著者
西田 圭吾
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.145-152, 2013 (Released:2013-09-28)
参考文献数
53
被引用文献数
2 3

Zinc (Zn) is essential for normal cell structure and physiology. Its deficiency causes growth retardation, neuronal degeneration, and immunodeficiency. Zn homeostasis is tightly controlled through Zn transporters and metallothioneins, which regulate Zn concentration and Zn distribution in individual cells, and contributes to Zn-binding protein in cells. Although many molecules involved in these processes have Zn-binding motifs, the molecular mechanisms underlying the role of Zn in the immune system have not been clarified. Recently, we and other groups have demonstrated that Zn plays diverse and specific roles in vivo and in vitro, in studies on the genetic knockout of Zn transporter functions. In this review, we discuss the impact of Zn on mast cell-mediated allergy and T cell-mediated immune responses. We also describe Zn dysregulation as a leading health problem in allergy and immune responses.
著者
西田 圭吾 内田 亮太
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.675-679, 2018 (Released:2018-07-01)
参考文献数
16

亜鉛は生命活動に必要とされる必須微量金属元素の1つであり、1960年代に相次いで報告された亜鉛欠乏症が契機となって様々な生体機能における亜鉛の関与が示されている.亜鉛の恒常性は亜鉛トランスポーターやメタロチオネインによって制御されており、主として遺伝子ノックアウトマウスを用いた一連の研究によって哺乳類の初期発生、全身成長、生体防御機能などにおける亜鉛の恒常性の意義が分子レベルで明らかになりつつある.一方、外傷や感染症で皮膚の表皮層が壊されると、止血と炎症から始まる極めて複雑な一連の生体反応が起こる.その治癒にいたるまでの過程を皮膚創傷治癒という.この皮膚創傷治癒に、亜鉛がポジティブに制御していることは古くから知られていた.しかしながら、具体的に亜鉛が皮膚創傷治癒の過程にどのような役割を担っているか十分に理解されていなかった.今回、マスト細胞が放出する亜鉛が皮膚創傷治癒を制御する新しい機序に関して、著者らの研究グループで得られた知見を中心に紹介する.
著者
西田 圭吾
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.1, pp.85-92, 2011-01-01 (Released:2011-01-01)
参考文献数
26
被引用文献数
3 3

Zinc (Zn) is an essential nutrient and its deficiency causes growth retardation, immunodeficiency, and neuronal degeneration. Zn homeostasis is tightly controlled by transporting through Zn transporters and by buffering via metallothioneins, all of which are involved in the intricate regulation of Zn concentration and distribution in individual cells. Research in understanding of these molecules has progressed with application of genetic techniques, which allow us to clarify the diverse role of Zn in vivo and in vitro. However, the precise roles and molecular mechanism(s) of Zn's function in allergic response have not been clarified. Mast cells are granulated cells that play a pivotal role in allergic reactions. The granules of mast cells contain various chemical mediators and inflammatory cytokines that are released upon FcεRI crosslinking. In this article, I will describe a role of Zn/Zn transporter in FcεRI-mediated mast cell degranulation and cytokine production. Furthermore, Zn acts as an intracellular signaling molecule, that is, a molecule whose intracellular status is altered in response to an extracellular stimulus in mast cell, and that is capable of transducing the extracellular stimulus into an intracellular signaling event, like Ca2+. I have proposed that there are two classes of Zn signaling: “Early” and “Late” Zn signaling. In this review, I discussed how Zn and its homeostasis affect biological events especially for mast cell-mediated allergy response.
著者
森本 忠嗣 會田 勝広 西田 圭介 角田 憲治 前田 和政 佛淵 孝夫
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.356-360, 2003 (Released:2004-04-28)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

