著者
小島 彩子 佐藤 陽子 橋本 洋子 中西 朋子 梅垣 敬三
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.141-145, 2010 (Released:2010-09-10)
参考文献数
25
被引用文献数
2 1

最近の野菜の栄養価が低下しているという情報が流されている。こうした情報は,単に日本標準食品成分表(食品成分表)の収載値を引用して比較しているが,食品成分表では改訂ごとに分析方法が変更されていることは考慮されていない。このような情報における分析方法の関与について検証する目的で,ビタミンC(VC)に焦点をあて,9種類の野菜のVCを,これまで食品成分表で使用された3つの分析方法,すなわち滴定法(I),比色法(II),HPLC法(III)を用いて比較した。ホウレンソウ,コマツナ,ニンジンのVC含量はI>II>IIIのように明確に年代順に低下した。この実測値の変動は,食品成分表におけるVC収載値の変動とよく一致していた。トウガンのVC含量は食品成分表収載値の変動と同様に方法IIによる実測値が他法よりも高かった。いくつかの野菜では,食品成分表におけるVC収載値の変動が分析方法だけでは説明できなかったものの,全体としては,実測値の変動は食品成分表の収載値の変動とよく一致していた。以上の結果より,過去の食品成分表のVC収載値の変動に対して,分析方法の違いがある程度は影響したことが示唆された。(オンラインのみ掲載)
著者
佐藤 陽子 休石 千晶 千葉 剛 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.268-274, 2017-12-25 (Released:2017-12-28)
参考文献数
19
被引用文献数
2

ビタミンB6はレボドパと相互作用を起こすとされているが,その具体的な摂取量は明確になっていない.そこで,レボドパとビタミンB6の相互作用に関する論文の系統的レビューにより,レボドパの薬効に影響を与える可能性が強いビタミンB6摂取量について検討した.論文は2017年8月に2つのデータベースにて検索し,11報を採択した.その結果,ビタミンB6摂取量が50mg/日以上でレボドパの薬効が減弱する可能性が高くなると考えられた.したがって,ビタミンB6欠乏がなく,かつ,レボドパとの相互作用が回避できるビタミンB6摂取量は日本人の食事摂取基準における推奨量と上限量の範囲と同等と推定された.以上より,ビタミンB6は通常食品からの摂取では特に留意する必要はなく,多量に摂取できるサプリメントや市販薬の利用に注意すべきことが示された.
著者
佐藤 陽子
出版者
東亜大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2016-04-01

多くの哺乳類において、精細胞はその発生課程で体細胞より2℃から7℃温度の低い条件下ではじめて正常な分化及び増殖をすることが知られている。哺乳類において腹腔内に精巣が留まる停留精巣では、多くの動物で陰嚢と比較し精巣温度の上昇によるストレスのため、精子形成異常を示すと考えられているが、その詳細な仕組みは不明である。一方、ゾウや単孔類の精巣は停留精巣であるにも関わらず、正常な精子形成を示す特異的な動物である。今迄にゾウの精細胞及び体細胞への熱ストレスの影響を検討するため、ゾウの精巣組織断片の培養系及びゾウの初代繊維芽細胞の培養下で人為的な熱ストレス存在下での熱ストレス関連蛋白質の検討を行い、ゾウ精巣では、他の動物とは異なる仕組みにより精細胞が保護されている可能性、増殖と分化誘導の可能性を示して来た。今回、今迄の解析で得られた人為的な熱ストレス下で他の動物と異なる発現を行う熱ストレス関連蛋白質に注目し、通常のゾウ精巣での発現を解析した。解析の結果、人為的な熱ストレス下ではなくとも、人為的熱ストレスで誘導可能な熱ストレス蛋白質をゾウ精巣では体内で通常に発現しており、これらの熱ストレス蛋白質の発現動態は、ゾウ精巣では他の動物と比較して局在や発現量が異なる事が明らかとなった。特に、HSP90Aはゾウ精巣組織培養下での人為的な熱ストレスでは一番はじめに誘導される物質であり、発現が熱ストレスと対応しているとすれば、体内の精巣間質では、精細管内と比較して温度が高い可能性も考えられる。またゾウ精巣では、体内で通常にミトコンドリアシャペロンであるHSP60の発現が強く見られATP5Aの発現が高かったことから、ミトコンドリアを構成する蛋白質を熱ストレスから守り、ミトコンドリアの呼吸活性を上昇させ、ゾウ停留精巣内での精子形成状態に寄与している可能性が考えられた。
著者
佐藤 陽子 村田 美由貴 千葉 剛 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.157-165, 2015-08-25 (Released:2015-09-03)
参考文献数
29
被引用文献数
2 6

