著者
草野 研吾
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1_2, pp.33-38, 2019-10-01 (Released:2019-12-28)
参考文献数
13

QRS幅の広い心機能の低下した心不全症例に対する植込み型デバイス治療として,心臓再同期療法(cardiac resynchronizationtherapy: CRT)は確立された治療法であり,日本循環器学会ガイドラインにおいては,心不全の程度,左脚ブロックの有無,QRS幅,洞調律の有無,ペーシング依存の有無によってCRTの適応が細かく決められている.我が国においては2006年に保険償還され,年々植込み数が増加しているが,CRTに反応しないnon-responderの存在が問題となっている.ここでは,CRT治療の歴史,ガイドライン適応と,non-responderを減らすための進化した現在のCRT治療について概説する.
著者
池田 洋一郎 山口 哲生 山田 嘉仁 篠原 翼 河野 千代子 青柳 哲史 天野 裕子 鬼島 正典 黒瀬 信行 宮本 和人
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.65-69, 2004-10-01 (Released:2010-08-06)
参考文献数
9

小径線維ニューロパチー (small fiber neuropathy, 以下SFN) を認めたサルコイドーシス (以下サ症) の2症例を経験した. 71歳と67歳の女性が当院に紹介され, 2症例とも手足のシビレなどの症状を呈していた. 神経学的所見として, 両側上下肢遠位部に対称性の温痛覚低下を認めたが, 触覚, 関節位置覚, 振動覚は正常であった. 両者に発汗の低下と便秘がみられた. 神経伝導速度と針筋電図検査では異常は認められず, これらの所見は小径線維ニューロパチーに合致していた. 生検皮膚組織の末梢神経のPGP9.5とP75による免疫染色により, 皮膚組織の末梢神経軸索密度が正常と比して有意に減少し軸索障害が有意に増加していることが確認されSFNと確定診断した. 症例1は, ジクロフェナクや塩酸メキシレチンによって, 症例2は, 塩酸アミトリプチリンの投与で症状は軽減された. 従来, サ症の末梢神経病変は脳神経麻痺と多発単神経炎で代表されるとされていたが, この2症例の経験から, これまで考えられていたよりもSFNの合併の頻度は高いことが推測される. サ症にともなう多彩な神経障害の診断において, 神経伝導速度と皮膚生検はその中からSFNを鑑別する有意義な検査方法といえる.
著者
杉崎 勝教
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.71-73, 2009-10-07 (Released:2012-10-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

新たに策定されたサルコイドーシスの新診断基準における呼吸器病変について,旧診断基準との整合性を中心に検討した.一臓器病変に対する評価が従来の診断基準と異なっており,特に呼吸器病変においては組織学的診断への積極的な対応が必要である.TBLBのみでなくリンパ節病変に対する組織学的なアプローチについても十分に考慮する必要がある.
著者
熊本 俊秀
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.25-31, 2008-10-01 (Released:2010-08-12)
参考文献数
19
被引用文献数
1

筋肉サルコイドーシス, 特に腫瘤型における筋崩壊機序は, マクロファージ, 類上皮細胞及びリンパ球などの炎症性細胞が非壊死性筋線維内に直接浸潤してそこに小肉芽腫を形成し, 直接筋線維を崩壊することが主因であり, 機械的圧迫や虚血によるものではない. さらに類上皮細胞やマクロファージ由来のカテプシンB, m-カルパイン, ユビキチンープロテアゾームが筋の崩壊に重要な役割を果たす. 文献を基に急性筋炎, 慢性ミオパチーを呈する筋肉サルコイドーシスについて述べる. これまで腫瘤が四肢全体あるいは体幹の広範囲に進展した腫瘤型の報告例があるが, いずれも長期間にわたって筋力低下及び筋萎縮を認めていない. このことは, 慢性ミオパチーにおける筋の崩壊機構は腫瘤型と異なっている可能性がある. 急性筋炎, あるいは慢性ミオパチーの臨床所見, とくに進行性の筋力低下と筋萎縮を示す筋肉サルコイドーシスの中には皮膚筋炎, 筋炎-オーバーラップ症候群, 重症筋無力症などの自己免疫性ミオパチーと関連したものがある.
著者
内藤 眞
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.93-94, 2010-09-21 (Released:2012-11-07)

