著者
パナ ソムサク
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.108-115, 1987-07-15

タイ国ナコーンラッチャシマ州パクチョン産のHemiplecta distinctaのamatorial organ(恋愛腺とでも訳すべきか。恋矢腺に相当するとされる)について, その形態を観察し組織化学的ならびに微細構造の研究を行なった。この器官には, 多量の粘液を分泌する2種の粘液細胞がある。一つは中性ムコ多糖類を分泌し, 多数の粗面小胞体・ゴルジ体および遊離リボゾームが見られる顆粒分泌細胞(M1)で, 他は酸性ムコ多糖類を分泌する粘液細胞(M2)である。内腔壁細胞(LC)があり酵素原顆粒を生産する。したがってこの器官は, それ自体の, あるいは相手個体の生殖関係部分での分泌物質生産のための酵素反応に役立つものと思われる。

4 0 0 0 巨大なイカ

著者
瀧 巖
出版者
日本貝類学会
雑誌
ヴヰナス
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, 1936-08-25
著者
Paul Callomon Amanda S. Lawless
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1-2, pp.13-27, 2013-01-31 (Released:2016-05-31)
参考文献数
27

主に貝殻と歯舌の形態に基づいてスジマキイソニナ属(新称)Lirabuccinum Vermeij, 1991の現生種の再検討を行い,黄海から見出された1新種を記載した。さらに,関連するタクサのタイプを検討し,Searlesia constricta Dall, 1918, Euthria hokkaidonis Pilsbry, 1901 とE. fuscolabiata E. A. Smith, 1875のレクトタイプを指定した。Lirabuccinum dirum (Reeve, 1846) スジマキイソニナ属のタイプ種,カリフォルニアからアラスカまでのアメリカ西岸に分布。Lirabuccinum fuscolabiatum (E. A. Smith, 1875) エゾイソニナ北海道から東北沿岸太平洋側,日本海,および朝鮮半島南部に分布。土佐湾からも記録がある。Fususmodestus Gould, 1860 [non philippi, 1844]トバイソニナ,Searlesia constricta Dall, 1918チョウセンイソニナは異名。Lirabuccinum hokkaidonis (Pilsbry, 1901) ホソエゾイソニナ(新称)本種はエゾイソニナの亜種,あるいは近年は主に異名として扱われてきた。今回,タイプ標本を初めて図示し,多くの標本を比較することにより,両者は独立した種であることが明らかとなった。本種はエゾイソニナよりも細長く,縦肋がより細く密に並ぶ。これまで北海道北西岸から男鹿半島の間の海域からのみ採集されている。Lirabuccinum musculus n. sp. コネズミツノマタ(新称)見かけ上イトマキボラ科の種に類似するが,軟体部の外部形態と歯舌の形態から本属に含まれることが分かった。タイプ産地(山東省威海沖の黄海,水深 30~ 60 m)からしか知られていない。これらの種を貝殻の形態で詳しく比較すると,まず貝殻の厚さでスジマキイソニナが北西太平洋産の3種と著しく異なる(前者の方が厚い)。また,貝殻断面でみた殻口内の螺状襞の構造などにも両者に明らかな違いが認められ,太平洋の両岸で大きく分化している可能性が示された。しかし,歯舌や軟体部外部形態の違いに大きな違いがないことから,属レベルで区別するためには化石種との比較などのさらなる証拠が必要である。
著者
鳥羽 源蔵
出版者
日本貝類学会
雑誌
ヴヰナス (ISSN:24329975)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.152-153, 1930-12-10 (Released:2018-01-31)
著者
冨山 清升
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.87-100, 1993-03-31
被引用文献数
2

