著者
余田 翔平 林 雄亮
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.63-74, 2010-07-16 (Released:2014-02-07)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本稿の目的は,義務教育修了時以前に父親が不在であること(早期父不在)によって,地位達成にどれほどの格差が生じ,その格差が時代とともにどのように変化してきたのかを明らかにすることである.従来の社会階層・移動研究では,地位達成過程の初期段階で父親がいなかった人々は欠損値として分析から除外されることが多かった.しかし近年,そういった人々の地位達成に着目する動きが見られる. 「社会階層と社会移動調査」を用いて,早期父不在者の教育達成と初職達成を分析したところ,以下の点が明らかになった.(1) 早期父不在者が高学歴化の流れに取り残される形で,短大以上の高等教育機関への進学格差は拡大傾向にあった.(2) 安定成長期以降,早期父不在を経験した人はそうでない人々と比較して,ブルーカラー職として労働市場に参入する傾向が強まり,専門職や大企業ホワイトカラー職に初職で入職できる割合も低かった.(3) 早期父不在者の初職達成上の不利は低い教育達成によって引き起こされていた.
著者
何 淑珍
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.63-72, 2009-07-19 (Released:2013-12-27)
参考文献数
8

本稿の課題は,J. デューイの『倫理学』における道徳理論の基礎を明らかにすることにある.先行研究では,社会成員としての個人の行為に立脚し,諸個人の置かれているその場その場の具体的問題に対する行為の結果責任が指摘されている.本稿では,その議論を一歩すすめて,デューイのいう個々の具体的状況とは何を指しているのか,結果責任とはいかなるものであるのか,といった問いをたてて検討をおこなった.そこで,デューイによる過去の道徳理論に対する批判,諸個人の行為を取りまく社会的ネットワークへの注目を考察することによって,個人が直面する具体的状況とは,社会全体と関連する「社会的諸条件」だということを明らかにした.デューイの道徳理論は,個人の行為と「社会的諸条件」との相互規定・循環関係を重視する点が特徴的なのである.
著者
小松 丈晃
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.49-52, 2009-07-19 (Released:2013-12-27)
参考文献数
6

本特集へのコメントである本稿では,古典を読むとはどういうことかをまず見たあとで,各論考の議論内容と関連した二つの論点について(いずれもそれぞれ慎重な議論運びを要するものだが,ごく簡単にのみ)考察する.一つは,専門領域の閉じと開放について,である.専門領域はいかなるかたちで「閉じ」てゆくのかを確認しつつ,それらの領域間での対話の可能性に,触れる.もう一つは,観察の観察である.現代社会においては,数理/非数理を問わず,観察の観察(「第二次の観察」)をその研究においてある程度考慮せざるをえなくなっているのではないかという問題提起を行う.
著者
金井 雅之
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.83-91, 2008-07-17 (Released:2013-12-27)
参考文献数
16
被引用文献数
4

どのような社会構造をもつ温泉地でまちづくりへの取組みが盛んであるかを,「橋渡し型」と「結束型」の違いという社会関係資本論の枠組みに依拠しつつ,質問紙調査のデータによって計量的に分析した. まちづくりへの取組みを時間の経過とともに進展していく過程として操作化し,質的比較分析によって分析した結果,つぎの2つの知見が得られた.① まちづくりの初発段階において重要なのは結束型社会関係資本である.② まちづくりの完成段階において重要なのは橋渡し型社会関係資本である. これは,まちづくりの各段階において必要となる社会関係資本の種類が異なることを意味しており,橋渡し型と結束型との関係が単なる二項対立ではなく,時間の経過の中で複雑に交叉しながら創発的にまちづくり活動を促進している可能性を示唆している.
著者
三隅 一人
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.5-16, 2009-07-19 (Released:2013-12-27)
参考文献数
31

本稿では,古典学説に拠りつつ理論的一般化をはかるネオ古典社会学に,解釈支援型フォーマライゼーションという類型論に焦点をおく理論構築法を組み入れて,事例研究を媒介にして学説と数理の対話を促進する,その可能性と意義を論じる.第一に,役割の学説研究との往還の中から解釈支援型フォーマライゼーションならではの理論化を引き出す,その具体的な過程を例解する.ポイントは類型論の背後にあるプロセスの明示化である.第二に,そこで定式化されたプロセスのモデルを,秩序問題との接合および国際関係という異なる現象への応用を通して一般化し,理論的一般化のための含意を検討する.
著者
牧野 友紀
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.93-103, 2008-07-17 (Released:2013-12-27)
参考文献数
9

