的資本)とのコンビネーションにおいて効果的な結合を果たさなければ,労働生産性低下,利潤率低下,また言い換えるなら利潤極大化への企業活動の妨げになるというリスク環境を招く可能性があるという事を指摘しようとするものである。特に検証方法としては認知科学や心理学で援用されている一般帰納推論の確証度と,経営分析の中の損益分岐点分析を中心に行った。
著者
唐木田 健一 Ken-ichi KARAKIDA 富士ゼロックス株式会社ITデバイス研究所 Intelligent Devices Lab Fuji Xerox Co. Ltd.
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 = Journal of the Japan Information-culture Society (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.29-36, 2001-12-10
参考文献数
17
被引用文献数
1

水越伸は,その著書『メディアの生成』のなかで,無線電話という新しい技術がラジオ放送という新しいメディアに結実していく過程を多面的に記述した。そこにおいては,新しいメディアは,まずは既存のメディアの延長上でとらえられ,社会的に共有される。しかしながら,それが展開されるうちに,当初のビジョンは実態とのズレを生じる。そして,そのズレを原動力として,新しいメディアの生成が導かれる。本稿では,水越のこの観察を紹介するとともに,それが新しい秩序(思想,理論,様式,など)の生成機構に関して高い一般的意義を有すること,とりわけ自然科学における基本理論の形成過程ときわめてよく対応することを示した。また,このような創造過程に関わる日本社会の問題点を論じた。Shin Mizukoshi described in his book, "Formation of Media" (in Japanese, Tokyo, 1993), the detailed process that a new technology, wireless telephone, developed into a new medium, radio broadcasting. In this process, the new technology was first accepted in the framework of the existing media, and shared in the society. However, in the development process, the first vision about the technology showed inconsistencies with the actual situation, which drove the technology into the formation of the new medium. The present paper shows the general significance of Mizukoshi's observation, in particular its great similarity with the process of the formation of fundamental theories in sciences. The problems of Japanese society concerning such creation processes were also discussed.
著者
梅本 正敏
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会全国大会講演予稿集 (ISSN:1341593X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.58-61, 1998-11-28

昨今、新関・テレビ等を賑わせている「ICカード」とは一体どのようなもので、ICカードの普及が意味するものは何か。現状のICカードの利用動向から今後の方向性を考察し、社会におけるICカードの位置付けを明らかにする。
著者
立石 祥子
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.27-34, 2014-12-25

本研究の目的は,日本のパブリック・ビューイング文化の成立過程と構造を明らかにすることである。起点となる2002年には,放送主体,イベント主催者のFIFA,自治体という三者の連携が機能せず,結果として第四の主体ともいうべき一般市民により集団視聴形態が多様に広まった。本研究では当時の参加者に聞き取り調査を行い,日本のパブリック・ビューイングが,特定の集合的アイデンティティに回収されない構造を持つ可能性について言及した。
著者
遠山 茂樹
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.11-18, 2011-07-31
被引用文献数
2 1

地域活性化を目指す地域SNSに関する研究の多くで分析の鍵概念に社会関係資本(social capital)が用いられているが,「信頼」「互酬性の規範」「ネットワーク」などの性質をもつ社会関係資本をいかに構築して蓄積するかについての手法や過程に関する研究はあまり見られない。本稿では,社会関係資本を構築する地域住民間の相互作用の中核を「社交」と捉えて,高知県内でサービス提供されていた「まるごと高知SNS」のケーススタディを通して,地域SNSにおける社交の成立について検証している。結論としては,地域SNSは,現実社会の地位や役割とは離れた距離感において平等な関係性を構築し,参加した地域住民間において健全な「社交」の成立可能性があることを提示する。同時に地域SNSにおけるトラブルの検証から,社交的相互作用の阻害要因などについても分析を試み,地域SNS運営側か考慮すべき3つの事項について提示する。
著者
稲垣 耕作
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.11-17, 2005-10-31
被引用文献数
1

意思決定の基礎理論は,一方で民主主義社会の根本原理にかかわるものとして,社会科学理論の大テーマとなってきた。また他方では,アルゴリズム的な知能の機械化の根幹をなす問題として,近年の必要が増していると思われる。本論文ではこの問題をArrowの一般不可能性定理を参照しつつ,機械知能のゲーム理論的研究の一環として分析する。囚人のジレンマ,ムカデのゲーム,投票のパラドックスなど,知的で合理的な判断が望ましくない解を与える実例が含まれる。限定合理性が完全合理性を生まないだけでなく,根本的に完全合理性が成り立たない。類似のパラドックスはパターン認識や人工知能分野において頻繁に出現する。今後の人工知能型情報処理機器や知能ロボットなどの開発に関連して,情報文化学的にこの種の問題意識を明確にもつ必要があることを指摘し,知能の不完全性のテーゼを提唱する。
著者
中村 隆志
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.31-38, 2007-09-15
被引用文献数
4

