著者
安藤 哲夫
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

M町における252組の母児調査で児のメチル水銀曝露の成長・発達への影響を検討した。母の頭髪総水銀濃度の幾何平均濃度は1.60ppmであった。母乳を与えた期間が長いほど母の頭髪水銀濃度は低く、1ヶ月間の母乳の授乳によって1.065ppmの頭髪水銀濃度が低下したことが回帰係数から算出できた。出産間隔が短いと母の頭髪水銀濃度は高かった。母乳の授乳期間が長いほど児の独り歩きの時期が誕生日を含めてそれ以降の児が多くなる頻度が高かった。
著者
大和 修 遠藤 大二 国枝 哲夫 竹花 一成 山中 正二 落合 謙爾 内田 和幸 長谷川 大輔 松木 直章 中市 統三 板本 和仁
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

多数の新規および既知の動物遺伝病(特に、ライソゾーム蓄積病)について、診断・スクリーニング法を開発した。また、その一部の犬疾患(GM1ガングリオシドーシスおよび神経セロイドリポフスチン症)については、予防法を確立・実践し、発症個体が出現しない程度にまで国内キャリア頻度を低下させることに成功した。さらに、猫のGM2ガングリオシドーシスに対しては、抗炎症療法を試行し、本治療が延命効果を有する可能性を示唆した。一方、次の研究に継続発展する新規の動物遺伝病を数件同定した。
著者
河合 渓 西村 知 小針 統
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

人と自然の関係を解明するため海洋生物学、海洋学、経済学という異なる視点から解明を進め、各成果を金銭化することで各研究を有機的に融合する学融的研究の試みを行った。3年間の調査において西村知は経済社会学的視点を持ち調査を行った。西村知は主にキャッサバを通して農村社会システムを捉えると共に、地域社会を住民参加型プロジェクトと比較しその社会システムを捉えた。一方、小針統、河合渓は理系的視点を持ち調査を行った。小針統は環境条件とプランクトンと魚類相を、河合渓は貝類の調査と総括を主に行った。この調査の3年間の結果は3回の学会発表と4編の学術論文としてすでに発表し、現在いくつかの項目については論文の準備中である。また、調査開始時から情報公開としてホームページを立ち上げその成果を公開した(http://cpi.kagoshima-u.ac.jp/project-fiji.html)。これらすべての成果は平成20年2月3日にシンポジウムという形で報告会を行った。本プロジェクトは南太平洋大学とフィジー水産研究所をとおして地元地域社会へと還元を行っており、大きな社会貢献ができつつあると考えられる。
著者
"内山 弘"
出版者
鹿児島大学
雑誌
地域政策科学研究 (ISSN:13490699)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.219-236, (Released:2016-10-28)

"I have collected words and phrases used in 2channel (Ni-channel) and Nikoniko-doga,and divided them into five categories according to their characteristics: (1) grammatical,(2)phonetic,( 3) orthographical,(4 )vocabulary,and (5) style. As a result,I found that the orthographical category (inc1uding pictorial) has the greatest number of expressions,followed by the categories of vocabulary and style. In the orthographical category,there are various expressions influenced by the arrangement of Japanese letters on the key-board,the process of installing Japanese words,the similarity of letter shapes,size of letters,and omission. We find many examples of abbreviations,new words,and change of meaning in the category of vocabulary. It's especially noticeable that the words which were once deconstructed or used as parts of other words and AA (ASCII Art),are rearranged as new words. In style,there are a lot of baby words,euphemisms,and AA,which may help to convey precisely what a writer wants to tell. Based on these analyses,I noticed that there are mainly three motives for producing new Net-words: (1)the writer's desire to differentiate their own words from other writers' words,( 2) the writer's desire to make the work easier,and/or (3) the writer's desire to create novel expressions. I think writers' desires to create novel expressions,or “word neophilia"",is potentially a rich source of new Net-words for the future."
著者
梅内 幸信
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

