著者
大矢 一人 伊井 義人
出版者
藤女子大学
雑誌
藤女子大学QOL研究所紀要 (ISSN:18816274)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-26, 2009-03

実施より丸10年を経過した介護等体験について、藤女子大学の総括を行う。11年間での実施者数は約900人であり、その人数は最近減少傾向にある。お世話になった特別支援学校数は26校となった。また社会福祉施設数はのべ700以上となり、施設での体験実施は夏に集中している。事前指導は、少なくとも初期に比べれば丁寧になっており、他大学と比べても遜色はない。しかし現実には、いくつかのトラブルが発生してきており、その事例を紹介した。また、他大学との違いを事前指導のあり方とともに実施時期の点から行い、執筆者自身による介護等体験の経験についても述べた。最後に、今後の課題として、事前指導のさらなる検討と実施時期について触れた。
著者
小山 充道
出版者
藤女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

筆者は自分描画法(Self-Portrait Method;以下SPMと略す)研究において、子どもから大人へと成長するに従って落書きに変化が生じる点に着目した。本研究において落書きは人の思いを映し出していると仮定し、SPMを落書き行為とみなした。また筆者は思いの深まりの経過を説明する方法として、「思いの理論("OMOI"approach to psychotherapy);小山(2002)」を用いた。本研究結果、落書きには「今の自分のありよう」「今、自分が気になっていること」「心理的背景」「心の中に隠れているもの」の4つの要素が含まれ、これらが関わり合って人の思いが構成されることがわかった。2007年度は大学生40名に対してSPMを実施した。その結果、SPMは性差の影響をほとんど受けないこと、そしてSPMを用いると個人の思いを浮かび上がらせることが可能であることを確認した。2008年度は北海道立高校2校の協力を得て、総計219名にSPMを実施した。その結果、SPMを実施することで緊張緩和の効果が認められた。また「思い」という言葉から想起する色彩は男女とも「透明」と答える人が最も多く、そのあと赤、白、橙と続き、最後に紫と黒をあげる人が多かった。2009年度は中学生183名を対象にSPMを実施した。その結果、SPMを実施することで緊張が緩和されることがわかった。思春期にある人にはSPMは有効に働くことがわかった。「思い」という言葉に最も近い色を尋ねたところ、透明(22%)→白(18%)→赤(17%)→燈(14%)で71%を占めた。いずれも思春期の人が好む色だった。2010年度には、B高校からの依頼で、高校1年生と2年生合わせて総計320名に対してSPMを実施した。本研究目的は、SPMがスクリーニングテストとして活用できるかどうかを見定めることにあった。その結果、SPMはいくつかの留意点を踏まえた上で実施すると、スクリーニングテストとしての効果が見込まれることがわかった。以上、4年間にわたるSPM研究の結果、SPMは心理療法として活用できる可能性が充分にあることがわかった。
著者
千葉 ひとみ 知地 英征 Hitomi CHIBA CHIJI Hideyuki 藤女子大学人間生活学部食物栄養学科 藤女子大学人間生活学部食物栄養学科人間生活学研究科食物栄養学専攻
出版者
藤女子大学
雑誌
藤女子大学紀要 第2部 (ISSN:13461389)
巻号頁・発行日
no.44, pp.31-37, 2007-03-31

1)二等検および三等検羅臼昆布から強酸性陽イオン交換樹脂処理と等電点晶析によってうま味成分(グルタミン酸、アスパラギン酸)の混合結晶を簡単に得ることができた。2)強酸性陽イオン交換樹脂処理で、溶離液として3種類のアンモニウム塩(酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム)の水溶液を用いたが、アミノ酸の精製には適していないことがわかった。3)強塩基性陰イオン交換樹脂処理で、酢酸を溶離液に用い、減圧濃縮後、濃縮液を静置するだけでうま味成分の混合結晶が得られた。4)強酸性陽イオン交換樹脂処理の後、強塩基性陰イオン交換樹脂処理によってうま味成分の精製を試みた結果、1種類のイオン交換樹脂単独処理より収量は低かったが、うま味成分(グルタミン酸、アスパラギン酸)以外の夾雑アミノ酸(アラニン)を除くことが出来た。
著者
若狹 重克
出版者
藤女子大学
雑誌
藤女子大学QOL研究所紀要 (ISSN:18816274)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.79-86, 2016-03-31

権利擁護は、「権利侵害から守る」という意味で使われることが多かった。しかし、介護保険制度の実施による福祉サービス利用方式の転換により、自己決定を支援し利用者をエンパワメントする積極的な意味を持つようになった。一方で、自己決定やエンパワメントは、ソーシャルワークにおける原則や理念としても重視されている。本研究は、権利擁護をソーシャルワークとして推進する際の基礎となる立場を示すことを目的とする。社会福祉における権利と権利擁護の意味および地域包括支援センターを対象とした調査結果から、ソーシャルワークとしての権利擁護推進の視座を以下のように考察した。1.高齢者や家族等を対象とする直接的な権利擁護実践(ミクロレベル)2.権利擁護支援が必要な者の早期発見・把握に向けたネットワークやシステム構築などの間接的な権利擁護実践(メゾレベル)3.権利擁護支援への強い関心により権利侵害を予防する・無くす社会を目指すソーシャルアクションによる環境変革(メゾ〜マクロレベル)
著者
木脇 奈智子 棚山 研 新井 康友
出版者
藤女子大学
雑誌
藤女子大学紀要. 第II部 (ISSN:13461389)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.133-147, 2011-03

