著者
近藤 一博
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

疲労、特に脳の疲労は、うつ病や自殺などの重要な社会問題に直結するため、早急に解決すべき課題である。しかし、これまでの国内外の疲労研究は、がん患者や脳神経疾患患者の疲労を対象に行われており、労働によって生じる生理的疲労のメカニズムは不明な点が多かった。我々は最近の研究で、労働や運動による身体の生理的疲労の発生と回復のメカニズムを見いだした。本研究では、この身体疲労のメカニズム研究をもとに、脳疲労の原因を探るとともに、脳疲労の回復やうつ病の予防法を検討する。本研究により、栄養、生活習慣、環境などの改善による、うつ病リスク低減法の開発が容易になると考えられる。
著者
蔡 詩岳 佐藤 吏 田中 孝昭
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

関節内に手術操作を施すと術後に何らかの癒着が生じてくることは避けられない。この関節内癒着は、関節可動域を減少し疼痛の原因となるが、現時点では術後の理学療法により、関節内癒着を少しずつ剥離してゆくしかない。近年、ヒアルロン酸溶液が腱縫合などの腱手術後の癒着を防止する効果を有することが報告されてきているが、溶液状のヒアルロン酸では組織に滞留している時間が極めて短く、安定した癒着防止効果を得ることは困難である。そこで、本研究では、ヒアルロン酸に架橋結合を導入してゼリー状のゲルを作製、関節内における癒着防止効果を検討し、その作用機序を細胞レベルで検索した。家兎の膝関節を切開し、大腿骨顆部に5×10mmの軟骨下骨にいたる骨軟骨欠損部を作製する。術後は膝関節を3週間固定して、関節内癒着モデルを作製し、手術操作後に、膝関節内にヒアルロン酸ゲルを塗布し、術後3週での癒着防止効果を組織学的に検索した。その結果、架橋HAゲルを手術時に関節内に投与すると、術後、関節滑膜と連続する肉芽組織の発生が有意に防止され、関節内の癒着は明らかに抑制されることが判明した。架橋HAゲルでチェンバースライドの全面あるいはZ状に一部分をコーティングした後、ヒト皮膚由来の線維芽細胞を各チェンバースライドに播種し7日間培養後に細胞の接着状態や増殖に伴う細胞の移動を経時的に観察した。全面をコーティングした場合、細胞はHAゲル上には全く接着しなかったが、辺縁部のHAゲルでコーティングされなかった部分には接着し、伸展して紡錘形を呈していた。また、HAゲルでZ伏に部分的にコーティングしたものでは、HAゲルの部分には細胞は接着しなかったが、培養を継続するとHAゲルのない部分のみがHAゲルに接触することが観察された。ゼリー状に作製した架橋ヒアルロン酸ゲルは、細胞の基質への接着を阻害し、手術後に発生する癒着を防止するのに有用と考える。したがって、腱の手術後のみならず関節手術後にも生じる関節内の癒着の防止材としても臨床応用が可能であると思われる。
著者
松脇 由典 大櫛 哲史 中山 次久
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究で、副鼻腔粘膜(鼻茸)局所における総・特異的IgEの産生亢進は、好酸球性鼻副鼻腔炎(ECRS)において認め、それらは有意に局所ECP量と相関しており(真菌>ダニ>SE)、好酸球炎症を誘導している可能性が示唆された。 また真菌アルテルナリアが分泌するアスパルテートプロテアーゼはヒト気道上皮細胞に対しPAR-2を介して刺激し、細胞内カルシウムの上昇およびサイトカイン産生を誘導することを明らかにした。 さらにECRSの上皮および局所浸潤した好酸球ではPAR-2の発現が上昇していることを明らかにした。
著者
帆足 英一
出版者
東京慈恵会医科大学
巻号頁・発行日
1977

博士論文
著者
保科 斉生
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

1989年に提唱された衛生仮説では、衛生的な生活環境が整うにつれて、アレルギー疾患が増加すると説明しています。近年、日本では炎症性腸疾患を患う方が増加傾向にあり、生活の質の低下、免疫抑制療法による弊害等が問題となっています。欧米では豚の寄生虫である豚鞭虫にわざと感染し、腸管免疫の暴走を抑えるという方法がこれまでにいくつかの研究で実施され、安全性の確認と、一部の研究ではその有用性が報告されています。本研究では、これまで評価の対象となっていなかった日本人の炎症性腸疾患患者さんやその他の自己免疫疾患を対象に、この療法の安全性・有効性を評価します。
著者
中村 紫織
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

「軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)」は認知症の前段階とされ、Clinical Dementia Rating (CDR)でCDR0.5の「認知症疑い」に相当することがその診断基準の主要項目とされている。本研究は、先行研究でCDR0.5と判定された高齢者を追跡調査し、認知症に進行した人の割合を算出し、早期診断やハイリスク群の予測ができるかを検討する目的で実施した。本研究は疫学研究の要素を含むため、「疫学研究に関する倫理指針」(平成14年文部科学省・厚生労働省告示第2号)及び平成14年6月17日付け14文科振第123号文部科学省研究振興局長通知に定める細則に沿って東京慈恵会医科大学の倫理委員会の承認を得た。平成10年度に新潟県糸魚川市の高齢者への健康調査でCDR0.5と判定された252名のうち、生存者193名を対象とした。本人と家族に対し、本研究の目的、方法、意義、対象者への人権保護の配慮(守秘義務等)について十分に説明した文書と調査への協力の依頼状を送付し、賛同を得られた111人に対して精神科医師と保健師が訪問調査を実施した。その結果、33人はMCIにとどまっていると判断されたが、78人が認知症と診断され、アルツハイマー型認知症55.1%、血管性認知症29.5%、その他の認知症15.4%であった。7年間でMCIから認知症に進行した人の割合は70.3%、前回調査の時点で「直近一年間で進行性の認知機能変化がある」と判断された群では87.2%、「一年前とは変化がない」と判断された群では60.0%であった。CDR0.5に該当するというだけではなく、短期間における進行性の認知機能低下を認める場合にハイリスク群として経過を追うことが早期診断をする上で有効と考えられた。本調査の結果は第13回国際老年精神医学会、世界精神医学会国際会議2007で報告した。
著者
岡野 ジェイムス洋尚
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

細胞1個もしくは少数の細胞からなる神経回路を狙い撃ちして照射し観察できる放射線医学総合研究所のマイクロビーム細胞照射装置 (SPICE)を活用し、陽子線によって引き起こされる神経活動を経時的に観察した。細胞内カルシウムを可視化する蛍光色素を細胞内に導入し、顕微鏡による経時的蛍光イメージングを行い、マイクロビーム照射時と非照射時のニューロンの活動を比較検討した。細胞はマウス大脳皮質由来一次培養ニューロンを使用した。その結果、照射したニューロンは照射直後に活性化し、逆に照射細胞周辺のニューロンでは活動の低下が観察された。これらの観察から陽子線が神経活動・脳活動に影響を及ぼす可能性が強く示唆された。
著者
松本 啓
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

発達過程にある胎仔の後腎を移植するラット・マウス小動物モデルを用いて、①異種動物間移植を行った後腎でもエリスロポエチン(EPO)産生能を維持しており、そのEPO産生細胞の起源はレシピエント動物種が起源である事を示した。②血管内皮にEGFPを発現するマウスを作成し、その骨髄を移植したマウスをレシピエントとして正常マウスの後腎を移植、発達継続させてEPO産生細胞が骨髄を起源としている事を示した。③自殺誘導遺伝子搭載マウスの後腎を足場として用いることにより、EPO産生細胞が発達継続する過程において不必要となる異種部分を排除し、目的とする動物種のEPO産生組織を発生させる事が可能であることを報告した。
著者
伊藤 宗成 河越 しほ
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、日本初の技術である人工多能性幹細胞(iPSC)を用いて、先天性表皮水疱症の遺伝子・細胞治療の確立を目指した。先天性表皮水疱症は、生まれつきⅦ型コラーゲンの遺伝子変異により、表皮と真皮の接着が脆弱であり、僅かな外力で水疱を来たし、瘢痕形成を生じる疾患である。我々は、患者血液細胞からiPSCを樹立し、最新の遺伝子改変システム(CRISPR/CAS9)を用いて、iPSC内の遺伝子変異の修復を試みた。また今回の手法では、遺伝子変異の修復に必要なvector作製の際に、Transposonの原理も応用することで、元の遺伝子に傷跡を残さないような工夫を施し、実現しうる手法かどうか、検証した。
著者
小林 伸行
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の潜伏感染タンパクSmall protein encoded by the Intermediate stage Transcript of HHV-6(SITH)-1をマウスアストロサイトに発現させることでうつ様行動を引き起こした。その脳で遺伝子発現を調べたところ、炎症性サイトカインの変化はなかった。一方、気分障害患者では血液中炎症性サイトカインmRNA発現とうつ症状は相関を示した。以上より、中枢神経と末梢血での遺伝子発現は必ずしも一致せず、末梢での炎症反応が波及的に中枢神経に影響し、SITH-1発現を誘導することでうつ症状を引き起こす可能性が考えられた。
著者
高橋 良
出版者
東京慈恵会医科大学
巻号頁・発行日
1940

