著者
高島 尚美 村田 洋章 北 素子
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本邦におけるICU入室患者のストレス経験を明らかにすることを目的とし、12時間以上人工呼吸器管理を受けICU入室患者にICU退室前に34項目のICU Stressful Experiences Questionnaire日本語版(ICU-SEQJ)を作成し調査をした。96名のストレス経験は、8割近くが口渇を、7割近くが動きの制限、会話困難、気管チューブによる苦痛、痛みや緊張を経験していた。関連要因は、挿管時間、鎮痛鎮静剤投与量、抜管前のCRP値、痛みの訴え、および既往歴のなさ、緊急入室であった。入室患者の多くが苦痛を体験していることを看護師は推測しながら関わりニーズを充足する必要がある。
著者
岩瀬 忠行
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

哺乳類の腸内における窒素固定細菌の役割を純粋な形で検討するため、まず、窒素固定細菌を有するマウスモデルを構築した。また、国内メーカーと共同で、15Nガス曝露実験用インキュベーターを設計・開発を行った。本インキュベータにて3日間飼育した窒素固定細菌を保有するマウスと保有しないマウスの臓器(腸内容物、腸管、肝臓、体毛)を回収し、元素分析/同位体比質量分析計を用いて、窒素同位体比を測定した。その結果、腸内容物、腸管、そして肝臓において統計学的に有意な窒素同位体比の上昇が認められた。一方、体毛においてはそのような上昇は認められなかった。
著者
伊藤 正紀 本間 定 小井戸 薫雄 芝 清隆
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

細胞性免疫ワクチンには、アジュバントが必須であるが、副作用が指摘されている。アジュバントフリーワクチンを作成するため、これまでに抗原提示細胞への抗原取込能力(物理アジュバント機能)を包含した抗原を作成してきた。本研究では、物理アジュバント機能に加えて、抗原提示細胞を成熟化させる信号アジュバント機能を抗原自身に付与した。試験管内の実験では、抗原提示細胞の成熟化機能が発揮されたが、動物実験では信号アジュバント付与による物理アジュバント機能の低下が影響し、細胞性免疫の誘導が得られなかった。アジュバントフリーワクチンを作成するためにはアジュバント機能を最適化して抗原に導入する必要が明らかとなった。
著者
関根 広
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

放射線治療の分割照射では分割線量と照射間隔と分割回数で治療効果が決まる。従来のLQモデルでは分割線量と分割回数が変数であるが、照射間隔を規定する変数がない。そのため、休止期間が入ると治療効果が低下するということが説明できない。そこで、分割間隔を考慮したGLQモデルを考案した。このモデルにより以下のことを説明した。腫瘍に対する分割様式を変えたときに比較できることを証明した。分割照射後の局所再発に腫瘍の不均一な放射線感受性が関与している可能性を証明した。経時的に定量測定した放射線皮膚紅斑の結果をGLQモデルに当てはめることができることを証明した。http://www.radbiolog.jp
著者
植田 毅 藤井 雅留太 森本 元 宮本 潔 小作 明則
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

青い羽根を持つルリビタキの羽枝の断面TEM画像より、羽枝を多孔質誘電体円筒とした数理モデルを完成し、様々な入射角に対する反射特性を計算した。その結果、ルリビタキの羽の反射スペクトルはポーラス構造による反射で、また、エアーロッドがランダムに並んでいることが本質的であること、反射スペクトルが青色より長波長側に尾を引くのは光が斜めに入射した部分の寄与であることを示した。また、網目構造を持ち、より複雑なカワセミの羽枝の実測に基づく数理モデルを完成した。
著者
蓮村 哲 新谷 稔 高木 一郎
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

