著者
"杉村 和久"
出版者
鹿児島大学
巻号頁・発行日
(Released:2016-10-28)

2009-2011年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金(基盤研究(B)))研究成果報告書 課題番号:21310144 研究代表者:杉村和久 (鹿児島大学大学院理工学研究科(工学系)教授) 本研究で確立したアミロイドベーター42繊維特異ヒト抗体、B6とB7のエピトープ解析から明らかになったアミロイドベーター42繊維のミミックペプチド、B6-C15を提示するM13ファージをワクチンとして用い、能動免疫によるアルツハイマー認知症の病態マウスモデル(J20)について解析した。その結果、ファージ1匹あたり5分子しか提示されていない状況下(g3p提示)でも、C57BL/Jマウスの皮下検疫により、アミロイドベーター42の繊維および可溶性オリゴマーに反応する特異的抗体が誘導される事を明らかにした。 "Bacteriophage evokes strong antibody production by means of innate immunity. Recently,we have established B6 mimotope peptide (B6-C15) which mimics the structure of amyloid ・42 (A・) fibril using human single-chain Fv (B6) specific to A・42 fibril. This mimotopepeptide binds to A・42 oligomers and inhibits formation of A・42 fibril in vitro. Weinvestigated whether M13 bacteriophage displaying B6-mimotope peptide (B6-C15-phage)could produce A・42 fibril specific antibody response in mice. When mice were immunizedi.p. with B6-C15-phage in PBS solution, they produced anti-A・42 fibril specific IgGresponse in two weeks. This finding suggested a promising vaccination strategy forimmunotherapy of Alzheimer’s disease without the involvement of A・42-specific T cellimmunity (BBRC 402: 19-22, 2010, and J. Neuroimmunol. 236: 27-38, 2011)."
著者
"佐野 輝"
出版者
鹿児島大学
巻号頁・発行日
(Released:2016-10-28)

2008-2010年度科学研究費補助金(基盤研究(B))研究成果報告書 課題番号:20390314 研究代表者:佐野輝 (京鹿児島大学大学院医歯学総合研究科教授) 気分障害や統合失調症患者において神経有棘赤血球症(NA)関連遺伝子(VPS13AおよびXK)の包括的変異解析を行った。疾患変異の可能性がある変異をヘテロ接合性に持つ者を認めたことから、NA関連遺伝子はこれら精神疾患の病因に関与している可能性が示唆された。また、マウス脳や赤血球膜分画を用いたVPS13A遺伝子産物と相互作用するタンパク質を解析した結果、細胞骨格系のタンパク質の関与が示唆された。 "We performed a comprehensive mutation screen of VPS13A and XK, the gene responsible for chorea-acanthocytosis and McLeod syndrome, respectively, in mood disorder and schizophrenia subjects. We identified the existence of several patients with mood disorder or schizophrenia who carry heterozygous, potentially pathogenic mutations in neuroacanthocytosis-related genes. This suggests that neuroacanthocytosis-related-genes might be involved in the pathogenesis of these psychiatric disorders. The results of analyses of interacting protein using mouse brain and RBC ghost suggest that cytoskeletal proteins may interact with chorein, the VPS13A product."