平成14年度から最終年度である平成17年度までの研究実績は,以下の通りである。(平成14年度〜平成15年度)ホフマン文学、グリム童話、エンデ文学に関するこれまでの研究成果に基づき、ファンタジー文学に関する定義づけを試みた。ファンタジーに関するトドロフの古典的な定義を踏まえ、最近のアトベリーの定義を加味して、5つの観点から吟味し、現在の段階で最も妥当的定義づけを提出した。1.語源(無意識のもの・不可視のものを可視的にする)、2.機能(以下参照)、3.内容(童話的)、4.源(出発点はホフマンの『幻想作品集』1814-15、18末のイギリス・ゴシック小説)、5.物語の長さ(長編小説から短編小説まで、童話は除外される)。(平成16年度)この定義に基づき、ホフマン文学とエンデ文学における具体的な作品分析を通じ、それぞれの文学におけるファンタジーの特質を総括した。ファンタジー文学の重要な特徴は、童話的内容と、長編ないし短編までのその物語の長さである。この意味において、きわめて短い物語である童話は、ファンタジー文学から排除されるのである。しかし、グリム童話にもファンタジーは存在している。(平成17年度)グリム童話におけるファンタジーは、その歴史が示すように、ミクロコスモスを反映している。このファンタジーを考慮し、ファンタジー文学のもつ次のような3つの機能を提出した。1.ユートピアをめざす非現実的描写によって現実世界を止揚する。2.人類の未来社会における不安への心の準備をさせる。3.死に至る病である不安に対する免疫力をつける同種療法的効果をもつ。
著者
舘野 隆之輔
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、土壌中の有機物含量が非常に小さい火山灰性未熟土壌に成立する森林の皆伐後の短期的・長期的な養分循環の変化を明らかにすることを目的として行った。樹木の一次生産量、土壌窒素無機化速度、樹木の窒素吸収量など窒素循環に関わるパラメーターは、人工林と常緑広葉樹林ともに未熟土以外の同一気候帯の森林と大差ないことが明らかとなった。一方で伐採に伴う硝酸流出量は、他の同一気候帯での結果に比べて小さく、このことは本調査地の特徴的な土壌特性や水文特性などを反映しているものと考えられた。
著者
地頭薗 隆 下川 悦郎 松本 舞恵 加藤 昭一 三浦 郁人
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部演習林報告 (ISSN:03899454)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.33-54, 1995-10-20

鹿児島県は1993年幾度となく豪雨に見舞われた。これによって県内のあちこちで斜面崩壊・土石流による土砂災害が発生し,大きな被害がでた。8月6日の災害直後,鹿児島市とその北部域の垂直空中写真が撮影された。空中写真判読に基づき,斜面崩壊・土石流の発生分布とそれによる侵食土砂量について解析を行った。得られた結果をまとめると次のようである。1)空中写真判読区域(南北方向20.6km×東西方向15.8km,面積約325km^2)に発生した斜面崩壊・土石流は大小合わせて6,500個以上にのぼった。それらの約60%は侵食域の面積が300m^2未満のものである。2)斜面崩壊・土石流による侵食域分布図に200m間隔でメッシュをかけ,200×200mグリッド内の斜面崩壊・土石流の個数を求めた。グリッド総数8,137個のうちグリッド内に斜面崩壊・土石流が1箇所以上存在するものは全体の約26%に相当した。斜面崩壊・土石流が10個以上存在するグリッドは甲突川中流域および思川中流域に集中している。3)空中写真判読区域を5区域に区分し,それぞれの区域の斜面崩壊・土石流による侵食域の面積を求めた。さらに,侵食域面積に平均的な侵食深を乗じて各区域の侵食土砂量を計算した。8月1〜2日豪雨で約1,600箇所の斜面崩壊・土石流が発生した思川流域では約500×103m^2(約8,000m^3/km^2)の土砂が侵食された。8月6日豪雨で約3,700箇所の斜面崩壊・土石流が発生した甲突川流域では約655×10^3m^3(約6,000m^3/km^2)の土砂が侵食されている。また多くの死者やJR日豊本線,国道10号の大きな被害が発生した姶良カルデラの西壁でも約55×10^3m^3(約7,000m^3/km^2)の土砂が侵食されている。4)空中写真判読区域を表層地質で大まかに3区域に区分し,それぞれの区域の斜面崩壊・土石流による侵食域の面積,土砂量を計算した。その結果,火砕流堆積物の非溶結部であるしらす区域で約942×10^3m^3(約5,OOOm^3/km^2),火成岩類区域で約224×10^3m^3(約3,O00m^3/km^2),堆積層区域で約202×10^3m^3(約4,O00m^3/km^2)であった。
著者
西村 明
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、戦後から現在まで日本人によって行われているアジア・太平洋戦争の旧戦地における遺骨収集・慰霊巡拝という行為に焦点を当て、インタビューや資料収集を通して、その概要を明らかにした。具体的には、戦死者の亡くなった瞬間と彼が置かれた戦没地からの時間的・空間的隔たりが、霊をはじめとする死者へのイメージや想いを喚起し、遺骨収集・慰霊巡拝という実践を促していることを明らかにした。
著者
西原 典則 二之宮 哲志 堀口 毅 恒吉 利彦 稲永 醇二 西川 正雄
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.119-130, 1978-03-19
被引用文献数
1

