著者
大木 清弘
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.101-113, 2011-12-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
29

本稿は,多国籍企業における本国拠点の優位再構築が,国際的な機能配置選択に伴う拠点間競争によって促されること,その優位再構築が企業全体の能力向上に貢献することを明らかにするものである.本稿は,これらの論理の妥当性を日産自動車の追浜工場の事例研究から検証した.
著者
水野 学 小川 進
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.35-44, 2011-09-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
22

本稿は,企業間競争を「資源吸引」という視点から議論する.資源吸引とは,当該企業が相手先の限りある経営資源を,どれだけ優先的に自社に配分してもらえているかを表す言葉である.本研究ではコンビニエンス・ストアのセブン-イレブンの事例を通じて,この資源吸引がビジネス・パートナーとの長期的な協調関係から生み出されることを明らかにする.また理論的な課題をビジネス・エコシステムとの比較を通じて議論する.
著者
根来 龍之 釜池 聡太 清水 祐輔
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.45-57, 2011-09-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
28

本稿では,複数のエコシステムからなる製品システムを,パラレルプラットフォーム市場と呼び,その市場特有の戦略的観点について事例分析を通じて論じる.事例分析から抽出されたポイントは以下の5つである.⑴ネットワーク効果のマネジメント,⑵利益格差のマネジメント,⑶セットとしてのプラットフォーム製品のマネジメント,⑷結合プラットフォームのマネジメント,⑸マルチホーミングのマネジメント.
著者
木村 誠
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.58-68, 2011-09-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
17

デジタルゲームは,アーケードゲームとコンシューマゲームに大別される.本稿はコンテンツの権利関係および継承関係と階層性の観点から,デジタルゲームのコンテンツ間関係モデルを導出し,原作・補完コンテンツの移行オプションのパターン化を試みる.デジタルゲームの事業者側が原作・補完コンテンツの移行オプションのデザインの視座を持つことは,エコシステムの構造把握や断続的な業績変化の予測に役立てることができる.
著者
貴志 奈央子
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.69-78, 2011-09-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
29

研究開発の対象を拡大することは,変化の激しい業界において不確実性を吸収する機能を強化し,組織の存続可能性を高める.しかし,経営資源の制約により,市場の変化に対し機動性が鈍化する可能性もある.分析では半導体メーカー10社をサンプルとして,米国特許の取得状況から研究開発における探索の範囲と機動性の関係を検証した.その結果,探索範囲の拡大によって,組織に蓄積される知識は多様化していること.しかし,探索範囲の広い組織は,研究開発の機動性を低下させていることが明らかとなった.
著者
鈴木 竜太
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.26-38, 2011-06-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
47

本論文は,集団レベルのタスクと目標の相互依存性,集団凝集性の個人の進取的行動(proactive behavior)への影響を,研究開発部門を対象とした調査によって明らかにした.調査結果からは,仕事の相互依存性と集団凝集性が高い集団では,そこに所属するメンバーの進取的行動が促されることが示された.また,自律的に仕事が設計されている人ほど,進取的行動が促されるが,目標が集団で設定されている集団であるほど,その影響が強くなることが示された.
著者
井上 達彦 真木 圭亮 永山 晋
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.67-82, 2011-06-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
41

プラットフォーム・リーダーであるハブ企業は,ニッチのどのような行動を促せばエコシステムを繁栄させられるのか.エコシステムの繁栄のメカニズムを解明する上で鍵となるのが,マルチプラットフォーム環境下におけるニッチの多様な行動で ある.本研究では,相互補完的にエコシステムの健全性に貢献しうるニッチを,プラットフォームへの依存度の動態的な変化から四つに分類し,ニッチの望ましい行動とそれを促すハブ企業の戦略を複眼的に分析した.
著者
奥村 昭博
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.15-25, 2010-09-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
27

組織学会の活動を振り返り,それが日本企業の経営にどのように貢献してきたかを,戦略論及び組織論の研究と経営実務との関係から考察した.経営知が経営実務家と研究者およびコンサルタントとの交流から発展するとすれば,日本は米国に比べるとその創出性は薄い.今後,日本の組織学会はさらに経営実務との交流を深め,新たな日本の経営理論を作り出すことに努力すべきである.
著者
堀川 裕司
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.60-73, 2010-09-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
22

自然現象を解明することを目的とした科学と,モノを作ることを目的とした技術はどのように相互作用するのだろうか.本研究は,この問いに対する一つの仮説を提示する.本研究の基本的主張は,明示的な知識の世界と考えられている科学の世界には,暗黙的知識が副産物として深く蓄積されており,この暗黙知が新しい技術を生み出し,それを実用化していく上で非常に重要な役割を果たしている,というものである.
著者
清水 大昌
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.6-12, 2010-06-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
9

経済学において「競争」というと完全競争がまず浮かぶ.その後,その批判から完全競争の仮定を緩めた不完全競争の分析が考えられる.本稿ではまずそれらの流れを紹介する.またその後それらを踏まえて,競争に関連する研究がどのような設定で行われてきたかについて紹介していく.具体的には収入最大化,混合寡占,そしてオークションに触れる.
著者
巌佐 庸
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.38-45, 2010-06-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
13