小笠原諸島父島において, アフリカマイマイAchatina furica(Ferussac)の殻の成長と生殖器形成の様式について観察をおこなった。一般に有肺類に属する陸産貝類は生殖器が形成されて性成熟すると殻の成長が停止し, 殻口外唇部が反転肥厚することが知られている。しかし, 本種では殻口反転はみられない。本種は生殖器が形成された後も3∿8ケ月の間, 殻の成長が継続する。性成熟が完了すると殻の成長は停止し, 時間とともにカルシウム沈着によって殻口外唇部は肥厚する。年齢の若い個体ほど殻口外唇部の厚さは薄いことが経験的に知られているため, 本研究では, 生殖器が形成されている検討個体を, 殻口外唇部の厚さで, 3つの令クラスに機械的にふりわけて比較した。すなわち, 若齢成熟個体(厚さ0.5mm未満), 中間個体(0.5mm以上0.8mm以下), および完全成熟個体(厚さ0.8mmを越える個体)とした。まず, 野外個体で, 殻口外唇部の厚さと殻の成長との関係を検討してみた。その結果, 殻口外唇部の薄い個体は殻の成長が著しく, 殻口外唇部が厚い個体は殻の成長が停止していることがわかった。また, 完全成熟個体とした令クラスはほとんど殻は成長していなかった。殻の成長率と殻口外唇部の厚さは相関があることがわかった。次に加齢に伴う性成熟の状態を比較するために, 若齢成熟個体と完全成熟個体の間で, 生殖器を比較した。その結果, 若齢成熟個体は精子生産のみで卵はほとんど生産しておらず, 完全成熟個体は精子・卵共に生産していることがわかった。しかし, 交尾嚢の比較の結果, 若齢成熟個体・完全成熟個体ともに交尾は行っており, 両者ともに生殖行動には参加していることがわかった。すなわち, 本種は雄性先熟の様式をもつものと推定された。有肺類は卵形成直前にタンパク腺が発達することが知られている。完全成熟個体では, タンパク腺がよく発達した卵形成直前の個体は交尾嚢が重く, よく交尾していることがわかった。本研究の結果, 殻口外唇部の厚さを測定することによって, 各個体の殻成長と性的成熟がある程度推定できることがわかった。
著者
岩崎 敬二 石田 惣 馬場 孝 桒原 康裕
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1-4, pp.67-81, 2017-11-27 (Released:2018-01-11)
参考文献数
50

Mytilus trossulus Gould, 1850 is a mytilid bivalve with a boreal distribution in the northern Pacific Ocean, northern Atlantic Ocean, and Baltic Sea. The distribution of M. trossulus in Japanese waters was hitherto believed to be restricted to the northernmost island of Hokkaido. However, we discovered dry specimens and dead shells of this species on the northern and central Japan Sea coasts of Honshu Island. Specimens were collected before 1936, before 1948 and in 1951 from Shikaura, Fukui Prefecture (35°56´N, 135°59´E), and were archived at the Fukui City Museum of Natural History as "Mytilus edulis Linnaeus 1758". Dead shells with rotten soft bodies were collected from the Kisakata sandy shore, Akita Prefecture (39°12´24˝N, 139°53´40˝E) on March 29, 2014. In addition, we found old records of the nonindigenous congener M. galloprovincialis Lamarck, 1819 in molluscan lists that were published in Akita, Niigata, Ishikawa and Fukui Prefectures from the 1930s to 1950s. This species was introduced to Japan before 1932 and appears to have been infrequently confused with M. trossulus. In 2007, 2010 and 2014, we conducted field surveys in the regions where the dry specimens and dead shells had been collected but found no M. trossulus specimens. In view of the results of the field surveys and water temperature regime in its distribution range, we believe that the dry specimens and dead shells had drifted from the more northerly Japan Sea coasts of Russia or Hokkaido. The old records of M. galloprovincialis in the molluscan lists may indicate the actual occurrence of the nonindigenous species during the early years of its invasion in Japan.
著者
奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.93-99, 2006-10-10

以前からそういう話を聞いてはいたが,先頃茨城県にある「あ印」というタコの加工会社に招かれて工場を見学させて貰ったところ,タコが大量の貝を「採集」して来ることを実見した。過去にどこかに誰かが,同様の情報を書いているのではないかと探してみたところ,築地の中央魚類(株)にお勤めの会員石川謙二氏から氏がタコが採って来る貝について1986年春相模貝類同好会でご発表になり,同年,雑誌「アニマ」夏休み特大号に写真付きの記事を掲載されたとご教示を戴いた。その上,同氏から1996年2月23日に同好会に配布された「アフリカのタコが携帯してくる貝」という資料(本稿付録に掲載)も戴いた。いっぽう,岡本正豊氏からは「週間文春」1981年4月16日号に掲載された「タコのおみやげ」というカラーグラビアのコピーをご提供戴いた。この記事には明石市の冷凍たこの解凍場に勤務する伊藤明夫氏という人が集めた貝の写真が付いている。このような週刊誌の貝類関係記事を保管しておられる岡本氏のマメさにも感服したが,同好会や学会のマニア以外にも伊藤氏のような隠れた貝類収集家がいるのも驚きであった。石川氏の業績や「週間文春」の記事に比べれば,今回のコレクションは僅か1回きりのしかも短時間の採集努力に留まったが,筆者としては初めての体験でおおいに興味をそそられたので,小文とした。
著者
三浦 一輝 藤岡 正博
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.137-150, 2015

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著者
山下博由 芳賀拓真 Jørgen Lützen
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.123-133, 2011