著者
柳田 宏一 伊東 繁丸 片平 清美
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.183-197, 1988-03-15

昭和57年3月から昭和58年2月までの1年間, 黒毛和種繁殖牛37頭を用いて, 冬季における貯蔵飼料給与量の増加や冬季離乳によって飼養改善を行った場合の季節別の繁殖成績を調査した.その結果, これらの改善を行っても, 冬季分娩牛の繁殖成績はあまり改善されず, 受胎までの日数は長いことが判明した.その原因は冬季の栄養状態の不良によるところが大きいと考えられたので, これらを改善するため, 冬季に立毛状態にしたイタリアンライグラス草地約7haに, 昭和58年12月16日から昭和59年3月14日の間(1年次)と昭和59年12月12日から昭和60年3月15日の間(2年次)に, 黒毛和種冬季分娩牛をそれぞれ22頭および30頭を放牧し, 冬季放牧が繁殖成績に及ぼす効果について検討した.すなわち, 冬季放牧が繁殖成績や体重, 栄養度指数およびBody condition score(BCS)に及ぼす効果を明らかにするとともに, これらに対する年次, 分娩月, 産歴および牛来歴の影響を追求した.また, 繁殖成績ならびに卵巣機能と体重, 栄養度指数およびBCSの関連性について検討し, 冬季放牧によって繁殖成績を向上させるための栄養状態の指標を探求した.その結果は次のとおりである.1.冬季放牧を行った冬季分娩牛の受胎に要する日数は1年次が69.1日, 2年次が105.2日であり屋外パドックでの貯蔵飼料給与形態での冬季分娩牛の受胎までの日数122±67日より短かった.2.冬季放牧を行った冬季分娩牛の受胎までの日数は, 年次により異なり, 備蓄草量の多い年は短かった.また, 受胎までの日数には, 分娩月間でも有意差が認められ, 1月および3月分娩牛が短く, 12月および2月分娩牛が長くなる傾向を示した.しかし, 産歴および牛来歴による差は認められなかった.3.分娩前後の体重の推移には年次および産歴による違いが認められた.また, 分娩月間では, とくに, 12月分娩牛の体重の低下が大きかった.栄養度指数では産歴による違いが認められたが, 分娩月や来歴による違いは認められなかった.BCSでは産歴および牛来歴による違いが認められ, 産歴が進むほど, また, 牧場生産牛ほどBCSは高かった.4.冬季放牧を行った冬季分娩牛の受胎時のBCSは分娩月間, 産歴間および牛来歴間で有意差は認められず, いずれも3以上の値を示した.しかし, 受胎時の体重および栄養度指数は産歴間で有意差が認められた.したがって, 繁殖管理での栄養状態の指標としてはBCSが優れていると考えられた.5.受胎に要する日数は分娩後20日から60日までの日増体重(Daily gain)が大きいほど短くなる傾向を示した.また, 分娩後40日, 60日および初回授精時のBCSは3よりやや高い値で受胎に要する日数が最小値を示した.6.分娩後90日以内に受胎する分娩牛のBCSは, 分娩前が3^+で, 分娩によって3に低下し, その後20〜40日で3^+に上昇した.7.分娩後20日までにプロジェステロン濃度が1ng/ml以上に上昇するパターン1の分娩牛は, 受胎までの日数が74.6日および授精回数が1.7回で, 他の分娩牛(パターン2)に比較して繁殖成績は良好であった.パターン1を示す分娩牛のBCSは分娩後60日までに3から3^+まで上昇した.8.授精後受胎した牛の授精直前の発情周期におけるプロジェステロン濃度のピークは4ng/ml以上で, 受胎しなかった分娩牛の濃度より高い値を示した.
著者
岩堀 修一 大畑 徳輔 イワホリ シュウイチ オオハタ IWAHORI Shuichi OOHATA J.T
出版者
鹿児島大学
雑誌
南海研紀要 (ISSN:03895351)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.67-73, 1981-11-10

Two experiments were conducted to evaluate the alleviative effects of calciumacetate on defoliation and fruit drop induced by the spray of Ethephon (2-chloro-ethylphosphonic acid)solution which is used to accelerate the degreening of ponkan, Citrus reticulata Blanco, fruit. The effect of Figaron (Ethyl 5-chloro-1 H-3-indazolyl acetate) on degreening was also investigated.In experiment 1, a split-plot design was employed where the main plots consistedof three levels of Ethephon concentration (0, 200, 400, ppm) and six replicates, whilethe sub-plots consisted of four limbs designated to four levels of calcium acetateadded (0, 0.2, 1.5%). The spray treatment was