著者
八幡 耕一
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.3-10, 2013-12-15

本稿は,情報文化学の理論的深化を目的に,「ハクティビズム」と呼ばれるサイバー空間を中心に展開される集合的な社会運動を事例として,情報文化空間をめぐる主体間のせめぎ合いについて考察する。その際,フランスの歴史家・思想家であるミシェル・ド・セルトーが論じた,日常的実践にかかる「戦術」の概念をその理論的な枠組みとして援用する。これにより,情報文化空間をめぐる主体間の力学や駆け引き等についてさらなる理解を試みる。本稿の考察は,ハクティビズムがセルトーのいう「戦術」を越えたところにある,アノニマスな情報文化主体による抵抗あるいは対抗の実践として理解可能であること,そして情報文化空間の公益性(とその変質)がハクティビズムと関係することを明らかにする。本稿の考察は同時に,ハクティビズムも含む情報文化空間内での主体間のせめぎ合いをさらに探究していく必要性を提起する。
著者
中村 隆志
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.12-19, 2008-08-01
被引用文献数
3

「ケータイのディスプレイを見る行為」は,ケータイが本来持っている通信機能を越えて,現実空間での非言語的コミュニケーションに様々な役割を果たしている。この役割をさらに明らかにするため,大学生にアンケート調査を行った。公共空間において,連絡すべき用件があるわけでも,着信があるわけでも,すぐに見たいコンテンツがあるわけでもないのに,ケータイを取り出したくなるような経験を思い出してもらい,その理由を尋ねた。得られた回答り,「ケータイのディスプレイを見る行為」は,従来から存在する小物と同じようにケータイを利用する場合と,「誰かとつながっていること」を演出する狙いでケータイを使用する場合との,大きく2通りに分けられた。もうひとつの調査では,公共空間でのケータイあるいは他の小物の利用意向を尋ねた。その結果,被験者は,「誰かとつながっていること」を周囲にアピールする必要性が相対的に高い状況において,ケータイを取り出して操作する傾向にあった。この使用法は,ユーザが多重文脈性を「まとう」かのようにケータイを利用することがあると解釈可能であり,現代の対面的コミュニケーションに影響を与えていると考えられる。
著者
設樂 剛 桑原 武夫
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 = Journal of the Japan Information-culture Society (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.42-51, 2011-07-31
参考文献数
33

本研究は,ブランディングにおける物語の効果を実証的に検討するものである。ここではロレックスに焦点をあて,物語が,生活者の好感度および購買意欲の変化に与える影響について,実験的方法を用いて明らかにした。物語論の観点から,物語の構成要素として,語り手,世界観,登場人物が設定された(本論では,語り手に,ロレックス社社長,大学教授,フリー・ライターを,世界観に,社会的責任,オープンな革新性を強調する世界観を,また同社を支持する登場人物として,著名人集団,不特定多数のクラウドを配した)。これら各要因と水準を組み合わせ,計12条件の物語を作成した。本研究では,語り手,世界観,登場人物を説明変数とし,生活者の好感度と購買意欲を目的変数として,3元配置分散分析を行った。その結果,好感度に対する効果として,語り手および登場人物で主効果が,語り手と登場人物で交互作用効果が有意であった。また購買意欲に対する効果として,世界観で主効果が有意であった。物語ごとの効果の相違が明らかになり,相対的に小さな効果にとどまる物語が特定される一方,同社が現在採用している物語以外に,より効果の高い物語が存在することを示した。
著者
西本 紫乃
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 = Journal of the Japan Information-culture Society (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.45-52, 2011-12-13
参考文献数
32

情報の自由な流通について制約のある中国において,近年インターネットが「公共圏」として「市民社会」の発展をうながすか,という可能性に関心が高まっている。ただし,少なからぬ研究者によって「市民社会」の概念については中国社会の特質を考慮すべきであるとの指摘がなされている。本稿では,中国のインターネット空間における流行語に着目した。インターネット・ユーザーがやりとりする象徴的な言葉から,その公共性と世論形成についての実態をさぐり,中国社会の文化的文脈の影響と「市民社会」の生成の可能性について考察する。
著者
村上 幸雄
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.42-52, 1997-09
被引用文献数
1

A.Toffler's "The Third Wave" means the opening of a new erea of information culture. On the other hand, in this paper, "The Fourth Wave" overlapped with the preceding third wave is predicted. In this coming Fourth Wave, we ourselves should change into a new creative information source, in other words, a new human race. In order to achieve this objective, the author suggests, at the end of this paper, the importance of putting practical use of orthomolecular psychiatry as the most powerful and leading methodology.
著者
村上 幸雄
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 = Journal of the Japan Information-culture Society (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.42-52, 1997-09
参考文献数
3
被引用文献数
1

