著者
川場隆
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 文学部人間関係学科・音楽学部編 (ISSN:1347233X)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.47-60, 2002-03-31

多数の学生へ向けて, 大量の電子メールを効率よく送信するためのシステムとして, KIDS(Kwassui Information Delivery System)を設計した.KIDSはWEBメールのインターフェースから利用でき, 専用のメールクライアントソフトを必要としないシステムである.KIDSは, 送信に際してデータベースを参照して対象とする学生グループを様々に抽出し, 選択的な送信が可能である.受け取り側である学生は, 情報の種別によって, 携帯電話・PHSへの追加的なメール送信を指定できる.例えば休講通知と就職情報だけは通常のインターネットメール以外に携帯電話・PHSでも受信するといった指定が可能である.ワープロの差込印刷と同様な方法で, 各学生固有の情報を織り込んだメールを大量一括送信する機能もある.データ作成にはKIDSで用意しているインターフェースの他, 表計算などのソフトウェアを利用できる.さらに, KIDSで送信するメールを, 送信時の指定により自動的にWEBにも掲示することが可能である.KIDSは本稿で示した設計にもとづいて, すでに実装作業がすすんでおり, 2002年6月から本学内で運用に供する予定である.
著者
中里 富美子 長谷川 幸雄 左 篤子 赤司 一武
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 家政科・一般教育・音楽科編 (ISSN:02888645)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.33-46, 1986-03

1.4地区世帯の平均的栄養摂取状況は、全国平均パターンとほぼ同様で、ビタミンA、B_2などの微量栄養素の摂取が若干低い結果であったが、大旨良好な摂取であった。2.食品群別摂取状況をみると動物性食品(魚介類、獣鳥肉類)に偏っているので、穀類、油脂、豆類、緑黄色野菜などの摂取増をはかり、動物性食品の過剰摂取を適正にする必要がある。3.また栄養摂取量の分布をみると、世帯間の格差が著しく、過剰摂取群および、不足摂取群に対する何らかの改善が必要である。4.そこで、エネルギー脂肪摂取を過剰摂取群、適正摂取群、不足群に、その他の栄養素の摂取を充足群、不足群に群別し、各栄養摂取のレベルの違いによる摂取食品の差異について検討した結果、(1)エネルギー摂取の違いは、全般的な食品摂取量の差異に起因する。(2)脂肪摂取の違いは、主に油脂類、獣鳥肉類の摂取量に起因する。(3)蛋白質摂取の違いは、動物性食品とくに、魚介類の摂取量差に起因する。(4)カルシウムは乳類、また鉄は魚介類の摂取量に最も差異が著しかった。(5)ビタミンAは、量的な差異によるものであり、主摂取源である緑黄色野菜、獣鳥肉類、卵類の摂取量に差異が著しかった。(6)ビタミンB_1、B_2は、乳類および獣鳥肉類に差異が著しかった。(7)ビタミンCについては、摂取源が野菜と果実および、果汁飲料などに限定され、摂取量の差異が著しかった。以上のように、その摂取の差異は多く魚介類および獣鳥肉類の摂取の差異に起因していることから、業態の違い、即ち漁業世帯とその他の世帯との差異によるものではないかと推察されるので、その点に関する検討結果について次回に報告する。この研究の一部は、第29回日本栄養改善学会において発表した。終りに本調査実施にあたりご協力いただきました野母崎町役場職員の方々、調査世帯の各位、非常勤講師関タマノ氏、本学家政科補助員の方々、学生一同に深く感謝する。本研究のまとめに際し、終始ご協力くださいました本学補助員、森部みゆきさんに心より御礼を申し上げます。
著者
石川 由香里
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 健康生活学部・生活学科編 (ISSN:13482572)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.35-50, 2005-03-31

