著者
榎本 仁司
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.246-252, 2005-08-15 (Released:2011-08-16)
参考文献数
12
被引用文献数
2

一般の治療に抵抗し経過が遷延する難治性の外耳道炎・鼓膜炎38例53耳を日本薬局方に則って作製した7-8%ブロー液 (酢酸アルミニウム液) にて治療した。全38例からMRSA, 緑膿菌, β-lactamase (+) 黄色ブドウ球菌, 真菌など菌交代現象に関連する菌種がいずれも高率に検出され, 難治性の理由が納得できた。ブロー液はいずれの菌種にも平均して優れた治療効果を示し, 53耳中治癒36耳 (67.9%), 有効8耳 (15.1%), 不変9耳 (17.0%) であった。菌種別では, 特にMRSAと緑膿菌の治癒率が高く, 真菌に対しても高い効果があることが判明した。そして効果の発現も早い例が多く, かつ点耳時の刺激や疼痛はほとんど見られなかった。この極めて有効な点耳薬を多くの耳科医に奨めたいと思い, 筆者の実行している製法を記載した。
著者
辻 富彦 山口 展正 八代 利伸 関 哲郎 島田 千恵子 太田 史一
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.341-347, 1994-06-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
23

後部副鼻腔嚢胞は鼻症状の乏しいことが多く, その症状の大半は眼症状, 頭痛のように隣接組織に起因するものである。今回我々は30歳男性で持続する三叉神経痛を訴えた原発性蝶形骨洞嚢胞の1症例を報告した。本症例は脳神経外科を受診, MRIにて嚢胞が指摘され当科を紹介された。嚢胞は右蝶形骨洞から右翼口蓋窩および眼窩外側部に進展していた。内視鏡下鼻内手術にて嚢胞を開放すると三叉神経痛は消失した。三叉神経第2枝の刺激症状は嚢胞が翼口蓋窩へ浸潤していたためと推定された。後部副鼻腔, 翼口蓋窩のような深部組織の診断にはMRIが有用であると考えられた。とくに副鼻腔ではT2強調像を用いれば炎症性病変と腫瘍性病変の鑑別が可能である。
著者
宇田川 友克 柳 清 石井 彩子 今井 透
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.160-166, 2005-06-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
8

多房性の術後性上顎嚢胞は診断, 治療をする上で難渋する疾患の一つである。今回我々は片側三房性以上の術後性上顎嚢胞9症例について検討した。診断の上では多房性嚢胞の正確な数や位置を把握する術前画像診断としてCTとMRIの併用が有効であった。また, 術程は内視鏡下鼻内手術単独症例が7例, 内視鏡下鼻内手術に経歯齦法を併用した症例が2例であった。術式の選択や予後を判定するために嚢胞の配列により直列型, 並列型, 混合型に分類した。固有鼻腔から離れた外側の嚢胞は術式に関係なく術後再閉鎖した症例が多かった。手術の注意点として, 骨性の嚢胞壁を鉗除中に多量出血した症例を経験したため, 手術時には上顎骨の変形に伴う動脈の走行変位を念頭に置く必要があると思われた。多房性嚢胞の問題点として, どの嚢胞が症状を発症しているのか判断が難しく, 我々はすべての嚢胞を開窓するようにしている。今回の症例検討では当院で施行した手術後に症状が再発した症例は今のところ経験しておらず, 多房性術後性上顎嚢胞の症状寛解のためには可能な限りすべての嚢胞に対して処置をすることが望ましいと考えた。
著者
尾尻 博也
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.204-205, 2013-08-15 (Released:2014-08-15)
参考文献数
4
著者
峯田 周幸
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.8-16, 2012 (Released:2013-02-15)
参考文献数
29
著者
川嶋 健嗣 只野 耕太郎
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.359-363, 2012-10-15 (Released:2013-10-15)
参考文献数
3

