著者
菅原 幸哉
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.25-30, 2011-01-31 (Released:2011-02-01)
参考文献数
16
被引用文献数
3

近年,植物中に共生する微生物「エンドファイト」として,各種の植物から様々な微生物が報告されており,共生の効果による植物の耐虫性の向上や生育促進などが注目されている.中でもイネ科植物に共生するNeotyphodium属の糸状菌(Epichloë属菌の無性世代:エピクロエ・エンドファイト) は,種子伝染で世代を超えて植物中に維持され,宿主植物の耐虫性や耐乾性などを向上させることから,農業への利用が進められている.家畜毒性を持つ菌株も多いことから利用は当初,芝草などの緑化植物に限られていたが,近年,家畜毒性のない菌株を選抜しての牧草での利用が成功し,利用範囲が大きく拡大した.食用作物への利用も視野に入りつつあり,今後の関連研究が注目される.
著者
大城 直雅
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.49-53, 2018-01-31 (Released:2018-02-27)
参考文献数
22

海産生物毒(マリンバイオトキシン)による食中毒は,件数は少ないながらも毎年発生し,死亡者も出ている.一方,毒化したプランクトン捕食性二枚貝による食中毒の報告は極めて少ない.本稿では,貝毒を中心とした海産生物毒による食中毒と対策(規制)の概要について国内外の状況について概説し,検査法と課題について紹介したうえで,「食品の分析と検査」について議論した.
著者
高橋 治男
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.133-138, 2005 (Released:2006-05-19)
参考文献数
49

1960年代に飼料用落花生粕に発見されたアフラトキシン (AF) はその発がん性や毒性の強さ, また, 汚染食品の広範さなどからマイコトキシン研究の中心となり, 食品などにおける汚染実態, 産生カビの分類・同定などについて, 夥しい報告が蓄積されてきた. この報告では, AF汚染, 中でも落花生とコーンを中心に, 汚染とその産生カビについて近年の研究成果を交え紹介する. また, 近縁化合物で同様に発がん性が知られるステリグマトシスチンについても概説する.
著者
安元 健
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.73-84, 2013-01-31 (Released:2013-04-25)
参考文献数
10

我が国ではほとんどの魚介毒の検出・定量にマウス毒性試験が用いられる.欧米では,動物愛護に加えて高特異性,高感度,高精度,迅速化を目指した代替法が追求され,実用性の検証が進められている.すでに EU は貝毒の検査を LC-MS と HPLC で実施することを決定した.シガテラ魚類中毒では我々が提案する LC-MS 法機器分析に加えて,レセプター結合試験や ELISA 等の開発が進んでいる.古くから知られていながら未解明な中毒として,横紋筋融解症を紹介する.発生地域はヨーロッパ,北米,南米,アジアにまたがり,原因生物も海水魚,淡水魚,ザリガニと多様である.我が国ではアオブダイ中毒が代表例である.

1 0 0 0 OA 魚の真菌症

著者
畑井 喜司雄
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.24, pp.5-8, 1986-12-30 (Released:2009-08-04)

我が国の真菌症に関する研究はまだ歴史が浅く,しかも研究者が少ないために遅々として進展していない現状にある.一方,近年その理由は明らかではないが,新しい真菌症が次から次へと見出されている.魚の真菌症起因菌は分類学的に変形菌類および担子菌類を除く全ての菌類に属しているが,重要な疾病の原因菌が分類学的に明確にされていないものもある. 本題は「魚の真菌症」であるが,魚という場合には通常魚介類,すなわちエビ類,カニ類,貝類,またときには,は虫類のスッポンなど食用上重要とされる水族動物のことを意味することが多い.ここではその概念に従い,我が国で発生が確認された養殖および天然魚介類の真菌症を中心に紹介する. なお,これまで魚介類の真菌症原因菌として報告された主たる菌類は表1に示した通りである.
著者
田中 彰 安藤 直子
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.63-72, 2016
被引用文献数
1