肉芽腫は刺激物質に対して生体防御機能を発揮するための新しい組織形成であり,マクロファージ,リンパ球,好酸球,形質細胞などから構成される.炎症巣には化学遊走因子によって多数の単球が動員されマクロファージに分化する.しばしば大型化したマクロファージである類上皮細胞や多核巨細胞の出現を伴う.肉芽腫の形成とその維持にはtumor necrosis factor α,interferon-γ,macrophage colony-stimulating factor,granulocyte macrophage colony-stimulating factor,interleukin-1などのサイトカインや増殖因子の作用が重要である.組織内に菌が侵入するとマクロファージがそれを取り込むが,菌が増殖するとマクロファージも集積して肉芽腫を作り,病変を押さえ込む.炎症が極期を過ぎるとマクロファージは炎症巣内の老廃・壊死物を除去し,種々増殖因子を介して線維芽細胞の増殖や血管新生を促し,肉芽組織で置き換え,さらに病変を縮小させる.このように肉芽腫中でマクロファージは炎症の発生から治癒,線維化の全過程に関与する.
著者
松本 健 高橋 典明 植松 昭仁 大木 隆史 権 寧博 岩井 和郎 中山 智祥 橋本 修
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.171-178, 2012-09-27 (Released:2013-01-23)
参考文献数
20

症例は38 歳の男性.胸部異常陰影,ぶどう膜炎を指摘され紹介受診した.胸部X線検査にて両側肺門リンパ節腫脹,両中下肺野の小結節陰影を認め,TBLBにて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を証明した.緩やかな血清ACE値上昇と小結節陰影の増加を認めていたが,症状や呼吸機能障害を認めず,経過観察としていた.初診時より5年後に偶発的と思われる肺結核症を発症した.入院にて抗結核薬(INH,RFP,EB,PZA)治療を開始した.結核治療中,一時的に血清ACE値低下を認めたが,抗結核薬治療終了後より肺野病変の増悪と血清ACE値上昇を認めた.結核性病変の進展あるいはサルコイドーシスの活動性上昇を疑い,再度TBLBを行ったが結核菌を認めず,サルコイドーシスに矛盾しない所見であった.現在まで経過観察中であるが,無治療にてサルコイドーシスは寛解状態に至った.これまでに結核治療を契機に寛解状態に至ったサルコイドーシスの報告はなく,非常に稀な例であり,文献的考察を加え報告する.
著者
杉野 圭史 仲村 泰彦 鏑木 教平 佐野 剛 磯部 和順 坂本 晋 高井 雄二郎 奈良 和彦 渋谷 和俊 本間 栄
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1_2, pp.51-55, 2017-10-25 (Released:2018-03-09)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は36歳女性.主訴は乾性咳嗽,労作時息切れ.X-8年頃より左下腿腓骨部に皮下腫瘤を自覚したが放置.X-4年8月に顔面神経麻痺,右眼瞳孔散大が出現し,PSL 40 mg内服により約1 ヶ月で治癒.その後,原因不明の頭痛,難聴,嗅覚異常が出現.X-2年11月頃より乾性咳嗽および軽度の労作時息切れが出現.X-1年4月の健康診断にて胸部異常陰影を指摘され全身精査の結果,全身性サルコイドーシス(肺,副鼻腔,神経,皮膚,肝臓)と診断された.挙児希望およびステロイド恐怖症のため,吸入ステロイドを約1年間使用したが,自覚症状の改善は得られず中止.当科紹介後にご本人の希望で漢方薬(人参養栄湯7.5 g/日,桂枝茯苓丸加薏苡仁9 g/日)を開始したところ,開始4 ヶ月後より咳嗽および労作時の息切れはほぼ消失,開始6 ヶ月後には,胸部画像所見,呼吸機能検査所見の改善を認めた.その後も本治療を継続し,現在まで3年間にわたり病状は安定しており,再燃は認めていない.
著者
宮崎 泰成
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.11-17, 2014-10-10 (Released:2015-02-02)
参考文献数
22