ワルファリンはビタミンKと相互作用を起こすことから,その服用者にはビタミンK摂取制限が指導されるが,制限を過度に意識すると摂取不足やQOLの低下を招く.そこで,ワルファリン服用者が許容可能なビタミンK摂取量の幅を検討するため,ワルファリンとビタミンKの相互作用による有害事象論文の系統的レビューを行った.論文は2014年10月に2つのデータベースにて検索し,採択した16報より摂取の上限量を,6報より下限量を検討した.その結果,ワルファリン服用者におけるビタミンK摂取量は,25~325 μg/日の範囲で,日ごとの変動幅は292 μg未満に収め,150 μg/日の摂取を目指すことが適切と考えられた.この結果から,日本人の主なビタミンK供給源のうち,禁止すべき通常の食品は納豆であり,緑黄色野菜は摂取量の調節をしながら摂取できることが示された.
著者
大谷 知子 賀勢 泰子 國友 一史 下岡 和美 川添 和義 佐藤 陽一 山内 あい子
出版者
The Japanese Society of Nephrology and Pharmacotherapy
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.3-12, 2018 (Released:2018-07-27)
参考文献数
23
被引用文献数
1

寝たきり高齢患者のための有効で安全な薬物療法を行うためには、加齢が薬物体内動態に影響を及ぼすため、腎機能の正確な評価が必要である。日本では、酵素法により測定された血清クレアチニン(SCr)値を基にした日本人向け推算糸球体濾過量(eGFR)やCockcroft-Gault(CG)式により算出した推定クレアチニンクリアランス(eCCr)が患者の腎機能の指標として使用されている。しかし、eGFRやeCCrを高齢患者にそのまま使用するにはいくつかの問題があり、CG式は、外国人母集団のデータを基に作成された式であること、Jaffe法により比色法で測定されたSCr値を用いていることである。これらの問題点に対処するため、これまでSCr値に対する様々な補正プロトコールが提案されている。本研究の目的は、寝たきり高齢患者を対象に、24時間蓄尿法による実測CCr(mCCr)と比較して、eCCrを算出する最も精度の高いSCr補正方法を決定することである。2014年8月から2015年5月に鳴門山上病院入院中の65歳以上の患者を対象に、mCCrを測定した。次の(a)~(e)の方法で求めたSCr値を基にCG式からeCCrを算出し、mCCrと比較した。(a)酵素法で測定したSCr値、(b)+0.2補正法:酵素法SCr値に0.2 mg/dLを加えてJaffe法の値に換算したSCr値、(c)Dooley法:SCr値<0.06 mmol/Lの場合0.06 mmol/Lに補正、(d)Smythe法:SCr値<1.0 mg/dLの場合1.0 mg/dLに補正、(e)古久保法:男性はSCr値<0.8 mg/dLの場合0.8 mg/dLに、女性はSCr値<0.6 mg/dLの場合0.6 mg/dLに補正した。mCCr(対照群)と各群のeCCrをDunnett検定により比較した結果、(a)群と(d)群においてmCCrとの間に各々有意な差(p<0.05)が認められた。Bland-Altman分析を行った結果、(b)群、(c)群および(e)群において、eCCrとmCCrとの間に一致性が認められた。予測精度をmCCrの±30%以内のeCCrを有する患者のパーセンテージとして比較した結果、(b)群で75.6%と最も高く、続いて(c)群で71.1%であった。異なる補正方法によるeCCrとmCCrとを比較した結果、酵素法で測定したSCr値に0.2 mg/dLを加えてJaffe法に近似させたSCr値を使った方が、eCCrとmCCrとの一致性がより高いことが明らかとなった。
著者
梅垣 敬三 尾関 彩 西島 千陽 佐藤 陽子 千葉 剛
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.696-701, 2017 (Released:2018-12-31)
被引用文献数
1

