著者
尹 泰圭 平井 篤造
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.109-113, 1968
被引用文献数
2

1. トマト苗にTMV単独あるいはTMVとPVXの混合接種を行ない,接種前に2時間苗の根部を浸漬し,接種後地上部に対する散布を毎日連続6回行なつた。またバンデングによる薬液の茎への施用も併用した。根部処理と地上部散布の併用では,後者のみの場合に比較して治療効果が顕著であつた。しかしバンデングの効果は少なかつた。以上の効果判定には,発病率,潜伏期間,ならびに根部のウイルス量の化学定量を実施した。発病率と根部のウイルス量との間に相関がみられた。<BR>2. 薬害軽減のためMn<SUP>2+</SUP>を使用した。鉢植のトマトの地上部成長と根の発育の程度を観察し,あるいは薬液にタバコ葉片を浮遊してその変色程度を比較した。Mn<SUP>2+</SUP>は抗ウイルスの薬害をかなり軽減したが, TMVに対する阻害度を低下させることはなかつた。
著者
小原 直美 光原 一朗 瀬尾 茂美 大橋 祐子 長谷川 守文 松浦 雄介
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.94-101, 2007 (Released:2007-07-20)
参考文献数
22
被引用文献数
5 9

アグリボEX(株ビスタ製)は酵母抽出液を原料とする植物活力剤であり,発根促進,徒長抑制などとともに,病害抑制効果もみられる.病害抑制機構としては,この酵母抽出液(アグリボEX)自体に抗菌作用がないことから,本処理が植物が本来有する抵抗性を誘起して効果を発揮するものと考えられた.この酵母抽出液にタバコ葉片を浸漬処理すると,塩基性PR-1, -2および-6遺伝子の発現が誘導された.これら塩基性PR遺伝子群はエチレンで誘導されることが知られているので,エチレン発生剤であるエテホン処理やエチレン作用阻害剤であるチオ硫酸銀錯塩(STS)を処理し,タバコPR-1, -2, -3および-5タンパク質群の増減を調べた.その結果,エテホン処理で誘導される分子種がこの酵母抽出液処理で誘導され,その誘導はSTS処理により阻害されることが分かった.また,この酵母抽出液自身からエチレンが発生すること, およびこの処理により植物からのエチレン発生が促進されることが認められた.これらの結果から,この酵母抽出液はエチレンシグナル伝達経路を介して植物の病害抵抗性誘導に寄与するものと考えられる.
著者
佐々木 大介 芳賀 一 松田 健太郎 三澤 知央
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.158-160, 2018 (Released:2018-09-06)
参考文献数
5
被引用文献数
1

Damping-off of kale (Brassica oleracea L., Acephala group) was found in Iwata, Shizuoka, Japan in 2016. Isolates obtained from basal stems with typical symptoms were identified as Rhizoctonia solani AG-4 HG-I. Original symptoms were reproduced on healthy kale seedlings after inoculation with the isolates, and inoculated fungi were reisolated from the diseased plants. This is the first report of kale damping-off caused by R. solani in Japan; therefore, we refer to this new disease as “damping-off of kale”.
著者
飯塚 典男 飯田 格
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.46-53, 1965-01-30
被引用文献数
1

1958年,盛岡で罹病ラジノクローバから1つのウイルスを分離した。このウイルスは汁液接種で容易に伝搬され,レンゲ,ナタマメ,クロタラリヤ,スイートピー,インゲン,エンドウ,アルサイククローバ,クリムソンクローバ,レッドクローバ,サブクローバ,ソラマメ,コモンベッチ,ヘァリーベッチ,ササゲなどを全身的に侵した。フジマメ,アルファルファ,キバナルーピン,アズキ,ヤエナリ,スイカ,キウリ,マルバマアサガオ,キンギョソウ,トマト,ダチュラ,フィザーリス,ペチュニア,Nicotiana rutica, N.sylvestris などの接種葉からは本ウイルスが回収できた。これらのうち,ヤエナリおよびスイカの接種葉には常に壊死斑点を生じた。また,タバコ,グルチノーザ,ビート,ホーレンソウ,センニチコウおよび Chenopodium amaranticola には感染しなかった。本ウイルスは汁液のほか低率ながらマメダオシで伝搬された。しかしマメヒゲナガアブラムシ,マメアブラムシおよびモモアカアブラムシでは伝搬されなかった。耐熱性,70〜75℃10分,耐希釈性は10万〜100万倍であり,耐保存性は25℃で60〜90日,室温(18〜20℃)では91日以上であった。Dip法による電子顕微鏡観察で長さ約450mμ前後のひも状粒子を認めた。罹病植物の表皮細胞内には特異な隅体(Corner inclusion body)が観察され,罹病エンドウの超薄切片の観察によって,細胞内にウイルスの集団らしきものを認めた。本ウイルスはカナダのWhite clover mosaic virus 抗血清との間に明らかな沈降反応を示した。寄生範囲,病微,伝搬方法,物理的性質,ウイルス粒子の形態および血清反応などから考察して,本ウイルスは,アメリカ,ニュージーランドおよびヨーロッパ各地で報告されたWhite clover mosaic virus のグループに属すると同定した。
著者
古市 尚高 鈴木 譲一
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.457-467, 1990
被引用文献数
1