水稲の生育・収量に及ぼすけい酸の時期別影響をみるため, けい酸の供給時期および欠除時期を段階的に変えて水稲を水耕栽培した.得られた結果は次のとおりである.1.けい酸欠除期間に出葉した葉は軟弱で垂れ下がり, けい酸供給期間に出葉した葉は粗剛で直立する傾向を示した.2.草丈はけい酸供給時期が早いほど, またけい酸欠除時期が遅いほど大であった.3.出穂の20日以上前からけい酸を欠除した区では出穂後の籾に褐色の斑点を生じたが, 出穂直後以前からけい酸を供給した区の籾は健全であった.4.水稲のわら重, 根重および精籾重はけい酸供給時期が早いほど, またけい酸欠除時期が遅いほど大となり, 粃重は逆に減少した.5.水稲の収量構成要素のうち一株粒数, 登熟歩合および千粒重はけい酸供給時期が早くなるほど増加した.また一株粒数および千粒重はけい酸欠除時期が遅いほど増加したが, 登熟歩合は栄養生長期以後けい酸を欠除した区では低かった.6.生育初期(7月1日〜7月20日)のけい酸欠除は水稲の収量および収量構成要素に大きな影響を及ぼさなかった.7.各葉位の葉重は出葉後のけい酸供給開始時期が早いほど, またけい酸欠除時期が遅いほど大であった.8.葉身, 葉鞘および根のけい酸含有率は生育初期にはけい酸欠除の影響をほとんどうけなかったが, その後はけい酸供給時期が早いほど, またけい酸欠除時期が遅いほど大であった.9.茎では節間伸長期, 籾殻では出穂期までにけい酸供給をはじめた区のけい酸含有率はいずれも大差なかったが, その後までけい酸を欠除した区はけい酸含有率が低下した.栄養生長期以後けい酸を欠除した区における茎および籾殻のけい酸含有率は著しく低くかった.10.葉身のけい酸含有量において第1葉(止葉)/第2葉比および第2葉/第3葉比はそれぞれ第1葉および第2葉が出葉・充実している時期にけい酸供給をはじめた区が大であった.11.水稲体の各部位におけるけい酸の分布割合はけい酸供給時期の遅いほど葉身および葉鞘部が減少し, 籾および茎部が増加する傾向を示した.また栄養生長期以後けい酸を欠除した区における籾および茎部のけい酸分布割合は著しく小さかった.
著者
堀田 竜次 假屋園 昭彦 丸野 俊一 HORITA Ryuji KARIYAZONO Akihiko MARUNO Shunichi
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 (ISSN:09136606)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.137-153, 2007

本研究の意義は,次の4点である.1点目は,道徳の時間の特質を反映したルーブリックを初めて作成することができたという点である.2点目は,評価観点を価値理解・自己理解・志向性にしたことで妥当性のあるルーブリックになったという点である.道徳の時間の特質を反映させた評価観点にしたことによって,道徳的価値の自覚の深まりを評価することができるようになった.3点目は,授業改善に向けての方略及び他教科・領域等,学校生活全般にわたる指導改善についての具体策を繰ることができるようになったという点である.4点目は,低・中学年や中学校,他の道徳の内容においても使えるルーブリックの様式になったという点である.
著者
丹羽 佐紀 山下 孝子 大和 高行 小林 潤司 杉浦 裕子 Niwa Saki Yamashita Takako Yamato Takayuki Kobayashi Junji Sugiura Yuko
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要 人文社会科学編 (ISSN:03896684)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.145-223, 2008