肝臓は血漿蛋白の産生臓器として重要な機能を有している。特にアルブミンは血漿蛋白の50%を占める重要な蛋白である。従来よりヒト由来の肝癌細胞株を用いて、ビタミンやホルモンによるアルブミンやAFPの産生の変化について検討してきた。さらにこの細胞をラジアルフロー型バイオリアクターを用いて3次元培養した際の、両蛋白の産生量の変化を検討した。ラジアルフロー型バイオリアクターによる培養細胞の3次元構築は、SEM TEMで確認し、球形の細胞の配列と、相互の細胞の緩やかな接着(接着装置の存在を認める)、細胞小器官の極性の存在を認めた。FLC4細胞の3次元培養では単位細胞あたりのアルブミン産生量は単層培養の6.9倍に増加し、AFPは400分の1に減少した。またFLC7細胞では3次元培養により、AFP産生が優位であったものがアルブミン産生優位となり、より正常肝細胞に類似の機能を発現すると考えられた。以上より、これら肝細胞の機能発現には、ホルモン、ビタミン、その他の生理活性物質だけでなく、細胞組織の3次元的構築が大きく関与することが明らかとなった。また肝由来蛋白である、thorombopoietinも本研究に用いた肝由来細胞株において産生され、その産生量はラジアルフロー型バイオリアクターを用いた際には、細胞数の増加、アルブミン産生量の増加に一致して漸増し、ほぼヒト正常肝の1日産生量に近い量を400mlバイオリアクターで産生可能であった。ラジアルフロー型バイオリアクターによる肝特異蛋白の高産生能が示された。
著者
永森 静志 松浦 善治 宮村 達男 松浦 知和 蓮村 哲
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

まずはじめに、人工肝感染実験に用いる感染性クローンの構築のため、ヒトに輸血後肝炎を発症させ、しかもチンパンジーに対する感染価も高い、一人のC型肝炎患者血清より完全長のcDNA(NIHJ1)を作製した。このNIHJ1のバキュロウイルス発現系を用いてHCV全長の遺伝子を昆虫細胞で発現させたところ、蛍光抗体法や免疫沈降法で全てのHCV蛋白の発現が認められ、前駆体蛋白のプロセッシングも完全に行われていることが確認できた。次に人工肝感染実験に用いるのに適した細胞を調べる目的で以下の実験を行った。AdexCAT7を各種細胞に感染させイムノブロット法とポリメラーゼ活性を指標にしてT7ポリメラーゼの発現を確認した。調べたほとんどの細胞で、EMCVのIRESを持つpT7EMCLucが最も高い活性を示したが、唯一,FLC4細胞のみでHCVのIRESを持ったpT7HCVLucが最も高い活性を示した。このように、EMCVに比べ効率の低いHCVのIRESを持ったpT7HCVLucの活性がFLC4細胞のみで高い価を示したことは、FLC4細胞には、HCVのミニジーンRNAを特異的に安定化させ翻訳効率を上昇させる何らかの宿主因子が存在することが示唆された。単層培養での慢性C型肝炎患者血清を用いた感染実験の結果もFLC4のみHCVRNAの検出が持続したことからも考え会わせ、このFLC4細胞を人工肝の感染実験に用いることに決定した。そして高密度培養用のバイオリアクターを用いて6O日以上にわたり、安定的に細胞培養が可能であることが示されただけでなく、低温培養により細胞の増殖速度をコントロールすることに成功した。そこでこの人工肝にまず前述のC型肝炎患者血清を感染材料として用い、人工肝から流出する培養液をサンプリングしてHCVRNAをRT-PCRで検出したところ、感染開始後1-2日まではHCVRNAは陽性であったものの、それ以降陰性であった。残念ながら培養液からは感染の確証は得られなかった。現在、我々が作製した全長のクローンおよびUSAより供与されたチンパンジーに感染を成立させた感染性クローンを用いた感染実験を継続中である。
著者
鹿島 剛
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

我々は脊髄性筋萎縮症患者由来の繊維芽細胞を使ってこの疾患の原因タンパク質であるSMNタンパク質の発現調節について研究を続けてきた。その結果、RNA結合タンパク質のhnRNP A2がSMNタンパク質の翻訳のレベルでの調節に密接に関与しており、SMNタンパク質の安定的継続的発現にはA2が不可欠であることが解った。このA2タンパク質は最近、同じ運動神経を侵す筋萎縮性側索硬化症に於いてその変異が見つかっており、我々の発見は脊髄性筋萎縮症に於けるSMNの発現の調節を介した神経細胞での役割を理解するうえで重要な意味を持つ。更に、筋萎縮性側索硬化症の発症のメカニズムに於いてのSMNの重要な役割が示唆される。
著者
澤内 聡
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