生育・生存・繁殖などに必要な資源を利用している個体同士は,同種でも異種でも他の存在は互いにマイナスの影響を与える.これを競争と呼ぶ.生態学および進化生物学において,競争は生物界をつくり上げてきた基本的なプロセスである.進化において,異なるタイプの生物に生じる競争は自然淘汰および性淘汰の形をとって適応性をもたらす.それらのはたらき方や,細胞レベルの進化である発ガン過程について述べる.
著者
澤田 直宏 中村 洋
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.57-71, 2010-03-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
28

本研究は,競争優位の劣化・逆転の要因について,個々の要素技術や製品アーキテクチャのレベルではなく,企業のビジネスシステムのレベルにおいて考察する.これら分析レベルの相違は,問題に対する解決方法の相違にもつながる可能性がある.本研究では,外部環境変化への適応の問題を「認知」とその後の「アクション」の問題に区分した上で,新たな競争優位劣化・逆転の仮説を提示し,事例研究により検証を行う.
著者
稲水 伸行
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.72-85, 2010-03-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
18

組織的決定のゴミ箱モデルは,「構造が未分化になるほど『問題解決』は一般的なスタイルではなくなり,『見過ごし』と『やり過ごし』が増える」としてきた.そこで,シミュレーションによって検討したところ,⑴構造が未分化になっても,「問題解決」に大きな変化はなく,むしろ「決定を要求される頻度」が低いと増加する傾向がある,⑵「見過ごし」が急減する,⑶「やり過ごし」が急増することが明らかとなった.
著者
竹内 規彦 竹内 倫和
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.38-50, 2009-12-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
33

近年,ミクロ及びマクロの諸理論・諸概念の統合化を図る新たな視点からのリーダーシップ研究が注目されつつある.本研究では,このメソ・アプローチと呼ばれるリーダーシップ研究について,既存の研究類型を踏まえた3つの基本的なメソ・モデル(行動的・文脈的・関係性アプローチ)を提起する.更に,これらモデルを応用した今後のメソ・リーダーシップ研究の理論的・方法論的課題について,2つの研究事例を通じて考察する.
著者
藤原 雅俊
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.84-96, 2009-12-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
28

本稿は,産業間の競争的相互作用に注目し,補完的産業からの影響を包含した技術蓄積メカニズムを分析している.具体的には,デジタルスチルカメラ産業での競争と相互作用しながらインクジェットプリンター産業で印字精度の同質的競争が展開され,産業全体でインクジェット技術が高精細化へと蓄積されていく流れが扱われる.補完的産業との相互作用にまで分析空間を広げて技術蓄積メカニズムを解明することの意義が示唆される.
著者
佐藤 俊樹
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.20-28, 2009-09-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
20

この論文では組織の自己産出系論を解説する.これはN. ルーマンによって提唱された理論で,C.I.バーナードの「協働」やH. A. サイモンの「決定前提の連鎖」をふまえて,組織自身が行為するかのように見えるしくみを,より厳密に再構成したものである. ここでは,まず,そのしくみを「組織としてふるまう」ことの相互参照-自己参照ネットワークという形で定式化する.相互参照-自己参照ネットワークとしての組織は作動的に閉じており,それによって環境に開かれる.それゆえ組織は外部の環境に影響されるが,内的な組織/環境イメージにのみ反応する.この点が自己産出系論の最大の特徴である.
著者
大沼 雅也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.53-66, 2009-09-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
37

本稿では,既存技術と新規技術の関係性> の経時的な変化という動態的な現象について議論する.このような問題は既存の技術革新研究では必ずしも十分に検討されてきたわけではない.そこで,イノベーションの普及理論をはじめとする議論を基に,技術を利用するユーザーの行動がもたらす影響を組み入れた技術の関係性の変化メカニズムの説明枠組みを,日本におけるX線CTとMRI の普及過程を事例として提示する.
著者
平野 創
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.67-79, 2009-09-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
42

本稿の目的は,投資水準の適正化を企図した設備投資調整により,逆に過剰投資が発生するメカニズムを提示することである.本研究では,石油化学工業を対象とした事例研究を当時の調整主体の会議資料等を利用して行う.事例研究の結果,設備投資調整という行為の本質は各社の投資活動に人為的な時間差を生み出す仕組みに過ぎず,むしろ多数の投資主体を温存するシステムとして機能し,設備過剰を促進していることが明らかにされる.
著者
フェルナルド・F スアレス マイケル・A クスマノ 長内 厚 中本 龍市
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.4-20, 2009-06-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
41

本稿は,企業が自社の製品技術を支配的なプラットフォーム(PF)へと成長させようとする場合に,サービスがどのような効果を持つのかを議論するものである.サービスは,製品技術と産業の状態に応じて,5つの特別なメカニズムを持っている.サービスは,⑴市場初期に,顧客がPFを採用する際の,不確実性,複雑性を低減する,⑵顧客からのフィードバックを可能にすることでPFを改善する手がかりになる,⑶補完製品,時には競合するPFとさえ連携を可能にし,PFの価値を上げる,⑷PFを採用する顧客への補助として機能する,⑸成熟期においては,製品自体に代わって売上・利益の源泉となり,競争力を維持する手助けになる,という5つの効果がある.
著者
前川 佳一 椙山 泰生 姜 聖淑 八巻 惠子
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.21-36, 2009-06-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
42

本論文では,富士通のフィールドワークの事業化の事例をもとに,サービス分野のイノベーションにおいてフィールドワークのような定性的な社会科学的方法が持つ意味を検討する.事例の考察から,フィールドワークが研究の形態から変容してサービス化することや,定性的研究法が技術者のコミュニティに受容される際に「比較可能化」されていくことを指摘する.