著者
西口 敏宏 辻田 素子
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.4-15, 2017-03-20 (Released:2017-09-11)
参考文献数
38

境界とメンバーシップが明確なコミュニティーの営為を分析する概念として,多義的なソーシャル・キャピタルでは不十分である.本稿は,繁栄する温州人企業家やトヨタサプライチェーンの事例から,より限定的な中位の概念として「コミュニティー・キャピタル」を提唱する.機能するコミュニティーでは,成員への成功体験の「刷り込み」によって「同一尺度の信頼」が派生し,面識のない成員でさえ協力しあう「準紐帯」が醸成される.
著者
勝又 壮太郎 金 勝鎮
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.62-76, 2020-12-20 (Released:2021-01-14)
参考文献数
31

本研究は,とくに技術面,コスト面の制約がない環境下での製品に関する段階的な機能の変化を対象に,その要因を検証し,実証分析を行った.スマートフォンの画面サイズの変化に注目した事例分析から,消費者は,自分の認知している機種よりも適度に大きな製品を最も選好するという結果が得られ,このような選好が継続した結果として,段階的な大型化が実現したことが示唆された.
著者
土橋 力也 古澤 和行
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.78-90, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
33

本稿は,マッチング・プラットフォームにおいて,PFの社会的存在感がどのようにしてPF の信頼を生み出し競争優位の実現につながるのかを明らかにする.求貨求車におけるトランコムの事例分析から,「人」の介在が信頼をもたらすメカニズムとして,「曖昧さの許容」,「心理的安心感の創出」,「変更への対応」,「取引条件の擦り合わせ」の4つがあることを示し、信頼の正のフィードバックループの存在を明らかにした.
著者
尹 大栄
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.28-39, 2013

本稿では,南九州地域の焼酎(芋焼酎)産業における取引制度の事例分析から目的や利害を異にする人々間の協働の問題について考察を行う.南九州地域の焼酎産業では,芋焼酎の原料であるイモをめぐる取引において,本来はゼロサムの関係にあるはずの売り手(イモ生産農家)と買い手(焼酎メーカー)が相互に利益を高めるwin-winの取引制度を生み出している.このような取引制度は,取引ガバナンスを第三者(仲買人)に委ねるという制度的工夫や,自己利益の最大化の追求を自制する「強者」(焼酎メーカー)の節度ある取引行動によって支えられている。
著者
佐々木 秀綱
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.45-57, 2018-09-20 (Released:2019-01-17)
参考文献数
36

本研究の目的は,リスクを伴う意思決定に際して,社会的勢力感がいかなる影響を及ぼすのかを検討することである.質問紙を用いた場面想定法実験の結果から,次の2つの知見が明らかになった.第1に,勢力感の高い個人はリスク愛好的な選択を行いやすくなった.第2に,勢力感の低い個人は,リスクに対して単純に回避的な反応を示すというよりはむしろ中程度のリスクを好む傾向を強めた.
著者
谷口 真美
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.4-24, 2016-09-20 (Released:2017-08-28)
参考文献数
104
被引用文献数
4

多様性と成果の関係性,そこにおけるリーダーシップの影響過程は,曖昧で複雑である.そのため研究が少なく,いまだ実務の要請に応えきれていない.しかし,次の点で着実に研究が進んでいる.1)より精緻に現象を捉えるための方法論が洗練されている.2)多様性固有の局面を正確に捉え,それに対するリーダーシップの影響過程が探求されている.本稿では,個人,集団(チーム),組織レベルで,多様性と成果をつなぐリーダーシップの役割に関する既存研究を整理し,今後の研究課題を示す.
著者
今永 典秀
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織学会大会論文集
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.144-149, 2017

