著者
久能 均 黒田 克利 豊田 和弘 山岡 直人 小林 一成
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.57-60, 1991-01-25
被引用文献数
2

Erysiphe graminis の分生胞子をオオムギ子葉鞘細胞に接種した(一次菌)。さらに同一細胞上に, 別の子葉鞘上で発芽させた同菌の発芽胞子を細針で移植接種した(二次菌)。ー次菌が二次菌よりも0〜5時間早く侵入を開始すると二次菌の吸器形成率は約80%, またこの時間差が6時間以上になると約93%に上昇した。針移植した対照区の吸器形成率は約63%であったので,ー次菌の侵入によって誘導される受容性は同じ菌の二次菌にも有効であると結論された。この受容性は一次菌が吸器形成に成功した細胞でのみ誘導された。一細胞で誘導された受容性は, 一次菌が侵入を開始してから少なくとも9.5時間までには隣接細胞に移行しなかった。
著者
福田 健二 鈴木 和夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.625-628, 1988-12-25
被引用文献数
2

材線虫病による年越し枯れのアカマツについて, 病徴の進展に伴う材部の電気抵抗値および葉の水分生理特性の変化について検討を加えた。材部の電気抵抗値は, 秋から冬にかけてはほとんどが正常な値を示したが, 感染翌年の春〜初夏にかけて180kΩ未満の値をとるものが多く, 春季の村内におけるミクロフロラの変化が示唆された。P-V曲線から得られた葉の水分生理特性は, 桔死直前の春〜初夏まで正常な季節変化を示して, 細胞壁弾性率(ε)には変化が認められなかった。
著者
井手 洋一 古田 明子
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.1-8, 2023-02-25 (Released:2023-03-08)
参考文献数
38

タマネギべと病の薬剤防除の精度向上を目的として,ブームスプレーヤの噴霧高さが薬液付着や防除効果に及ぼす影響について検討した.葉先の30 cm上方から散布した場合の薬液付着は,葉身中央部,葉身抽出部ともに良好であったが,葉先とほぼ同じ高さから散布した場合は,葉身中央部付近の薬液付着が劣った.また,べと病に対する防除効果も葉先とほぼ同じ高さから散布した場合は劣った.今後は,本試験で得られた噴霧高さと薬液付着,べと病に対する防除効果の関係性をもとに,適切な薬剤散布技術に関する指導を行う必要がある.
著者
山崎 睦子 松岡 弘明 矢野 和孝 森田 泰彰 植松 清次 竹内 繁治 有江 力
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.299-303, 2011 (Released:2011-12-09)
参考文献数
22

In 1997, Phytophthora rot caused serious losses to ginger (Zingiber officinale Rosc.) production in Kochi Prefecture, Japan. In the field in early summer and autumn, water-soaked rot on basal pseudostems and brown rot on rhizomes were first observed, then plants developed stem blight. The disease also developed on rhizomes stored at 15°C in the dark. A Phytophthora sp. was consistently isolated from the symptomatic lesions and caused the same symptoms after inoculation with the isolates. The identical Phytophthora sp. was then reisolated. White stellate colonies grew on PDA at a minimum temperature of 10°C, optimum of 23°C and maximum of 30°C. Sporangia were ovoid, ellipsoid, globose and distorted (variable) with one or two apices, noncaducous, 30–90 × 20–50 (average 50.0–56.1 × 25.0–32.6) μm, with a length to breadth ratio of 1.5–1.7:1. Nucleotide sequence of the r-DNA ITS regions agreed well with those of Phytophthora citrophthora (R. E. Smith and E. H. Smith) Leonian previously reported. Based on these results, the isolate was identified as P. citrophthora. This report is the first of a disease of ginger caused by P. citrophthora, and we propose the name “Phytophthora rot” for the disease.
著者
廣岡 卓 石井 英夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.80, no.100th_Anniversary, pp.S172-S178, 2014 (Released:2014-12-27)
参考文献数
28
被引用文献数
1
著者
土崎 常男 與良 清 明日山 秀文
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.237-242, 1970
被引用文献数
5