頭部外傷のなかで,最も重篤な病態とされるのが,外傷性急性硬膜下血腫である.この原因は,血腫に合併する治療困難な脳腫脹にあるとされるが,その発症機序は未だに解明されていない.本研究は,外傷性急性硬膜下血腫動物実験モデルを用い,血清S-100蛋白,Neuron Specific Enolase(NSE)を測定することにより,急性硬膜下血腫に合併する脳腫脹の発症機序,病態を解明することを目的とする.過去の急性硬膜下血腫動物実験モデルは,硬膜下に血液を注入するのみで,脳腫脹,脳浮腫を呈することはなかった.しかし,硬膜下血腫にimpact acceleration head injury deviceを用いてびまん性脳損傷を加え,さらに低酸素(2次性損傷)を負荷することで,より臨床の状態に近い脳腫脹を呈する外傷モデルを開発した.Sprague-Dawley ratsを用い,気管内挿管下後,全身麻酔下に外傷を加えた.実験群は1)硬膜下血腫のみ,2)硬膜下血腫+びまん性脳損傷,3)硬膜下血腫+びまん性脳損傷+低酸素の3グループに分類した.外傷直後,外傷1時間後,6時間後,24時間後,48時間後に採取した血清中のS-100蛋白,NSEをlight immunoassay kitを用いて測定した.各実験群の血清S-100蛋白,NSEの測定値および推移より,急性硬膜下血腫に伴う脳腫脹は,血腫のみではなく,びまん性脳損傷かつ低酸素が重要な要因である可能性が示唆された.星状細胞で合成されるS-100蛋白,神経細胞で合成されるNSEの血液中の濃度を経時的に測定することで,その細胞障害のメカニズムの解明の一助になると考えられる.さらに,急性硬膜下血腫に伴う脳腫脹の主因は,従来,血管性浮腫と考えられていたが,むしろ細胞性浮腫が主体であると考えられた.
著者
佐々木 信幸
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

(1)30%酸素吸入による認知機能変化発症15日以内の脳梗塞・脳出血患者において30%酸素と室内気吸入時の記銘力を比較し,左病巣群で高濃度酸素による言語性記銘増強効果を認めた.増強効果が大きい群では両側脳血流が低下していた.(2)iPadによるATMT訓練とWiiによる全般認知訓練発症10日以内の脳梗塞、脳出血患者において2週間のiPadによるATMT訓練群、Wiiによる全般認知訓練群のTMT-AとMMSEの変化を調べた。対照群に比しiPad群ではTMT-AのみならずMMSEも有意に改善し、効果は限定的でなく般化する可能性が示唆された。
著者
山崎 博之 船越 哲
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本来Bリンパ球系の表面マーカーであるCD40を介したsignalが、ヒト悪性リンパ腫細胞の増殖を抑制する事が知られているこのが,我々はCD40刺激がヒト前立腺癌細胞の増殖も抑制するのではないかと考え、以下の実験を施行した.ヒト前立腺癌細胞株であるPC3及びLNCaPの細胞表面でのCD40の発現を,抗CD40抗体を用いて、flow cytometryにて検索した.これらがCD40陽性である事を確認した後,遺伝子組み替えにより作られた可溶性CD40ligandを用いて,MTT assayにてその抗腫瘍効果を検索した.PC3及びLNCaPは可溶性CD40ligandとともに培養する事により,その増殖が抑制された.このメカニズムを解明するため,現在TUNEL assay,電顕等にてアポプトーシスの存在の有無を検討中である.またin vivo studyのための基礎実験として,我々はこの細胞株の,severe combined immunodeficiensy(SCID)mouseへの移植実験を行った.まず,5X10^6個のPC3をマウスの腹腔内に注入したところ,第25-30日目で腹腔内播種または肝転移にて死亡した.これらの担癌マウスを,腫瘍接種3日後より可溶性CD40ligand10μgにて治療したところ,コントロール群に比べ,有意な生存期間の延長が得られた.今後はこのin vivoのデータを追試し,確認した後に論文とする予定である.
著者
山本 泉
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

腎臓におけるCaveolin-1発現の意義について、Caveolin-1遺伝子改変マウスを用いて、各種実験腎炎モデルを検討した。①虚血再灌流、②尿細管結紮、③eNOS阻害剤投与、④抗VEGF抗体投与の各モデルで、ワイルドタイプの腎内微小血管内皮細胞のカベオラおよびCaveolin-1発現量に変化を認めなかった。一方、間質線維化を評価したところ、尿細管結紮モデルおよびeNOS阻害剤投与モデルで、Caveolin-1ノックアウトマウスにおける間質線維化増加を確認した。間質線維化を促進するマクロファージ浸潤は、尿細管結紮モデルにのみ生じ、Caveolin-1ノックアウトマウスにおいて強く認められた。
著者
吉田 正樹 (2007-2008) 田中 啓治 (2006) BOUCARD CHRISTINE BOUCARD Christine BOUCARD Christine Claudia
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