本稿の課題は,昭和恐慌期開拓村の形成過程の特質を,入植に携わった指導者の記録を読解することによって明らかにすることである.本稿では,準戦時体制期において再編された村落秩序の理解をめぐって,国家権力の末端に位置する「中堅人物」のあり方に焦点を絞り,その人物の記録と生活史から見た開拓村の形成過程の特質を明らかにしている.再編された村落秩序は,国家の支配秩序にはらむ論理と農民の生活秩序の論理との衝突というモメントを通して実現されている.そうした観点の下で考察した結果,本事例の指導者は,従来の「中堅人物」理解の枠には収まりきらない存在であることが看取された.さらに,従来の農本主義がもちえなかった,国家権力の末端に位置しながら,現実の国策に抗して農民と農村の存在を確保しようと創意工夫する,パターナリズム克服の試みを見て取ることができた.
著者
長谷川 公一
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1-4, 2008-07-17 (Released:2013-12-27)
参考文献数
2
被引用文献数
1
著者
武中 桂
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.49-58, 2008-07-17 (Released:2013-12-27)
参考文献数
5

「環境保全」を目標にひとつの空間に多様な立場から人々が働きかけるとき,その空間に求める役割の違いから対立が生じる場合がある.一方,本稿で事例とする蕪栗沼は,地域住民と自然保護団体が求める役割は異なるが,現在,そこに際だった対立はない. かつての蕪栗沼は,草刈り,魚獲り,狩猟の場など,沼の周辺集落の人々の生活の場であった.昭和40年頃を境に,生活における人々と沼との具体的な関係は次第に希薄になったが,沼の周辺水田で耕作する彼らにとって,蕪栗沼は今も「遊水地」として必要である.反面,天然記念物であるマガンの飛来を理由に,自然保護団体は「マガンのねぐら」としての重要性を指摘する.特に1996年,沼の全面掘削の是非をめぐり,地域住民は賛成/保護団体は反対というように,両者間の相違が顕著に現れた. だが,2005年に蕪栗沼と周辺水田がラムサール条約に登録されたのを受け,保護団体が沼への人為的介入の必要を考えはじめた.彼らの認識の変化は,「遊水地」として沼を機能させるために人為的介入を求める地域住民の見解と一致する.これを地域住民の側から捉えると,彼らの発言や作業が,結果的に「マガンのねぐら」として沼のあり方を問う保護団体の理念にも応じているということである.このような地域住民の姿勢は,単に生活における必要な行為としてではなく,ラムサール条約登録湿地に対して,そこで自分たちが築いてきた「歴史」を埋め戻す営為であると提示することができる.
著者
松村 和則
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.61-90, 2007-07-20 (Released:2013-10-23)
参考文献数
29
被引用文献数
1

「そこにも人は住まねばならない」というテーゼは,琵琶湖―淀川水系という「特殊」な時・空間からうまれた「生活環境主義」というイデオロギーの所産である.もし,「条件不利地域」として日本の山村が見捨てられたならば,人々が棲む空間はこの日本のどこにも存在しないだろう. 大都市圏に棲む人々が山村に関心を持つか否かを問う以前に,森林―山村空間は環境保全をめざすべくしてそこにある.崩壊すべきものとしてのムラ,崩壊したはずのムラ,環境保全主体としてのムラ,時代の変容と共に形容される様は変化したが依然として村落社会研究の中心テーマとしてムラ論もまたあった. 環境保全という課題の前で,山村(ムラ)の主体性論は,新たな課題を背負って登場した.このテーマは,環境社会学研究において所有論,コモンズ論として深まりを見せたが,ムラ人の主体性を創り上げていく「はっきりとした意図を持たない首尾一貫性」(P・ブルデュー)を捉える「手口」が明示されずに来た.鳥越皓之の用語になぞらえれば,「言い分」論を経験論へ再度引き戻してモノグラフィックに記述することになるだろう. 本稿は,以上のような問題意識の元に,環境保全主体としてのムラのリーダーを羅生門的手法で描き,書く主体をもその文脈に埋め込みつつ「動かないムラ」を記述する.
著者
上田 耕介
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.59-69, 2015