1. ササゲおよびアズキにおいて,種子伝染性ウイルスと非種子伝染性ウイルスを用い,ウイルスの種子伝染と配偶子感染との関係を調べた。<br>2. 花粉伝染と胚のう伝染は種子伝染の起こるアズキ・モザイク・ウイルス(AzMV)とアズキ,ササゲ・モザイク・ウイルス(CAMV)とササゲの組合せでだけ起こり,種子伝染の起こらないキュウリ・モザイク・ウイルス-アズキ,CAMV-アズキ,サブクロ-バ・モットル・ウイルス-ササゲの組合せでは起こらなかった。<br>3. ササゲを親植物とした場合,種子伝染の起こるvirus-hostの組合せの場合だけ,検定植物への汁液接種により花粉からウイルスが検出された。しかし葯,子房からは,種子伝染しないvirus-hostの組合せでもウイルスが検出されることが,ササゲ,アズキのいずれを親植物としたときにも認められた。<br>4. 各種ウイルスに感染したアズキ,ササゲの雌しべ,雄しべ,花弁,葉につき,ウイルス濃度を比較した。一般に雌しべ,雄しべのウイルス濃度が花弁,葉より低い傾向がみられたが,種子伝染の有無とはとくに関係はなかった。次にCAMVに感染したササゲ,アズキの葯,子房のウイルス濃度を比較した。葯ではササゲの方がアズキよりもウイルス濃度が高かったが,子房ではその逆で,種子伝染の有無と葯,子房のウイルス濃度の間にとくに関係は認められなかった。<br>5. CAMV-ササゲ,AzMV-アズキの組合せで,開花期にウイルスを接種し,開花日別に分けて種子を集め,種子伝染の有無を調べた。その結果,ともに接種日から約20日以後に開花し,結実した種子だけに種子伝染が起こった。一方,CAMV-ササゲの組合せで接種後一定間隔の期日ごとに花粉,葯,子房,花弁からのウイルスの検出を試みた。子房,花弁では接種4日後から,葯では接種10日後から,花粉では接種17日後からウイルスが検出され,種子伝染にはウイルスの配偶子感染が必要であることが示された。
著者
宮本 雄一
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.207-212, 1959
被引用文献数
1

1) 低温下 (0&sim;2&deg;C) で乾燥し, 無酸素下 (5&sim;10&deg;C) で貯蔵した, 病葉中のコムギ縞萎縮病ウイルス (WYMV) およびオオムギ縞萎縮病ウイルス (BYMV) はともに, 2年後においてもかなり強い感染力を示した。<br>2) 前報より引続き行つた実験の結果, 病土から分離濃縮された粘土部分 (<2&mu;) 粒子の病原性の強いことが, 播種試験および摩擦接種試験により, 再確認された。これらの粘土部分の粒子中には線虫類を全く認めず, また特記すべき頻度であらわれる糸状菌または細菌類を認めなかつた。さらにこの粘土フラクション中には, 根毛と判別できる植物の組織を認めなかつた。<br>3) 罹病植物汁液を粘土鉱物およびその他の土壌に吸着させ, 比較的高温下 (10&sim;15&deg;C) で貯蔵した結果, WYMVおよびBYMVはともに, 約8カ月後の次のシーズンまでわずかながらその病原性を維持した。<br>4) 以上の諸事実とこれまでの実験結果から, ムギ萎縮病ウイルスの土壌伝播機作を説明するためには, 必ずしも特定の微生物的媒介者あるいは罹病植物の残根の存在を必要とせず, 蛋白質を吸着し保護すると考えられる粘土部分の土壌粒子 (無機および有機のコロイドを含む) がこれらのウイルスを吸着して伝播者の役割を果しているものと考える。
著者
CHANG C.J. YONCE C.E. GARDNER D.
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.354-359, 1987-07-25

オキシテトラサイクリンの注入によるスモモ葉焼病 (仮称) のスモモの葉焼病はオキシテトラサイクリン (OTC) の樹幹注入により抑制された。作業にはコード無ドリル, 28/163cmドリル刃, 金ヅチおよび OTC カプセルを必要とした。4月下旬又は5月上旬に1回目, 10月中旬に2回目の注入が最も効果的であった。それぞれ 0.16g の OTC を含む 4ml の溶液の入ったカプセル2個分を各時期に各樹に注入し, 対照樹にはキャリア液のみをそれぞれ注入した。1984年4月, 1985年5月および1986年5月にそれぞれ1回目, 3回目および5回目の注入を行ない, 1984, 1985および1986年の各8月に調査した結果, OTC による発病抑制はそれぞれ61.5-100%, 73.3-100%および76.9-100%であった。1984年10月に2回目の注入を行なった樹では翌年5月には対照樹に比べて小枝の枯死が格段に少なかった。
著者
久米 龍一 新川 求 川口 章 八隅 慶一郎 益子 道生 白石 友紀
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.110-112, 1997
被引用文献数
3