2006年1月から2007年7月にかけて、鹿児島在住の英国近代初期演劇研究者の仲間たちが集まって、月に1回の割合で、エリザベス1世時代の劇作家、ジョージ・ピールの『ダビデとバテシバ』の輪読会を行なった。一連の翻訳は、その輪読会の成果である。ジョージ・ピールは彼の劇作品に様々な題材を取り入れており、『ダビデとバテシバ』は、聖書のサムエル記下の記事を題材として扱ったものである。劇のあらすじは、基本的には聖書の中に書かれた内容と同じであるが、その描き方にはかなりの相違点が見られ、ピールの独自性が顕著である。翻訳に際しては、毎回、担当者が準備してきた試訳を全員で細部にいたるまで議論、検討し、その都度必要に応じて修正した。それを、丹羽佐紀が取りまとめて文体の統ーを図った。従って、原文の解釈については5名の共訳者が等しく責任を負い、訳文の文体および表現については、主に丹羽に責任がある。解説と訳注の執筆は、丹羽が担当した。
著者
冨永 茂人 岩掘 修一
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-10, 1992-03-30

ポンカンの果実発育の各過程にエチクロゼートを散布し, 各時期の果実の大きさと摘果効果との関係, 及び各時期のエチクロゼート散布と果実品質との関係について調査した.1.エチクロゼートを満開後35〜40日に散布した場合, 無散布樹の落果が大きいために, 摘果効果が明らかでなく, 果実横径による摘果効果の差異も認められなかった.2.エチクロゼートを満開後47〜55日に散布した場合, 葉果比からみた摘果効果が極めて大きく, 摘果過剰になった.この時期の果実横径別に摘果効果をみると, 無散布樹に比べて横径が大きい果実で摘果効果が大きく, 横径が小さい果実では摘果効果がそれほど大きくなかった.3.エチクロゼートを満開後70日に散布すると, 摘果効果は中程度で, 葉果比からみた摘果効果は適当であった.この時期の散布では果実横径の小さい果実の落果が多く, 横径の大きい果実の落果は少なかった.4.エチクロゼートの時期別散布が果実品質に及ぼす影響をみると, 満開後35〜55日の散布では果実の肥大は促進されたが, 果実品質が低下する傾向にあった.一方, 満開後70日の散布では着色が促進された.5.ポンカンに摘果剤としてエチクロゼートを散布する場合, 満開後70日前後が良く, この時期の散布は熟期促進用散布の第1回目の散布と兼ねることができるものと考えられた.
著者
Miyake Hiroshi Iwao Kenji Kakinuma Yoshiko ミヤケ ヒロシ イワオ ケンジ カキヌマ ヨシコ
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋研究 (ISSN:09160752)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.273-285, 1997
被引用文献数
3

We investigated the seasonal occurrence, growth, age, and life history of Aurelia aurita in the Taniyama areaof Kagoshima Bay, also some of the environmental factors such as the specific gravity, pH and the temperature,influence the appearance of Aurelia aurita in the surface layer. The size of an individual depends on environmentalfactors. In contrast the number of branching points of radial water vascular canals increasing with time, independentlyof environmental factors, and therefore could be used as an age index.By using age index, the population of Aurelia aurita sampled may consist a mixture of two cohorts. Theassumption may be that the life span of Aurelia aurita is up to two years.By examining all stages of the life history of Aurelia aurita in Kagoshima Bay and comparing it with that ofother locatives, it is found that the life form of Aurelia varies with their environmental circumstances. We suggestthat how the habitat influence the life history in Aurelia should now be reviewed.
著者
安川 正敏 長野 慶一郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.82-93, 1958-10

腸管へのCa排泄を窺うために, 家兎について, つぎの実験を行つた.即ち, 結紮によつて腸管を小腸, 盲腸, 近側結腸及び遠側結腸の4部位に区分し, 内容の移出入を阻止した家兎に, ^<45>CaCl_2を皮下注射し, 一定時間後に致死, 各区分の内容乾物量を秤量し, この一部を灰化して, cpmを計測した.この測定値について, ^<40>K等の天然放射性同位体に基づくcpmを補正した後, これから腸管各部位に存在するcpmの総計を算出, 比較した.結果はつぎの通りに要約される.1.上記4部位の, いずれにも, ^<45>Caの排出が認められた.2.全腸管中に存在する^<45>Ca量に対する, 各部位の占める割合は, 雌, 雄ともに, 小腸と近側結腸が高く, 1位或は2位を占める.この両者につぐものは盲腸であり, 遠側結腸が最低であつた.3.妊娠期には, 小腸の占める割合が高まる.4.上述の成績は, 必しも各部位の, 真の排泄能を意味しないであろう.というのは, 腸管内における^<45>Caの再吸収が, ありうるからである.
著者
田島 良男
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.127-130, 1955-11-30