There is concern about the occurrence of adverse events related to the use of supplements containing vitamins and minerals, but the actual condition is not understood well. Therefore, we examined the characteristics of adverse events due to the use of supplements containing vitamins and minerals by extracting the adverse events from the database in “Information system on safety and effectiveness for health food(HFNET)”, which collects health food reports both inside and outside the country. Eighty-five adverse cases (domestic 24, foreign 61) were extracted from the HFNET by July 2016. The data revealed that the causal factors of adverse events due to the use of supplements containing vitamins and minerals were their overdose, their use as the medicine, their concomitant use with other medicines, and their use by infants and sick people. Although many cases were due to the use of vitamin D supplement, most of the cases were related with its overdose found in overseas. To ensure the safety of supplements containing vitamins and minerals, it would be necessary to pay attention to their use by vulnerable individuals including infants and sick people, their overdose, and their use in combination with other medicines.
著者
十塚 正治 The Super Science High School Consortium 佐藤 陽一 田中 雅嗣
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.124, no.2, pp.85-91, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
19

平成20~24年度に文科省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)コンソーシアムとして日本国内(八重山諸島,宮古島,沖縄本島,佐賀県,兵庫県,宮城県,青森県)の高校と共同で,Y染色体DNAとミトコンドリアDNA(mtDNA)のハプログループを解析し,日本各地における頻度分布を調査した。その結果,Y染色体ハプログループに関してはDE*は佐賀県,青森県と比較して,琉球地域で高い割合を示した。ハプログループC1は佐賀県,青森県と比較して,琉球地域で高く,逆にC3は佐賀県,青森県と比較して琉球地域で低い結果となった。ハプログループO2b1は沖縄本島において低頻度を示したが,O2b*, O3の頻度は地域間で大きな違いはみられなかった。mtDNAに関しては,佐賀県,兵庫県,青森県と比較し,琉球地域においてハプログループM7aは高頻度を示し,N9aは低頻度を示すことがわかった。N9bは頻度数値がどこも小さいが,青森,琉球地域に対し,中間に位置する兵庫・大阪・京都と佐賀が比較的低かった。日本本土と琉球地域ではY染色体DNAとmtDNAのハプログループの頻度に違いがみられることがわかった。
著者
小島 彩子 佐藤 陽子 西島 千陽 梅垣 敬三 千葉 剛
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.139, no.10, pp.1333-1347, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)
参考文献数
116
被引用文献数
1

Cancer patients use health foods (HFs) as complementary and alternative medicine, although the details of their adverse events (AEs) are unclear. We searched three databases [PubMed, “Igaku Chuo Zasshi”, and Information System on Safety and Effectiveness for Health Foods website (https://hfnet.nibiohn.go.jp/)] for case reports on AEs related to HF intake in cancer patients published before October 2018. Of the matched reports, 76 studies and 92 patients (31 in Japan, 61 overseas) that met the selection criteria were included in this review. Thus, the severity of AEs and outcomes were not related to either the concomitant use of HF with cancer chemotherapy or cancer stages of patients. AEs caused by HF intake itself accounted for 87%, while drug-HF interaction accounted for 11%. According to the Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) classification, 70% of patients whose grades were identified had severe cases (grades 3 to 5). In Japanese patients, hepatic and respiratory disorders accounted for 52% of the severe cases. Cases were predominantly developed as a result of an allergic mechanism, and mushroom products were mostly used. Overseas, serious cases were induced by products that were already indicated for safety problems. Moreover, notable AEs were recognized, such as hypercalcemia, which were caused by intake of HF containing calcium, vitamin D, and shark cartilage, and bacterial infection caused by probiotic products. Analyzing the details of AEs related to HF intake can help health professionals and cancer patients prevent health hazards.
著者
五十嵐 友香 佐藤 陽治
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.151, no.6, pp.254-259, 2018 (Released:2018-06-08)
参考文献数
5