done on November 1, and Ethephonand calcium acetate were mixed just before the spray application.Ethephon substantially increased defoliation and fruit drop, however, this wasalmost completely prevented by the addition of calcium acetate. Ethephon markedlyincreased the coloration of ponkan fruit. The addition of calcium acetate slightlydecreased the color acceleration, but the color was still considerably increased whencompared with the unsprayed control group.In experiment 2,200 ppm Ethephon with 1% calcium acetate and 200 ppmFigaron treatments were compared as a factorial combination consisting of fourtreatments. Figaron was sprayed on September 9, and Ethephon on November 4.No defoliation and fruit drop were observed in any treatment plots. Ethephonwith calcium acetate remarkably accelerated degreening and coloration of ponkanfruit. Figaron also appreciably improved fruit color but no additive effects ofEthephon and Figaron treatments were observed over Ethephon treatment alone.It is suggested that spraying 200 ppm Ethephon mixed with 1% calcium acetatein early November accelerates degreening and coloration without defoliation andfruit drop, and the method is commercially feasible.ポンカン(Citrus reticulata Blanco)果実の着色促進にエスレル(2-chloroethylphosphonic acid)を散布する際の,酢酸カルシウム混用による落葉・落果防止効果を検討した。またフィガロン(Ethyl 5-chloro-1 H-3-indazolylacetate)の着色促進効果も試験した。実験1では分割区法でエスレル濃度(0, 200, 400ppm)と酢酸カルシウム濃度(0, 0.2, 1, 5%)を組みあわせ,11月1日に散布した。高濃度のエスレルで落葉・落果が増加したが,酢酸カルシウムの混用により,落葉・落果が抑制された。エスレルによる着色は著しく促進されたが,酢酸カルシウムの混用はいく分その効果を弱めた。実験2では要因配置法で1%酢酸カルシウム混用200ppmエスレル散布,無散布と,200ppmフィガロン散布,無散布をくみあわせ,4処理の試験を行なった。フィガロンは9月9日,エスレルは11月4日に散布した。どの区でも落葉・落果はほとんど認められなかった。エスレルは着色を著しく促進した。フィガロンも着色を促進したがエスレルには劣った。エスレル,フィガロンともに果実中の糖やクエン酸含量に影響を及ぼさなかった。1%酢酸カルシウム混用200ppmエスレルの11月上旬散布がポンカンの着色促進のため実用化できると考えられる。
著者
冨安 卓滋 松山 明人 井村 隆介 宮本 旬子 大木 公彦 穴澤 活郎 赤木 洋勝
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

イドリヤ川では鉱山地域周辺において、無機水銀の濃度は、鉱山からの距離に伴って減少するが、メチル水銀濃度は、流下に伴い一度上昇した後に低下することが明らかとなった。また、河川底質からの溶出実験により、河川水と底質を一緒に保存すると水中の総水銀濃度は数倍になる一方で、メチル水銀濃度は数百倍にまで上昇する現象が見られた。これは、河川水中メチル水銀の起源として、底質が重要な役割を担うことを示唆するものであった。また、周辺地域への水銀の拡散状況を調べるために、河川底質、川岸土壌、草原土壌、森林土壌表層中の水銀濃度を測定した結果、水銀鉱山に最も近い地点では、河川底質中の総水銀濃度が最も高かったが、下流地点では、草原土壌の総水銀濃度が最も高く、また、メチル水銀濃度は、川から離れるに連れて高くなる傾向が見られた。河川底質、周辺土壌に関して、蛍光X線分析をおこなった結果、河川沿岸土壌、周辺草原土壌は、森林土壌と河川底質の混合層として存在することが明らかとなってきている。これらをふまえて、今年度は水銀の周辺地域への拡散における川による運搬の影響、また、水銀の化学形を明らかにするために、水銀鉱山付近とその約2km下流の2地点において、川岸から山へ向かって約20mおきに各4点、採土器を用いて土壌を柱状に採取した。採取した試料は柱状図を記載し、層ごとに切り分け、石、根などを取り除いた後、チャック付きビニール袋に保存し日本に持ち帰った。現在下流地点の総水銀濃度の測定が終了、水平方向では川岸から2点目に最高水銀濃度が観察され、また、鉛直方向には層毎に大きく水銀濃度が変動することが確認された。これらは、河川の氾濫によって運搬された水銀汚染底質の堆積によるものと考えられる。
