著者
横山 大希 川原井 晋平 榎本 力弥 菅原 優子 安齋 眞一 斑目 広郎 茅沼 秀樹
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.149-152, 2019 (Released:2019-09-20)
参考文献数
10

11歳齢,未去勢雄のミニチュア・ダックスフンドが右膁部の限局性脱毛を主訴に来院した。皮膚科検査にて休止期脱毛を認めたために画像検査を行い,皮下陰睾,前立腺肥大,腹腔内腫瘤を認めた。血清エストラジオール(E2)の高値とテストステロン/E2比の低値を示したため分泌性精巣腫瘍を疑った。腹腔内陰睾を外科摘出後,病理組織学的検査にてセルトリ細胞腫とセミノーマの混合腫瘍,皮膚生検にて皮膚萎縮と休止期毛包と診断した。術後に血清E2の低下と発毛があり,E2分泌性セルトリ細胞腫による性ホルモン性脱毛と診断した。
著者
内田 雅之 川上 正 川上 志保 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.185-188, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
13

9歳齢,避妊雌のミニチュア・シュナウザーが,幼少より夏を中心に悪化する躯幹の痒みで当院紹介受診となった。ほぼ全身に鱗屑,丘疹,紅斑,脱毛とともに汗と思われる湿潤が認められた。皮膚伸展指数は16.6%であった。毛検査,皮膚掻爬検査で特記すべき異常はなく,皮膚生検で著しく拡張したアポクリン汗腺,毛包の萎縮,淡染色性の真皮結合織に不規則な配列が認められた。支持組織の脆弱性による汗腺の拡張と多汗を疑い,犬の骨関節疾患治療薬であるポリ硫酸ペントサンナトリウムで治療したところ,湿潤と痒みが略治した。
著者
寺園 司 永田 雅彦 Affolter Verena K.
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.7-10, 2006 (Released:2006-08-29)
参考文献数
15

3歳齢,雌のバーニーズ・マウンテン・ドッグに躯幹背側,大腿,頭部を中心とした結節や潰瘍が多数生じ,強膜の充血や角膜の浮腫も認められた。抗生剤とプレドニゾロンで改善に乏しく皮膚生検を施行した。皮下脂肪織と真皮深層を中心に異型性に乏しい組織球様単核球を主体とした細胞浸潤が認められた。臨床像および組織像より,全身性組織球症と診断した。これまでの治療に免疫調整作用を有するグルセオフルビンを併用したところ,角膜浮腫は明らかに改善し,潰瘍も縮小傾向を示した。その後も薬物療法を断続的に投与し,随時支持療法を導入することで5年間管理することができたが,8歳時に呼吸不全により他界した。剖検は施行できなかった。我々が調べ得た限り,本邦における全身性組織球症の第1例と思われた。
著者
高安 浩平 村井 妙 安野 恭平 小林 亮介 池田 智武 上家 潤一 代田 欣二
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.105-111, 2016 (Released:2016-07-09)
参考文献数
19
被引用文献数
1

8歳,未去勢雄の右側大腿部皮膚に発生した小腫瘤を骨外性粘液性軟骨肉腫と診断した。組織学的に腫瘍は小葉構造を示し,血管に乏しく粘液性基質に富んでおり,腫瘍細胞は多形性で特徴的細胞索を形成していた。免疫染色で腫瘍細胞はvimentin,S-100a,neuron-specific enolaseおよび synaptophysin に陽性を示した。切除手術6ヵ月後には再発や転移を認めなかったが,15ヵ月後には右大腿部から腹部に亘る大きな再発腫瘍と多発性肺腫瘍を認め,剖検により,これらの腫瘍が原発腫瘍と同様であり,軟骨や骨を侵襲していない事が確認された。
著者
Maturawan Tunhikorn Danny W. Scott Hollis N. Erb
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.63-69, 2015 (Released:2015-07-29)
参考文献数
18
被引用文献数
1 5

