著者
長岡 貞男
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.35-48, 2002-03-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
22

近年,APS(新写真システム),MPEG(動画圧縮技術), DVDなど技術標準の創出と普及のためのパテント・プールに よる企業間協力が行われるようになってきている.本稿は,1.どのような条件において技術標準の革新のために企業間競争ではなく企業間協力が必要になるのか,2.アウトサイダー企業の登場など企業間協力が円滑に進まないことがある原因は何か,その解決策は何か,3.パテント・プールが技術標準の更なる革新への企業間競争を阻害しないためにはどのような条件が必要なのかを,理論と実際のパテント・プールの事例によりながら分析する.
著者
永田 晃也 佐々木 達也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.15-25, 2002-03-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
10

本稿では,知的財産マネジメントにおける戦略パフォーマンスの決定要因を定量的に分析し,戦略論の基本的なイシューとの関連を慮した検討を行う.近年の経営戦略論の論壇では,戦略的ポジショニングの重要性を強調する見解とResource-based viewが対峙している.しかし,本稿の分析結果は,い ずれの戦略アプローチが合理的であるのかは一般的に言えるものではなく,事業戦略が依拠する技術の成熟度によって異なることを示唆している.
著者
井桁 貞一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.57-65, 2002-03-20 (Released:2022-08-03)

日米政府によるプロパテント政策およびソフトウェア特許についての保護の変遷を通じて,特許の重要性を概説し,現在の電機メーカーの特許戦略を富士通株式会社の例を通して,説明している.特許戦略として,有力特許の取得,権利の活用,他社特許侵害の回避に対する戦略および最近出現したビジネスモデル特許への対応などについて詳述している.
著者
宮崎 正也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.114-127, 2001-12-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
35

コミュニケーション研究の分野において新聞,雑誌,書籍,ラジオ/テレビ放送などのメディア内容を分析することで社会的文脈や行為主体の意図を推論するための手法として,「内容分析」が開発されてきた.本稿では,この手法をインクジェット・プリンタ業界の事例研究に応用する.業界全体での製品コンセプトの変遷と各企業の競争上の注目点を新製品ニュース・リリースの分析によって描く.その結果から各社の競争戦略を読み解く.
著者
輕部 大
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.95-113, 2001-12-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
35

本稿は,HPC産業において,日米企業が顕著に異なる性能向上アプローチを選択し,それぞれ独自の性能進化を実現したという事実を明らかにする.その上で,個別企業の資源プロフィールと競争環境とが時間展開的に相互規定関係にあるという点に注目することによって,発見事実の説明を試みる.新規参入を契機とした競争環境の変化によって,個別企業レベルでは既存企業が既存の資源蓄積をベースにした新たな技術的可能性の探索行動とその実現に注力しなくなるため,産業レベルでは既存の資源蓄積に基づく性能進化の可能性が閉ざされることが起きうる,というのが最終的な主張である.
著者
竹村 正明
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.4-15, 2001-12-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
32

製品開発研究は過去10年間で膨大な努力が投入されてきた.本稿では,この領域におけるパラダイムが確立したことがその理由であるとえている.このパラダイムは設計学を基礎理論にし,生産管理論,組織論,マーケティング論などから広く知見を取り込み融合科学的に発達してきた.本稿では,そのパラダイムがどのようなものかを察するために,設計学の基礎を概観し,今後それのもつある種の課題について検討する.大量の努力投入で成果がほとんどで尽くしたかに思えるが,依然として理論的な研究が必要であることが指摘されるだろう.
著者
藤本 昌代
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.96-107, 2001-09-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
28

本研究は,学会など外部の職業集団に準拠し,所属集団へのコミットメントが低く,コスモポリタン的とされるプロフェッショナルを,多元的な組織・集団の中の個人という視点から分析するものである.本研究のアプローチは,産業組織の構造,専門分野,所属組織での自己の位置づけなど,それぞれの組織・集団での自己評価が,移動可能性の逓減,認知的不協和を引き起こし,組織準拠性に影響を与えるというものである.これらの現象を多峰性関数のローカル・マキシマムという概念を用いて説明を行う.
著者
島田 達巳
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.32-43, 2001-09-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
28

