著者
綾野 絵理
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

外部温度変化に応答し、その構造・性質を変化させる機能性ポリマー、poly(N-isopropylacrylamide)(PNIPAAm)と生分解性ポリマーであるPLA(ポリ乳酸)を用いて、薬物放出制御機能・ステルス性を備えた新しいナノ粒子製剤を開発した。ナノ粒子を細胞へ取り込ませたところ、相転移温度を境に取り込みのON-OFFが確認されたことから、人体に影響の無い程度のわずかな温度変化で取り込みの制御が可能であることが示された。このナノ粒子の実用化により、少ない投与量による副作用の軽減、高いQOLを目指せる製剤となることが期待される。
著者
鈴木 政登 井川 幸雄 鈴木 政登
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

1.運動強度と腎機能との関連健康成人男子7名を対象に、43〜100%VO_2max強度のトレッドミル走を20分間負荷し、腎機能変化を追跡した。クレアチニンクリアランス(Ccr、尿蛋白(アルブミン、β_2Mなど)および電解質排泄量いずれも強度の影響をうけたが、とくに尿濃縮能がその影響を鋭敏に反映し、43%VO_2max後では2.8%、100%VO_2max後では39%減少した。2.RIアンギオグラフィ-による最大運動後の腎血流量の測定健康成人男子6名を対象に、^<99m>Tc-フチン酸(92.5MBq)肘動脈よりボ-ラス注入しシンチカメラで腎領域の時間放射能曲線を求め、それからpool transit time(Oldendorf法)を算出し、その逆数変化を腎血流量(RBF)変化とした。エルゴメ-タで最大運動を負荷した。RBFは運動直後58.4%、60分後でも20.7%の有意減少で回復しなかった。3.運動性蛋白尿出現機序健康男子10名を対象に、captopril 50mgを経口投与しAngiotensin II(AngII)産生を抑制し、トレッドミルで最大運動を負荷した。captopril投与により運動後の血漿Ang II濃度上昇は抑制されたが、尿蛋白排泄抑制はみられず、運動性蛋白尿はAng IIによるfiltration fraction上昇に起因したとする従来の考え方を改める必要があり、これには運動で生じたアニオンギャップの増大が大きく関与していた。4.微量尿蛋白排泄の日内リズムと身体活動との関連健康男子10名を対象に、アルブミン(alb)、β_2M,NAG尿中排泄リズムと身体活動量(エネルギ-消費量)変化との関連を追求した。alb、β_2M,NAG排泄いずれも活動量の影響を受けたが、β_2M,NAG排泄は夜間休息時(10時頃まで)でも抑制されず、内因性調節支配を受けていることが示唆された。
著者
永森 静志 水谷 悟 新谷 稔
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

平成8年度におけるこのプロジェクトにおける成績は、申請者らが樹立したヒト由来肝細胞を、ガラス担体(シラン)を用いたラジアルフロー型バイオリアクター(RAD)で培養すると、担体の内部や表面に細胞が3次元的配列を保ちながら増殖した。これは走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡で観察可能であった。酸素消費量やグルコース消費量から算定し10^8cells/ml-matrix以上の高密度培養が可能で、200ml容量のRADで総細胞数は2.88×10^<10>個となった。他の重要な肝機能としてのアンモニア代謝や、薬物代謝としてナファモスタットメシレートやアンチピリンについて検討し、機能していることを確認した。RAD本体の改良は、坦体の粒子や孔の大きさ、表面のコーティングなど検討したが現在の坦体に勝るものは見つかっていない。体外循環量の減量には、50ml容積のリアクターの作成と回路チューブの狭小・短縮により総体外循環量を200ml以下に減量した。また体外循環回路の改良は血漿への酸素の供給やRADの血漿流速のコントロールが必要である。協同開発者の旭メディカルとエイブルによりフォローファイバー薄膜による酸素供給システムと、RADへの流速を維持するための血漿リサイクル回路を作成した。、その制御システムの基本的設計の終わり、実用化への開発を行っている。一方RADを生体に装着した際の安全性確認のために、ブタを用いて検討を加えた。実際のヒトへの応用を考え、頚静脈にカテーテルを挿入し毎分30mlの血漿を分離、これをRADに環流した。5時間の還流経過中ブタのvital signは安定していた。一般に体外循環システムで問題となる血管拡張、降圧作用のあるbradykininの血中濃度を測定したところ、細胞培養の有無に関わらず、増加傾向を認めなかった。このシステムの生体への安全性が明らかとなった。
著者
服部 麻木
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

血管内治療においては、X線透視下でカテーテルの誘導を行なっているが、X線透視画像は二次元画像であり、奥行方向の情報が得られないため、カテーテル先端の方向を把握しにくいという点が挙げられる。これを克服するために、術野に血管等の内部構造を立体画像として投影可能なナビゲーションシステムの開発を行なった。開発では、術者の視線および注視点計測手法,術野表面形状計測手法,術野表面形状に応じた内部構造モデル表示手法の3つの基礎技術の開発を行ない、ナビゲーションシステムの構築を行ないファントム実験において精度や処理速度の検証を行なった。
著者
鈴木 薫之
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