Recently, increasing emphasis on quality-of-life issues in surgery such as relieving patient pain, reducing scarring, and shortening hospital stays has led to wider use of endoscopic surgery. In endoscopic surgery, forceps and other instruments are inserted through a hole made in the abdomen of the patient, and surgery is performed through visualization of the endoscopic image. Though this technique presents a lower burden to the patient than laparoscopic surgery, manipulation of instruments through the insertion hole used as a fulcrum complicates a free approach to the surgical target and demands advanced skills of surgeons.Consequently, there is active research on free movement of instrument tips through robotics technology in order to alleviate the burden on the physician. As commercialized in the well-known “da Vinci” system, these devices employ a master-slave system comprising a master console operated by the physician, and patient-side slave instruments manipulated after insertion into the body of the patient. The system allows remote procedures providing the sensation that one's own hands are located in the body. However, current master-slave systems operate solely through reliance on image data from an endoscopic camera, and development of devices allowing safer operation is needed. What is particularly desired is a system that senses contact or force at the slave-side instrument and delivers this information to the physician at the master console. However, practical considerations such as compactness and sterility make it undesirable to attach force sensors to forceps for observational purposes. Currently, the patient-side equipment is also driven by electromechanical motors. In such a context, we have worked on the development of a master slave robotic system for laparoscopic surgery with 7-DOFs. In this system, pneumatic actuators, instead of electric motors, are used to detect external forces based on pressure values without a force sensor. This approach reduces costs and sterilizability demands for forceps manipulator while enable haptic feedback to the surgeons. We have prototyped a model of surgical manipulators named IBIS for its resemblance to the bird which has high performance in the estimation of external force. We evaluated its performance in terms of force estimation. The forces acting on a joint are estimated during contact with the external environment. Our technical assist system is designed to deliver positioning commands from the master side to the slave side via the internet, estimate contact force at slave-side instrument tips based on the pressure differential with the pneumatic cylinder, and convey this information to the master side. The experimental results indicate that IBIS estimates external forces with a sensitivity of 0.5 N. We also conduct an in vivo experiment and confirm the effectiveness and improvement of the manipulator. Currently, through cooperation with Tokyo Medical and Dental University, animal experiments are ongoing to evaluate the efficacy of the system developed and to continue its improvement.
著者
竹内 万彦 今西 宜義 間島 雄一
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
no.48, pp.40-43, 2005
被引用文献数
2

耳鼻咽喉科外来で一般的に使用されている薬液内蔵式ネブライザーユニット内の細菌感染の状況を把握するために, 11施設において細菌検査を行った。ネブライザー球内とそれに連結するチューブの洗浄液および噴霧エアーから培養し, 菌数の測定と菌同定試験を行った。その結果, ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌が比較的多く検出され, <I>Corynebacterium sp, P. aeruginosa, S. Paucimobilis</I>などの細菌が検出された。ネブライザーユニットの器具洗浄法の改善により, 細菌数を著明に減少することができた。
著者
竹内 万彦 今西 宜義 間島 雄一
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.40-43, 2005
被引用文献数
2

耳鼻咽喉科外来で一般的に使用されている薬液内蔵式ネブライザーユニット内の細菌感染の状況を把握するために, 11施設において細菌検査を行った。ネブライザー球内とそれに連結するチューブの洗浄液および噴霧エアーから培養し, 菌数の測定と菌同定試験を行った。その結果, ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌が比較的多く検出され, <I>Corynebacterium sp, P. aeruginosa, S. Paucimobilis</I>などの細菌が検出された。ネブライザーユニットの器具洗浄法の改善により, 細菌数を著明に減少することができた。
著者
尾尻 博也
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.44-45, 2013-02-15 (Released:2014-02-15)
参考文献数
2
著者
兵頭 政光
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.282-288, 2009 (Released:2010-10-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