ジャガイモ疫病菌の過敏感反応サプレッサー(抑制因子)を2種類の異なったレースより抽出し,HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により精製した。サプレッサー活性をもつ分画は,親和性菌,非親和性菌ともに分子量(<i>Mr</i>) 4,700と280の成分であった。これらの成分をジャガイモスライス切片(直径,14mm)に滴下処理したあと,非親和性菌遊走子を接種して,ファイトアレキシン(PA)生成をマーカーとして活性の強さを調べた。HPLCにより純化する前のグルカン成分と,両レースの<i>Mr</i> 4,700と<i>Mr</i> 280のサプレッサー分画は,12.5&sim;50&mu;g/diskの濃度ではレース間で統計的に有意の差は示さなかった。以上の結果から,疫病菌の分子量の異なった本グルカン2成分が,レースにかかわりなくサプレッサー活性を有することが示唆された。標準糖と本サプレッサー成分のTLCによる解析の結果,<i>Mr</i> 280の成分はグルコースモノマーと<i>Rf</i>値が近似した。また,HPLCにより遊走子発芽液中にMr 280の成分が検出されることから,感染初期の過程において機能している可能性が示唆された。
著者
本間 善久 鈴井 孝仁
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.643-652, 1989-12-25
被引用文献数
6

Pseudomonas cepacia RB425およびRB3292は, 抗生物質ピロールニトリンおよびシューダン(HMQ, NMQ)を生産し, ダイコン種子にコーティングすることによって, Rhizoctonia solaniによる苗立枯病を抑制した。Cymbidium spp.の褐色斑点細菌病菌P.cepacia A2およびA4は, シューダンは生産しないがピロールニトリンを生産し, 発病抑制効果が認められた。P.cepacia ATCC No.25416は, いずれの抗生物質も生産せず, 抑制効果がなかった。ニトロソグアニジンで誘導したRB425の突然変異株8菌株は抗生物質生産性に変異が認められ, 培地上の3種の抗生物質生産性と, R.solaniの幼苗への着生率抑制および発病抑制能との間に高い相関関係が認められた。種子当り10^7cfuのRB425の生菌または, 1.Oμgの純化したピロールニトリンを種子にコーティングすることによって, およそ50%の発病抑制率が得られた。シューダンを種子当り40μgコーティングした場合には, ほとんど抑制効果がなかった。RB425のリファンピシンおよびナリジキシ酸耐性菌株を用いて播種後の菌数を測定したところ, 種子当り9.4×10^6, 4.7×10^5および9.4×10^4cfuコーティングした場合, 7日目に幼根1g当り4.6×10^5, 1.8×10^4および5.3×10^3cfuであった。種子コーティングしたRB425は, 播種後, 幼根表皮細胞の縫合部に沿って生育し, 根圏で増殖するのがSEMによって観察された。これらの結果から, P.cepacia RB425はダイコン幼苗根圏で増殖でき, 種子コーティングによるダイコン苗立枯病の抑制効果にピロールニトリンが重要な役割を有すると考えられた。
著者
佐藤 衛 福本 文良
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.393-396, 1996-08-25
参考文献数
13
被引用文献数
1

香川県の3点のキャベツ, 三重県の2点および鳥取県の1点のブロッコリーからPeronospora parasiticaのサンプルを集め, 各サンプルから5菌株, 合計30の単胞子分離株を調製し, これらの宿主範囲を調査した。供試植物として, Brassica oleracea (カリフラワー, キャベツおよびブロッコリー18品種) の他, B. campestris (タイサイ, ミズナ, アブラナ, ハクサイおよびカブ8品種), B. juncea (カラシナ1品種), B. napus (ルタバガ1品種) およびRaphanus sativus (ダイコン2品種) を用いた。接種試験の結果, 分離源と同種の植物であるB. oleraceaの3作物の16品種は高い感受性を示し, 本種は宿主植物と考えられた。また, B. napusは中程度の感受性を示したことから宿主となる可能性が示唆されたが, B. campestris, B. juncea, R. sativusは抵抗性を示したことから非宿主と考えられた。供試したべと病菌はすべて同じ系統に属し, B. oleracea (B. napusも含む可能性がある) を宿主とする系統と考えられた。B. oleraceaの中でキャベツの2品種, ゴールデンベストおよびYR-さわみどりは抵抗性を示した。供試した単胞子分離菌株で病原性に違いは見られなかった。
著者
有江 力 難波 成任 山下 修一 土居 養二 木嶋 利男
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.531-539, 1987-10-25
被引用文献数
2