A.Toffler's "The Third Wave" means the opening of a new erea of information culture. On the other hand, in this paper, "The Fourth Wave" overlapped with the preceding third wave is predicted. In this coming Fourth Wave, we ourselves should change into a new creative information source, in other words, a new human race. In order to achieve this objective, the author suggests, at the end of this paper, the importance of putting practical use of orthomolecular psychiatry as the most powerful and leading methodology.
著者
緒方 啓孝 小山 嘉紀 岡部 一光 小宮山 哲 張 英恩 藤野 猛士 横田 一正
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 = Journal of the Japan Information-culture Society (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.68-73, 2011-12-13
参考文献数
23

様々な業種において,笑いや笑顔が重要であるとされている。特に介護施設では,職員の笑顔による環境の改善が望まれている。しかし,笑顔を客観的に容易に評価する一般的手法がないため,笑顔を身に付けるための効果的な教育や指導,訓練等を行うことが難しいという問題がある。笑顔の客観的評価の一手法として,画像処理技術を用いた方法があるが,感情の表出の一つである笑顔をICTにより判定を強制することへは批判も見られる。本研究では,介護施設の職員を対象としてICTを利用した笑顔判定を行い,実際に判定を受けた職員に対して意識調査を実施した。特定施設入居者生活介護事業や訪問介護事業所等,それぞれ異なる介護サービスを提供する6事業所の職員を対象に,笑顔判定の実験および質問紙調査を実施した。質問紙調査の結果に対して因子分析・テキストマイニング分析を行った。その結果,笑顔に対して興味・関心を持ち,笑顔への自信や意識の向上,笑顔への興味・関心の向上が確認できた。また,ICTを用いた笑顔判定を職員は楽しみながら行ったことが分かった。
著者
森山 賀文 飯村 伊智郎 中山 茂
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 = Journal of the Japan Information-culture Society (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.6-10, 2008-12-05
参考文献数
9
被引用文献数
1

組合せ最適化問題とは,数多くの組合せの中から最適な解を求める問題であるが,問題の規模によっては現実的な時間内に厳密な解を求めることが困難となる場合がある。このような厳密な解を求めることが現実的に困難になるとき,準最適解を可能な限り高速に求める近似的解法が用いられる。その一つとしてアントコロニー最適化(Ant Colony Optimization: ACO)が知られている。しかしながら,ACOの最も基本的なAnt System(AS)を実装する場合でも,アリの群知能に関する知識が必要であり,それらをシミュレートするために煩雑なコーディング作業をプログラム開発者が行う必要がある。そこで本論文では,そのコーディングの煩雑さを軽減し,一般ユーザでもASを容易に適用できる環境構築を目的として,ACOのためのAnt言語を提案する。提案するAnt言語を巡回セールスマン問題に適用した結果,プログラムのステップ数とファイルサイズの大幅な削減ができ,コーディングの煩雑さを軽減することができた。
著者
木村 めぐみ
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.47-54, 2009
参考文献数
18
被引用文献数
1

イギリス12の諸地域に存在するスクリーン・エージェンシーは今日,映画産業と地域(およびその住民であるオーディエンス)を様々な活動を通して結びつけることで,これまでイギリス映画産業が抱えてきた問題や課題の解決への道を切り開いている。その活動には教育・トレーニング,上映・制作支援,文化・遺産保存などが含まれ,文化政策や放送産業など映画産業に関わる産業との支援・協同関係により,スクリーン・エージェンシーの存在意義である地域・オーディエンスとの連携は,今日のイギリス映画産業の中でも目立った特徴のひとつである。本稿では,このスクリーン・エージェンシーの活動事例を考察しながら,フィルム・コミッションなどの日本における地域の映画組織に示唆を与える意味でも,そうした活動の映画産業への貢献を含む社会的な意義を追究する。
著者
松本 美保 横井 茂樹 安田 孝美
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会全国大会講演予稿集
巻号頁・発行日
vol.10, pp.133-136, 2002