博士論文
著者
小川 智一郎 常岡 寛 柴 琢也 堀口 浩史
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

チン小帯脆弱を客観的に定量化するために、ビームスプリッター付きの細隙灯顕微鏡のCマウントに1000fps以上で撮影できる高速度カメラMEMRECAM Q1m白黒を接続し、白内障患者および白内障術後患者に眼球運動を指示して、その際の虹彩と水晶体および眼内レンズの挙動を撮影した映像の解析を行った。虹彩と水晶体および眼内レンズが異なる挙動が撮影でき、この虹彩と水晶体および眼内レンズの2次元画像における重心をそれぞれ画像処理で求めようと試みた。その映像にノイズが含まれていたため、ノイズの処理をし、重心の挙動の違いを解析しようとしたが、ノイズなどの影響で解析に至っていない。
著者
宮田 久嗣 室田 尚哉 吉田 拓真 太田 純平
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、覚醒剤などの薬物と、ギャンブルなどの行動(薬物によらない)のアディクション(依存)が、疾病として同じものであるのかを、病態学的、神経学的、治療薬の観点から検討する。まず、アディクションの中核症状である欲求が、①一次性強化効果、②離脱症状の不快感、③環境刺激の二次性強化効果獲得の三要素から考えた場合、②の離脱症状、③の環境刺激の二次性強化獲得、さらには、欲求にともなう衝動性では、病態、神経学的機序、治療薬の観点で共通点がみられた。しかし、欲求の基本要素である一次性強化効果では、薬物に比較して行動では、それ自体独立して検出しにくく、生体側の影響を受けやすい点で違いがみられた。
著者
川上 憲司 望月 幸夫 森 豊
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

換気検査には従来より ^<133>Xeガス、 ^<81m>Krガスが使われているが、入手に予約を必要とし、緊急検査に間に合わない。 ^<99m>Tc-エロゾル吸入検査も換気検査の代用とされるが、エロゾルの粒子径が大きいため、疾患肺では換気分布を表さない。^<99m>Tc-テクネガスは、 ^<99m>Tcを炭素の微粒子に標識し、換気分布に近いガス分布を得る放射性医薬品として開発された。本研究では、テクネガスの粒子径、捕集効率、生体における挙動、および種々肺疾患における臨床応用などについて検討した。テクネガスの粒子径は、電顕で計測した結果、大部分が20〜30nmφであったが、一部これらの粒子が魂状となって、100〜200nmの粒子を形成していた。テクネガス発生装置内の炭素るつぼに、 ^<99m>Tc-パーテクネテート溶液(300MBq/0.1ml)を入れ「るつぼ」を高熱で昇華することにより、微細炭素粒子を作成、これに ^<99m>Tc-が標識される。テクネガス生成後、粒子は次第に沈澱するので10分以内に吸入することが望ましい。血液中放射能は吸入後2時間において、吸入量の0.2%/1血液、尿中放射能は、24時間後においても4.96%であった。肺におけるテクネガスの生物学的半減期は135時間で肺のイメージは、24時間後においても安定していた。肺の被曝量は0.04Gy/37MBqであった。肺疾患例におけるテクネガスの分布は ^<81m>Kr分布に類似していたが、閉塞性病変の強い症例では、中枢気道に過剰に沈着し、スポット形成がみられた。しかし、未梢気道にも分布しており、換気分布の評価は可能であった。
著者
吉葉 繁雄
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1.1985年,房総半島南部の外洋に面する天津小湊町(小湊と略記)に勃発したニホンヤマビル(ヒルと略記)の大繁殖はバイオハザードとして地域住民や旅行者に被害を与えつつ永続する気配を見せたので,1987年より小湊に観察調査用の定点(No.1〜9)を設定,年平均15.7(14〜18)回の頻度で生息密度調査を継続したところ,1992年まで増加したのち漸減に転じ,1995年には終息の兆しを見せ始めた。定点を拠点としての調査・実験により明らかにしたヒルの環境医動物学的諸特性および11年間の概要を総括すると次の通りである。2.ヒルの源棲地:小湊北部を占める内浦山県民の森や清澄山(大風沢川・神明川の上流域)と推定。3.異常大発生の要因:小湊の山林事情の変化(薪炭の需要激減で伐採されなくなったマテバシイの葉が繁茂,日光を遮り,餌となる下草が生えなくなる)により、野生のシカがヒルを伴って里へ降り,市街地を俳徊,ヒルを伝搬。ヒルを捕殺する天敵動物の不在も大発生を助長。4.シカとヒルとの特異関係:シカは,ヒルの諸種供血宿主中で伝搬の主役[免疫組織化学的に証明]で,寄生するヒルの固有宿主的役割を演じた。即ち,ヒルは通常の宿主には吸血時のみ付着するが,ヒルの繁殖旺盛の頃の小湊のシカにには,吸血せずに四肢遠位部特に第III・IV趾間や後面に数匹のヒルが付着し,蹄間には,有穴腫瘤が高頻度に存在して穴腔内にヒルが潜居し,ヒルはあたかもシカ固有の体表寄生虫的であった。蹄間有穴腫瘤とヒルの腫瘤内寄生は,小湊のシカに特有の現象で,春日山原始林,金華山などシカの群生地域にも見られなかった。5.厳寒期静居個体〔ヒルの地中越冬期間中の12月後半〜3月前半頃,地表の転石や落板の裏に付着・静居する大型個体〕の正体:シカに運ばれてきて満腹吸血して離脱したものと判明。6.抗山蛭抗体と免疫学的間引き:ヒルに反復吸血されたヒトと哺乳類には,吸血後の創痕からの出血時間延長と凝固阻害とが回復するとともに,殺蛭的に作用する抗体が血中に生じたが,鳥類では不明確[ELISA法]。この抗体は,野性ジカでは幼獣には検体されずに老成獣に顕著[Ouchterlony法]で,ヒルにとって幼獣は安全な食源でも老成獣吸血による免疫学的間引き由来の生息度調節が実在する筈。7.生息密度の低下の原因は未特定であるが,1993年以後のシカの生息頭数の減少,ヒル孵化時期の遅延,当年孵化仔数の減少;1994年以後の厳寒期シカ寄生ヒル・蹄間腫瘤の激減〜消失,ヒルの吸血(食餌ありつき)頻度の低下;1995年頭年末の厳寒期静居個体の消失が随伴した。免疫学的間引き,今冬の寒冷・乾燥気候も大発生の終息化を助長したと推定されるが,雨水の酸性傾向〔pH6.58(5.8〜8.4)海塩混入〔NaCl濃度67.99(10.51〜458.84)mg/l)は無影響と考えられた。8.今後の見込み:大発生は終息し,被害は殆どなくなるが,通常の生息域(分布地)となって時折姿が発見されたり,希に吸血される可能性もありうると予想される。9.対比のために踏査した遠隔のヒル生息域の動向:秋田県(1市2町)では激減,栃木県今市市では緩和,神奈川県丹沢,静岡県千頭・宮城県,金華山では依然活発である。
著者
加藤 征 影山 幾男 竹内 修二
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

