著者
加護野 忠男
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.68-78, 1987 (Released:2022-07-14)

本稿では,コンティンジェンシー理論以降の組織研究を検討し,そこにみられる新しいパラダイムの崩芽を探る.新しいパラダイムとして,組織認識論が提唱される.組織認識論は,コンティンジェンシー理論の基礎であった情報処理モデルにおける情報の概念にかわって,「意味」を鍵概念として展開される理論であり,集合的な認識過程という観点から組織現象を捉えようとするものである.本稿では,組織認識論の基本的なパースペクティブが明らかにされる.
著者
富永 健一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.45-55, 1987 (Released:2022-07-14)

組織学会25年の歴史はバーナード理論への熱烈な関心からスタートし,それがしだいに組織-環境の枠組によってとって代わられてきたと要約し得る.しかし,組織の社会学理論にとっての中心問題の一つが,メゾ水準での組織の機能的要件問題と,ミクロ水準での個人の欲求充足問題との分離にある事情は25年前も現在も変わりがない.これについてのバーナードの二元論的な理論化の意義を再検討する.
著者
河合 忠彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.54-66, 1987 (Released:2022-07-14)

日本経済の戦後の好パフォーマンスの重要な一因は「企業間での競争と協調の適切なミックス」が実現したことだが,そのようなミックスの実現に際し,財界組織,ことに経団連が重要な役割を果した.また,それが可能となったのは,企業,業界・財界組織,政府等を主要な構成主体とする日本の産業システムが,エリート的,各主体の高い自律性,および構造的安定性,等のユニークな属性を有していたためであった.
著者
小林 敏男
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.64-72, 1987 (Released:2022-07-14)

リーダーシップを含めて諸現象を認識する主観=自我は超越的には存在せず,間主体的な相互作用が取り交わされていくうちに,事後的に形成されるのであり,こうした認識主観の形成原理を調べることによってこそ,リーダーシップ論の認識論的現実妥当性が確保されるのみならず,そもそも主体間での関係の一形態であるリーダーシップのエイドスを見出すことができるのである.極言すれば,リーダーシップがなければ主体における主観=自我は明確には形成されないのである.
著者
榊原 清則
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.34-42, 1987 (Released:2022-07-14)

成熟を脱却し新たな成長可能性を模索するなかで,日本企業は新しい型の戦略を展開している.それは国際ネットワーク戦略であり,それとともにネットワーク型の組織も現われている.本稿では日本企業のグローバリゼーションにかかわるこのような最近の現象を概観し,その問題点を検討する.
著者
金井 一賴
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.32-42, 1987 (Released:2022-07-14)

既存の組織知識の転換や新しい組織知識の創造は,企業家的活動なしには実現できない.本稿では,中小組織における企業家のリーダーシップに焦点をあわせ,それを組織学習の視点から,具体的な事例をもとに分析していくことにする.そして,この分析に基づいて,中小組織の企業家的リーダーシップの主体や方法およびそれが組織学習にどのような影響を与えているかということを明らかにしたい.
著者
大畑 裕嗣
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.10-18, 1987 (Released:2022-07-14)

現代の社会運動のリーダーシップは,復活しつつある群集心理学によっても,またマルクス主義組織論によっても十全に把握することはできない.新たな運動リーダーシップ論の礎石を,従来,利益集団論で主として用いられてきた政治的企業家モデルに求め,集合行為の生成に際して政治的企業家がとる戦略的リーダーシップ・モデルの素描を行う.同時に,このモデルの運動論としての射程の限界にもふれる.
著者
桑田 耕太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.43-54, 1988 (Released:2022-07-14)

組織変革の理論には,戦略行動をうみだす組織の主体的側面が組み込まれなければならない.本稿ではまず組織の主体的側面を組織文化の次元においてとらえ,それと戦略行動とのダイナミックな関係を記述する枠組みとして,デザイン・パースペクティブが提唱される.次いでこの枠組みを用いて組織変化の理論モデルを構築,簡単な事例による説明を経て,組織変革における主体的―連続的側面の重要性を指摘する.
著者
加護野 忠男
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.50-59, 1988 (Released:2022-07-14)

この論文では,組織の変動を認識進歩の過程として分析する.まず,これまでの組織変動論が批判的に検討され,組織変動と認識進歩の多様な形態が識別される.さらに,既存の認識進歩の方法論のなかでの組織変動と,新しい認識進歩の方法論の獲得をともなうような組織変動の2種類が存在することが明らかにされ,ある種の組織変動の難しさは,認識進歩の新しい方法の獲得の難しさからもたらされることが明らかにされる.
著者
高瀬 武典
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.15-24, 1988 (Released:2022-07-14)

組織イノヴェーションを研究する際に,従来の合理主義的組織モデルの限界が多く指摘されている.しかし,合理主義の克服をねらった反合理主義的経営理論もまた,現状ではその内部に合理主義的な要素を内包せざるを得ない.自己組織系として組織をモデル化するにあたっても,ただ反合理主義を唱えるのではなく,合理性と非合理性の拮抗がもたらすダイナミクスも内包した理論の構築がのぞまれる.
著者
金井 壽宏
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.80-90, 1989 (Released:2022-07-14)