この論考は, アルコール依存症が近代化の中で家族問題として取り扱われるに至った経緯を跡付けるものである。その作業を通じて, 家族とかかわらせる形でアルコール依存という問題を立てることそのものが, 女性のアルコール摂取に対する社会的許容度のみならず, 社会的排除ならびにジェンダー秩序の構築と関わりを持つ現象であることを明らかにしたい。第1節では大量飲酒が社会的逸脱から疾病へとみなされるようになった歴史的経過について, 欧米の先行研究を通じて概観する。第2節では, 飲酒に対する社会的統制の不可能性を確認し, それでもアルコール問題を解決するために不可避とされる断酒をめぐる戦いについて見ていく。第3節では, 専門家によるパラダイム転換にもかかわらず, 家族の中で育つ子供の将来への影響から飲酒の問題性が論じられていくことによって, 飲酒行為が道徳的観点から論じられる傾向は根強いことを確認する。第4節では, 女性が家族とくに子供に対する責任を負っていることが, 女性を飲酒から排除することへとつながる一方で, アルコール依存症に陥った家族を支える役割を当然視するような社会的権力のあり方について論じる。
著者
長尾 博
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 人間関係学科編 (ISSN:13482580)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.33-45, 2005-03-31

本研究は、青年期の自我発達上の危機状態に対する無意識水準のエディプス (エレクトラ)・コンプレックスの影響を明らかにするものである。114名の高校生男女に青年期の自我発達上の危機状態尺度 (長尾、1989) を実施した。この結果の平均値にもとづいて、平均値より高い男子1名、女子1名と平均値より低い男子1名、女子1名に対して、フリードマンの物語記述テスト (Friedman、1952) とソンディ・テストを実施した。4ケースの主な点は、以下のとおりであった。(1) ソンディ・テストの結果から、青年期の自我発達上の危機状態に対して無意識水準のエディプス (エレクトラ)・コンプレックスは影響していないことが認められた。(2) また、物語記述テストの結果から、青年期の自我発達上の危機状態に対して前意識水準の幼児期における親子関係の葛藤が影響していることが認められた。(3) 3種類のテスト結果から、精神分析学派がいうように意識水準、前意識水準、無意識水準の心の層構造が存在することが示唆された。
著者
伊佐 隆
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 生活学科編 (ISSN:0919584X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.9-15, 1995-03

市販のペクチン分解物と脂肪酸エステルおよび低温加熱の併用による抗菌作用について検討した結果、次のことが明らかになった。1.当該ペクチン分解物を市販しているアサマ化成(株)によると、この物質は酵母や乳酸菌にも効果があるということであったが、試験した結果、大腸菌とブドウ球菌および乳酸菌の一部に対してのみ抗菌効果を発揮した。2.酵母のZ.rouxiiについてさらに検討した結果、モノグリと低温加熱の併用が効果があることが明らかになった。3.乳酸菌のL.farciminisに対しては、モノグリと低温加熱の併用が顕著に効果があることが明らかになった。4.サルモネラ菌であるS.enteritidisについても検討した結果、顕著な効果ではないが、低温加熱の有無に関わらず、モノグリに抗菌効果があることが明らかになった。5.実際に、マヨネーズタイプ調味料に乳酸菌を接種して、これらのモノグリと低温加熱の効果をみたところ、若干の抗菌作用が認められた。以上の結果から、ペクチン分解物についてはみるべき効果は見いだせなかったが、モノグリと低温加熱の併用は、食品で問題となることの多い酵母、サルモネラ菌および特に乳酸菌に対して効果があることが明らかになった。今後は、さらに詳細にこの抗菌作用機作および具体的な食品への有効利用等を考えてゆく必要があるものと思われる。
著者
的場 いづみ
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 英米文学・英語学編 (ISSN:02888637)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.37-54, 1993-03