猫の生検皮膚中に多数の肥満細胞がみられた場合,アレルギー性皮膚炎に矛盾しない所見であるとしばしば述べられている。今回,著者らはアレルギー性皮膚炎(143例)と非アレルギー性炎症性皮膚疾患(228例)に罹患した猫から採取され,ヘマトキシリン&エオジン(H&E)染色を施した皮膚生検標本を用いた後向き研究を実施した。本研究に用いた検体の全ては,1978年から2010年までの間にコーネル大学獣医学部解剖病理学部門に送付されたものであった。アレルギー性皮膚炎の猫と非アレルギー性炎症性皮膚疾患の猫との間で,真皮における肥満細胞数には有意差が認められなかった。またアレルギー性皮膚炎または非アレルギー性炎症性皮膚疾患のいずれに罹患した猫でも,肥満細胞数に関しては真皮浅層における数の方が,真皮深層における数よりも高値を示した。健常猫(31例)で調査したところ,真皮浅層における肥満細胞数は,トルイジンブルー染色を施した標本における数の方が,H&E染色を施した標本における数よりも高値を示した。
著者
蝦名 克美 小幡 玲子 磯村 洋 廉澤 剛
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医皮膚科臨床 (ISSN:13418017)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.9-13, 1998-03-20 (Released:2008-05-16)
参考文献数
10

約7年前に, 猫においてワクチン接種が原因として発生する線維肉腫についてレポートされ, この線維肉腫はワクチン接種後肉腫といわれた。この腫瘍は狂犬病ウイルスワクチン接種部及び猫白血病ウイルスワクチン接種部に発生するが, それだけではなく猫3種混合ワクチン接種部にも発生する。ワクチン接種後肉腫の好発部位は頸背部及び肩甲間であり, そしてこの部分は一般的にワクチンを接種する部分でもある。猫線維肉腫は皮膚及び皮下に発生する一般的な肉腫である。しかし, ワクチン接種部外に生ずる線維肉腫の場合, その発生部はほとんどが指趾及び頭部である。本症例はワクチン接種を行った肩甲間の皮下及び筋肉部分に発生した肉腫であり, 本レポートは3種混合ワクチン接種後に発生したワクチン接種後肉腫の本邦初のレポートである。
著者
山口 勝 山口 早也加
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.73-76, 2003 (Released:2007-02-06)
参考文献数
6

7歳齢,短毛雑種猫,去勢雄の冬季耳介脱毛。全血スライド凝集試験において4℃凝集,寒冷沈降試験において血清と血漿ともに沈降物を認め,再加温によりいずれも消退した。寒冷凝集素,クリオグロブリン,クリオフィブリノーゲンの関与した寒冷症を疑い,寒冷刺激回避とともにヘパリン類似薬を片側性に塗布したところ治療側耳介の育毛を認めた。治療開始6年を経過したが,同様の治療により冬の耳介脱毛を認めていない。
著者
中野 航 佐々木 広大 野村 健人 石川 恭平 濱田 七々美 古橋 秀成
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.139-143, 2022 (Released:2022-09-23)
参考文献数
12

去勢雄,9歳齢のトイプードルが疼痛を伴う四肢の肉球の紅斑およびびらんを主訴に当院を受診した。臨床および病理組織学的検査により,肝臓の空胞状変性を伴う壊死性遊走性紅斑(肝皮症候群)と診断した。治療としてプレドニゾロン,亜鉛補給,肝庇護療法,卵黄の給餌およびアミノ酸輸液を行なった。症状は一時的に改善したが,貧血,糖尿病,細菌感染などを伴って第207病日に死亡した。治療期間中の血中総分岐鎖アミノ酸(BCAA)およびチロシン濃度をモニタリングし,その意義を検討した。
著者
塚越 篤
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.133-137, 2022 (Released:2022-09-23)
参考文献数
13

10歳齢,雄,アメリカン・コッカー・スパニエルが,慢性外耳炎に対する治療を主訴に来院した。両側において,外耳道内に多発する結節および表皮肥厚による耳道狭窄が認められた。そこでビデオオトスコープと半導体レーザーを用いて多数の結節を取り除いた。病理組織学的検査の診断名は,耳垢腺腫と耳垢腺過形成であった。術後,中性電解水による定期的な耳道洗浄を行った。第60日目に軽快した。
著者
村山 信雄 田村 一朗 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.157-159, 2006 (Released:2006-10-12)
参考文献数
9

5歳齢,雌のキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルに,眼囲,口囲,肘,踵,肉球,陰部周囲におよぶ角化性皮疹が生じた。発症に先行して,出産と食餌変更があった。病理組織学的検査で毛漏斗部におよぶ錯角化と著しい表皮肥厚を認め,一部に浮腫がみられた。真皮乳頭では多形核球や単核球の浸潤が観察された。血液検査,甲状腺ホルモン検査,血清アレルギー検査で特記すべき異常はみられなかった。以上より亜鉛反応性皮膚症と診断した。亜鉛製剤の内服後角化の改善を認めたが痒みは持続し,前医にて単独投与では奏効しなかったプレドニゾロンの内服を併用したところ皮疹は消退した。寛解後亜鉛補充療法もステロイドも必要としなかった。自験例が本症の好発犬種ではないことから,病因として食餌による一時的な亜鉛吸収傷害が予想された。
著者
村山 信雄 高橋 尚子 樋詰 俊章
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.61-64, 2005 (Released:2006-10-27)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