1.静的視野検査の施行により、視放線の障害部位が臨床的にあらかじめ推定可能であった脳出血による視野障害症例に、機能的磁気共鳴イメージング法および拡散テンソル画像法をおこなった。2.機能的磁気共鳴イメージング法による視覚皮質における網膜位置情報レチノトピーの検討と、視放線の視覚皮質への接続性評価をおこなった。レチノトピー情報は、視野障害を正確に反映した結果が観察された。3.上記結果を、高磁場3T装置に応用し、シーケンスの最適化をおこなった。従来の1.5T装置と同程度の撮像時間内での撮像と、3T装置の長所である高空間分解能が可能となった。実際には、撮像時間は同じであるのに対して、機能的磁気共鳴イメージング法では、従来の1.5T装置では、3mm四方の空間分解能に対し、3T装置では、2mm四方の空間分解能が実現可能であった。拡散テンソル画像法では、1.5T装置では、2.5mm四方の空間分解能に対し、3T装置では、1.5mm四方の空間分解能が実現可能であった。4.緑内障性視野障害は、視覚野における形態変化を伴うことが剖検例で報告されている。緑内障症例に対して高空間分解能機能的磁気共鳴イメージング法および拡散テンソル画像法を施行した。先天緑内障症例において、視覚野、および視放線における形態変化を伴うことが示された。実際には、視覚野において、前方皮質の減少が観察され、視野障害に一致した。視放線に一致した白質の減少も同時に観察された。
著者
豊島 裕子 遠藤 陽一 木村 直史 小幡 徹 衛藤 謙
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

(1) ヒトは、大きく分けてストレスが身体反応を起こしやすいタイプと、そうでないタイプに分けられる。前者では、ストレス負荷に対して脳血流が急激に増加する、脳波の伝達が速くなる、心電図所見で交感神経優位になっているなど、過剰な反応が確認された。(2) また、ヒトにストレスが加わると、血小板が活性化され、血栓を作りやすくなることがわかった。つまり、ストレス耐性の低いヒトでは、ストレス負荷で、血栓性疾患を起こしやすいことがわかった。
著者
小川 康恭 圓藤 陽子 及川 伸二
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

平成7年より「化学物質の神経細胞毒性機構として、活性酸素が生成されアポトーシスもしくはプログラム細胞死を引き起こす」という仮説の基で研究を続けてきた。材料は、人間への影響をよりよく予測できるデータが得られることを期待して、株細胞ではなく初代培養細胞を用いることとした。平成7年度までに得られた成果は、(1)2,5-HexanedioneによりDNAの断片化が起こることを培養後恨神経節神経細胞により示したこと、(2)シスプラチンの場合、それだけではDNAに対する活性酵素の関与する毒性は発現しないこと等である。平成8年度においては(1)培養後恨神経節神経細胞に起こったDNAの断片化がアポトーシスそのものであること、(2)そのとき何らかの活性酸素種が発生していること、さらには(3)化学物質がアポトーシス進行過程のどの段階に作用しているのかを研究課題とした。平成8年度において以下の結果が得られた。(1)DNAラダー検出法を改善するために、神経細胞の収量を増大させ、鋭敏なDNA染色法の導入等を行ったとこと、ラダーの描出は可能となったが、依然として明確な像を得るには不十分な状態であるので更なる改善が必要である。(2)各種活性酸素消去剤により細胞死が抑制される結果が得られた。(3)DNAラダー検出系の感度及び安定性がまだ十分ではないためプロテアーゼが用いたアポトーシス進行過程での作用点解析はまだ進んでいない。このような結果に基づき、引き続きDNAラダー検出系の確立、発生している活性酸素種そのものの同定め、化学物質が働いているアポトーシスの進行段階の検討を進めている。
著者
中村 晃士
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

精神科通院患者73名(F3およびF4圏)の1年後および2年後の追跡調査を行い、64名の基礎データ(職場内での心理的負荷、職場外での心理的負荷、GHQ-30[精神の健康度]、NEO-FFI[人格傾向]、MPS[完全主義傾向]、自尊感情評価尺度など)を収集することが出来た。復職出来るかどうかに対しては、職場以外の心理的負荷、同調性が影響していることが分かり、また家族のサポートが大事であることが分かった。
著者
南沢 享
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