《消費》という問題がVladimir Nabokovの小説のなかで最も顕著に現れるのは1955年に出版されたLolitaであろう。周知の通り、『ロリータ』にはおびただしい種類の商品が登場する。それらの商品を直接に消費するのは少女Lolitaだが、それらの商品の購入者もしくは購入資金の提供者は主人公Humbert Humbertである。少女に対する倒錯した愛情にとらわれるハンバートは気まぐれな少女ロリータを自分の手元に止めておくために、商品を購入し続けなければならない。ハンバートは目新しい商品を購入しては、ロリータの関心を引き付けようとする。しかし、一時的には関心を引き付けることができても、気まぐれな少女はすぐさま他の刺激的なものへと関心を移してしまう。そのためにハンバートはまた別の珍奇な商品によってロリータを魅惑し続ける必要に迫られる。それゆえ消費活動は絶え間なく続き、また、商品の多くはその俗悪さが強調され、蕩尽の様相すら帯びる。ヨーロッパ出身の中年男がアメリカの少女の歓心を買うために繰り広げる強迫観念的な消費活動。『ロリータ』が出版される以前にこの小説を読んだある人物はこれを「老いたヨーロッパが若いアメリカをたらしこむ」物語と評したとナボコフは語っている。しかし、ナボコフの小説群をながめれば歴然とすることだが、ナボコフはヨーロッパ社会との対比の上で、消費をアメリカ社会の特質と位置付けているわけではない。『ロリータ』において示される強迫観念的な消費活動は、ヨーロッパを舞台とする初期の小説中にもすでにその萌芽を見つけることが可能である。この論文ではナボコフの第二作目の小説King,Queen,Knave(邦題『キング、クィーンそしてジャック』、1928、英訳1968)とLaughter in the Dark(邦題『マルゴ』、1933、英訳1938)に現れる《消費》という問題を『ロリータ』のそれとともに分析し、執筆年が後の小説になるにつれ、《消費》がどのように変化するかを探る。また、『ロリータ』では消費の特徴として「キッチュ」の問題を挙げるが、この「キッチュ」がナボコフの小説で果たしている役割も考察する。
著者
細井 浩志
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 人間関係学科編 (ISSN:13482580)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.147-160, 2003-03-31

Rikujinsen (六壬占) is the most important divine method of Onmyodo (Onyodo, 陰陽道). However, its procedures are very complicated. So, to elucidate this divine method, I decoded the divinity of omens which occurred in ISE-Shrine (伊勢神宮) placed on "Honchoseiki (本朝世紀)" article in NINPYO (仁平) 1(1151)/6/27 with the Rikujinsen text "Senjiryakketsu (占事略決)" written by ABE-no-Seimei (安倍晴明), the famous Onmyoji (陰陽師). In addtion, I pointed out two probabilities: BO (戌) ・ KI (己) which are sometimes substituted by HEI (丙) ・ TEI (丁), not only positions on Chiban (地盤), the ground plate of Shikiban (式盤), a Rikujinsen tool, but also the character of Gogyo (五行), five fundamental factors of cosmos in Chinese natural philosophy, and Kika (季夏) sometimes means June, sometimes means DOYO (土用) or the last summer season, distinguished from other summer time.
著者
久木野 睦子
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 生活学科編 (ISSN:0919584X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.27-31, 1998-03

本研究はイカ外套膜をしょう油液中で加熱した場合の物性変化を官能的に評価するとともに,物性におよぼすしょう油の影響を明らかにするための一助として,しょう油の溶液特性の一つである低pHの作用について実験的に検索した。その結果,より低pHのしょう油溶液で加熱した方が筋繊維に平行に破断した場合の破断エネルギーの低下は大きく,筋繊維を横断して破断した場合の破断エネルギーは大きくなる傾向にあった。また,しょう油溶液と同等のpHを示す緩衝液による加熱でもこのことは追確認された。そのため,しょう油加熱によるイカ外套膜の物性変化にはしょう油のpHが大きく影響していることが本実験結果より推察された。また,官能検査による結果は機器測定によって得られた物性測定結果と一部異なる点もあるものの,おおむね同様の傾向を示しており,機器測定による物性測定の結果はある程度ヒトの感覚を反映するものであることが示唆された。
著者
加來 秀俊 南波 聡
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 人間関係学科編 (ISSN:13482580)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.13-31, 2011-03-30

First, this paper described the time when the special needs education in high school started and reviewed the methods of the special needs education practiced the designated schools. Second, this paper highlighted the present conditions of the special needs education in Nagasaki prefecture. Finally, the concrete methods of the special needs education in Nagasaki Kakuyo High School were introduced.
著者
荒木 龍太郎 石井 望 岡村 真寿美
出版者
活水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