わが国では,ヒトiPS細胞の樹立が契機の一つとなり,再生医療や細胞治療(再生医療等)の研究と実用化の促進のため国を挙げた取り組みがなされている.特に再生医療等を支える医事・薬事の各種規制の抜本的改革が精力的に進められてきた.医事規制では,安全な再生医療等を迅速かつ円滑に患者に提供する目的で『再生医療等安全性確保法』が制定され,薬事規制では,『薬機法』において「再生医療等製品」が定義されるとともに,再生医療等製品の特性に応じた条件・期限付承認制度が導入された.しかし,実用化・産業化における開発・製造に関するコストなど解決すべき課題はまだ多い.特に米国では2016年末に21st Century Cures Actが成立し,日本の条件・期限付承認制度に類似した制度が設けられるなど,追い上げも激しくなりつつある.本稿では,大きく動きのあった再生医療等にかかる規制について国内外の動向と再生医療の現状と今後対応すべき課題について概説する.
著者
佐藤 陽一
出版者
日本経営倫理学会
雑誌
日本経営倫理学会誌 (ISSN:13436627)
巻号頁・発行日
no.8, pp.51-62, 2001-03-31

Since the Ikeda cabinet revived the current decoration system in 1963, many businessmen have been decorated. Nowadays, because of the increased tenacity of acquiring a decoration,senior executives pursue a higher position and stay there for a longer period.Aging and moral hazards have become conspicuous phenomena among them. If the current deplorable system is abolished,if aged leaders change their interest into a service to the public utilizing their insight and expertise, and if the younger generation demonstrate their ability as new leaders, then we can expect a vital ethical 21st century.
著者
鈴木 伶音 髙橋 和詩 荒川 知輝 田澤 士琉 佐藤 陽菜乃 川﨑 興太
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.439-446, 2023-03-10 (Released:2023-03-10)
参考文献数
9

本研究の目的は、原発被災地の自治体職員の現状や課題を把握することである。本研究を通じ、原発事故後には非正規職員が増加しており、原発事故前の行政経験がある正規職員は全体の3割にすぎないということ、業務量が多いと感じている職員が多く、遠距離通勤や家族との別居など、原発事故による被害を引きずっている者が少なくないことが明らかになった。今後の検討課題として、復興に関しては、被災者の支援の充実について指摘されることが多いが、その被災者を支援する基本的な行政主体は自治体であることから、同時に自治体職員の支援の充実が必要であることを指摘した。

5 0 0 0 OA ヒトの歩行

著者
山崎 昌廣 佐藤 陽彦
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.385-401, 1990 (Released:2008-02-26)
参考文献数
43
被引用文献数
7 16

歩行研究は日常生活における自然歩行と実験室内で実施される実験歩行に分けることができる。これらの方法から得られた結果は同じ速度であっても一致しないものがあり,またそれぞれの実験条件でしか観察できない内容もある。そこで,本稿では両者の結果を示すことにより,その違いを明確にしながらヒトの歩行の特徴を論じた。歩行の特徴は歩幅および歩調を資料として速度,性,年齢および民族別に考察した。またこれに加えて,自然歩行では時代,履物および地域差についても論じた。実験歩行については床歩行とトレッドミル歩行に分け,歩行時の上肢動作およびエネルギー代謝量についても言及した。
著者
根本 学 佐藤 陽二 後藤 英昭 澤田 祐介 行岡 哲男 松田 博青 島崎 修次
出版者
日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.12, pp.717-724, 1999-12-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
13

