著者
合田 美穂
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 人間科学編 = Studies in human sciences (ISSN:13471228)
巻号頁・発行日
no.44, pp.75-81, 2008-03-20

1980年代以降,香港からの「プル要因」,フィリピンにおける「プッシュ要因」の相乗効果で,多くのフィリピン人女性が,家事労働者として,香港に渡ってきた。彼女たちは,香港にて家事労働を担うことによって,香港人社会の家庭における問題を解決し,また,それと同時に,フィリピンに外貨収入をもたらすことによって,フィリピン経済の活性化にも貢献し続けている。本研究では,外国人家事労働者に関する労働法例,就労における諸問題,フィリピン人家事労働者の香港流入の背景,余暇活動についての考察を行ない,それらの考察を通して,在香港フィリピン人家事労働者の現況を理解するとともに,なぜ,彼女たちが,香港を選択したのかという理由を導くことにつとめたものである。
著者
岸田 泰子 八木 範彦
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
pp.47-52, 2007

共通科目「現実をみるG」を展開するにあたり,教員から学生への一方向の授業とならない工夫として,テーマに対して学生間のディスカッションを中心とした授業計画を立案し,実践した。授業の前後で,Kikuchi's Social Skill Scale(Kiss-18)を測定し,また授業前に本授業に対する期待度,授業後に満足度をたずね,統計的検討を加えたところ,Kissのうち,コミュニケーションスキルに関する2項目で良好な変化の傾向が認められ,授業前の期待度より有意に高い満足度が得られた。また半数以上の学生の自由記載の中に,ディスカッションを取り入れたことに対するプラス評価が示された。授業評価を分析し,その分析結果に即して教員が意識的に授業方法に工夫を凝らし授業改善につなげることが重要であると再認識された。
著者
水本 篤
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.93-107, 2006-03-18

本研究では人文系女子大学生の語彙学習方略を調査し,それらの方略が学習成果とどのように関連しているかを明らかにすることを目的とした。まず,139人の実験参加者に質問紙調査を行い,どのような語彙学習方略を使用しているのか,また,役に立つと思っている方略と,実際に使用している方略との間に差はあるのかを調べた。次に使用している語彙学習方略と,習熟度指標としてのTOEICおよび語彙サイズとの相関を調べた結果,辞書使用方略,語の構造利用,メタ認知方略群が弱いながら有意な相関があることが確認された。使用している語彙学習方略と学習成果によるクラスター分析では,4つのグループが現れた。この研究から,さまざまな習熟度,語彙学習方略を行う学習者に効果的な語彙指導を行う際に有用な結果が得られたといえる。
著者
神野 富一
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.A1-A9, 2005-03-18

Rakusanji, on the east coast of the Korean peninsula, is famous as the Korean Fudaraku, the place where Kannon lives. In this paper, I state how and when this Fudaraku originated. I have analyzed the articles in the Sangokuiji, and reviewed the belief in caves, the rite of the dragon in the East Sea, and the circumstances of the sea traffic in ancient times. And I presume that the belief in Rakusan was influenced by the belief in Fudasan in China, and originated in the latter half of the seventh century, and expanded in the middle of the ninth century. I also suggest that it was not only Buddhist priests, but also lay people who went over the sea, who contributed to the origin and expansion of these beliefs.
著者
坂井 康子 志村 洋子 岡林 典子 山根 直人
出版者
甲南女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日本語環境にある乳幼児の音声の分類とそれらの音響分析の結果により,乳幼児音声(喃語を含む)のリズムと抑揚についての知見を得た。加えて,乳幼児音声の「うた度」を評定する聴取実験の結果を分析し,「うた度」の高い音声の特徴を抽出した。以上のように乳幼児音声の分析をおこなった結果をもとに,保育士・教員養成において乳幼児音声をめぐって感得すべき,あるいは配慮すべき点について検討し,論文にまとめた。
著者
鈴木 順一
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要 看護学・リハビリテーション学編 (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.5, pp.13-24, 2010

現在、我が国における糖尿病患者は増加の一途をたどっている。糖尿病に合併する糖尿病性足病変は、下肢切断の原因となり、対象者の日常生活活動や生活の質において深刻な問題を残す病変である。近年、糖尿病性足病変に対する医学的な取り組みとしてはフットケアが積極的に導入されている。フットケアは病変を認める患肢の評価・処置および足と靴に関する患者教育で構成されるが、制度やマンパワーの問題で患肢への関わりほど靴は着目されていないのが実情といえる。本稿では糖尿病性足病変と靴との関連性を概説し、靴を選ぶに際しての指導上のポイントと、適合性を評価するための具体的な手法を紹介した。
著者
高橋 真央
出版者
甲南女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

今回の研究課題では、阪神淡路大震災と東日本大震災の二つの大震災で復興支援に関わってきた学生たちがその経験をどのように受容し、社会に寄与できているのか、またその際の課題について解明する事であった。東日本大震災の復興支援活動に関わった学生たちの復興支援活動の可能性について見出されたこととしては、「直接的な支援」活動と共に、「間接的な支援」活動が新たに拡がってきていることが分かった。阪神淡路大震災当時から比較すれば、経済的、社会的な環境は変化してきている。「被災地に寄り添い続ける」という目的は双方の若者の復興支援活動の根底にあるが、その活動の内容については多様化してきていることが分かった。
著者
服部 耕治
出版者
甲南女子大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

これまで我々は超音波を用いた関節軟骨定量評価システムを開発してきた。しかしながら、このシステムでは、軟骨表層の変性をとらえることができても、関節軟骨全層を評価することはできなかった。そこで我々は関節軟骨超音波評価システムにおいて超音波造影剤が有効に作用するかどうか調査した。関節軟骨試料からの超音波反射波はAモードエコーとして表示される。このAモードエコーのピークピーク値を評価の指標とした。軟骨試料を造影剤に浸透後、生理食塩水中で超音波計測を行った。超音波造影剤によって最大ピークピーク値は5.3~9.8倍に増強された。また、超音波造影剤は、生理食塩水に浸透後2分で最大となり、その後徐々に低下していく造影動態を示した。我々の研究は関節軟骨の超音波評価に造影剤を用いることで、関節軟骨の生体力学的な特性を予測できることを示した。