著者
浜野 美代子 伊野 みどり MIDORI Ino
出版者
東京家政学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

我が国では, 1982年以来, がんが成人病の死因のトップを占め, このうち胃がんによる死亡者は, 最近では漸減の傾向にあるとはいえ, なお全がん死亡数の約1/4を占めている. 現在までに胃がんの病因物質は明らかではないが食生活と密接な関係があるといわれている. N-ニトロソ化合物は, 我々の身近に存在する発がん物質であって, 亜硝酸塩(NO^-_xとアミン類の反応生成物である. すでに300種類を超えるN-ニトロソ化合物の80%が実験動物で発がん性が証明されている. 我が国のように, 諸外国に比べ, 野菜(NO^-_2, NO^-_3)や魚介類(アミン類など)を多量に摂取していることが, 胃がんの死亡率の高いことに関連があるか否か明らかにされていない. しかし究明しなければならない課題である.今まで, 我々は食品中のN-ニトロソ化合物および前駆物質の存在量, 調理過程におけるN-ニトロソ化合物の生成や, 食事摂取後の唾液中の亜硝酸塩, 硝酸塩の変化などについて研究してきた. 更に, 今回は, モデル実験として人の胃内条件を想定し, N-ニトロソ化合物, 特に発ガン性の強いN-ニトロソジメチルアミンの生成および抑制について, Invitroにおける検討をしてきた. その結果, 食品成分が加わると, 単純に水溶液や人工胃液などで行う実験と異なり, 同じ生成あるいは抑制実験でも複雑になり, 単純に評価はできない. 更に, 人間には, 長きにわたる食習慣の問題や, 現在のように複雑多様化する食生活が胃がんとどのような関わりあいをもってくるか, また, 個個の人間がそれぞれの生活環境から受ける要因など, きめ細かな調査, 研究が今後の重要な課題である.
著者
岡崎 昭子
出版者
東京家政学院大学
雑誌
東京家政学院大学紀要 (ISSN:02866277)
巻号頁・発行日
no.32, pp.p215-221, 1992-07

イギリスの児童文学者でstory tellerとしても有名なEileen Colwellは,ストーリー・テリソグの準備には4つの段階があるといっている。第1段階-作品の選択 第2段階-アダプテーショソ(短縮や変更) 第3段階-作品の暗記 第4段階-語りのテクニックの修得 このほかに,プログラムの組み方や,会場の雰囲気づくりのための音楽効果や照明,語り手の衣裳などの問題もあるが,本稿は最終回なので,重要なものからとり上げることにする。
著者
桑野 和民 関山 教子 永井 恵美子 津久井 亜紀夫 三田村 敏男
出版者
東京家政学院大学
雑誌
東京家政学院大学紀要 (ISSN:02866277)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.69-74, 1978-05-01

オキアミ生凍結ブロックを原料とした,たんぱく質濃縮物(KPC)の製造法を改良することを目的として,甲殻除去法の簡易化,たんぱく質回収法の検討を行ない,以下の結果を得た。1.遠心分離の温度を室温で行なうことにより,1回の遠心分離で,甲殻を含まない濃厚なペーストを,たんぱく質収率71.9%で得ることができた。2.ペーストからのたんぱく質濃縮物の製造は,イソプロピルアルコール法(IPA法),等電点沈でん法(IP法),加熱凝固法(HD法),で行なった。IPA法以外での沈でんの脱脂ほ,比較のために,同じ溶媒で行なった。3.IPA法,IP法,HD法によるKPCの収率は,重量で,それぞれ7.34%,6.04%,5.96%,たんぱく質で49.0%,40.6%,35.8%であった。4.たんぱく質回収後の残液について,Sephadex G-25によるゲルろ過を行なったところ,パターンの差から,IPA法の回収率が他法より良いことが確認された。5.外観,化学成分,ペプシン消化率を比較したところ,KPCとして不都合な値は認められなかった。以上の結果,KPCを製造するには,たんばく質の収量から見ればIPA法が最も良い結果となった。今後,甲殻の利用,たんばく質回収後の残液の利用等を含め,総合的に,良否を見きわめねばならない。
著者
岩見 哲夫
出版者
東京家政学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ナンキョクカジカ亜目8科56種について,閉顎筋および鰓弓周辺の一部の筋肉群について,詳細なアトラスを作製した。また,8科16種について,閉顎筋と関連の深い神経ramus mandibularis trigeminusの位置関係について明らかにした。これらの形質を解析した結果,ナンキョクカジカ科の中で従来の分類体系とは異なるクレードの設定が必要と思われる形質分布が確認された。特に,南極大陸沿岸域に分布の中心をもつトレマトムス亜科と外部形態では高い類似性を示すNototheniinaeの間では重要な差異が認められた。また,本科の中で原的なグループとされていたPatagonotothen属について,筋肉系からはその傾向を支持する形質が認められなかったことは,本属の系統的位置を推定する上で重要な新知見と判断された。カモグチウオ科とコオリウオ科の近縁性は従来の骨学的データおよび近年増加しつつある分子生物学的データからも支持されているが,筋肉系からも同様の結果が得られた。しかしながら,カモグチウオ科の一種キバゴチGymnodraco acuticepsについては,ナンキョクカジカ亜目全体の中でも極めて特異な形質状態を呈することが確認された。キバゴチに認められた形質を,稚魚期の個体の全身横断面切片を作製し解析したところ,閉顎筋1と2の融合は,稚魚期では認められず,成魚におけるこの形質は明らかに派生形質であることが確認できた。また,本種が内鼻腔構造を持つとされる問題についても,稚魚期には鼻腔と口腔が連絡していないことが確認され,この点についてはさらに検討を進めている。
著者
永沢 幸七 川端 さと子
出版者
東京家政学院大学
雑誌
東京家政学院大学紀要 (ISSN:02866277)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.91-105, 1981-10-01