1)アカ, クロ, モドウマツ, スギ, コノテガシハの幼植物で, 成葉の発出を目安として, 日長と幼形期→後続形期変移の関係を調べた.[table]2)アカ, クロ及びモドウマツの幼植物では, 日長の増加は針葉の発現を促す.また主軸の伸長並びに針葉数は日長の増加により促進されるが初生葉数は影響されない.3)スギ及びコノテガシハの幼植物は成葉発出には14時間前後の日長が好適であるが, ヒノキ幼植物の成葉発出は日長に影響されない.
著者
田中 實男
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.125-134, 1993-03-31

国民栄養的觀点から, 良質の動物性たん白質の供給源としての鶏卵が首位を占めていたのは1979年(昭和54)までであったが, 現在でも重要な地位を占めている.その鶏卵生産を担った採卵鶏経営は, 1960年(昭和35)ごろまでは農家の80%を占める450万戸で10羽程度の鶏が飼養されていた.しかし, 1965年(昭和40)に生産性の高い外国鶏が過半を占めるころには規模拡大が進行し, こののち経営数の急減と飼養羽数の急増は加速化され, 消費を上回る供給増大のために1974年(昭和49)には, 現在まで続く生産調整が開始された.この間の鶏卵生産の特徴は, 農外資本による鶏卵生産への参入であり, さらには1万羽以上飼養の経営数は10%ながら, 成鶏めす羽数シェアは90%にも達していることである.このように大規模化した採卵鶏経営の特徴は, 専ら規模拡大を指向して絶えず生産技術水準の向上を図っていることである.この点について, 18年間にわたる家族労力経営事例について点検すると, 明確に生産技術水準の向上が確認された.そのことは, 生産性の高い鶏種の導入による側面もあろうが, 他方, 高生産性の鶏種の能力を発揮させ得る管理能力の存在も示している.それらは, 1人あたり管理羽数の増大のなかで成鶏めす羽数規模の拡大を図りつつ, 平均産卵率を70%から75%へ, 平均卵重を58gから62gへ向上して成鶏年間産卵量を15kgから17kgへと増加させている.一方, 生産費の60%も占める飼料費については, 成鶏年間飼料消費量を殆ど増減のない39kgに保ちつつ, 飼料要求率を2.6から2.2へと低下させている.結果として, 管理労働1時間あたり鶏卵生産量は, 15kgから40kgへと向上した.鶏卵生産における生産技術上の改善努力がなされるなか収益性の動向は, 1974年(昭和49)に鶏卵の生産調整が開始され鶏卵価格は停滞するが, 飼料価格は高値を維持したままなので卵飼比は70%にも達していた.1985年(昭和60)の円高によって飼料価格は急落するが, 鶏卵価格も低落したため卵飼比は50%に下落した.しかし, 高卵飼比でも鶏卵価格が高水準の場合は, 所得は可成りの額が実現されるが, 鶏卵価格が低水準になると, 卵飼比は低下しても所得額は増大しない.低卵価のなかでの低所得額が, 現在の採卵鶏経営の実態である.このような状況の場合, これまでは規模拡大による鶏卵生産量の増大によって, 所得総額の維持拡大を図ってきていた.そして, 現在の鶏卵生産は, 規模拡大を行っても生産性水準の維持向上が可能であった経営のみによって担われて来ているのである.このことは, 18年間にわたる家族労力中心の採卵鶏経営の分析においても観察された.このような採卵鶏経営の困難さは, 古くから指摘されていたことでもあって, 採卵鶏を200〜300羽飼養して専業経営と言われた時代にも, 「農家殺すに刃物は要らぬ, 鶏を半年も飼わせれば良い」ということばがあった.鶏卵生産は, 農産物のなかでも所得率の最も低い作目の生産であるために, 昔からも生産技術上の失敗は許されなかったのである.これからの採卵鶏経営は, ますますその数を減じて行くであろう.他方, 鶏卵供給水準を維持するためには, 経営規模は拡大化を続けざるを得ない.その経営規模の拡大を図りつつ採卵鶏経営を存続させるには, 何よりも生産技術水準の維持向上の努力が前提条件となるのである.
著者
古賀 克也
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.156-162, 1958-10