心臓機能は、心筋細胞を含む10種類の心臓構成細胞が高度の協調性を保つことによって維持されている。心臓機能異常を 理解するためには複合的な階層構造体として心臓構成細胞の協調性の破綻を捉えることが重要である。本研究では、複合 的機能と階層構造を有する心臓組織の三次元再構築系を創成し、機械的刺激が心臓構成細胞の機能に及ぼす影響を明らか にすることを目指す。その最初の段階として、単純化された三次元構造でありながら、階層性と腔構造を有する心チュー ブを構築する。こうした三次元再構築系モデルは、心臓発生・再生の機序解明や心機能回復を目指す革新的方法(治療) の開発を行う上で、定量的測定とシミュレーション研究をつなぐ研究基盤を築くために極めて重要である。 【ラット培養細胞系での心チューブの確立】 既に公表されている遺伝子情報を活用すること、細胞自体への遺伝子操作を加えること、などを考慮し、ラット新生仔心 臓及び大動脈から単離した心筋細胞と血管平滑筋細胞を用いた。そこで最初に既に作成に成功している血管において、ラット胎仔大動脈血管平滑筋細胞が使用できるかどうかの検討を行った。まず、ラット胎仔から採取した大動脈血管平滑筋細胞を順次積層化し、7層まで細胞生存性を保ったまま、重層化することが出来た。この再構築系を用いて、血管弾性線維形成に影響を与える要素の検討を行い、重層化した平滑筋細胞では細胞分化がより亢進しており、血管弾性線維の形成が有意に促進していることが判明した。そこで次にポリグリコール酸生体吸収高分子シートにラット胎仔大動脈血管平滑筋細胞を播種し、約4週間培養し、シート外側部分への平滑筋細胞の生着が認められた。その部位はエラスチン染色で染まる部分が存在し、弾性線維形成が行われていることが示唆された。以上の結果から、再構築系にラット胎仔細胞を利用することが可能であることが示された。
著者
松島 雅人
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

糖尿病患者における下肢切断は,糖尿病や足の管理が適切になされれば予防可能な合併症である.本研究では下肢切断の危険因子を検討する目的で症例対照研究を行った.症例は1993年1月から1998年6月に慈恵医大附属病院,第三病院,柏病院の整形外科,形成外科で初回の下肢切断を行った患者のうち,切断時の糖尿病合併例の全例(42例)とした.対照は三病院の外来糖尿病患者一覧から年次毎に症例対照の比を1:4となるよう無作為抽出した(168例).足の状態とフットケアに関し郵送にて質問票調査を行い,症例には下肢切断の1年前の状況を,対照にはそれに対応する時点の状況を質問した,各質問項目に関しステップワイズ変数選択により多変量ロジスティック回帰分析を行った.下肢切断のリスクを有意に増大させたのは(カッコ内はオッズ比).歩行時疼痛(59.8,95%信頼区間4.5-793.2),皮膚の乾燥,ひび割れ(42.6,同1.3-243.4),創傷治癒遅延(7.6,同1.4-41.6),深爪(30.2,同2.6-354.3),爪にヤスリを使う(33.0,同2.0-554.1),および爪をはさみで切る(26.2,同2.1-319.5)がモデルに取り込まれた.足の状態の分析では,歩行時疼痛や創傷治癒遅延など循環障害を示唆する症状ならびに皮膚の乾燥・ひび割れなどがリスクとして挙げられた.臨床的に見出しやすい徴候であり充分な注意を要する.また,フットケアに関しては,爪の日常的なケアについての項目がリスクとして見出され,患者指導の上で参考にすべきと思われる.
著者
丸毛 啓史 黒坂 大三郎 小谷野 康彦
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

再建靱帯組織由来線維芽細胞に対する低出力超音波パルス(以下LIPUSと略す)照射は、出力強度依存的にコラーゲンの量を増加させるのみならず、靱帯型の架橋パターンを変えることなく、生理的架橋の量を増加させること、さらには、コラーゲン基質の成熟速度を促進することが明らかになった。従って、LIPUS刺激は、術後療法の短縮を計るための手段の一つとして、臨床応用可能と考える。
著者
鹿島 剛
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

SMN1遺伝子の発現が不活化されている脊髄性筋萎縮症SMA由来の線維芽細胞にRNA結合蛋白質hnRNP A2に対するRNA干渉を施すとSMNの産生量が減少する現象を見つけた。この作用機序は,SMN2遺伝子の翻訳レベルでの調節であることが解析できた。この事は,SMN2とA2による分子間相互作用が新たな分子標的として,創薬のターゲットとして今後の研究対象になることを示唆している。