昨年度までの研究において,把持,切開,切離処理などの手術作業をリアルタイムに可能にする軟組織モデル,sphere-filled modelの開発を行った.また動物実験において,肝表面変位量とその変位量に応じた押付力の関係を得ることが可能になった.本年度では,このsphere-filled modelを用いて,実際の手術時の臓器に対する触感応答を得ながら作業を進めることをシミュレーション内で可能とするために,圧縮変形時の圧縮点表面変位量と圧力との関係を計測し,これをデータペース化してシミュレーションに反映させた.計測手法として,臓器の形状に応じ解剖学的に決定した点を中心に半径20mmの円形状に圧縮点5点を設定し,指先の太さを想定した直径10mmの円柱状のプローブ先端形状を持つ圧力測定装置を用いることにより,個体差が発生しないような工夫を行った.その結果,複数の実験結果を統合して得られた最大表面変位量は約30mm,最大圧力として約30gf/cm^2となった.また,臓器圧縮,圧縮解放時に応じたヒステリシス特性を有する表面変位量-圧力特性曲線を得,データベース化した.このようにして得られたデータベースの表面変位量を用いて,sphere-filled modelにおける充填球移動総和量をキャリブレーションすることにより,手術シミュレーションにおいて臓器に触れた際の感触を再現した.その結果,実際の臓器変形量に応じた定量的な反力応答能を有する軟組織モデルとなった.本モデルを用いることにより,実際の臓器特性を反映することができ,より実際に近い触感を伴った手術シミュレーションを行えるようになったと考える.
著者
佐々木 三男 荻野 夏子
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

高照度光が深夜勤務中の看護婦の眠気や気分、さらに夜勤明けの日中睡眠へどのような影響を及ぼすかを検討した.対象は研究の主旨を説明して同意を得た3交替勤務に従事している健康な看護婦20名である.被験者の背景因子については、活動型をMorningness-Eveningness Scale(朝型-夜型スコア)で把握し、20日間の睡眠日誌をつけて睡眠持続時間と睡眠前後の自覚的評価を100mmアナログスケール(VAS)で記録した.さらに20日間の検査期間中に、20人中8名の被験者には1)深夜勤務中にナ-スステーションで12時から午前3時まで、2500ルックスの高照度光下で勤務をしてもらい、光照射前後の疲労度(労研式)、眠気、気分の変動を2時間おきに記録した.深夜勤務終了後、夜勤明けの睡眠を自宅で記録した(Bright light:以下BL条件とする).2)さらに同じ8人の被験者には光照射をしない光装置の前で同じように深夜勤をしてもらい、勤務中と明け睡眠記録を同様に行なった(Dim Light:DL条件とする).日中の睡眠検査は深夜勤務明けの自宅で行なった.記録装置は、加速度と光センサーを利用し体動と光の照度をを連続的に測定出来る、米国A.M.I.社製の光検知付きアクティラム(活動計)を使用した.なお昼間睡眠前後の自覚的睡眠評価も併せて行なった.「結果」BL条件では午前6時の眠気(41.50±28.34)は、DL条件(68.86±16.73)に比較して低く(p<0.05)、午前6時の疲労感もBL条件で低く、深夜勤務の高照度光照射は勤務中の眠気や疲労の軽減に有効であると推定された.
著者
宮野 佐年 安保 雅博 武原 格 殷 祥洙
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

日本での脳卒中後遺症者141名(平均年齢67.2±9.4才)、男性98名・女性43名、出血64名・梗塞77名で、在宅生活を送っている患者の下肢運動麻痺(Brunnstrom stage、以下Br. st.)・歩行距離(m)・床からの立ち上がり動作・浴槽への移乗の可否・トイレや浴槽の手すりの設置の有無・正座の可否・ベッドの使用を調査した。その結果、下肢Br. st.と歩行距離は比較的よく相関したが、下肢Br. st.が3,4でも500m以上歩行可能な患者も多くみられた。床からの立ち上がり動作は、歩行距離とBr. st.共に相関は見られたが、浴槽の出入りは歩行距離と相関は見られたがBr. st.との相関は見られなかった。トイレや浴槽の手すりの設置の有無と、歩行距離・Br. st.はどちらも相関は見られなかった。また正座や和式トイレの使用は殆ど全ての患者はできなかった。本題の国際比較は、韓国ソウル在宅の脳卒中患者52名と、目本の在宅脳卒中患者で、Br. st.と歩行距離をマッチさせた患者で国際比較を行ったと。対象患者は日本66名・韓国50名で、Br. st.日本3.8・韓国3.3。その結果、両国共にBr. st.と歩行距離は相関し、床からの立ち上がり動作もBr. st.や歩行距離と相関した。日韓の比較では、風呂やトイレに手すりをつける率は、韓国では20%・日本では85%であり、床からの立ち上がり動作、日本では54%・韓国では37%が可能で、正座は、日本では5%・韓国では70%が可能となっていた。また同居人数3人以上が、韓国では32%・日本では14%と違いが見られた。日本では脳卒中片麻痺に対して、家屋改造により介護力軽減を図るのに対し、韓国では人的介護に頼る傾向が見られた。正座は韓国の特有の坐り方で日本の正座とは異なっており、日韓でも床上の生活様式の違いが示唆された。要旨を第3回国際リハ医学会(2006.4)に発表した。
著者
稲垣 芳則 保科 定頼 横田 徳靖 中里 雄一 恩田 啓二
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