シャコ類の巣穴に共生することで知られているDivariscintilla属(ヨーヨーシジミ属,和名新称)の新種が,大分県から発見された。これは同属の日本及び北太平洋からの初めての記録である。Divariscintilla toyohiwakensis n. sp.ニッポンヨーヨーシジミ(新種,新称)殻長約4 mm,殻高約3 mm,膨らみは弱く,丸い亜三角形で,殻頂は僅かに前方に寄り,腹縁中央はごく僅かに窪む。白色半透明,薄質で,殻表は平滑で光沢があり,殻の内側には縁部で強まる多くの放射条がある。両殻に1主歯があり,側歯を欠く。外套膜は殻を覆い,前部に2対,後部に1対と1本の外套触角がある。口の直下の内蔵塊前部に1個のflower-like organ(花状器官:和用語新称)を備える。足は前部・後部に分かれ,後部は顕著に伸張し,その後端背面にbyssal adhesive gland(足糸粘着腺:和用語新称)があるが,組織切片では腺構造は確認できなかった。足の底面にはbyssal groove(足糸溝)が前部から後端まで走っている。フロリダ産のDivariscintilla octotentaculata Mikkelsen & Bieler, 1992に,殻や軟体外形が近似するが,D. octotentaculataは触角が1対多く,花状器官を欠く。ニッポンヨーヨーシジミは,Acanthosquilla acanthocarpus (Claus, 1871) シマトラフヒメシャコの巣穴中に小集団を形成して生息し,その壁面に足糸で付着している。タイプ産地:大分県中津市大新田付記:ヨーヨーシジミ属は,ニュージーランド・西オーストラリアに1種,フロリダ・カリブ海に5種,日本に1種が分布するが,いずれもトラフシャコ上科の種の巣穴に生息し,同上科との生態・進化上の密接な関係が示唆される。種小名toyohiwakensisは,タイプ産地の大分県中津市を含む豊前・豊後地方の古名「豊日別」に由来する。属・種の和名は,玩具のヨーヨーのように足糸でぶら下がり上下する生態に着目して命名されたDivariscintilla yoyo Mikkelsen & Bieler, 1989と,そこから派生した英名yoyo clamに由来する。D. yoyoには,ヨーヨーシジミの和名を与える。
著者
金丸 但馬
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.1, no.5, pp.153-154, 1961-04-30
著者
三宅 裕志 窪寺 恒己 奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.38-41, 2005-07-30

Video images of a very large squid (ML 1m<) were taken by the ROV Hyper-Dolphin at a depth of 1161m near the bottom of Sagami Bay in March, 2004. It was tentatively identified as Gonatopsis sp. (Gonatidae), and may represent an undescribed species. It is surprising that the existence of such a large squid in Sagami Bay has not been recorded to date, despite a tremendous amount of sampling and fishing.
著者
波部 忠重
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.30-31, 1966-10-25
著者
久保 弘文
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-7, 1997-04-30

A new species of naticid snail is described from Okinawa Island, East China Sea : Naticarius pumilus n. sp. It is the smallest species found so far in the family Naticidae and has a multisulcate operculum, the outermost spiral rib of which is bevelled and has tile-shaped projections. This species is morphologically different from all of its congeners by shell size, shell color pattern and sculpture of operculum.
著者
奥谷 喬司 リンズィー ドゥーグル 窪寺 恒己
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.32-36, 2007-08-31

ヒレギレイカCtencpteryx siculus (Verany,1851)は沖合性で稀にしか採集されない小型のイカである。鰭があたかも魚類の鰭のように軟条で支えられているように見える風変わりなイカで,固定標本を見ると大抵軟条間の薄膜は切れぎれになっているところからヒレギレイカ(瀧巌)の和名がある。筆者の一人(D.L.)は昨年3月,房総半島鴨川沖で,スーパーハープ・ハイビジョンビデオカメラを搭載した無人探査機ハイパードルフィンによって,世界ではじめて本種の遊泳する姿を観察・撮影した。映像に撮られた証拠標本はハイパードルフィン装備のスラープ・ガン(吸引式採集器)により採集した。
著者
青木 茂男
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.39-40, 1968-07-20
著者
平野 弥生 C. D. Trowbridge 平野 義明
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3-4, pp.212-216, 2013-10-31 (Released:2016-05-31)
参考文献数
19

餌海藻の細胞内に入り,内側から摂餌を行う嚢舌目ウミウシが少なくとも3種,沖縄に生息している。すべてアリモウミウシ属 Ercolaniaに分類され,1種はオーストラリアやグアムから報告されているE. kencolesi Grzymbowski et al., 2007と同定されたが,他の2種は未記載種であると思われる。これら3種には,海藻の細胞内に侵入するための独特な穴開け行動が共通して見られ,藻体内食は固有の行動適応を伴う新しい摂餌様式と見なすことができる。