乗車用安全帽(以下ヘルメット)の着用が頭部保護に関し,効果の高いことは周知のごとくである。一方,臨床の場ではヘルメットを着用していたにもかかわらず,頭部・顔面外傷にて救急医療施設に搬送される患者は少なくない。ヘルメットは日本工業規格(以下JIS規格)により3種類(A種,B種,C種)に分類されており,一般使用者の多くはA種もしくはC種を着用している。臨床検討として,過去2年間に経験した着用ヘルメットが判明している二輪車事故患者157例を対象とし,頭部・顔面外傷の有無とその損傷部位,および着用ヘルメットにつき検討した。実験的研究として,同一条件下で市販されているJIS規格AおよびC種ヘルメットの衝撃吸収試験を行った。統計学的検討はχ2検定およびt検定を用いて行い,危険率5%未満を有意とした。また,実験における測定値は,平均値±標準偏差で表示した。臨床例では157例中,A種着用群は56例,C種着用群は101例であった。頭部・顔面外傷の頻度はA種着用群60.7%であり,C種着用群25.7%に対し有意(p<0.001)に多かった。衝撃吸収試験ではA種よりC種が有意差(p<0.001)をもってすぐれた衝撃吸収能を示した。とくに376cmからの落下実験では,A種で脳に損傷を与えるとされている衝撃加速度400Gを超える値が測定された。JIS規格では125cc以下の排気量に対し,A種ヘルメットの着用を許可しているが,今回の検討でA種ヘルメットの危険性が判明した。ヘルメットの生産・販売にあたり,消費者に保護性能を明確に伝え,消費者自身がヘルメットの機能を認識することが大切であり,今後,現状に見合ったJIS規格の再検討が必要と考える。
著者
佐藤 陽子 中西 朋子 千葉 剛 梅垣 敬三
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.321-332, 2014 (Released:2014-08-08)
参考文献数
25
被引用文献数
2

目的 葉酸には天然型と合成型(folic acid)がある。胎児の神経管閉鎖障害(NTD)リスク低減に対する葉酸摂取の意義は明確で,妊娠可能な女性には利用効率の良い folic acid 摂取が推奨されているが,我が国の NTD 発症率に減少傾向はみられない。本研究は,妊婦における葉酸の摂取時期や摂取量に関する認識と folic acid 摂取行動に影響を与える要因を全国規模で明らかにし,現状の問題点を把握することを目的とした。方法 2012年 1 月に,インターネットを用いた質問調査を実施した。調査会社の登録モニターである20~40代の妊婦2,367人を対象とし,1,236人から回答を得た。調査項目は,属性,葉酸および胎児の NTD に対する認識と行動,サプリメント利用状況とした。妊娠 3 か月までの folic acid 摂取行動と他項目との関連を,クロス表における χ2 検定にて,また,属性との関連については,非摂取群を基準としたロジスティック回帰分析にて検討した。結果 85.2%の妊婦が妊娠中に意識的に葉酸を摂取しており,その多くは妊娠 1 か月以降から,錠剤・カプセルなどのサプリメントから folic acid として摂取を開始していた。妊娠 3 か月までの folic acid 摂取行動は,葉酸に関する認識,サプリメント利用経験と関連が認められ,さらに,若年,第 2 子以降の妊娠であることが負の影響を示した。結論 多くの妊婦が妊娠中に folic acid をサプリメントから摂取していたものの,その開始時期は NTD リスク低減のためには遅すぎることが示された。今後の NTD 予防のための folic acid 摂取の対策として,経産婦も対象に含めた正確な情報提供の他,folic acid を添加した加工食品の利用の推奨,食材への folic acid 添加の推進など,新たな対策に向けた検討が必要である。
著者
横谷 馨倫 中西 朋子 千葉 剛 佐藤 陽子 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.183-187, 2014-08-25 (Released:2014-09-11)
参考文献数
13
被引用文献数
3 4

グルコサミン(G)とコンドロイチン硫酸(CS)がワルファリンの抗凝固能に与える影響を肝CYP系に着目してマウスのin vivo実験系で検討した.GとCSは飼料中に0.3%および1% (w/w)で添加し,マウスに2週間摂餌させ,最後の2日間ワルファリンを投与した.GとCSの一日摂取量は,0.3%群では443 mg/kgと464 mg/kg,1%群では1,523 mg/kgと1,546 mg/kgであった.その結果,GとCSはいずれもワルファリンの抗凝固能を増強せず,肝CYP系にも影響しなかった.以上の結果から,GとCSは,それら自身では肝CYP誘導を介したワルファリンの抗凝固能の増強は起こさないことが示唆された.