著者
室橋 春光
出版者
日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.251-260, 2009-10-25

ワーキングメモリーは、Baddeleyらにより1970年代に提案され、現在まで展開され続けている、認知心理学領域における主要概念である。発達障害のメカニズムを考える上で、ワーキングメモリーという概念は重要な役割を有しているといえる。学習障害、ADHD,自閉症に関してそれぞれ多数の研究が進められ、ワーキングメモリーはいずれの障害においても関与することが認められているものの、各障害において主要原因とみなしうるかどうかについては議論が錯綜している。しかし少なくとも学習障害領域では、ワーキングメモリーは、その障害メカニズムに密接に関連しており重要な要因であるといえる。本論では、特に読み活動を中心にワーキングメモリーの役割を検討する中で、学習障害研究と認知科学の関係を考えてみたい。