儒教偏重を脱却する新しい漢文教科書を作るため,多数の資料を蒐集した。広く世界の常識的事物を平易に叙述した漢文を教材として採用した。特に長崎は日本・アジア・西洋の交点として重要な場所であり,長崎関聯漢文には異文化接触的題材が多いので利用した。これらに注解を加えて今年度出版助成を申請する準備を整えた。
著者
保田 正人 和田 常子 大塚 みよ子 鬼塚 美智子
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集 (ISSN:02888610)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.34-50, 1952-03

本學、學校寮、自炊寮並に學生の家庭の榮養攝取状況を檢討する事によつて、學校寮、自炊寮の経濟的、合理的な榮養管理實施資料の一部を得ると共に、現下中流階級地方人の榮養攝取状況の實態を把握し、合せて米人家庭の調査によつて日本人との比較檢討を行う目的で、榮養士養成コース專攻學生をして、食物消費量を記録させたものを中心として集計、檢討を行つた。榮養素の攝取状況は、ビタミンB_1,B_2,Cを除くと全國平均と同様若くは若干良好であり、日本人の標準量に對しても、ビタミンA,B_1,B_2とカルシウムの不足を除けば、充分に滿されている。蛋白質、脂質の供給比率は良好であり、前者については質的にもすぐれている。糖質の平均62%は米によつて占められている。カルシウムと燐の比は全國平均よりは良好ではあるが、かなりすぐれた比率と考えられる世帯は30%にしかすぎない。ビタミンAの不足は米食に偏している事と、緑色野菜の利用の少ない事に原因している。ビタミンB_1はその大部分を七分搗米に依存している。食品使用量は全國平均と同一傾向であるが、嗜好品が多く、生鮮魚肉の使用が著しい。主食は大部分は米麥又は米のみによつて占められ、雜穀の使用は少い。又、配給による主食の推定充當率は低い。野菜の生食回數はかなり多く、1日1回の割合で生食されている。米人家庭の熱量素構成比率は、日本人の場合と全く異り、糖質を主体とする主食觀念は微弱であり、脂質が著しく多い。ビタミン類の攝取量はビタミン剤の補給とあいまつて、標準量を相當に越えている。又乳製品、油脂類、果實の使用量が著しく多い。學校寮は若干考慮を要する問題もあるが、概して良好である。但し熱量、カルシウム、ビタミン類が幾分不足している。自炊寮においてもカルシウム、ビタミン類の不足が目立つが、經濟的にも、食生活環境の面でもほぼ好成績を收めている。終りにあたり、種々御援助、御助言を頂いた鶴田千代子教授、海老沼榮養士併に長崎醫科大學藤本薫喜教授、同福井忠孝助教授に謝意を表する。尚集計にあたり學生諸君の協力を感謝する。
著者
河合 潜二
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集 (ISSN:02888610)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.23-27, 1963-03

1)1961年7〜11月と1962年8〜10月に,キンバエ,ニクバエ,およびイエバエの,3令幼虫を水の中へ入れて,その様子を観察した。2)イエバエ幼虫を水に入れると,殆んど悉くが沈み,どんな条件のときも,水に浮く能力はもち得ないし,水に対するその他の適応性も示さなかった。3)キンバエ幼虫とニクバエ幼虫では,虫体に水がふれると,数秒から数分の間に,嘴から空気を消化管内に入れて気胞を生じ,そのために虫体の浮く現象がみられた。水にふれるときの条件によって,気胞発生に遅速はあるが,イエバエ幼虫で気胞が認められないのに比べ顕著なちがいである。4)キンバエ幼虫とニクバエ幼虫が水面に浮かぶと,後部気門で空気呼吸をしてかなり長時間生き,その間,水面の物体にはい上った。イエバエ幼虫ではこのことが確認されなかった。5)水に沈んだ幼虫は,5〜20分間水底をはい廻り,水申の物体をはい上るが,垂直な面を上ることはなく,次第に動かなくなって,30時間内には死ぬ。6)便池を主な生活圏としている,特にニクバエ幼虫の,水に対する適応を阻害するような方向に,便池の構造を改めるべきである。