江戸時代は現代に比較的近く形質的にも最も近いことが想定される。しかし、江戸時代は士農工商で知られる通り階級制度が明確であり、鈴木の徳川将軍の形質調査から階級制度の頂に立つ者の貴族形質が明らかにされているが、それ以外は江戸時代人として一様の形質を有するか否かは論じられいない。江戸は1590年徳川家康が関東8カ国に移住させられたことから始まり平成元年で丁度400年になる。江戸時代は武士と町人の階級は厳確に維持され、増上寺およびその子院群は徳川幕府に関与なる武家しか檀家となることを許されなかったとされている。研究者等は港区三田済海寺から出土した長岡藩主の人骨、港区芝の増上寺子院群の跡地の発掘で得られた人骨とそれより多少格式の高いと言われる天徳寺子院の発掘で得られた人骨群を武家々族とした。一方上野7丁目の上車坂町出土人骨および湯島無縁坂出土人骨群を庶民家族とした。これら武家と庶民の他に江戸の先代である鈴木の鎌倉時代人骨、後代である森田の現代関東地方人骨とを比較した。そのほか江戸時代人骨として鈴木らの雲光院、森本らの一橋高校地点出土人骨などは東京都内のもので、更に脇の熊本県桑島、中橋の福岡市天福寺出土の江戸時代人骨を参考とした。この様に多くの人骨群を比較し、藩主、武士、庶沢と思われる人骨の形質を明らかにした。頭長は鎌倉時代人が最も長く、次いで湯島・上車坂の江戸庶民、芝公園1丁目・天徳寺の武士、現代関東地方人が短く、長岡藩主が最も短い値を示した。頬骨弓幅は江戸庶民が最も広く、次いで鎌倉・江戸時代武士がこれに次ぎ、現代人は132.9mmと狭いが藩主ではさらに狭くなっている。このほかいくつかの計測項目において庶民、武士、現代人、藩主へと計測値の上で連続した形態がみられた。