情報システム(IS)のアウトソーシングは,「請負的」から「戦略的」の度合いを高めつつある.本稿では,社会ISの形成に向けて,民間企業と自治体との比較の視点から,ISのアウトソーシングの背景は何か,民間企業と自治体におけるアウトソーシングの違いは何か,そしてインターネット時代におけるアウトソーシングがどのような方向性を持ちどのような課題を抱えているのかについて述べる.
著者
西口 敏宏
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.4-17, 2001-09-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
19

近年の英防衛調達の活性化は著しい.エージェンシー化された防衛調達庁内に,装備品開発の機能横断的チームを全面展開し,契約企業を早くからチームメンバーとして参加させるなど,民間の製品開発やアウトソーシングの技法を積極的に応用している.さらに国防に関する抽象化されたケーパビリティーを「カストマー」とし,防衛調達庁(上流)と国防省(下流)間にも,サプライヤー=カストマー関係を制度化するなど,革新的なビジネスモデルを展開しつつある.この経験的証拠は,単に民間ベストプラクティスの政府事業への応用といった次元を超えて,組織間関係論や社会システム論に一定の含意をもたらす.
著者
島本 実
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.53-66, 2001-06-20 (Released:2022-07-30)
参考文献数
21

本論文はファインセラミックス産業を題材に,その発展過程を行為システムの視点から分析するものである.この産業は1981年より技術政策の対象とされ,現在では2兆円産業に迫る成長を遂げた.しかし,その過程を複数主体の行為システムと把握すれば,そこには政策を指標とした複数の企業の資源の集中によって間隙が発生し,その間隙に位置した企業によってこの産業の発展がもたらされたというメカニズムが浮かび上がる.
著者
峯野 芳郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.80-91, 2000 (Released:2022-07-27)

地方公共団体においては,組織内の調整や統合を図る管理技能や,組織を代表して外部の圧力団体に抵抗する技能こそが重要である.しかも,これらの技能は,組織外から導入することが困難であり,昇進を含む人事異動による職務経験を通して育成されることになる.ここでは,ある政令指定都市の人事異動の状況を分析するとともに,民間企業とは異なる地方公共団体という組織の特徴から上記の点が確認され,理解される.
著者
伊地知 寛博
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.54-75, 2000 (Released:2022-07-27)

知識生産の主要なアクターである大学と知識を経済・社会的価値に変換する主要なアクターである企業との連携がますます求められている.しかし,産学間のインタラクションでは,必然的にその利害に相違があり,利益相反のマネジメントが重要となる.本稿では,利益相反のマネジメントが実際に重要であることを浮き彫りにし,主要諸国における利益相反のマネジメントに対する取り組みの制度・運用面での現状を示し,日本の現状と比較する.そして,利益相反のマネジメントは,とくに法人化された大学においてはコーポレート・ガバナンスの課題の一つであり,その質的な向上を図るためには,先進的な経験に倣ってベンチマーキングの概念を援用することが有益であろうということを示唆する.
著者
榊原 清則
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.45-53, 2000 (Released:2022-07-27)

日本の産学連携は実りに乏しいといわれ,大学がしばしば批判されている.だがそれは大企業を中心とする偏見の疑いがある.中小企業やベンチャー企業に着目すれば,むしろ実効性の高い産学連携が進んでいることを,データは示しているからである.本稿では,産学連携の日本における実態を明らかにし,知識生産システムの変容を論じている.
著者
松井 剛
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.105-115, 1999 (Released:2022-07-27)