トリコテセン系マイコトキシンは<i>Fusarium graminearum</i>を代表とする<i>Fusarium</i>属やその他の糸状菌が生産する二次代謝産物である.トリコテセンは穀類を汚染する代表的なマイコトキシンであり,汚染された穀物をヒトや家畜が摂取すると下痢や嘔吐,食中毒性無白血球症などの中毒症状を引き起こす.そのため,食物や飼料におけるトリコテセンの混入を調べることは食の安全を守るために非常に重要である.ここでは,LCMSnやimmunoassay,TLC,bioassayによるトリコテセン検出について概説する.
著者
前田 一行 中嶋 佑一 市川 雛代 鬼頭 良幸 古﨑 貴大 斎藤 臣雄 本山 高幸 長田 裕之 小林 哲夫 木村 真
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.69-74, 2014-01-31 (Released:2014-06-21)
参考文献数
21

赤かび病菌Fusarium graminearumはトリコテセン系かび毒を産生し穀類を汚染する病原菌である.トリコテセン類は安定性が高く,分解・除去が困難であるため,かび毒の産生そのものを制御する手段の確立が望まれている.我々は赤かび病菌のトリコテセン系かび毒の産生制御に向けた制御化合物の探索を行っている.理化学研究所天然物化合物バンク(NPDepo)から供与される化合物を直接,毒素誘導条件下の菌体に処理してトリコテセン産生への影響を調べる方法に加え,化合物アレイを用いてトリコテセン生合成酵素の阻害剤を探索している.本稿では,これらの手法によって現在までに得られつつある有用化合物に関する活性評価と作用機作についての概要を紹介する.
著者
Masashi Yamaguchi
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.81-99, 2015-07-31 (Released:2015-09-01)
参考文献数
43
被引用文献数
2 8

Three topics from electron microscopic studies of microorganisms carried out in my laboratory in recent ten years are described. 1) Influenza A virus was observed in water by an ice-embedding method using phase contrast electron microscopy developed in Japan. Virions appeared as spherical or elongated particles consisting of spikes, an envelope, and a core with high contrast. 2) A new term the “structome” was introduced and defined as “the quantitative and three-dimensional structural information of a whole cell at electron microscopic level.” We performed structome analyses of Saccharomyces cerevisiae by using freeze-substitution and serial ultrathin sectioning electron microscopy. We found that there were one to four mitochondria and about 195,000 ribosomes in a cell. 3) In the deep-sea off the coast of Japan, we discovered a unique microorganism appearing to have cellular features intermediate between prokaryotes and eukaryotes. The organism, named as the Myojin parakaryote, was two orders of magnitude larger than a typical bacterium and had a large “nucleoid”, surrounded by a single layered “nucleoid membrane”, and bacteria-like “endosymbionts”, but it lacked mitochondria. This organism exemplifies a potential evolutionary path between prokaryotes and eukaryotes, and the presence of the organism supports the endosymbiotic theory for the origin of mitochondria and the karyogenetic hypothesis for the origin of the nucleus. These studies show that the electron microscopy is a powerful tool for studying a wide range of problems of microorganisms.
著者
福島 昭治 魏 民 アンナ 梯 鰐渕 英機
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.119-128, 2008 (Released:2008-10-07)
参考文献数
14

魚や肉などの焼けこげに含まれている2-amino-3,8-dimethylimidazo[4,5-f ] quinoxaline(MeIQx)のラット肝臓における低用量発がん性を中期発がん性試験法で検討した.その結果,MeIQx?DNA 付加体形成は微量からみられ,より高い用量で8-hydroxy-2′-deoxyquanosine 形成,lacI 遺伝子変異,イニシエーション活性等が誘発された.また,肝臓の前腫瘍性病変であるglutahione S-transferase placental(GST-P)陽性細胞巣は,さらにより高い用量で誘発された.N- ニトロソ化合物であるN-nitrosodiethylamine やN-nitrosodimethylamine でもGST-P 陽性細胞巣の発生は微量では発生しなかった.次に大腸発がん物質である2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo [4,5-b] pyridine(PhIP)のラット発がん性を検討すると,大腸粘膜におけるPhIP-DNA 付加体形成は微量から認められたが,前腫瘍性病変の代替マーカーである変異クリプト巣は,かなりの高用量でのみ誘発された.非遺伝毒性肝発がん物質であるphenobarbital は,GST-P 陽性細胞巣の発生を高用量では増加,逆に低用量ではその発生を抑制した(ホルミシス現象).これらの結果から,遺伝毒性発がん物質には閾値,少なくとも実際的な閾値が,また,非遺伝毒性発がん物質には真の閾値が存在すると結論する.
著者
Tomoyasu Taguchi Atsushi Ishihara Hiromitsu Nakajima
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.131-142, 2015-07-31 (Released:2015-09-01)
参考文献数
37
被引用文献数
1