著者
西 徹
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学水産学部紀要 (ISSN:0453087X)
巻号頁・発行日
no.39, pp.p81-98, 1990-12
被引用文献数
1

The thirteenth fishing operation with a long-line having five branch lines was carriedout in the Eastern Indian Ocean by "The T.S. KAGOSHIMA-MARU (G.T.1,293 Tons)", ofthe Faculty of Fisheries, Kagoshima University, from May 19 to 31, 1987.The hourly variations of the depth of hooks in the tuna long-line and the hooking depthof tunas and marlins were investigated.The numbering method of hooks was adopted to name the first hooks lifted in each basket as No.1 and sequently as No.2, No.3, No.4 and No.5. The results of the analysis are asfollows:1. The recorded depths of hooks ranged from 69 m to 103 m (89 m in average) for No.1 andNo.5 hooks, 111 m to 154 m (134 m in average) for No.2 and No.4 hooks and 122 m to 178 m(154 m in average) for No.3 hooks.2. The patterns of hourly variations of the depth recordings were classified into threecategories of A, B and C. In the case of the high current velocity obtained from thedrift of the long-line, all the data were classified into B or C category.3. The maximum differences between measured and calculated depths of the hooks were,in average, 16 m for No.1 and No.5 hooks, 20 m in same for No.2, No.4 and No.3 hooks.4. The hooked ratio of yellowfin tuna in each branch line was high in No.3 and No.4 hooks showing same value of 27.4%, followed by No.2, No.1 and No.5 hooks in order. Fromthese results, the main hooking stratum was estimated to be at the depths of 120 m to150 m.5. The hooked ratio of bigeye tuna was 33% for No.3 hooks, accounting for 30% of totalcatches, with 73.3% of total bigeye tuna catch attained No.2, No.3 and No.4 hooks.From these results, the main hooking stratum of bigeye tuna was estimated to be at the depths of 140 m to 170 m.1987年5月19日から31日の期間,インド洋東部海域において,鹿児島大学水産学部練習船かごしま丸(総トン数1293屯)を使用して5本付延縄による13回の釣獲試験操業を実施した。鮪延縄の釣針の経時変化とマグロ,カジキ類の釣獲深度について検討を試みた。枝縄別の釣針深度は1,2,3番の枝縄に装着した3台の自記式深度計の記録から求め,マグロ,カジキ類の釣獲深度については釣獲野帖から各枝縄別釣獲データを深度別に集計して釣獲層を推定した。釣針の番号の命名方法は各鉢ごとに最初に揚げられた釣針を1番とし,以後順番に2,3,4,5番釣針と呼ぶことにした。今回の解析の結果は次の通りである。1. 1,5番釣針の実測深度は69~103m(平均89m),2,4番釣針で111~154m(平均134m),3番釣針では122~178m(平均154m)であった。