本稿では,1993年~95年にかけて国内で発行された雑誌の内容分析を行い,ポケットベルについて複数の社会集団が当時共有していたと思われる捉え方(これを本稿では「社会的定義」と呼ぶ)を測定する.そこで明らかになったのは,接触・使用経験がより深い社会集団ほど,ポケットベルの社会的定義の多様性がより高い,ということである.本稿では,こうした違いが生じる理由を考察する.
著者
高尾 義明
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.79-87, 1999 (Released:2022-07-27)

組織が成員のふるまいに還元できない集合的行為主体として選択を行っているという了解の成立を,成員のふるまいが組織の選択として関連づけられる組織コンテクストの編成という観点から検討する. まず,日本の企業組織において「職場」が組織コンテクストとして機能しているメカニズムを上位権威の制度化と比較しながら明らかにする.続いて,日本型の組織コンテクスト編成を社会文化的進化という見地から理論的に考察する.最後に,電子メディアの導入との関係から日本型の組織コンテクスト編成の今後の展望を示す.
著者
加藤 俊彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.69-79, 1999 (Released:2022-07-27)

技術発展の方向性を規定する要因については,長年にわたり議論が展開されてきた.特に最近では,経営学をはじめとする技術研究で支配的な枠組であった「決定論的視座」に対抗する「非決定論的視座」に基づく議論が,この領域で活発に展開されている.そこで本稿では,議論の前提に遡って技術発展の規定要因に関する既存の文献を整理・検討した上で,「技術システムの構造化理論」という概念枠組を提示する.この概念枠組は,二つの視座を発展的に統合するものである.ただし,ここでの焦点は,決定論的視座を擁護するのではなく,むしろその重大な問題点を明らかにすることに,当てられる.
著者
網倉 久永
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.48-57, 1999 (Released:2022-07-27)

「機械」のメタファーは組織研究において非常に強い影響力を持ってきた.コンティンジェンシー理論においても,「有機体」のメタファーが提唱されていたが,実際には「機械」メタファーの影響から逃れてはいない.その原因は,テーラーの科学的管理法の時代からコンティンジェンシー理論に至るまで,経営学の目的は経験事象の体系的な観察から実証的に因果関係を確立することであるという「経営学の科学化」志向があり,さらにその背後には決定論的・機械論的な世界観が存在していた.日本における組織研究では,1980年代半ばから「自己言及」という論理タイプか導入され,決定論的世界観と決別しようとする方向性が打ち出されてきたものの,新しい理論構築のための基礎が十分に確立されていないため,現在の組織研究は進むべき方向を見失っている.
著者
山岸 俊男
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.24-34, 1999 (Released:2022-07-27)

通常は集団との心理的同一化の結果として理解されている日本人の集団主義的な行動傾向か,集団との同一化によってではなく,集団の内部に一般的互酬性が存在することに対する期待によりもたらされていることを示す一連の実験を紹介する.これらの実験の結果は,集団成員からの互酬的な「内集団ひいき」が期待できない状況においては,実験参加者が集団主義的に行動しなくなることを示している.
著者
金井 一賴
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.48-57, 1999 (Released:2022-07-27)

地域における戦略的社会性をもったネットワーク(ソシオダイナミクス・ネットワーク)の形成と展開のプロセスを,場の創造および場と場の連結のプロセスの観点から明らかにする.この中で特に,市民企業家の事業コンセプトの創造や場の設定,連結といった行動が分析される.さらに草の根で活動する市民企業家を地域政策形成の場に組み込むことによるミクロ・マクロループの活発化を通じた地域活性化の方法が提示される.
著者
加護野 忠男
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.47-54, 1999 (Released:2022-07-27)

この論文では,吉田民人のプログラム科学という考え方に準拠しながら,経営学の歴史を振り返り,プログラム科学という考え方が経営学にとってどのような意味をもつかを考える.実践との深いかかわりをもつ経営学は,新たな混沌期に入っている.かつて支配的であった自然科学的方法に対して,さまざまな疑問が提唱されることになった.このような状況で,プログラム科学は経営学にどのような示唆を与えているか,経営学の視点から見たときにプログラム科学の課題は何かを考える.