近年では, ウエブサイトを制作するためのソフトウエアも数多く開発され, 基本的な制作ツールやプログラムは操作パレットに組み込まれている.しかしながら, 非営利組織ウエブサイトは, 企業のウエブサイトに比べてデータの性質やテーマの本質に対応した見せ方を行っている事例が少ない.非営利組織は, 個人や民間企業, 国からの支援や資金援助を得ることが不可欠であり, また活動に対する理解と関心を求める必要がある.広いネットワークを利用した情報公開は有効であるが, 運営の目的に対応した情報デザインが行われていない.本論では, 非営利組織ウエブサイトの一般的な情報アーキテクチャを明らかにし, 問題点の整理と解決策の提案を行った.そして, それらの調査結果をもとに, ユーザーによる情報発信の必要性と今後の情報デザインの在り方について考察を行った.
著者
益本 仁雄 宇都宮 由佳
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.87-98, 2000-11-18
被引用文献数
2

筆者らは, 北タイで情報化と経済化の進展の影響による住民の意識, 行動, 生活価値観の変化や共同体の変容について, 1992年から継続研究に取り組んできた。対象の村では, 1996年末の電化を契機にテレビを通して外部の情報が大量に流入し, 村人の情報交換が飛躍的に活発になった。急速な情報化は, 村人の意識, 行動, 生活価値観も変えつつあることを1998-99年に本紙で発表した。今回の論文は, 最近のタイ社会および当該村周辺の生活環境の変化を踏まえ, 意識, 行動, 生活価値観を13項目に整理・追加し, 村人が現在どのように意識し, 電化前後でどのように変わったかについて調査し, さらにタイ社会の「価値観」に関する先行研究である河部論文(1997)の項目についても検討をおこない, 結果を情報文化論の視点から論ずる。電化後の現在, 高収入欲求, 高学歴志向, 労働観, 勤勉性などが村人の意識が高まった。一方, 意識があまり変化しない項目として, 愛想良く暮らすこと, 保守的な意識, 冷静な心, 仏教や精霊信仰等があげられる。生活向上のための高収入欲求の昂進を軸としてその実現手段に有効な項目, 関連性の密接な項目ほど変化が急激で, この軸から距離を置くほど変化が緩慢である。新しい生活情報の流入は, 高収入欲求の昂進させ, 手段的・直接的関係の強い意識・行動・生活価値観が大幅な変化をきたし, 変化した村人の新たな行動を媒介として村文化が変容する, という図式を描くことができる。なお, 河部論文の一部の項目は, 本調査の結果では妥当性が低いと考えられる。
著者
高谷 邦彦
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.49-56, 2008-11-30

本論は,筆者が北海道稚内市で運営しているユーザ参加型ポータルサイト「さいほくネット」のデータをもとに,動画コンテンツを主体としたCGM(ユーザ参加型サイト)によって,地方都市が抱える情報発信の課題を克服する可能性を検討したものである。「さいほくネット」および動画共有サイト「YouTube」でのアクセス解析によると,日本においては主に中高年男性が地域情報の動画コンテンツを閲覧していることから,地方都市においてコストをかけずに地域情報を発信するには,地域の景観や歴史に関する動画コンテンツを制作し,ユーザ参加型のサイトを利用して発信してゆくことが現時点でもっとも有効な手段の一つであることがわかった。
著者
中村 隆志 大江 ひろ子
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.11-18, 2010-09-07
被引用文献数
1

「ケータイのディスプレイを"見せる"行為」を非言語コミュニケーションと捉えて,そのコミュニケーションの実態を調査した。アンケートの結果から,ケータイのディスプレイを見せる側,すなわち「送り手」は,同じコンテンツを共に楽しんで,その評価を「受け手」と共感したいという意向を持っていること,その一方で,ディスプレイを見せられる「受け手」の方は,相手の接近的な意向を酌み取っていることが示された。この結果は,「送り手」と「受け手」の間には,その対面的相互作用において,意味の食い違いが起こりやすいことを示唆する。また,調査結果は,「ケータイのディスプレイを"見せる"行為」と「ケータイのディスプレイを"見る"行為」は互いに影響下にあることを示した。その受け入れられやすさという点では,両者は相補的な関係にあり,秘匿性という点では,両者は相乗的な関係になりうることを指摘した。本稿では,「ケータイのディスプレイを"見せる"行為」を非言語コミュニケーションとして理解することの必要性を主張する。
著者
小川 晴也
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.75-80, 2007
参考文献数
9
被引用文献数
1