Fusarium wilt of bottle gourd (Lagenaria siceraria Standl.) caused by Fusarium oxysporum f. sp. lagenariae is a serious and wide-spread soil-borne disease in Japan. In some fields of Tochigi prefecture, welsh onion (Allium fistulosum L.) has been mix-cropped customarily as an associate crop with bottle gourd. Those fields showed little occurrence of the disease, in spite of continuous cropping of bottle gourd. This phenomenon suggested the relation between mix-cropping with welsh onion and control of the disease. From the subterranean parts of the welsh onion, Pseudomonas gladioli were isolated frequently, and some of these bacterial isolates showed antifungal activity to F. oxysporum f. sp. lagenariae on BPA plates. But as they were usually pathogenic to roots of welsh onion, we had to select, for practical use, isolate that antagonized strongly to F. oxysporum f. sp. lagenariae, had no pathogenicity to welsh onion or other plants, and multiplied well on subterranean parts of welsh onion. Such an isolate P. gladioli M-2196 (isolated from Miltonia sp.) was selected from 90 isolates of Pseudomonas spp. from 20 kinds of plants. For the purpose of biological control of Fusarium wilt of bottle gourd, we cultured P. gladioli M-2196 on BP broth up t0 10^9 cells/ml, dipped the root systems of associate crop (welsh onion or chinese chive) in the cultural suspension for five min., and then bottle gourd was mix-cropped with associate crop in infected soil. With this treatment, occurence of Fusarium wilt was districtly suppressed. This mix-cropping using associate crop with P. gladioli M-2196 seemed to be a beneficial technique for biological control of soil-borne fungal diseases.
著者
橋本 俊祐 河村 郁恵 中島 雅己 阿久津 克己
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.104-107, 2012 (Released:2012-06-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

The efficacy of Bacillus subtilis var. natto, a beneficial food microbe, was tested as a control for gray mold of strawberry. When five isolates of Bacillus subtilis var. natto were cultured with the gray mold fungus on potato sucrose agar plates, all isolates inhibited fungal growth. Isolate No. 2, which was the most inhibitory of the fungus in vitro, reduced disease progress in both detached leaves and flowers. These results suggest that isolate No. 2 of B. subtilis var. natto has potential as biological control agent of gray mold of strawberry plants.
著者
小泉 銘冊 久原 重松
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.620-627, 1984-12-25
被引用文献数
2 3

1965年頃からわが国西南暖地のカンキツに発生したにせ黄斑病の病原を究明するため, 各地から採取した罹病葉の生切片を懸滴培養した結果, 数種の酵母様微生物および細菌を得た。これらをナツミカン葉に葉肉注射接種した結果, 酵母様微生物の一部菌株が病原性を示し, 接種部は黄変症状を呈した。ウンシュウミカン未硬化葉に噴霧接種した結果, コロニー性状が異なる2種類の酵母様微生物のみ病原性を示した。その一つ (No. 3, 4, 6菌株) は病原力が強く, 左右非対称の射出胞子を形成し, 鮭肉色コロニーで菌糸を作らず, 専ら多極出芽で増殖することから Spobolomyces sp. と考えられた。他の菌株 (No. 10) は鹿児島県果樹試験場からの分譲菌株 (Ta-7415) と同一種で, 両者とも病原力は弱い。その特異的形態の菌糸から Aureobasidium sp.と同定した。噴霧接種での病原力や薬剤感受性の違い, 圃場での感染時期と生態的特性に関する既往の知見などから, Sporobolomyces sp.が主たる病原体と推定された。
著者
重田 進 中田 榮一郎
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.150-157, 1995-04-25
参考文献数
15

A new bacterial disease of citrus was detected in Yamaguchi Prefecture in 1987. Symptoms appeared on the leaves and flowers of Iyo (Citrus iyo) in the field. In May, the symptoms on leaves were characterized by irregular dark-green, water soaked spots, and defoliation. In June, the lesions enlarged to form round dark-brown spots 5-10 mm in diameter with yellow haloes. Symptoms on petals and ovaries consisted of small red spots, and those on pistils of spindly dark-brown spots. The pathogen showed a pathogenicity to lilac, peach, onion, tomato and other 12 plant species. However, the host range was narrow and the virulence was weak in comparison with those of the reference strain, P. syringae pv. syringae (USL-PV). Neither black pit nor blast symptoms were produced on lemon fruits and citrus twigs. The bacteriological characteristics were identical with those of P. syringae pv. syringae (USL-PV). On the basis of these results, we concluded that the disease is caused by a strain of Pseudomonas syringae pv. syringae van HALL 1902 and we propose the disease is designated as "Bacterial brown spot of citrus".
著者
田浜 康夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.156-161, 1967-06-30 (Released:2009-02-19)
参考文献数
4
被引用文献数
1

熊本県玉名郡岱明町と菊池市の桑樹萎縮病は圃場観察において外見的にまたその病徴発見過程において顕著な差異のあることはすでに明らかにされているが,これらは環境条件によって左右されるものではなく,その萎縮病における本質的なものと思考された。このことから両者は病原ウイルスの系統の異なるものとみて,前者を玉名系(Tamana severe strain),後者を菊池系(Kikuchi mild strain)とした。