著者
鹿又 伸夫 与謝野 有紀 平田 暢 野宮 大志郎 織田 輝哉 稲葉 昭英 太郎丸 博 高瀬 武典
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1.異なる分野の調査データに適用するという研究目的については、歴史社会学、社会運動論、組織社会学、社会心理、社会行動などにかかわるデータの分析を行った。具体的には、農民暴動、ボランティア団体、社会的属性と意識、援助行動、携帯電話への不快感、出産意向などの分析をおこない、ブール代数アプローチが多様な分野およびテーマに応用可能であることを示した。2.調査方法の異なるデータへ適用するという研究目的については、事例データのみでなく、歴史的資料データ、既存データのメタ分析、クロス表データ、ヴィネット調査データ、手紙データなど多様な調査データへの応用方法を提示し、ブール代数アプローチを様々な調査データへ応用可能にした。3.理論の定式化および理論比較への適用という研究目的については、演繹的に理論モデルを構築する手法によって、役割概念を理論的に再定式化する成果が得られた。そこでは、役割の階統性・可視性による役割構造分析という、役割理論にたいする新たな分析を提示した。4.数理モデルとして拡張するという研究目的については、論理演算の明示化、確率モデルとの比較、真理表データの2値化基準の検討などを行い、数理モデルとして拡張していくための基礎的検討を行った。これらでは、データの多様性の欠如や、矛盾のある行などの方法論的問題にたいする対処策を提示した。以上のように本研究では、方法論的な基礎的検討(上記4.)、発展的応用方法の開発(上記2.および3.)、そして実質的研究への応用(上記1.)を行った。とくに実質的研究へ応用にかんしては、意識や行動における主観的論理や主観的状況定義にブール代数分析が有効であることがわかった。
著者
与謝野 有紀 高瀬 武典 安田 雪 高坂 健次 草郷 孝好
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、自殺、犯罪率と社会関係資本、不安感の関係を解明するために、兵庫県下における1800名を対象とした面接調査を実施し、9区市町より1080票を回収した。この調査データと、自殺、犯罪率の公開されたデータとの地域比較から、以下が明らかになった。1)自殺は生活満足、サポートネットワーク、近隣への信頼と関係している。2)生活満足、サポートネットワーク、近隣への信頼の規定因は、人口によって大きく異なる。3)都市部では経済要因の影響が強く、人口規模が小さいほど近隣関係が強く影響し、因果関係は複雑化する。
著者
高瀬 武典
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.4-11, 2006-06-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
14
被引用文献数
3

組織進化のモデルは変異-選択-保持の3段階からなる.組織変動研究に進化モデルが多く採用されてきた理由は,変異の段階に組織の自発的・創造的な側面を,選択の段階に環境からの影響を強調するというかたちで組織と環境の相互作用を変動分析に組み込むことが可能な点にある.進化モデルはいくつかの局面で「時間」の捉え方が重要な意味をもつ.本稿では時間について従来の循環型・線型の区別に加えて有界型・無界型の区別を導入し,組織=環境関係のモデルの精密化を図ると同時に現代日本に生じている組織進化の状況について考察する.
著者
高瀬 武典
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.15-24, 1988 (Released:2022-07-14)

組織イノヴェーションを研究する際に,従来の合理主義的組織モデルの限界が多く指摘されている.しかし,合理主義の克服をねらった反合理主義的経営理論もまた,現状ではその内部に合理主義的な要素を内包せざるを得ない.自己組織系として組織をモデル化するにあたっても,ただ反合理主義を唱えるのではなく,合理性と非合理性の拮抗がもたらすダイナミクスも内包した理論の構築がのぞまれる.
著者
高瀬 武典 大西 正曹 与謝野 有紀 伊東 理 廣田 俊郎 森田 雅也 林 直保子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1.地域活性化モデルの精密化と汎用性の検討廣田は、上場企業を対象に「サービス価値向上のための戦略・組織、システムに関する質問票調査」を実施し、サービス業が地域社会・経済システムの活性化に対して果たす役割について「経済的貢献・自社へのフィードバック・問題状況への対応・社会的貢献」の類型化を行った。2.経済活性化の日英比較伊東は英国訪問調査により、1990年代以降英国における都市活性化の成功例である、各都市における小売業の「タウン・シティセンター」の動向実態と成功要因を研究し、大阪における小売業活性化に向けて、(1)地域都市圏全体での検討(2)きめ細かい土地利用計画(3)意思決定の仕方の再検討(4)計画・戦略の連携・調整の重要性などを指摘した。3.事業所統計調査結果の時系列比較高瀬は、過去の事業所組織と雇用関係の統計分析をすすめて、組織からの個人への束縛作用が、官僚制的な束縛と終身雇用的関係からの束縛という両方の点から見て軽減の傾向にあり、組織活性化を促進する背景的状況が生まれていることを明らかにした。4.経済活性化のための社会的基盤の検討与謝野と林は、全国の20歳以上を対象にした「信頼感」に関する調査結果をもとに、「信頼の解き放ち理論」の前提となる事実認識が支持を得られないものであることを示した。このことは、個人間競争を通じた経済活性化という、よく見受けられる政策的提案の妥当性に疑問を抱かせるものである。5.経済活性化の事例研究大西は、東大阪市の工場組織に関する実態調査をもとに活性化に向けた方策として中小企業の独立化、企業グループの形成、企業間ならびに官民連携による設備活用を提案した。6.活性化につながる人的資源の形成に関する研究森田は日米欧におけるエンプロイヤビリティの展開を比較し、人事制度に組み込むための条件について考察した。
著者
与謝野 有紀 大西 正曹 高瀬 武典 林 直保子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、商店街等における信頼生成過程の詳細な聞き取りによって、組織に対する信頼感の人工的生成は困難であり、組織は信頼生成の必要条件としかならないことを明らかにした。また、地域メッシュ統計をもちいた全国の不平等分布の検討から、不平等が社会の正当性の承認を破壊し、一般的信頼の阻害要因となることを明らかにした。また、動画を用いた信頼性見極め調査システムの開発し、その過程で、特定の他者との関係が築かれると一般的他者への信頼性が上昇することを明証した。
著者
与謝野 有紀 熊野 建 高瀬 武典 林 直保子 吉岡 至
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.293-317, 2006-03-30
被引用文献数
1

全国の地域通貨運営団体を対象に、目的・運営形態・効果・問題点等に関する郵送調査を実施した。調査対象によってさらに他の新しい対象を紹介してもらうスノーボール式サンプリングを行い、最終的に107の地域通貨からの回答を得た。単純集計結果をもとにすると、(1)地域経済の活性化を第一の目標にするものは全体の1割にみたず、コミュニティの再生などを目標においているものがほとんどである。(2)問題点としては、使用が一回かぎりの場合が多く流通しにくいことや、活動が広がらないことをあげているものが多いことがわかった。