【要旨】過敏性肺炎は,特異抗原を吸入した際にアレルギー反応を起こす間質性肺炎である.本疾患の40–80%が慢性で,5年生存率は45%と特発性肺線維症と類似し予後不良であるため,慢性・線維化機序の研究を行った.急性過敏性肺炎では,Th1ケモカイン・サイトカインにより肉芽腫と胞隔炎を形成する.一方で,慢性におけるTh1/Th2細胞の役割は明らかではなかったので,臨床検体および動物モデルで検討した.血清およびBALFでは,Th1ケモカインCXCL10は急性で増加し,再燃症状軽減型,潜在性発症型の順に有意に減少を示し,逆にTh2ケモカインCCL17は急性で減少し,再燃症状軽減型,潜在性発症型の順に有意に増加していた.潜在性発症型に多いUIPパターンでCCL17/CXCL10陽性細胞比が高く,同様にレセプターであるCCR4/CXCR3陽性細胞比も有意に高かった.慢性化・UIPパターンになるに従ってTh1/Th2バランスがTh2ヘシフトしていることが分かった.慢性過敏性肺炎マウスモデルで,A/Jマウス(Th2優位)とC57BL/6マウス(Th1優位)において比較したところ,A/JマウスではTh2サイトカインの上昇とともに線維化病変が強く起こった.以上より,過敏性肺炎ではTh1/Th2の免疫バランスがTh1からTh2にシフトし,慢性・線維化していた.Th2へのシフトを調整するような薬剤が慢性・線維化を抑制する可能性が示され,今後の治療戦略に役立つと考えられる.
著者
岡本 祐之
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.47-51, 2013-10-01 (Released:2014-11-10)
参考文献数
24

サルコイドーシスの皮膚病変の基本的治療は副腎皮質ステロイドホルモン薬(ステロイド)の外用であるが,強力な薬剤でも効果がないことがある.そのため,ステロイド以外の局所あるいは全身療法が試みられている.タクロリムス軟膏はステロイド外用薬の副作用が出やすい顔面の皮疹に対し推奨されたアトピー性皮膚炎治療薬であり,顔面に好発するサルコイドーシスの皮膚病変に対しても有用な症例が経験される.光線療法ではnarrow band UVB療法やターゲット型エキシマライト,光線力学療法が多くの肉芽腫症に有効であることが報告されている.一方,全身療法ではミノサイクリンの有効例が蓄積されているが,皮膚病変に対する有効性が他の臓器病変に対する有効性よりも高いと認識されている.TNF-α阻害薬は諸外国でサルコイドーシスに対する有効性が報告されているものの,paradoxical reactionによって関節リウマチ,Crohn病などの治療中にサルコイドーシスが誘発されることがあり,その誘発機序の解明が待たれるところである.皮膚病変の主な治療に関する最近のトピックスについて概説した.
著者
永井 利幸 永野 伸卓 菅野 康夫 相庭 武司 神崎 秀明 草野 研吾 野口 輝夫 安田 聡 小川 久雄 安⻫ 俊久
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.35, no.Suppl1, pp.50-1-50-1, 2015-11-07 (Released:2016-04-07)

心臓サルコイドーシスにおいて、ステロイド治療は標準的治療として確立しているが、ステロイド治療の途中中止あるいは適切な中止時期に関して検討した報告は皆無である。今回我々は過去 30 年間に当院で心臓サルコイドーシスと確定診断(日本サルコイド ーシス/肉芽腫性疾患学会 2006 年診断基準)され、ステロイド 治療を導入された連続 70 例を後ろ向きに解析した。 観察期間内(9.8 ± 5.7 年)の検討で、12 例が臨床的あるいは画像 的活動性の改善を理由にステロイド治療が途中中止され、途中中 止群のステロイド治療期間は 3.4 ± 3.6 年であった。途中中止群、 継続群の 2 群間で年齢、性別、左室駆出率、ガリウムシンチ所見、 FDG-PET 所見、心不全既往、心室性不整脈既往、そしてステロ イド用量に関しても有意差を認めなかった。途中中止群のうち、5 例が心臓死の転帰をとり、継続群と比較して死亡率は有意に高値 であった(42% vs. 16%, P=0.047)。さらに、途中中止群は継続 群 と 比 較 し て 観 察 期 間 内 に 著 し く 左 室 駆 出 率 が 低 下 し た (-23.1 ± 31.5 % vs. 8.4 ± 31.8 % , P=0.019)。 結論として、心臓サルコイドーシスの⻑期管理において、臨床的 あるいは画像的に一時的な改善が認められたとしても、ステロイ ド治療の途中中止には慎重を期すべきである。