著者
浅井 智子 奥野 哲郎 松浦 一穂
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.843-849, 1986-12-25
被引用文献数
1 3

いもち病菌胞子からのプロトプラストはザイモリアーゼと β-グルクロニダーゼを, また, 菌糸からのプロトプラストはドリセラーゼとセルラーゼを用いることにより効率よく分離できた。胞子及び菌糸プロトプラストは細胞壁を再生後, 直接菌糸復帰する場合とイースト様に出芽する場合が認められた。培養時の pHが高い (pH 7.0) 場合は液体中で大半のプロトプラストは直接菌糸復帰したが, pH が低い (pH 5.0) 場合は大半が出芽様発芽をした。pHが低い場合でも寒天中 (1%以上)で培養すると直接菌糸復帰する細胞が増大した。カルコフロールホワイトで染色すると, 細胞壁再生細胞と出芽様細胞の螢光強度は培養液の pH が高くなるに従って増大したが, 復帰菌糸のそれは pH に影響されなかった。このことは細胞壁再生過程が pH により影響を受けること, また, その結果, 発芽形態の差となって表れる可能性を示唆している。
著者
山崎 祐未子 田村 啓敏 山本 弘幸 秋光 和也
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, 2003-02-25

先の全国大会で,揮発性モノテルペン化合物であるシトラール,シトロネラール,リナロールが非病原性Alternaria alternata (O-94)胞子の菌糸伸長と発芽を抑制することを示した.今回は,これら揮発性物質の作用機構を解明するための第一歩として,これらの物質の作用が殺菌作用か,または菌糸伸長を抑制する制菌作用であるかを検討した.揮発性物質で胞子を6時間処理し,その後揮発性物質を取り除いた状態で18時間静置すると,24時間揮発性物質を処理し続けた場合に比べ,胞子発芽率・菌糸伸長率ともに上昇した.しかし,シトラール処理区では,約40%の胞子の発芽率が回復しなかった.次に,胞子を2時間無処理の状態で静置して菌糸を一度伸長させた後,22時間揮発性物質を処理すると,いずれの物質も菌糸伸長を抑制した.以上の結果は,これら3つの揮発性物質は制菌的な菌糸伸長抑制作用を持ち,シトラールについては抗菌活性も保持することを示唆した.現在,GCおよびGC/MS分析によりラフレモン葉から揮発するモノテルペン化合物の種類の特定を進めている.
著者
露無 慎二 舟久保 太一 堀 要 瀧川 雄一 後藤 正夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.294-302, 1985-07-25

Erwinia属軟腐病菌 (E. carotovora subsp. carotovora および E. chrysanthemi) を大根およびジャガイモに接種し, その腐敗組織内のペクチン質分解酵素活性を調べると, ペクチンリアーゼ活性がペクチン酸リアーゼ活性と同程度になるまで近づく場合があった。E. chrysanthemi (EC183) を大根熱水抽出液培地に培養すると, 両酵素の比活性が経時的に上昇した。さらに12種の植物抽出液について調べた結果, 全ての植物抽出液で同様な結果を得た。これらの結果から, 多くの植物抽出液中にはペクチン質 (ペクチン酸リアーゼの誘導物質を供給する) の他, ペクチンリアーゼの誘導物質であるDNA損傷物質が存在することが示唆された。そこで, これら12種の植物抽出液についてDNA損傷物質の存在をrecアッセイで調べた結果, 10種の植物抽出液にその存在を確認した。以上の結果から, Erwinia属軟腐病菌のペクチンリアーゼは植物体組織に存在するDNA損傷物質によって誘導される可能性が考えられ, 宿主植物の感染部位におけるその制御と病徴発現に果たす役割について考察した。
著者
中垣 洋一 平井 篤造
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.187-191, 1967-06-30

タバコ葉から25gと350gの分画遠心分離, およびシヨ糖濃度勾配遠心分離(3,500rpm)を併用して核分画を分離した。この分画は葉緑粒および他の細胞内の諸成分をほとんど含まず, かなり純粋なものであった。ついで, 0.25NのHClでヒストンを抽出した。このようにして得たヒストンはセバラックスのフイルムを使用して電気泳動すると, 2つの分画に分かれた。定量値から, タバコ葉の核はアルギニンの多いヒストンが少量と, 比較的リシンの多いヒストンを大量含むことが明らかとなった。
著者
根岸 秀明 山田 哲治 白石 友紀 奥 八郎 田中 博
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.687-690, 1990-12-25

Pseudomonas solanacearumの自然発生の非病原性突然変異株, M4Sから約6.6kbpの環状2重鎖のプラスミドDNA, pJTPSlを分離した。pJTPSlはM4Sの親株である病原性菌, U-7からは検出されなかった。このプラスミドは, ApaI, EcoRI, EcoRV, HindIII, PstI, StuI, XhoIなどの制限酵素認識部位をもっていた。U-7の全DNAとのハイブリダイゼーション分析の結果から, pJTPS1はゲノムまたはメガプラスミド由来であろうと推測された。
著者
井上 忠男 尾崎 武司
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.49-50, 1980-01-25
被引用文献数
5

Yellow vein of Eupatorium chinense var. simplicifolium caused by a geminivirus (Osaki and Inouye, 1979) had long been attracted attentions by some Japanese botanists and plant pathologists. A poem written by the Empress Koken on the yellow leaf of Eupatorium in the year of 752 that appeared in "Manyoshu" would be the first record in all over the world in the literature of the possible plant virus disease.
著者
山内 智史 島津 樹一 佐藤 衛 堀内 誠三 白川 隆
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, 2003-02-25
被引用文献数
1