ネットワークは,理想型においては,階層性や専門性を奇妙に持ちこまない対等な相互依存関係である.懸案があると電話で呼び出すこともできるが,ネットワーク内の同輩が一堂に会する機会もありうる.そこでは,なんの遠慮もなく自由に発想を走らせ夢を翔ばせるような議論が生まれるのが理想である.そのような同輩間での懸案の真剣かつ共感的な議論を,ピア・ディスカッションと呼ぶ.その組織論的な意味を,「気づき」の共有や,集団レベルでの知識の生成として探るのが本稿の目的である.
著者
榊原 清則
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.71-79, 1989 (Released:2022-07-14)

職能制,事業部制,マトリックスと展開されてきた組織形態の変遷に新しい動きがみられる.それはサテライト組織(S型)とでもよぶべきネットワーク型の組織の台頭である.S型組織は「新しい成長戦略」の遂行の過程で現れてきたものであり,組織デザイン論にまったく新しい洞察を提供している.
著者
浅羽 茂
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.65-78, 1990 (Released:2022-07-14)

企業が長期的に成長するためには,既存事業の盛衰を越えて新規の成長機会を探索・実現しなければならない.本稿では,経営資源の蓄積に焦点を当て,企業と顧客との相互作用が生み出す産業の盛衰と企業成長のメカニズムを分析する.分析を通じて,既存事業の成熟化過程における経営資源のスラック化が企業の長期的成長にとって重要であることが主張される.さらに,企業の長期的成長の2つのパターンが導出される.
著者
金井 壽宏
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.46-59, 1990 (Released:2022-07-15)

組織研究における定性的研究方法には,多様なアプローチがある.本稿では,エスノグラフィーによって得られる多様な観察データに基づく比較ケース分析の方法論的奥行きを探る.ケースの選択における理論的サンプリングの意義,およびエスノグラフィーと臨床的方法の補完的相違についてもふれる.
著者
野中 郁次郎 紺野 登 川村 尚也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.2-20, 1990 (Released:2022-07-15)

組織にとって有意義な知識は,成員が能動的に関与した暗黙知と形式知の相互作用によって固有に獲得される.組織的「知の創造」は,知の共有化から概念化に至る集団の対話プロセスである.その実証分析とモデル化の手法としては発語行為やメタファーなどの言語行為に着目した創造的対話の内容分析が有効である.今後の組織研究はこれに基づく新たなかつ普遍的な組織的知の創造の方法論の探求に焦点を当てる必要がある.
著者
沼上 幹
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.74-89, 1991 (Released:2022-07-15)

本稿の目的は,限られたデータから業界構造と企業の競争行動を解読する手法を開発することにある.具体的には,数量シェアを横軸に,金額シェアを縦軸にとったグラフから,業界の基本的な特徴と企業の競争構造を一歩ずつ読みとっていく.この手法の解読性能を明確にするべく,液晶ディスプレイ産業の事例が分析される.最後に,この手法のもつ意義と問題とを簡単に論じる.
著者
桑田 耕太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.22-35, 1991 (Released:2022-07-15)

組織の長期適応を説明するためのキー概念として,「ストラテジック・ラーニング」の概念を導入し,そのプロセス・モデル,および意義について議論する.ストラテジック・ラーニングは,戦略行動をデザインする際の,基本的なものの見方・考え方を規定する組織の根源的知識が学習され,戦略的能力の刷新をもたらす組織学習である.それは,知識の有効性の評価を伴わない学習であり,戦略的知識蒸留過程を通じて行われる第2次学習である.
著者
榊原 清則
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.55-62, 1992 (Released:2022-07-15)

本稿では,企業組織のドメインをめぐる議論の概念的体系化を試みる.ここにドメインとは,組織体の活動の範囲ないしは領域のことであり,組織の存在領域を意味する.分析の結論として,ドメインの広がりを空間,時間,意味の広がりの三つの次元でとらえる,まったく新しい分析枠組みが提唱される.
著者
寒川 恒夫
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.56-61, 1992 (Released:2022-07-15)

柔道は,明治時代の初めに,嘉納治五郎がそれまでおこなわれていた柔術を,当時の欧米の中心的教育思想であった三育主義教育をモデルにして,独特の「近代教育的な日本のエスニック・スポーツ」に体系化しなおしたものである. 本論は,この柔道が国内に普及し,また世界に拡散して国際化してゆく過程を反省して,柔道が国際化しえた要因について考えようとするものである.
著者
沼上 幹
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.85-99, 1995 (Released:2022-07-15)

社会科学,特に経営学の領域でマクロ現象法則を確立できる可能性が非常に限られていることを,簡単なゲーム論の概念を利用して明らかにする.マクロ現象法則が確立困難であれば,法則定立的な実証研究の方法論が社会科学者に要求してきた信頼性・追試の可能性と外的妥当性という2つの評価基準が重要なものではなくなる.このような作業を通じて個別事例研究の擁護論を展開するのが筆者の最終目標である.