嚥下障害は高齢化社会の到来とともに医療的にも社会的にも大きな問題となってきた。高齢者では生理的にも嚥下機能が低下し, 誤嚥性肺炎の危険性が増大する。そこで, 嚥下機能の加齢変化様式について, 基礎的および臨床的観点から述べた。咽頭期嚥下において重要な機能を担う筋のうち, 食塊駆動筋である甲状咽頭筋の機能は低下するのに対し, 食道入口部括約筋である輪状咽頭筋は機能的に変化がないことが明らかになった。健常高齢者を対象とした嚥下内視鏡検査, 嚥下造影検査, 嚥下圧検査による多角的検討でも, 高齢者では嚥下反射の惹起性の低下, 食塊の咽頭通過時間の延長, 食道入口部括約機構の機能障害などの所見が認められた。これらの障害はカプサイシン投与により改善し, 加齢による嚥下障害に対する予防あるいは治療法としての可能性が示唆された。

1 0 0 0 OA 木村病の1例

著者
谷光 徳晃 久行 敦士 永澤 昌
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.373-380, 2002-10-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
24

軟部好酸球肉芽腫症, いわゆる木村病は, 全身の軟部組織, 特に顔面部に無痛性腫瘤を形成し, 末梢血好酸球及び, IgEの増加をみる原因不明の比較的稀な疾患である。今回我々は, この木村病の1例を経験したので, その診断, 治療について若干の文献的考察を加えて報告する。症例は52歳男性で, 主訴は約10年前からの右頬部, オトガイ下部の腫脹であった。緩慢な臨床経過, 末梢血好酸球及び血中IgEの著明上昇などの検査所見から木村病と診断し, ステロイドの内服及び手術を行った。本疾患はその存在を念頭におけば, 上記のような特徴的な臨床所見より診断は可能であると思われた。治療は最初にステロイド内服投与を行い, 腫瘤を退縮させた後, 抗アレルギー剤または, 非ステロイド性消炎鎮痛剤による維持療法を行う方法が第一選択であるが, 効果, その後の経過により, 手術, 放射線などの他の治療を適宜組み合わせていく必要があると思われた。
著者
西村 将人 折田 浩 津田 守 高橋 哲
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.663-670, 1994-12-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
11

木村病 (軟部好酸球性肉芽腫症) の2症例を経験したので報告した。症例1は17歳の男性で, 右顎下部に数個の境界不明瞭の腫瘤として摘出され, 病理組織診にて巨大濾胞や好酸球・形質細胞・リンパ球の多数の浸潤が見られ, 木村病と診断された。32ヶ月後に再発し, その直後には対側にも同様の小腫瘤が出現した。このため, 右側に対し再手術を施行したが, 顔面神経に近い部分は摘出できなかった。この後oxatomide内服にて経過観察しているが, 残存及び対側腫瘤は増大を見ていない。症例2は39歳の男性で, 右耳後部の掻痒感を主訴とし, 腫瘤触知より約3.5年が経過していた。摘出術を施行したところ同様の病理組織所見が見られ木村病と診断された。この症例もoxatornide投与にて術後3ヶ月時点で再発を見ていない。しかしこの疾患の再発時期は治療後長期後であることが多いので, 更に経過観察が必要である。
著者
木村 恭之 土定 建夫 塚谷 才明 作本 真 三輪 高喜 古川 仭
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.709-716, 1993-12-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
15

中枢性嗅覚障害で病変の局在がはっきりしている脳腫瘍10例を対象に臨床的検討を行った。自覚的に「正常」と答えた7例中, 実際に検査上正常だった症例はなかった。認知嗅力損失で左右差のあった症例が8例あり, 単鼻孔嗅検査は不可欠と考えられた。検知/認知の差が2.0以上あった解離現象を示した症例が5例あった。解離現象は第3次嗅覚中枢の障害の他に嗅覚の伝達情報量が不足した場合でも起こりうると考えられた。静脈性嗅覚検査では潜伏時間は正常で持続時間が短縮していることが特徴的であったが, この現象は病変の局在を反映するものではなかった。病変と同側性あるいは両側性に嗅覚障害が発症した例が多かったが, 必ずしも当てはまらない症例もみられた。これは頭蓋内は圧迫が他の部分に影響しやすく, 周囲には浮腫性病変も合併しやすいことと関連があると考えられた。