2. 投縄後,釣針が安定するまでの所要時間は1,5番釣針では平均すると約12分,2,4番釣針では平均20分,3番釣針では18分を要している。3. 深度記録の経時変化のパターンをA型,B型,C型の3種類に分類して各々の記録を図示した。A型は流速0.3ノット以下であり釣針の計算深度と実測深度の差が極めて小さい。釣針の振幅は小さくてその周期も緩やかに変動している。B型とC型は釣針の計算深度と実測深度の差が20m以上あり,幹縄はカテナリー曲線を描いていないと推測される。B型は釣針の上下動の振幅が10~20mで,周期が15~60分ぐらいで変動しておりC型は振幅は10~30m,周期が1~5時間と大きなウネリを伴って上下動している。縄の漂移から求めた流速が大きい時はすべてB型かC型に分類された。4. 水中での釣針の最大振幅は枝縄別の平均値をとると,1,5番釣針では16m,2,4番釣針と3番釣針では20mと同じ値であった。5. 深度計を取り付けた鉢の釣針にキハダが釣獲された記録から20m以上も上方に枝縄を持ち上げている例を図示した。6. キハダの枝縄別釣獲割合は3番と4番で高く,27.4%と同じ値を示し,以下2,1,5番釣針の順となっている。これらの結果からキハダの主釣獲層は120~150m深と推定した。7. メバチの枝縄別釣獲割合は3番釣針で33%と全体の3割を占め,2,3,4番釣針でメバチ全釣獲の73.3%に達している。これらの結果からメバチの主釣獲層は140~170m深と推定した。8. 各枝縄間の釣獲差について,t検定を行った。キハダについては4番と5番釣針間には釣獲差について5%水準で有意差が認められたが,その他の枝縄間ではキハダ,メバチ共に枝縄間には5%水準以下で釣獲差に有意差は認められなかった。9. 水温鉛直分布によるキハダやメバチの釣獲深度は水温躍層内に存在していた。
著者
松野 保久 古川 慎太郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學水産學部紀要 (ISSN:0453087X)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1-4, 2002-12-24

養殖生長,網あるいは縄漁具等に多く使用されている材質6種類について,基本的な形状を円柱形(直径55mm×長さ550mm)とし,有効反射面積を測定した。その結果,有効反射面積は塩化ビニール,木材,発泡スチロール,竹材,アルミ箔,鉄材の順で大きくなった。竹材は塩化ビニール,木材の約3倍,発泡スチロールの約2倍であった。アルミ箔は異なる材質のものに巻きつける方法で,有効反射面積を約3.5倍大きくすることができた。鉄材の有効反射面積は予想を越え大きな値をとり,塩化ビニール他非金属材の約100倍となった。物標形状の幾何学的投影面積およびレーダ波を完全反射するものと仮定する計算式より求めた計算有効反射面積と鉄材の測定有効反射面積の値は略一致する傾向にあり,相関関係が推定できた。しかし塩化ビニール他非金属材は相関を見出すことはできなかった。最後に,測定を実施するにあたり協力いただいた本学環境情報科学講座航海グループに所属する4年生学生の平田幸生君ならびに藤健太郎君に謝意を表する。
著者
国分 禎二
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-126, 1973-03-24
被引用文献数
2

作物の栄養器官が同化産物の貯蔵器官として特に発達し, その器官の貯蔵物質の含有率が作物の品種によって異なる場合, 含有率の差異が貯蔵器官のどのような構造の差異に基づくものであるかと云う観点から, 貯蔵器官の構造とその機能の発現との関係を解明した研究は、きわめて少ない.本研究は, 以上のような観点より, 作物の同化産物の貯蔵器官の組織構造とその蓄積能力との関係に関する基礎的資料を得る目的で, 甘しょの塊根を材料としておこなったものであって, 塊根の組織諸形質の品種・系統間変異, およびその遺伝を検討し, 塊根の組織諸形質の特性から得られた知見に基づいて, 甘しょ高でん粉多収性品種の育種に関して考察をおこなったものである.A 塊根の組織構造塊根組織に関する明確な基礎的知見を得ることを目的として, でん粉貯蔵器官にとってとくに重要と考えられる維管束の分化と柔細胞の増生に焦点をあてながら, 発生初期の不定根から収穫期の塊根に至る一連の組織観察の結果を論述した.I 不定塊の根端部における組織の分化 甘しょ品種沖縄百号の栽植5日後の不定根を供試して, 根端部における組織の分化様相を観察した.1 根冠はその中央部を構成する中央構造とその側層を構成する側層構造とからなっている.2 横断面では, 根冠の中央構造の細胞は一定の配列様式を示さないが, 根冠の側層構造の細胞は, 中央構造を取り囲む輪状配列を示している.3 根冠の最内層は表皮原となっている.4 表皮原に接して頂端側(根冠側)と基部側(皮層および中心柱側)の両側に分裂組織がある.5 皮層は約8層の細胞層からなり, 横断面では, 中心柱を取り囲む輪状構造を示し, 根端部から約200μの部位では, 細胞間隙が認められる.6 内鞘細胞は, 表皮原先端部の基部側にある分裂組織から2〜3個の細胞を隔てた極先端部において識別できる.7 中心柱の先端部には表皮原の基部側の分裂組織に接して, 不整形の細胞よりなる半球形の部分が存在する.8 原生篩管は, 中心柱の先端部から約500μの部位において明瞭に認められる.9 原生木部道管の厚膜化が認められるのは, 中心柱の先端から1cmないし2cmの間である.10 中心柱の柔細胞は, 縦軸方向では皮層細胞より長く, また, 横断面におけるその細胞配列には一定の様式がみられない.11 軸の中心を通る縦断面では, 中心柱の中心部には大きな核をもった比較的大型の細胞からなる一列の細胞列があって, 頂端分裂組織のごく近くまで達している.II 不定根の塊根形成 沖縄百号および九州34号を供試して, 栽植5日後より1カ月間5日おきに合計6回不定根を採取し, 不定根の最肥大部または最肥大予想部位の組織標本を作成して, 塊根組織の分化発達過程を追跡した.1 栽植5日後には, 皮層は約8層の細胞層からなり, 離生細胞間隙にとむ.