<p> マイケル・マンの斬新な理論には,歴史研究・現代社会分析にとって,大きな可能性が秘められている.従来の社会学理論の主流は,全体社会を想定したうえで,その諸要素(次元,下位システム等)のいずれかに社会形成の要因を見いだす,というものであった(「要因論」的分析).マンは,明確に境界づけられた全体社会の存在を否定し,「境界を異にする多様なネットワーク群」から社会が構成される,と見る.その上で,支配的ネットワークの「間隙」から新ネットワークが成長し,社会変動を引きおこす,とする(「組織論」的分析).そうした新旧ネットワークのうち,大きな力を持つのが,「イデオロギー」「経済」「軍事」「政治」の4つの「力の源泉」である.この枠組には,従来の社会理論において軽視されてきた軍事と国家間関係が含まれており,マン理論は,社会学理論の発展にとっての重要な貢献となっている.</p>
著者
田中 茜
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.69-80, 2021-09-30 (Released:2023-02-24)
参考文献数
24

1990年代後半以降,女性の労働市場への参入が進んでいる一方で,男性の家事育児分担は低水準のままである.このように伝統的な性別役割が残存し夫婦間での分担が十分に行われていない状況下では,個人の働き方は本人だけでなく配偶者の働き方や家事分担などの影響を受けると想定される.本研究では男女間の不平等状態のメカニズムを解明するために,出産前後における夫婦それぞれの就業行動の変化とそれに対する配偶者の影響を検討する.とくに夫婦間の相互影響が既存の子ども数によって違いが見られるか否かを確認するために,第1子出産群と第2子以上出産群の2群に分けて検討を行った. 「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」(JLPS)のパネルデータを使用し,夫婦の出産前後の労働時間が相互に影響し合うことを想定した分析を行った.結果は第2子以上出産群においてのみ,出産1年前の夫の労働時間が出産1年後の妻の労働時間に対して負の影響を持つことが示された.その一方で,出産1年後の夫の労働時間に対する妻の影響は確認されなかった.この結果は夫婦間の役割分担がジェンダー伝統主義であることを表しており,男性の働き方改革が必要であることを示唆している.
著者
池田 岳大 濱本 真一
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.139-149, 2019-08-30 (Released:2021-02-26)
参考文献数
19

本研究では,無業リスクに関する高校学歴格差とその趨勢について検討する.先行研究では,高い職業的地位への到達可能性において職業科トラックは普通科トラックよりも下位に位置付けられる一方で,職業科トラックが無業リスクを軽減するセーフティネットとしての機能を果たす可能性も指摘されている.この機能は,人的資本論的な教育効果として説明されるのか,それとも「日本的高卒就職システム」のマッチングシステムとして個人の教育年数のみでは捉えきれない質的差異により説明されるのか,検討の余地が残る.以上を踏まえ,調査データを用いて無業リスクに関する普通科,職業科の違いとその趨勢を検討した.分析の結果から,①初職入職時の間断リスクにおいては普通科に比して職業科の優位性がみられるものの,一度職業に就いた後の無業移行リスクに両者の違いはみられない,②工業科からの進学など一部の職業科では,中等後教育への進学はむしろ無業リスクを高める,③これらの構造は,高卒無業者の増加した1990年代以降も状態は大きく変化していない,という3点が分かった.すなわち職業科トラックのセーフティネット機能は間断リスクの低さでみられ,また無業移行リスクの結果も鑑みると,この機能は人的資本論的なミクロレベルの説明よりも,「日本的高卒就職システム」のマッチングシステムというメゾレベルの説明がより妥当であると結論づけられる.
著者
板倉 有紀 伊藤 和恵 佐藤 美智子 佐藤 はま子 大田 秀隆
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.151-161, 2019-08-30 (Released:2021-02-26)
参考文献数
14

「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では認知症高齢者等にやさしい地域づくりが目指されている.本稿では,認知症啓発・予防および認知症当事者支援が行われる秋田県羽後町の事例を取り挙げる.「若竹元気くらぶ」と「うごまちキャラバンメイト・認知症サポーター協会」という二つのグループの認知症に関する活動が成立する背景要因を検討する.特に「認知症予防」という考え方が,どのように働いているかに焦点化する.認知症予防の取り組みは認知症当事者を結果的に排除するという議論がなされてきたためである.「若竹元気くらぶ」は,認知症予防のための活動として始まったが認知症当事者支援の場にもなっている.「うごまちキャラバンメイト・認知症サポーター協会」は「若竹元気くらぶ」から独立して結成され,当事者支援のための活動として始まったが認知症予防に関心のある会員を取り入れ活動を継続している.いずれの活動においても保健福祉に関する専門知識を持つ行政職員や住民が活動に深く関与している.地域社会において認知症予防という考え方は,認知症の当事者の参加の機会にもなりうる.当事者の参加のためには専門職の関わりかたが重要である.
著者
大井 慈郎
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.163-174, 2019-08-30 (Released:2021-02-26)
参考文献数
38
被引用文献数
1