<p>Morinaga Co., Ltd. is one of the listed companies with the first section of the Tokyo Stock Exchange, and its main business is manufacture and sale of confectioneries, foods, frozen desserts, health drinks etc. This paper describes the case study of Morinaga Co., Ltd. collaborated with 01Booster Inc. practicing Open Innovation. Morinaga Co., Ltd. implemented the "Morinaga Accelerator Program" from December 2015. This system collected 40 advisors with various knowledge and experience called "Mentor" from inside and outside of the company. In the company, they are experts in various fields such as production engineering, quality control, marketing, intellectual property, law, advertisement, for instance. Outside of the company, people with entrepreneurial experience, fund raising, and have a great network of connection. Through the implementation of the Accelerator Program, the company has created a mechanism for investing in new venture companies. More than 100 new business plans entries received, 4 were selected, and 2 were decided to be invested in 2015. The number of entries had increased 2016 compared with last year. 7 plans had been selected, and Morinaga is considering investment destinations. In addition, the company had established "Learning with Venture Companies" program by in-house open recruitment. Two employees selected by the internal public offering were transferred to the investee companies for one year. The two employees reduced the experience of the program to the company and led to improvement of the internal environment. They also cooperated in hiring new graduates and improved the company's brand image.</p>
著者
渡部 俊也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.27-37, 2012-12-20 (Released:2013-10-01)
参考文献数
22

最近の知財ライセンス契約の条項を詳しく検討することによって,その特徴と機能を明らかにすることを試みた.その結果,知財の共創と協働という面での共通の機能が見出された.この機能はオープンな知財マネジメントの一機能であるともいえる.このような観察結果は,オープンイノベーションの実行 における知財ライセンス契約の重要性を示している.
著者
伊藤 博之
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.4-17, 2021 (Released:2022-01-11)
参考文献数
82

本稿は,2つの統治パラダイムを対比することで,統治と経営が連動していることを主張する.第一の統治パラダイムは,現行の支配的な企業統治論である.それに従うならば,経営は「制作」となる.一方,経営を「実践」とするもう1つの統治パラダイムも構想できる.統治と経営のこうした連動性を再評価することで,企業統治論の研究が活性化され,経営学の諸論考と企業統治論の交流が促進されることが期待される.
著者
平山 智香子
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織学会大会論文集
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.233-238, 2018

<p>Catching the diffusion of User Generated Contents is difficult. It is because the quality of UGC varies and there is little mass marketing in Consumer Generated Media. These days many researchers model the diffusion with the network effect, where some researchers claim importance of dividing diffusion into trial and repeat. We modeled diffusions of VOCALOID movies in niconico by trial-repeat model, and we find that sometimes network have different effects on trial and repeat.</p>
著者
山口 真一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.4-15, 2021-09-20 (Released:2021-10-15)
参考文献数
40

本稿の目的は,企業現場で急速に発展している組織・消費者間コミュニケーションについて,近年の学術研究ではどのようなデータが収集・分析されているのか紹介することである.分析を①テキスト分析,②行動データ分析,③アンケート調査分析の3つに整理したうえで,それぞれの分析における「具体的なデータ収集・分析方法」「分析で明らかにできること」「適しているテーマ」を述べる.
著者
村瀬 俊朗 王 ヘキサン 鈴木 宏治
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.16-30, 2021-09-20 (Released:2021-10-15)
参考文献数
103

理論を構成する抽象概念の変数化は,実証を行う上で重要な作業である.経営学者はアンケート調査を活用して概念の抽出を行ってきたが,データの大規模化や時系列での取得が困難であるため,一部の理論の検証が難しい.このデータに関する問題を解消するために,自然な人の行動の記録であるログデータの活用方法を模索する必要がある.そのため,本稿では自然言語処理と機械学習を応用したログデータの活用方法を検討する.
著者
丸山 峻 島貫 智行
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
pp.20210201-4, (Released:2021-02-01)
参考文献数
31

障害者の職場定着を促すうえで、障害者の特別な人事管理の要否に関する先行研究の見解は一致していない。本稿は、社会的アイデンティティの考慮の有無に注目したアイデンティティ・コンシャス人事管理とアイデンティティ・ブラインド人事管理の枠組みからその境界条件を検討した。事例研究により、職場で共有されている障害者の能力観と障害者活用におけるライン管理者の裁量が境界条件として機能することを例証した。
著者
北林 孝顕
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.59-70, 2021 (Released:2021-07-15)
参考文献数
20