イネいもち病に対して高い防除活性を示すSSF-126は,イネいもち病菌(<i>Pyricularia oryzae</i>)のスライドグラス上での分生胞子発芽やセロファン膜侵入を1.0ppm以上の濃度においても完全には阻害せず,また,メラニン合成阻害も示さなかった。しかし,イネ体磨砕物の共存下では発芽を顕著に阻害した。以上の結果とこれまでの報告から,(1) SSF-126は侵入したイネいもち病菌の呼吸を阻害するが, (2)いもち病菌体にシアン耐性呼吸鎖が誘導される。しかし, (3)イネ体中のフラボノイド化合物によってこの誘導過程が阻害され,その結果いもち病菌は侵入後蔓延出来ず発病に至らないと推定した。これは本剤がいもち病菌のイネ体侵入後に活性を発現するというこれまでの知見をよく説明しており,新規制御剤開発の指標となる機構の一つと考えられた。
著者
岡山 健夫 平山 喜彦 西崎 仁博
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.155-161, 2007 (Released:2007-09-06)
参考文献数
19
被引用文献数
3 3

イチゴ炭疽病のベノミル耐性菌を対象に選択培地を考案し,潜在感染部位および生存部位を調査した.PSA培地を用い,炭疽病菌の生育を比較的阻害せず他の糸状菌の生育を抑制する薬剤としてベノミル50 ppm,トリフルミゾール30 ppmを選択し,細菌の生育抑制のためにオキシガル100 ppmとストレプトマイシン硫酸塩50 ppmを添加して選択培地を作製した.この選択培地は選択性が高く,潜在感染株や枯死株の小葉,葉柄,葉柄基部,根冠部からは高率に炭疽病菌が分離され,鉢土からも分離できた.潜在感染株では,外側葉位の小葉や葉柄,葉柄基部から炭疽病菌が高率に分離され,内側の葉位になるほど検出率が低下したが,最も新しい内部の小葉からも分離された.炭疽病菌の灌注接種株には汚斑症状は見られず,小葉が褪色して萎凋した.105~106胞子/mlの灌注接種株は,全株が萎凋または枯死し,102胞子/ml以下の接種株も低率ながら萎凋症状を呈した.灌注接種株の根から炭疽病菌が高率に分離され,葉柄,小葉の順に検出率が低下し,根または地際部からの侵入感染が示唆された.炭疽病菌は,分生子懸濁液を灌注したピートモス・バーミキュライトやオガクズ,砂などの培養土から1ヶ月以上経過後も検出された.以上のことから,本菌はイチゴの葉,葉柄,葉柄基部,根冠部に潜在感染し,イチゴが植えられていない育苗用土で長期間生存することが明らかになった.
著者
栃原 比呂志
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-10, 1970
被引用文献数
9

キクから分離され,これまでTAVとして取扱われていたウイルスで,CMVと血清関係がなく,トマトに種子を着生するウイルスをTAVとは別のウイルスとして取扱い,キク微斑ウイルス(chrysanthemum mild mottle virus)と仮称した。本ウイルスは25-30m&mu;の球状粒子でRNAウイルスであり,260/280=1.70-1.78,最高/最低=1.46-1.50の核蛋白によると思われる吸収曲線を示した。260m&mu;における吸光係数は5.6cm<sup>2</sup>/mgで,4.5&mu;g/m<i>l</i>の汁液接種でササゲ1葉当たり100前後のlocal lesionを生じた。収量はタバコ病葉100g当り30-40mgであった。CMVとは沈降係数に差異がなかったが,血清関係は認められなかった。アブラムシで伝染し,キクに無病徴かmottleを生じ,品種により花の矮化,退色,color breakingなどを起こす。CMVよりタバコ,<i>N. glutinosa</i>,ペチュニアなどにenationを生じやすく,ササゲと<i>C. amaranticolor</i>のlocal lesionが小さい。キュウリには感染しない。各地の栽培ギク138株中40株から本ウイルスが分離された。