本稿は,東南アジア首都圏の拡大メカニズムの分析に際し,郊外ニュータウン区画外の居住地区に焦点を当て,工場労働者の向都市移動と就業機会の現状を明らかする.具体的には,事例研究としてインドネシア首都ジャカルタ郊外のKarawang県における土地利用データとニュータウン区画外アパート住人135名に対する質問紙調査および8名に対するインタビュー調査を実施した.従来,東南アジア首都圏の拡大を論じる際,欧米の研究が援用され,郊外ニュータウンの分析が行われてきた.対して本稿は,工業団地,ニュータウンと集落地区がモザイク状に分布するアジア都市の現状を指摘し,ニュータウン区画外に工場労働者のための居住地区が形成されていることを提示する.また,近年の非正規雇用の普及によりリクルート会社や学校の紹介といった「フォーマルな方法」が整備されるなか,向都市移動に際し途上国研究で指摘される「人的つながり」である親族・同郷者ネットワークの重要性は低下している.代わりに,短期雇用を繰り返す現在の非正規雇用制度のもと,工場労働者同士情報交換のための人的つながりが重要な役割を担っていることを,本稿は指摘する.
著者
田中 茜
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.175-183, 2019-08-30 (Released:2021-02-26)
参考文献数
19

本稿の目的は,女性の離職行動に配偶者が及ぼす影響を捉えることを通じて,1960年代以降の女性の就業選択のメカニズムを明らかにすることである.離職が生じやすいタイミングの一つである結婚に着目し,妻の結婚離職に結婚時の夫の従業先規模が及ぼす影響を検討した.1995年,2005年,2015年のSSM調査を用いて分析を行った結果,大企業に勤務する男性と結婚した女性の結婚離職が促されるという関連が示された.またその関連は1960年代から1980年代結婚コーホートまで確認されるものの,1990年代以降では確認されなかった.この結果から,結婚時における妻の就業選択が夫の従業先規模に依存するという状況は1990年代を境に消失したと結論づけることができる.1990年代は人々の女性就業に対する意識が徐々に変化し始めた時期であり,それに伴い女性の就業に関する意思決定が変化したと考えられる.
著者
内田 龍史
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.31-43, 2019-08-30 (Released:2021-02-26)
参考文献数
43

部落差別は,近世以前の身分制を出発点とするものの,自由と平等をその基本理念とする近代社会において,差別が告発される形で生成されてきたと言えよう.そうした告発は,部落差別を撤廃するための国策を求める運動へと展開され,同和対策審議会答申(1965年)によって「実態的差別」と「心理的差別」,さらにはその悪循環を断ち切ることが行政の責務とされた.そのうえで実施された同和対策事業は,事業対象を求めることとなり,「同和地区」「同和地区住民」などといったカテゴリーが生成された. こうしたカテゴリーは,ターゲット型政策の実施・運用にあたって必要不可欠であるが,他方で施策の対象となる人々へのマイナスイメージや「ねたみ」・「逆差別」意識を生み出した.そうした意識は,今日まで引き続く部落差別の一端をなしていると言えよう. 現代社会において,差別が生成・維持されるメカニズムを考えるにあたり,部落解放運動などの社会運動による「告発」のインパクトと,その帰結として実施される政策,さらにはそれによって生じる否定的な反応といった,部落問題においては決して目新しくはない視点は,新しいレイシズム・新しいセクシズムなどのように,今日的な「差別の生成メカニズム」を論じるうえで,改めて欠かせないのではないかと考える.
著者
田辺 俊介
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.45-61, 2019-08-30 (Released:2021-02-26)
参考文献数
40

本稿は「差別」という現象の計量分析について,排外主義に関する研究を事例として紹介しつつ,その可能性と限界を論じるものである.具体的には,まず差別と関連現象(偏見や排外主義など)の計量的研究の系譜について簡便に紹介する.続いて様々な差別に関わる現象の中でも,著者が主たる関心として分析している「排外主義」を対象とした計量的研究について,著者のグループが行った全国調査データの分析に基づく結果を例示する.その上で,計量分析による差別の解明可能性と問題点を論じる.