日本国内ではレタス根腐病菌病原性グループ1,2,3の発生が確認されており,病原性グループ1のみがビオチン要求性を示すことを明らかにしてきた.そこで,病原性グループ1におけるビオチン要求性が菌の諸性質にどのような影響を与えているか検討を行った.合成培地である駒田培地から抗菌性物質を除いた培地(1/2BM)上で11〜28日間培養を継続したところ,4/800の割合でビオチン非要求性変異株が得られた.野生株と変異株の間で形態的特徴,PSA培地上での菌糸伸長に違いは認められなかったが,気中菌糸の生育と胞子形成量は変異株が上回った.さらにVCG,レタス品種のパトリオット,晩抽レッドファイヤー,コスタリカ4号に対する病原性は野性株と同じであった.これらの結果から,病原性グループ1におけるビオチン要求性は生育に関わる代謝系に影響を与えるものであるが,病原性との関連性は低いものと考えられた.
著者
阿久津 克己 大胡 佳子 奥山 哲
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.521-529, 1985-12-25

ネギさび病菌 (Puccinia allii) を接種した4品種のネギ葉部葉肉細胞で, 微細構造的に異なる成分を含むパピラが観察された。パピラ成分はさび病菌の葉肉細胞への侵入前後で異なった。侵入前もしくは侵入時のパピラでは繊維性成分だけが観察されたが, 侵入後のパピラでは繊維性成分の外に非繊維性成分が観察された。非繊維性成分は吸器頸部の周囲でよく見られ, 時々吸器本体部周辺でも観察され, その出現は吸器形成と密接な関係があると推察された。パピラ形成以前の侵入に対する葉肉細胞内の反応を電顕レベルで調べた。吸器母細胞と接した葉肉細胞で, 細胞膜の陥入, 細胞質の凝集がしばしば認められた。細胞膜の陥入で発達した paramural space (細胞壁・細胞膜間隙)で, 細胞膜あるいは小胞体と連絡した管状もしくは小胞状の器官が集積し, その付近には繊維性物質が観察された。パピラ周辺の繊維性物質と隣接した小胞状器官も観察され, パピラ形成にこれらの器官が関与することが示唆された。
著者
海道 正典 森 正之 三瀬 和之 奥野 哲郎 古澤 巌
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.95-98, 1997-04-25
参考文献数
11

形質転換植物におけるブロムモザイクウイルス(BMV)RNAの蓄積量を増加させるため, タバコ輪点ウイルスのサテライトRNA由来のリボザイム配列を利用し, 植物内で転写されたウイルスRNAの複製効率の増加を試みた. カリフラワーモザイクウイルス35SプロモーターとBMV RNAのcDNAとターミネーター配列を含むプラスミドのcDNA配列の3'末端にリボザイム配列を挿入したプラスミドを作製し, BMVの局部病斑宿主であるChenopodium amaranticolorに接種した結果, リボザイム配列を持たない対照プラスミドに比べすて, 約4倍の感染性を示した. 同様の遺伝子カセットをタバコに導入した結果, これら形質転換植物におけるBMV RNAの蓄積レベルは, リボザイム配列を持たない対照植物におけるBMV RNA蓄積の20倍であった.
著者
平松 基弘 一瀬 勇規 白石 友紀 奥 八郎 大内 成志
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.53-58, 1986-01-25
被引用文献数
7

エンドウ褐紋病菌の生産するエリシターによるピサチン生合成の誘導とサプレッサーによるその制御について, ピサチンの前駆体である ^<14>C-フェニールアラニンをエンドウ葉組織に与えてしらべた。放射能のピサチンへのとりこみは, エリシター処理4.5〜6時間後に検出可能となり, その後増加した。エリシター溶液 (500 ppm) に 50ppmのサプレッサー(F5)が共存するとピサチンの生含成が起こらなかった。エリシターで, ピサチン生合成系を活性化したエンドウ葉にF5を与えると, ピサチン生合成は低下し, 一方, その中間産物である桂皮酸への放射能のとりこみが増加した。F5はピサチン生合成系に関与する酵素, PALと cinnamate 4-hydroxylase を in vitro で阻害した。ピサチン生合成系活性化に対するF5の阻害作用は可逆的であると考えられる。
著者
金 章圭 吉野 嶺一 茂木 静夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.492-499, 1975-12-25

Experiments in order to know the possibility of leaf blast forecasting by investigation of the number of trapped spores and the wetting period of leaves were conducted. The number of spores which was presumed to penetrate into leaves was calculated from the following equation by investigating the number of trapped spores, wetting period of leaves, leaf area, plant height and wind velocity in the experimental field. PSN=DSN×RA×MIP×RI DSN=CSN×C×LA/GA PSN: The number of spores which was presumed to penetrate into leaves DSN: The number of spores which was presumed to deposit on leaves RA: The rate of spores which formed appressoria MIP: The maximum rate of appressoria which succeeded in penetration under the most favourable condition RI: The ratio of penetrated appressoria to MIP in each day which was calculated by using the wetting period of leaves and the mean temperature during the wetting period CSN: The number of trapped spores was corrected corresponding to wind velocity and plant height C: Correction coefficient LA: Leaf area GA: Cover glass area As a result of calculation, the largest number of spores which was presumed to penetrate into leaves per plant was 3.95 on July 26 and the next was 3.70 on June 29. On July 23 the largest number of spores trapped in the period of investigation, however, the number of spores which presumed to succeed in penetration was only 0.85. The numbers of lesions which were estimated by adding PSN in order of date almost coincided with the numbers of lesions occurred actually in the experimental field. These facts indicate that the degree of leaf blast severity can be forecasted one week before lesion appearance by investigating the number of trapped spores and the wetting period of leaves.