ベンゼン, n-ブタノールを溶剤とし20℃で精製蛹油の均一系における鹸化速度をメタノール性, エタノール性及びブタノール性加里を用いて調べ次のごとき結果を得た.(1)0.4規定苛性加里による鹸化反応は見掛上2分子反応に一致するが稀釈濃度(0.2規定及び0.1規定)では2分子反応には一致しないことが明白に認められる.(2)鹸化価曲線より油分子全体としての反応速度は時間経過と共に逓減することがみられる.(3)反応各時間の鹸化価の比より異種溶媒, 異種濃度間の相対的速度を比較すれば, アルコール性加里液の鹸化速度はメタノール<エタノール<ブタノールの順序に大きくなる.苛性加里の濃度と鹸化速度の関係は溶媒を異にした場合もほぼ類似値を示す.
著者
松下 幸司
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部演習林報告 (ISSN:03899454)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.191-211, 1992-03-30
被引用文献数
2

減反率法によって木材の供給予測を行う際には伐採齢の平均と標準偏差が必要である。減反率法の直接的な適用が有効なのは,この統計値が安定している場合である。北海道のカラマツを事例に,伐採齢級の平均と標準偏差の時系列的変化を推計した。用いた資料は,1970年度以降の年度末現在の齢級構成表である。分析の結果,北海道のカラマツ人工林の伐採動向に関し,以下の点が明らかになった。1.伐採面積,造林面積ともに減少傾向にある。伐採面積が造林面積をかなり上回っており,カラマツ人工林面積の減少が続いている。2.カラマツの伐採齢級の平均はIV齢級からV齢級へと近年上昇傾向にある。若齢級での伐採が減少してることが影響している。なお,伐採齢級の標準偏差については余り変化が見られない。3.齢級別伐採率からみるとピークがVII齢級から,VIII,IX齢級と上昇している。ピーク齢級での伐採率は低下している。齢級を問わず,全齢級で一定の最低伐採率を観察することができる。4.民有林については,価格の低下に従って,伐採齢級の上昇と伐採面積の減少を観察することができる。ただし,国有林,道有林では一概に言えない。伐採齢の平均と標準偏差から将来の供給予測を行う際には,伐採齢の継続的調査によって,モデルの仮定が大きく変化していないことを常に確認する必要がある。変化が見られる場合には,その変化要因の分析が必要である。
著者
難波 直彦 若松 千秋 山口 孝一
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.203-210, 1983-03-15

1.かんがい用調整池の水平ブランケットに粘性土を用いる場合, 地盤の沈下による変形に対する安定性を検討する方法として, 地盤土にWinkler-modelをあてはめた地盤反力法の適用を検討した.2.境界条件として, イ)両端固定, ロ)一端固定他端移動, ハ)一端固定他端自由の3種をとり, それぞれについての解を求めた.解に含まれる4つの積分定数C_i(i=1〜4)の無次元量G′_iについて, それぞれが無次元数αLに対して示す変化を調べ, αL≧7では境界条件いかんにかかわらず, 同じ結果(C′_1=C′_2=0,C′_3=C′_4=-1)を与えることを明らかにした.3.境界条件とαLの違いによるたわみと曲げモーメントとの軸方向の分布を比較した.αLが小さいときには, 境界条件による違いが目立つが, αLが大きいときには固定端からはりの中央部まで, ほとんど差異が無い.4.地盤, ブランケット材および荷重について一定の仮定を設け, 絶対値最大曲げモーメントの生じる固定端断面での曲げ引張り応力を調べた.はりの変形係数Eをパラメーターとし, 地盤反力係数kに対する最大曲げ引張り応力σ_tの関係を示した(Fig.10).5.安定条件を明らかにするため, ブランケット材として用いられた粘性土の曲げ試験, 一軸圧縮試験を行い, 限界応力, 変形係数の値を求め, 前項のFig.10に対比して, 限界条件の例を示した.6.上記の実例の施工実績を検討し, この方法による安定解析の可能性を明らかにしたが, 地盤反力係数kの決定法に, なお問題が残されている.