我々は特発性細菌性腹膜炎(SBP)において最大の謎である感染経路の解明とSBPの迅速診断方法の開発を目的に以下の研究成果を得た.1.Thioacetamide投与による肝硬変ラットではSBPの発症が認められたが,コントロールラットでは認められなかった.2.SBPは腸内細菌の増殖が大腸より下部小腸に起こるときに発症しやすいと考えられた.3.SBP発症時腸内細菌の増殖した腸管の支配リンパ節には細菌の移送を認めたが門脈血および末梢血には認めなかった.4.SBP発生機序における腸内細菌の腹腔内への侵入経路の一つとして直接腸管壁の経由が強く示唆された.5.培養で菌が検出できない腹水でも,原核生物特有の塩基配列をPrimerとしたPCRでは腹水中の微量大腸菌あるいは死菌が検出できた.仮説では腸管内から腹腔内への細菌の侵入経路は(1)血行性,(2)リンパ行性あるいは(3)腸管壁から腹腔内へ直接,の3つの経路が考えられていた.今回の研究によりSBPでは(1)(2)の経路より,(3)の経路の可能性が最も高いとの結論を得た.またSBPの発症は必ずしも腸内からの生菌の移行だけでなく,むしろ死菌や菌体成分や腹水中で免疫反応を起こすことがSBPの本質であると推測した.一方,臨床例の検討でも腹水培養で細菌が証明されることは少ない.腹水中の細菌のDNAをPCRで検出する方法は感度が高く迅速診断が可能で,SBPの診断に有用であると考える.ただし消化管穿孔に起因する続発性細菌性腹膜炎とSBPとの鑑別が臨床上困難であることは今後の課題である.
著者
中村 晃士
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

精神科通院患者73名、一般就労者は232名から基礎データ(職場内での心理的負荷、職場外での心理的負荷、GHQ-30[精神の健康度]、NEO-FFI[人格傾向]、MPS[完全主義傾向]、自尊感情評価尺度など)を収集することが出来た。休職の背景には、休職者の完全主義傾向、神経症的な性格が大きく影響していること、女性就労者では上司との関係が影響していることが明らかとなった。
著者
安保 雅博 角田 亘
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

近年、経頭蓋磁気刺激(以下TMS)が脳卒中後遺症の治療目的で用いられている。特に、低頻度TMSを適用し、適用部位から対側大脳への大脳半球間抑制を軽減させ、結果的に非適用大脳の活動性を上昇させようとの考え方が注目されている。失語症患者に治療的TMSを導入する場合、言語機能を代償している部位をTMSに先立って機能的MRIで明らかにし、代償部位の対側に低頻度TMSを適用することが望ましいと考えられる。
著者
牧岡 朝夫
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

アメーバの嚢子形成及び脱嚢はヒトへの感染型の形成及び感染の成立のための重要な過程である。本研究は両過程に必須なアクチン細胞骨格再編成の重要分子であるアクチン脱重合因子コフィリン並びにプロフィリンに注目し、アメーバゲノム中の両遺伝子の同定、塩基配列の決定、系統解析、組換えタンパク質の調製、局在及び両過程における発現解析を行い、分子種による違いを明らかにした。
著者
重松 隆 川上 憲司 森 豊 関口 千春 重松 隆
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

微少重力に人体が曝露されると、骨組織、筋組織、カルシウム代謝などに影響を受けると言われている。微少無重力状態では比較的短時間で骨塩が減少し骨粗鬆症が生じるとの報告がある。この発生機序は本邦においては宇宙飛行の経験も少ないため、未だその詳細は不明な点が数多く残されている。今回邦人宇宙飛行士の協力により、骨塩、カルシウム代謝を計測する機会を得、4回のミッション(宇宙飛行)における解析を行ったので報告する。計測方法は、DXA(全身、腰椎、大腿骨、踵骨など)UBD(踵骨)24時間量、尿中カルシウムカリウム、リンなどを計測した。測定は飛行開始60、30日前、飛行より帰還当日、3、10、30、120日後に行われた。測定結果は、それぞれのミッションの飛行時間も異なるため若干のデーターのばらつきを認めた。得られたデータのなかで、確実に認めた傾向は以下のごとくである。微少重力によって、骨カルシウム代謝が影響を受けることが、ほぼ明らかとなった。骨塩量は、踵骨腰椎などの荷重骨でより減少傾向を示し、その影響は尿中への漏出という形で腎臓に影響をおよぼす。この機序の詳細は不明であるが副甲状腺の血清カルシウム値の変動に対する反応性の低下が関与している可能性が示唆された。微少重力の影響は、骨組織に対して、骨形成の低下と骨吸収の促進という形で現れることが予測され、この結果として骨塩量が減少する可能性が示唆される。微少重力の骨カルシウム代謝への影響については今後さらなる検討が必要である。