(1)実験1の縦,横の比に関しての美意識の順位は,理科専攻生については1:1.2, 1:1.3,1:1.4の順になり,音楽科専攻生については1:1.4, 1:1.5,の順になり,美術科専攻生については1:1.3, 1:1.1, 1:1.6の比になりZeisingの黄金分割の比には音楽科専攻生が比較的近似していることが示唆された。男女の比較については女子学生は男子学生に比較して黄金分割に近接の値が美的感情として選ばれている。材料(2)を用い高さを連続的に少し宛変化させ,被験者の感情を記述し,美的感情を抱いた縦,横の比を調べると1:1.43, 1:1.67, 1:2.2の順位となる。Zeisingは外国人であるため,もしかしたら日本人の黄金分割は1:1.45附近で比が日本人の美的感覚の中に浸透したとも考えられる。(2)女子大生89名のA-Tまでの図形に対する美意識順位を要約すると,正三角形のM図形,次は三角形のK図形,第3位は正四方形のA図形,第4位は矩形のD図形,第5位はB図形などで一番選択されない順位の図形は各組ともT形,S形のよぅな湾曲図形である。(3)EPPS検査の親愛の項目における美感の順位の比較においては上位群は下位群と比較して著しく差のみられたのは,R図形で縦の三角形の底辺に安定感を感じ,同じように人間関係に安定感を求めるようになる。下位群は逆立つ図形に対して比較的美意識を持っている。またG図形,H図形に対して,下位群が上位群よりも美的感覚を感じている。また同じように人間関係に安定感を求めるようになる。下位群は逆立ち図形に対して比較的美感を感じている。またG図形,H図形に対して下位群が上位群よりも美的感覚を感じている。(4)専攻別学生及男子女子の比較 M図形(図6参照)に対しては美術科・音楽科生の方が理科生よりも著しく美意識を感じる傾向がある。(図2参照)S,T図形に対しては音楽科生,美術科生より理科専攻生がより美意識を感じている。G図形に対しては同じように理科生の美意識が比較的上位である。男女の比較においては,美術科専攻学生を検討するとM,N図形に対しては女子が男子に比較して美意識を持っている。K図形に対しては男子が女子より美意識が高い。斜方向直線は,一般に不快感を与えるといわれているが,垂直線や水平直線に比較すると不安定性を感ぜられるからと推量される。しかし斜方向直線を含む図形(例えば平行四辺形や正三角形など)であっても正しい位置におかれている場合は,それほど不安定性を感じられない傾向がみられた。血液型A, B, AB, O組の血液型による相関関係はBとO,AとBの相関が高くAとABの相関はすこぶる低くみられる。実験Iにおける最も美しい矩形の幅と長さの割合はZeisingの黄金分割の法則と一致する傾向がみられる。全体の順位と矩形のみの順位がほとんど変わらないことから矩形は,その他の図形より,美感を生じることがわかる。これは矩形の対応する2辺の長さが等しく,内角がすべて等しいため,他の図形より均衡がとれているためではないかと考えられる。実験IIの結果から,他の図形について考えてみると,同様に対応する辺や角が等しいほど,美感を生ずることがわかる。つまり図形K, Lよりは図形P, Q,図形P, Qよりは図形M, N, Oのほうが美感を生じる。また同じ図形の中では,より安定を感じるものの方が美感を生じることがわかる。つまり図形Lよりは図形K,図形Pよりは図形Q,図形Oよりは図形N,図形Nよりは図形Mの方が美感を生じる。直角と丸い角,直線と丸い線の比較では,直角,直線で構成された図形の方が美感を生じることがわかる。つまり図形S,Tよりは,その他の図形の方が美感を生じる。以上のようなことから,一般に美感を生じる図形とは直角と直線で構成された均衡のとれている簡単な図形,つまり矩形ということになり,その中でも,幅と長さの割合が黄金分割の法則に一致することに近いということが考えられる。付記 昭和56年後期東京学芸大学における「教育心理学特講」の講義の際の実験であることを明記し,学生各位及本学々生に対しご協力を謝す。
著者
田中 ミチコ 森 宏枝 石澤 敬子
出版者
東京家政学院大学
雑誌
東京家政学院大学紀要 (ISSN:02866277)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.49-53, 1982-12-20
被引用文献数
2

海藻は一般に消化吸収が悪いとされているが,溶媒の種類によるアミノ酸,糖質,カルシウムの溶出状態,また,タンパク質分解酵素を作用させた時のアミノ酸,及び二次的に遊離される糖質,カルシウムがどの程度利用されるか実験を行った。1 カルシウムの溶出率が高く,7〜100%を示し,酸性溶媒によく溶出し,食酢ではアサクサノリ100%,マコンブ,トサカノリ,ワカメ,ヒジキは約30%であった。アミノ酸は3〜10%の溶出率で,溶媒の違いによる差はほとんどなかった糖質はマコンブの食酢による溶出のみ3.7%で,他は1%以下とわずかな溶出率であった。2 pepsin消化では,アサクサノリが7.6%の消化率であったが,他の試料は1%以下であった。pancreatin消化では,ワカメ44%,トサカノリ,アサクサノリ26%,マコンブ,ヒジキが2〜3%の消化率であった。3 タンパク質分解酵素作用にともない二次的に遊離した糖質,カルシウムは,pepsinよりもpancreatin作用により多く遊離したが,いずれも低い遊離率であった。4 pepsin pancreatin作用によるアミノ酸,糖質,カルシウムの利用率は,それぞれ14〜55%,約1%(トサカノリのみ9%),23〜68%であった。全試料中,アサクサノリは高い利用率を示し,これに対し,ヒジキは低い利用率を示した。