This study was designed to investigate the changes of low back pain and saggital pelvic inclination over time after total hip arthroplasty (THA) in osteoarthrosis (OA) of the hip. Fifty OA cases were classified into three groups according to age: Adult; 40 to 64 years of age, 19 hips; Young-Old; 65 to 74 years of age, 16 hips; Old-Old; 75 years of age ∼16 hips. The incidence of low back pain before THA was about 60% in all groups, but the transition of low back pain after THA was that the low back pain tended to improve more in the younger group. No improvement was seen in the “Old-Old” group. The degree of saggital pelvic inclination was calculated from the transverse axis length (b/a) ratio of the radiological shape of the pelvic cavity in antero-posterior radiographs. As a result, we found that the pelvis tended to incline posteriorly with increasing age. Therefore, pelvic anterior inclination was found in all “Adult patients” and pelvic posterior inclination in most “Old-Old patients”. After THA, the pelvis in most patients tended to slightly incline posteriorly over time.
著者
田島 智徳 西田 圭介 會田 勝広 森本 忠嗣 北島 将 小河 賢司 馬渡 正明 佛淵 孝夫
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.626-629, 2007 (Released:2007-11-27)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

日常生活における前屈動作は股関節と脊椎の協調動作であり互いに密接に関わりあっている.変形性股関節症患者における股関節と脊椎の前屈時の動作関係を明らかにするために,立位中間位および座位前屈位の単純X線側面像を用いて股関節可動域と腰椎可動域を測定した.対象は初回人工股関節全置換術を受けた40~88歳(平均62歳)の変形性股関節症の女性患者164例であり,術前の単純X線で評価した.中間位からの前屈動作で股関節と腰椎と合計して80~120度屈曲していた.腰椎変性の強い高齢者ほど前屈時の腰椎可動域が小さく,変形性股関節症があるのにもかかわらず主に股関節で前屈していた.中高年者は腰椎変性が進行していないため,主に腰椎で前屈しており股関節可動域は小さかった.そのため変形性股関節症の罹病期間が長くなると腰椎へ過度の負荷がかかることとなり,腰痛や腰椎変性の原因となることが予想される.
著者
西田 圭一郎 吉村 匡史 山根 倫也 加藤 正樹 木下 利彦
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.168-173, 2019-06-01 (Released:2019-06-20)
参考文献数
26

脳波は実臨床においては, てんかんの診断やせん妄の評価に使用される。研究においては時間分解能の高さ, 侵襲性の低さ, 安価なため臨床への応用の容易さ, といった点から, 脳機能測定のツールとして以前から用いられてきた。一方脳波の分野とは別に, 最近の画像研究の進歩に伴い, 脳の構造研究で精神疾患の正常からの逸脱が検出できるようになり, 精神疾患の発現型として関心を浴びている。近年, このような脳波以外の分野の研究の発展に伴い得られた新たな知見と, 上記特徴を有する脳波測定を組み合わせることで, 脳波解析の有用性が再び脚光を浴びるようになってきている。今回我々は, 脳波定量解析が実臨床への応用が可能であるか, 自施設におけるうつ病患者の脳波データの解析結果を元に, 治療予測の可能性について考察を行い, 将来の展望を述べたい。
著者
會田 勝広 森本 忠嗣 西田 圭介 前田 和政 佛淵 孝夫
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.846-853, 2004 (Released:2005-06-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

In the present study, changing in pelvic inclination before total hip arthroplasty (THA) were investigated using 59 patients with osteoarthritis of the hip. The subjects were divided into following four groups by their age: Group A consisted of 21 patients between 45 and 54 years, Group B 10 patients between 55 and 64, Group C 18 patients between 65 and 74, and Group D 10 patients at 75 years or older. Pelvic inclination became retroverted with age, further retroverting at the standing position especially in elderly people. When performing THA on patients with severe pelvic retroversion, alignments of the lumber spine, pelvis, and hip should be carefully considered. Insertion of acetabular socket should be considered in some cases taking into account standing position or pelvic inclination in future. In elderly people with lumbar degenerative kyphosis and severe pelvic retroversion, it was important to insert the acetabular socket in prospect of future changes of the pelvis inclination since the pelvis retroverts according to posture and age.
著者
西田 圭吾
出版者
鈴鹿医療科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