This study is a part of the lifestyle fact-finding for elderly residents living alone in the Senboku-New Town in Osaka. This report seeks to clarify what forms of economic poverty and isolation are actually being experienced, with particular reference to the influence of human networks. We report interviews with 10 elderly residents living alone, performed in August 2008, together with our analysis and consideration of the results. The results revealed the following: 1) the construction of human networks was greatly influenced by status, previous occupation, gender and other factors, 2)economic resources can become network resources, but these tend to promote network construction in other, more distant, areas rather than among neighboring acquaintances, and 3) there was a tendency for women than for men to have more local acquaintances and to make networks among neighbors more easily. The future problem is how to promote discussion as to how best to support the elderly living alone.
著者
小山 充道 小野 実佐 今泉 明子
出版者
藤女子大学
雑誌
藤女子大学紀要. 第II部 (ISSN:13461389)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.121-135, 2012-03-31

This is a case study of a sexually abused child and her mother (non-perpetrator parent) who underwent parallel interviews conducted by therapists in a child and family support center. The child was in the first grade of an elementary school and had been sexually abused by her father. One therapist carried out play therapy for the child once a week. The treatment target was to overcome her trauma. A second therapist interviewed her mother with the aim of psychological recovery and support that would allow the mother to take a role in the daily care of her child. In this paper we discuss the psychological transformation and recovery process as well as the ideal method of psychological support in cases of sexual abuse, such as the case of the mother and child described above. The stages of the psychological transformation process through which the child passed during the play therapy were as follow: reproduction of the abuse and her self-image as a survivor, the image of a safe place to stay and the expression of her feelings, and, finally,the care of her mind and body and the recovery of self-image. On the other hand, the stages her mother passed through included acceptance of the fact of sexual abuse fact, understanding of the damage received by the child and psychological care,and,finally,an understanding of the damage done to the mother. As a result of support provided for both the mother and child, they were able to recover psychologically and their domestic relations were reestablished.
著者
井筒 美津子 井筒 勝信
出版者
藤女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、文末詞の使用を中心に異方言間コミュニケーションにおける誤解・誤伝達の仕組みを明らかにした。関東・関西方言話者の北海道方言に対する印象調査と北海道方言話者の関東方言に対する印象調査を実施した。関東調査の結果を基に「方言イメージの形成過程」を策定し、その汎用性を関西・北海道調査のデータを用いて検証した。調査結果は報告書にまとめている。また、調査の基盤となる文末詞の研究として、北海道方言と共通語の文末詞『さ』の違いに関する研究や、日本語と英語の文末・節末要素の意味・機能や史的発達についての研究、日本語文末詞と独語・仏語等に見られる心態詞との統語的・機能的類似性に関する研究なども行った。
著者
伊井 義人 中村 伸次 岩崎 遥 西川 絵梨 足立 瞳 深澤 麻依 外川 茜
出版者
藤女子大学
雑誌
藤女子大学QOL研究所紀要 (ISSN:18816274)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.77-90, 2013-03-31

本論では、今年度で二年目を終えた藤女子大学の学生による石狩市立厚田中学校での学習支援(スクール・アシスタント・ティチャー:SAT)事業の現状と課題、そして将来的な展望を報告する。厚田中学校は、藤女子大学花川校舎から車で50分ほどの海岸部に位置する全校生徒22名の小規模校である。そこで主に教職課程を履修している大学生が、中学校教員や保護者と協力しつつ、数学や家庭科などの授業、学校行事の面で、生徒と触れ合い、多様な学習支援を行なっている。本論は、大学・中学校側のSAT担当教員だけではなく、実際に学習支援に参加した学生の視点から、今年度を振り返り、来年への展望を述べている。現状分析としては、1. 学校行事(学校祭・餅つき大会・卒業式)への参加、2. 地域との関わり(ピザ教室)、3. 学生主体の連絡調整が促進されたことが、今年度の成果といえる。その一方で、依然として、遠隔地域での学習支援という特色上、1. 厚田への交通手段、それに伴う2. 学生の時間の確保が課題として残った。しかし、来年度(2013年)は、厚田中学校での学習支援を経験し三年目の学生も4年生として在籍するため、SAT事業の継続性・発展性を視野に入れた、彼女たちの集大成に期待したい。なお、今年度のSAT事業は、石狩市教育委員会の予算と共に、藤女子大学QOL研究所からの補助金を通して、運営された。
著者
菊地 和美 坂本 佳菜子 Kazumi KIKUCHI SAKAMOTO Kanako 藤女子大学人間生活学部食物栄養学科藤女子大学大学院人間生活学研究科食物栄養学専攻 藤女子大学人間生活学部食物栄養学科
出版者
藤女子大学
雑誌
藤女子大学紀要. 第2部 (ISSN:13461389)
巻号頁・発行日
no.49, pp.39-43, 2012-03-31

本研究は、クロテッドクリームの品質に及ぼす冷凍ならびに糖類添加による影響について検討した。実験方法は、冷凍および解凍時の温度履歴、色調の測定、示差走査熱量分析、粘度測定、官能検査である。1. クロテッドクリームの冷凍時間は無糖が短く、ソルビトール、グラニュー糖の順に長くなった。解凍時間は糖類添加に比べて無糖が長くなった。2. 色調はクロテッドクリームの解凍後、いずれも冷凍前に比べてグラフは右・下方向に移行し、明るさを示す明度の減少と彩度の増加が認められた。3. 吸熱エンタルピー(ΔH)は無糖が3.5mJ/mg、グラニュー糖添加3.5mJ/mg、ソルビトール添加11.2mJ/mg であった。ソルビトール添加が無糖よりも大きくなり、熱に対する安定性が示唆された。4. 粘度変化率は、無糖が最も大きく、次いで、グラニュー糖添加、ソルビトール添加の順になった。5. 官能検査は冷凍・解凍クロテッドクリームの評点が0.4~0.5点であった。冷凍保存において糖類添加することはクロテッドクリームの品質を保つ有効な手段であることが明らかとなった。