本研究は「ケータイのディスプレイを見る」という日常の当たり前となった行為に注目し,その使用場面と役割について考察する。ケータイは,外出先に携帯して行く通信機という役割と同時に,個人専用の通信回線という役割を併せ持つことから,家庭内を含め,多くの場所で使用されている。人々は様々な場面において,着信がないにも関わらず,自発的にふとケータイのディスプレイを見たくなる場合がある。この行為を理解するため,大学生に2つのアンケート調査を行った。1つめはディスプレイを見たくなる場面を自由記述で,もう一つはいくつかの場面ごとに使用したくなる欲求の強さを量的に回答してもらった。前者のアンケートからは,多くの場面で様々な使用法がされていること,使用者は自らの心証や態度をケータイを通してアピールする場合があること,後者からは,使用者は居合わせた他人との距離・視線・性差などの要因に影響されてケータイを使用していることが示唆された。これらの結果は,現実空間において「ケータイのディスプレイを見る」という行為が,新しい非言語コミュニケーションとして浸透してきていることを推察させるものである。
著者
村舘 靖之
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.5-12, 2014-08-31

パレートの政治理論・経済理論・社会理論と,ソシュールの言語理論を情報文化という観点から統一的に論ずることが課題である。19世紀末から20世紀初頭にかけてスイスで活躍したパレートとソシュールの理論は,価値のシステムに関する共時的・通時的理論を論じようとした点で共通性がある。言語と貨幣,制度と情報文化という観点からバレートの経済学・社会学に関する著作と,ソシュールの言語学に関する議論を比較検討することを試みる。パレート社会学における不変なるものと可変なるものは,それぞれ残基と派生と呼ばれている。これがソシュールの言語学における語根と派生語の関係に対応していることはよく知られている。本稿は,価値のシステムという観点からパレートの一般均衡理論,エリートの周流論,一般社会学とソシュールの一般言語学を比較し,その共通性を明らかにしたい。
著者
西垣 通
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, 2012-12-15
著者
平野 孝治
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.65-73, 2008-11-30

日本で発表された中国メディア研究について,政治コミュニケーションの視座から分析を行い,その傾向と問題点を明らかにした。マスメディアと政治制度,イデオロギー,中央と地方の関係,情報発信の過程をテーマに周囲から内部へと段階を追って考察を試みた。また近年注目されるインターネット研究にも考察を試みた。その結果思想改革を目的とした報道機関の発する情報は,教育的なものであることが明らかになった。しかし,これは政権側の情報統制によって思想改革が成功するであろうという希望であって,実際に成功したかどうかは明らかになっていない。また,中央と地方の枠組みでメディア研究を行なう際には,地政学的,政治経済学的な視座で考察を行わなければならない点を明らかにした。そして,マスメディアと政府の関係が,今まで既存メディアが経済や政治的な要因によって変化が生じていたのとは異なり,インターネットの出現によって,政治エリートとマスメディアの関係が根本的に覆され,お互いの利益のために利用しあう関係へと変化したこと,インターネットの内容に左右される政府という新たな状況が形成されている点を明らかにした。
著者
細内 信孝
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.71-77, 1994-07-03

生活者がモノとコトで情報創造する'90年代のソフトウェーブ社会(情報化社会)において新しいマーケティングの在り方を考察し, 情報財によるマーケティング展開として次のようなことが判明した。情報財マーケティングとは, 情報発信者(企業又は生活者)と情報受信者(生活者又は企業)の意味(情報)の共有化をいい, 企業と生活者が相互に商品のコンセプトや価値を共有し, そのコンセプトや価値に共振, 共鳴しながら感性エリアを増幅していく一連の生活情報の共鳴活動である。この新しい生活文化に根ざした共振, 共鳴による情報活動を情報財マーケティングとした。
著者
平澤 洋一
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-26, 1997-09

文化の発達につれて民族は色彩基本語の数を増やしていき, 文化度と主要色彩語との間には高い相関性がある, とバーリン・ケイはいう。また, このような普遍論には相対論からの反論が出され, 論争を繰り返してきた。本稿では, 文献調査と実態調査をもとに, 意味論の立場から外界と認知と意味領域の問題を再検討し, 普遍論では説明のつかない言語事実を提示した。そして, 日本語の色彩系列では「青」が鍵になることをつきとめた。
著者
平澤 洋一
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 = Journal of the Japan Information-culture Society (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-26, 1997-09
参考文献数
6

文化の発達につれて民族は色彩基本語の数を増やしていき, 文化度と主要色彩語との間には高い相関性がある, とバーリン・ケイはいう。また, このような普遍論には相対論からの反論が出され, 論争を繰り返してきた。本稿では, 文献調査と実態調査をもとに, 意味論の立場から外界と認知と意味領域の問題を再検討し, 普遍論では説明のつかない言語事実を提示した。そして, 日本語の色彩系列では「青」が鍵になることをつきとめた。