マスト細胞の顆粒中には亜鉛が豊富に含まれていることが報告されており、脱顆粒に伴って細胞外に放出されることが知られている。しかし、その役割とメカニズムについては明らかにされていなかった。そこで、マスト細胞顆粒中へ亜鉛を取り込む機構、そして細胞外に放出された亜鉛の役割解明を目的とした。本研究においてマスト細胞における顆粒内への亜鉛取り込みに関与している分子として亜鉛トランスポーターZnT2の同定に成功した。ZnT2欠損マスト細胞では刺激依存的な放出亜鉛が観察されず、またZnT2KOマウスでは皮膚創傷治癒の遅延が生じた。以上、本研究によりマスト細胞から放出される亜鉛の生理的意義を初めて示した。
著者
竹本 美由紀 小野 舞子 棗田 将光 藤森 美鈴 高杉 幸司 江澤 和彦 原田 遼三 西田 圭一郎
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.36-44, 2017-03-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
16

目的:関節リウマチ(RA)の実臨床において,足関節より末梢の関節病変による足趾の変形のほか,皮膚に胼胝・感染等を有する症例は多く,近年ではフットケアの介入が提唱されている.RA患者のフットケアの有効性を評価するためには足病変の定量化が重要であると考え,独自のフットケアスコアを考案し,背景因子や病態との関連性を調査した.対象:当センターで2016年1月~5月にフットケアを施行したRA患者42例を対象とした.方法:フットケアチェックシートに,症状(S)・変形(D)・胼胝(C)・感染(I)について有所見の総合スコアを60点として評価し,スコアと種々の背景因子(年齢・罹病期間・Class・Stage・疾患活動性・HAQ-DI・VAS・治療薬剤)との関連性を解析した.結果:総合スコアはClass進行群で有意に高く,年齢及び罹病期間に有意相関があり,特にHAQ-DIとの間に強い相関を認めた.各コンポーネントのうち,症状(S)はDAS28及びHAQ-DIと,変形(D)は罹病期間と,感染(I)は年齢及びHAQ-DIとの間に有意な相関を認めた.胼胝(C)はどの背景因子とも相関はみられなかったが,他のフットケア各コンポーネントとの相関をみると,変形(D)との間に有意な相関を認めた.生物学的製剤(bDMARD)使用の有無でフットケア各コンポーネントスコアを比較した結果では,感染スコアがbDMARD使用群で有意に高かった.結論:RA患者のフットケアに関わる足病変を定量化することで,足病変と患者背景因子との関連が初めて明らかとなった.今後は患者満足度向上を目指すうえで,フットケア介入の有効性や限界を調査し,数値目標の設定を行っていく必要がある.
著者
前田 芳信 栄村 勲 中村 公一 西田 圭 野首 孝祠
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.900-905, 1995-10-01
被引用文献数
14 2 2

近年,咬合と全身の運動機能との関連が注目されてきている.そこで本研究では,高齢者における咬合支持が全身の運動機能の制御,特に平衡調節機能に果たす役割について検討した.特に,従来まで行われてきた静的条件下での平衡度の測定に加え,動的刺激を与えた条件下での応答時間ならびに対称性の計測を行った.その結果,高齢者における咬合支持の有無は,全身の平衡調節機能のなかで,主として静的条件下での平衡調節に関与している可能性が示唆された.
著者
伊藤 寛 堀内 格 成瀬 博昭 坂上 充志 本多 英邦 長村 洋一 西田 圭志 石黒 伊三雄 山崎 雅彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, 1988-08-01

N-acetylneuraminic acid(以下NANA)はαおよびβ-globulin分画の糖蛋白質に含まれ,急性炎症,悪性腫瘍などで上昇するといわれている.その上昇に関与する蛋白質の性状は異なることが推測されることから大腸癌症例における詳細な糖蛋白質の動態の追跡を目的として,糖鎖末端にgalactose(以下GP)およびNANA-galactose(以下NGP)を有する糖蛋白質の定量を試みたので報告する.