内鞘細胞はその並層分裂により中心柱の細胞数を増加し, 直層分裂によって内鞘細胞自身の数を増加してその円周を増加している.原生篩部は内鞘に接して, 5〜6個所に放射状に認められ, その周囲には, すでに伴細胞を伴う後生篩部が分化している.原生木部構成道管の細胞膜は厚膜化しているが, まだ木化しておらず, 原生木部は完熟していない.2 栽植10日後には, 厚生篩部に対応する皮層部に破生細胞隙が認められる.原生木部道管および中央後生木部道管が木化し, 成熟する.また, 篩部を取り囲む扇形の分裂組織が発達する.3 栽植15日後には, 中心柱では一次形成層が完成し, 道管周囲に分裂組織が発達する.4 栽植20日後には, 一次形成層による維管束ならびに柔細胞の増生が旺盛となる.道管周囲の分裂組織による柔細胞の増生も顕著であるが, この分裂組織は直接には維管束の分化をおこなわないので, いわゆる形成層とは認め難い.木部柔組織内に新しい篩部が分化し, この篩部に接して分裂組織が発達するこの分裂組織は維管束を分化するので, 形成層と認められる.従って, この木部内に発達した篩部(interxylary phloem)に接する分裂組織は, 先に分化した塊根周囲の一次形成層に対して, 二次形成層(secondary cambium)と呼称すべきである.5 栽植25日後には, 前期までに認められた諸種の分裂組織による細胞の増生は依然旺盛であるが, さらに, 木部柔組織の個々の大型の柔細胞が, 比較的孤立的に分裂するのが観察される.この種の細胞分裂は維管束の分化を伴わず, また一連の分裂細胞層の形をとらないので, 前期までの諸種の細胞分裂に対して, とくに, 大型柔細胞分裂として区別できる.6 栽植30日後には, 皮層はほとんど脱落し, 新しく, コルク形成層が発達して皮部を形成する.中央道管の周囲の分裂組織の活性はやや衰える.この時期に, 甘しょの塊根の組織学的諸形質は完成する.7 以上の観察結果から, 塊根肥大に寄与する細胞の増生は, コルク形層, 一次形成層, 二次形成層, 道管周囲の柔細胞分裂および大型柔細胞分裂によるものと結論される.これらの細胞分裂の中で, 一次形成
著者
井上 和博 元野 耕平
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13462180)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.21-28, 2011-03

本研究は4~6歳の広汎性発達障害(PDD)児16名を対象に,幼児期PDD児の身体模倣の特徴を把握することを目的として,12種類の身体模倣課題を実施した。その結果,四肢が異なる肢位を取る複雑な姿勢模倣課題及び運動模倣課題に関しては通過率が低くなった。さらに,自己の身体や物が関わる模倣に関しても困難を示すことが明らかとなった。これはPDD児特有の知覚・認知機能の障害,即ち,全体を捉えることが難しく,また,身体図式や上下・左右関係の理解が困難であるという特徴が関係していると考えられる。The present study conducted 12 types of imitation tasks for 16 children aged 4 to 6 years with pervasive developmental disorders (PDD) for the purpose of figuring out the characteristics of their imitations. As a result, achievement ratio were low in complicated postural and gestural imitation tasks in which four limbs take the different limb positions. Further, it was revealed that it was difficult for children to perform the imitation involving in their body and things. It is thought that their characteristics are associated with perceptional and cognitive dysfunctions particular to the children with PDD, i.e., the difficulty to look on the whole things and the difficulty to understand a body schema as well as "top and bottom"/"right and left" relations.