8歳齢, 未去勢雄の雑種猫に発熱, 体表リンパ節腫脹, 多発性関節炎, 顔面と耳介の脱毛を伴う落屑性紅斑, 肉球の角化亢進を認めた。皮膚病理組織学的検査で液状変性と真皮浅層および付属器周囲の単核球浸潤がみられた。関節X線検査で手根および足根関節に骨破壊像が観察された。血液検査で好中球増加症がみられたが, FeLVとFIVは陰性, 尿検査で特記すべき異常なく, 抗核抗体検査で明らかな陽性所見は認められなかった。以上より, 全身性エリテマトーデスの不完全型が疑われた。プレドニゾロン5mg/kgBIDで治療したが改善なく, トリアムシノロン4mg/kgBIDが奏功した。
著者
Renzo Andrés Venturo Barriga Vincent E. Defalque Jorge Guzman Rodriguez Siever Morales-Cauti
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.11-15, 2022 (Released:2022-03-12)
参考文献数
22

Heterodoxus spinigerによる刺咬性シラミ症と診断された1歳齢の雄犬において,サロラネル2.5 mg/kgを用いた単回の経口投与にて良好な治療成績を得た。投与後,急速な皮膚病変と掻痒の改善が認められた。治療後28日目の時点でも,皮膚検査の結果は基準範囲内であり,シラミは検出されなかった。本報告は,筆者の知る限りHeterodoxus spinigerによる刺咬性シラミ症と診断された犬に対してイソキサゾリンを用いて治療を実施した初めての報告である。
著者
鳥飼 和史 星野 友哉 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.17-20, 2022 (Released:2022-03-12)
参考文献数
11

5ヶ月齢,メスのボルゾイの腹部に境界明瞭な淡紅色毛包性色素斑を左右対称性に認めた。病変部の組織生検により脂腺の増生とともに脈管拡張が観察された。臨床的および組織学的に病変は成長とともに消退し,再発はなかった。その病態として成長期内分泌系の関与を推察した。
著者
岡田 悟 山田 優樹 伊從 慶太 古家 優
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.3-9, 2022 (Released:2022-03-12)
参考文献数
15

7ヶ月齢の猫が,左後肢足底部からの反復性の出血を主訴に来院した。患部のパンチ生検による病理組織検査より,脈管奇形が示唆された。パンチ生検後に生検部位からの出血が止まらなかったため,電気メスを用いた焼灼処置を行った。出血量は減少したものの,その後も出血は改善と再発を繰り返した。第30病日に造影CT検査を行ったところ,患部周囲の血管新生および血管拡張が認められた。第37病日に止血を目的として,左後肢第4趾と第5趾を断趾した。断趾後の組織を用いた免疫組織化学による病理組織診断の結果,この脈管奇形は皮膚リンパ管奇形と診断された。病理組織学的マージンは確保されていた一方で,術後1ヶ月の肉眼所見では皮膚表面の小嚢胞が少数残存しており,完全切除に至っていない可能性が考えられた。しかし,術後20ヶ月の時点において出血は認められず,日常生活も問題なく送れている。本例は猫で報告の少ない皮膚リンパ管奇形の報告であり,その診断と治療について考察する。
著者
小林 亮介 臼井 玲子 代田 欣二
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.199, 2008 (Released:2008-12-27)
参考文献数
2
被引用文献数
2 1
著者
蟻川 奈緒子 チェンバーズ ジェームズ 林 幸太郎 内田 和幸 苅谷 卓郎
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.77-82, 2018 (Released:2018-06-28)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

メルケル細胞癌を含む多発性皮膚腫瘍が発生した15歳齢の猫の臨床転帰および病理所見について報告する。腰背部に皮膚腫瘤を認め,病理組織検査からリンパ節転移を伴うメルケル細胞癌と診断した。背部にも多発性皮膚病変を認め,病理組織学的にボーエン様表皮内癌,基底細胞癌,および皮膚肥満細胞腫と診断した。第154病日に斃死し,病理解剖にて骨盤腔内にメルケル細胞癌の浸潤病変を確認した。本論文では,他の複数の皮膚腫瘍との併発がみられた猫のメルケル細胞癌の病理解剖および組織検査所見の詳細を述べる。