本稿は,広範な開発業務の外部委託に焦点を当て,鉄道車両開発を素材に,高いプロジェクトの満足度の実現に効果的なユーザーのマネジメント行動を分析し,その背後にある知識マネジメントについて考察した.その結果,効果的にマネジメントしているユーザーは,従来メーカーが保持すべきとされてきた統合知識や部品知識を活用しながら設計統合化に深く関与し,開発の主導権を確保していることが明らかになった.
著者
青木 哲也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.59-71, 2021 (Released:2021-06-25)
参考文献数
47

本研究の目的は,オンライン上での企業に対する顧客の自発的な貢献を促進するために,企業がその貢献に対してどのように反応すべきか明らかにすることである.既存研究は個別顧客と企業の二者関係に注目し,報酬による貢献意欲向上を議論していた.本研究は,企業と顧客,他の顧客の三者間関係に議論を拡張し,個別顧客への報酬支払いが他の顧客に影響を与える可能性について,組織支援理論・公正理論を踏まえて議論す る.
著者
宮尾 学
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.21-32, 2016-03-20 (Released:2016-08-29)
参考文献数
27
被引用文献数
1

本稿では,多義的な製品の開発と価値創出について非決定論的な視点で事例研究を行い,次の点を発見した.開発プロセスでは,製品コンセプトの提案・評価・変更の応酬によって,製品が創出しうる価値が最大限議論された末に1つのコンセプトに収斂していた.さらに,製品の価値創出プロセスでは,こうした組織内での対話に加え,消費者への伝達,伝達内容と製品設計の調整,競合の追随という4つのメカニズムが複雑に作用していた.
著者
水野 誠
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.35-46, 2015-06-20 (Released:2016-04-07)
参考文献数
14

本稿では,ビッグデータの利活用が求められる現在のマーケティング環境において,ボトムアップ型発想を行うことの重要性を論じる.第一に,マーケティング実務におけるデータ分析の歴史的経緯を概観し,第二に,ビッグデータの活用に関する一般的な誤解を指摘する.そのうえで,マーケティングにおけるトップダウン型発想とボトムアップ型発想を対比させ,ビッグデータとマーケティングの共進化にむけた,両者の相互循環 のありかたを考察する.
著者
山口 真一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.24-32, 2018-06-20 (Released:2018-08-24)
参考文献数
21

本研究では,組織内外データ活用について実証分析を行う.分析の結果,自社データ活用率は36%,他社データ活用率は19%に留まることが分かった.さらに,「経営者がデータ活用を学ぶ」,「代表者を若い人とする」,「企業規模を大きくする」,「社員の自発的参加を促し,合理的管理をする」,「強制的,命令的な組織とし,データ活用をトップダウンで実行する」等の要素が,データ活用促進戦略として有効であることが明らかになった.
著者
小阪 玄次郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.59-69, 2018-12-20 (Released:2019-02-12)
参考文献数
41

本稿の目的は,破壊的イノベーションによる転換期に,転換への適応が困難な既存企業とアライアンスを結んで新規技術を提供する,という新興企業の事業機会について検討することである.市場調査業界における技術転換を事例として分析した結果,業界の既存企業,新規技術を用いる先発の新規参入企業,および後発の新規参入企業の者の間での競争関係が,新旧3企業間でのアライアンスの先行要因として示唆された.
著者
西村 孝史
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.49-61, 2020-03-20 (Released:2020-08-13)
参考文献数
49

J1リーグを題材にSHRM(戦略的人的資源管理)におけるミクロ的基礎に関する実証研究を行った.既存のユニットレベルの人的資本研究の課題に対して報酬分散の概念を援用し,ユニットレベルの人的資本の分散と人員構成が,順位に与える影響を検討した.分析の結果から,⑴チーム内での報酬分散は順位に負の影響を与えること,⑵タスク型のダイバーシティは,順位に正の影響を与えることを指摘する.