本稿の目的は,筆者が前考において示したリスク・コミュニケーションに関する概念装置をツールとして用いることにより,利害関係者の発信するリスク関連情報を分析できることを示すことである。筆者の提示した概念装置は,「パラダイム」,「コンプライアンス」および「フレーム」から成る構造モデルである。リスク関連情報はこれらのカテゴリーに分類できるが,同じ内容の情報でもリスク管理者と利害関係者の間で論点のカテゴリーにミスマッチが生じると,両者の乖離が解消されず利害関係者に不安が生じると考えられる。そこで,本稿においては,筆者がこれまでに提示した概念装置について概説した後, BSE対策見直しの事例を用いて本ツールの有効性を検証する。また, BSE問題に関して,どのような論点の混乱が起きたのかの分析を試みる。
著者
青木 智子
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会全国大会講演予稿集 (ISSN:1341593X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.55-62, 1995-10-28

ボードリヤールは「消費社会の神話と構造」において,商品(モノ)は記号であり,人はそのイメーシを消費しているに過ぎないと主張した。仮に,商品(モノ)そのものより,イメージが消費に関係しているとするなら,商品イメージの説明に莫大な時間と金を投じて制作される広告やコマーシャル,すなわち,広告媒体がマーケティングで果たす役割は想像以上のものとなるはずである。しかも,情報化社会の到来は,私たちに次世代の広告の可能性や方向性を示すと共に,新たなマーケティングの在り方を提言してくれるに違いない。本研究では,広告とマーケティングの関係を踏まえた上で,深層心理学的な見地から,今や人の無意識を反映し,自己実現の道具とも化している商品と,これを促進し,欲望の刺激を試み続ける情報としての広告について分析を試みた。
著者
益本 仁雄 宇都宮 由佳 中野 美雅
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.54-65, 1998-10
参考文献数
13
被引用文献数
3

筆者らは, 1992年以来, 北タイのある農村で情報化が村人と共同体に与える影響と彼らの意識, 行動, 生活価値観などの変容について継続研究を行っている。この村は, 情報流入が極く少量であったが, 1996年末の電化によるテレビの普及を契機に, 爆発的に情報が流入し, 人類の情報に対する歴史的変化の縮図の様相を呈している。電化後1年半経過した最近(1998年5月)の実態の分析結果を以下に示す。情報受信の総件数は, 電化半年後に比べ増加し, 特に口コミの増加が顕著であり, テレビやラジオから新聞・雑誌へのメディア選択の拡大がみられる。受信内容としては村外情報が増加し, 経済・景気, エイズ・衛生, 王室関連など顕著で, 生活商品, ファッションなどが登場して村人の関心領域の拡大を示した。さらに, 「情報」に対する理解や認識が村人に形成されつつあること, 外部情報を積極的に取り入れ商人との売買交渉で対抗するようになったこと, 人の家族の移動が活発になってきたこと, 就労形態・方法や生活価値観に変化がみられること, 周囲の村との所得格差が解消しつつあること, 他方, 村人の一部に情報化に対する拒否反応・過剰適応の存在などが観察された。
著者
小川 晴也
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.47-54, 2006-11-15
被引用文献数
2

本稿の目的は,筆者が前考において提示したリスク・コミュニケーション改善のための「3つの限界」モデルを援用し,BSE対策見直しの事例を基に,リスク・コミュニケーションの構造をモデル化して提示することである。見直し後のBSE対策(米国・カナダ産牛肉の輸入プログラム)は日米両政府間におけるリスク・コミュニケーションの結果と考えられる。そこで本稿においては,米国・カナダ産牛肉に対する輸入禁止〜解禁〜再禁輸までの経緯を概説し,そこでの議論を本モデルにより分析可能であることを示す。また,本モデルを用いることによりリスクに関する議論を整理できることが可能となることを示す一方,議論が混乱する原因を考察し,リスク・コミュニケーション改善の可能性を考察する。
著者
稲垣 耕作
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.3-10, 1997-09
被引用文献数
3

本論文では文明の歴史をネットワークの歴史と重ね合わせる立場から, 文明のネットワーク史観を提案する。現代文明や歴史上の文明を見ると, それらはまさにネットワークによって支えられており, 新たなネットワークが生まれるところに, 新文明が誕生してきたものと考えられる。特に情報ネットワークは一種の複雑系とみなすべきであり, 今後はその創発現象を重視すべきである。また世界情報基盤構想や, 知のネットワークとしての宗教に注目することにより, ネットワークを進化させる普遍思想について本論文では検討する。地球規模の文明の目指すべき方向には, 相互の文化や文明を尊重しつつ, 日本や東洋からも独自の思想を発信し, 文化による平和を希求することが重要であり, 情報ネットワークにおける創発的な方法での文明の進化が求められていることを考察する。