Fungal contamination of food is one of the most important food safety concerns, however effective techniques to prevent fungal contamination and/or control fungal growth in foods have not yet been established. Some endogenous volatile compounds in plants have antibacterial and/or antifungal activities. For example, when some plants are damaged, they release aliphatic aldehydes with six or nine carbons to protect themselves from microbial infection. Patulin is the major mycotoxin that contaminates apples and apple juice worldwide, and it is regulated in many countries. Patulin has been shown to be immunotoxic and neurotoxic by animal experiments. Many species of Penicillium and Aspergillus produce patulin, but P. expansum is the most typical species responsible for patulin contamination in apples. We attempted to assess the effects of aliphatic aldehydes on P. expansum. Aliphatic aldehydes composed of 3–6 carbons bearing an E double bond at the α-position completely inhibited the fungal growth and suppressed colony formation from spores at relatively low concentrations. On the basis of the structure-activity relationship, the antifungal activity of the compounds is probably attributable to the interaction of the aldehyde group with biological macromolecules. On the other hand, aliphatic aldehydes with 8–10 carbons stimulated patulin production by P. expansum. The results of a reverse transcription-quantitative polymerase chain reaction analysis suggested that the stimulation was partially due to enhanced transcription of some patulin biosynthetic genes. The effects of volatiles of apple on patulin production by P. expansum were also studied. Some volatile compounds, that is, 2-mehtylbutanoic acid and ethyl 2-methylbutanoate, were found to stimulate patulin production. These findings will contribute to the development of new techniques to prevent and control fungal and mycotoxin contamination of foods.
著者
中里 光男
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.18, pp.6-11, 1983-12-30 (Released:2010-02-04)
参考文献数
31
被引用文献数
1 2
著者
白井 誠
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.42, pp.3-5, 1996-01-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
小中 龍一郎
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.103-107, 2001 (Released:2009-03-13)

In Japan, an import amount of pistachio nuts, from the United States is increasing every year, because there is hardly contamination with aflatoxin in the pistachio nuts. On the basis of the local information, I introduce a process from the harvest of pistachio nuts to manufacture at California. As the result of manual, standard, machine harvest, machine dryness and industry-university collaboration, we can have high quality pistachio nuts with little aflatoxin contamination. So as to prevent contamination with aflatoxin, pistachio nuts need to be isolated from fungus. Therefore, it is necessary to have the consistent control system that is from farm to factory.
著者
小西 良子
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-36, 2007 (Released:2007-04-12)
参考文献数
4
被引用文献数
1

オクラトキシンAは、Penicillium 属および Aspergillus属が産生するカビ毒である。ヒトにおいては腎毒性があることが疑われており、実験動物では腎毒性、腎臓がんを起こすことが実証されている。ヨーロッパでは、オクラトキシンAの実態調査が精力的に行われ、それを基に基準値の設定がなされている。コーデックス委員会でも、その基準値の策定が秒読み段階に来ている。しかし、わが国ではいまだ基準値設定が行われていない。そこで、本稿では国際的動向、オクラトキシンAの毒性、わが国での汚染実態、その分析法を紹介し、なぜオクラトキシンAは食品衛生上問題となるのか、今後基準値設定に向けてどのようにわが国は対処していくのかを述べる。
著者
須永 恭之
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.65-69, 2011-07-31 (Released:2011-09-23)

わが国の気候条件は麦類の生育後期に降雨が多く,麦類に赤かび病が発生しやすいものであるため,気候条件によっては赤かび病がまん延し,麦類中に病原菌が産生するデオキシニバレノール(DON)及びニバレノール(NIV)の含有量が高くなる可能性があります. このため,国内産麦類中に含まれるDON・NIVによる健康被害の発生を未然に防止することを目的として,麦類の播種前から収穫までの栽培段階,乾燥調製,貯蔵の各工程で活用できる「麦類のDON・NIV汚染低減のための指針」を公表し,この指針に示した低減対策が各産地に導入されるよう普及を進めています.