著者
吉野 秀吉 浦野 紘平
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.11-18, 1994
被引用文献数
11 6

一般廃棄物焼却施設における焼却灰の遺伝子毒性の実態と特性を明らかにするため, 23施設の飛灰と10施設の残灰について, 前報の方法で変異原性物質を抽出してエームス試験を行った。<BR>23施設のうち8施設の飛灰から明確な変異原性が認められ, とくにTA98+S9の代謝フレームシフト型の突然変異が多く認められた。聴き取り調査による稼働状況との関係を検討したところ, ストーカ式で, 炉内滞留時間の短い施設の飛灰に変異原性の著しく高い場合が認められた。そこでストーカ式焼却炉において燃焼条件を変化させた場合の飛灰の変異原性の変化を調べたところ, 排ガス中のCO濃度が高く, 飛灰の熱灼減量が高くなると変異原性が高くなった。これらのことから飛灰中の変異原性物質は不完全燃焼した場合に生成しやすいことが明らかになった。なお, 飛灰を400℃, 30分間熱処理すると変異原性が消失することが確認された。また, 焼却灰を2規定の塩酸または水酸化ナトリウムで処理したところ, 変異原性物質の一部が分解された。塩酸処理ではカルシウム塩などが溶解して質量が大幅に減少したため, 抽出しやすくなり, 変異原性が高感度で検出できた。酸処理後, 変異原性の低い残灰についても10施設のうち3施設から明確な変異原性が認められた。
著者
高月 紘 酒井 伸一 水谷 聡
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.351-359, 1995-09-30
被引用文献数
5 9

災害に起因する廃棄物として, 解体廃棄物の発生原単位と, 一般廃棄物の組成の変化について検討した。原単位は重量と容量べースで求め, 鉄筋コンクリート, 木造家屋ともに, 重量ベースでは従来の報告値と近かったが, 容量ベースではかなり大きな値となった。これは, 災害復旧時には分別が不十分にならざるを得ず, 混合状態での積載になり荷台の空隙率が大きくなったためと推察される。一般廃棄物の組成調査では, 発泡プラスチック, PETボトル, 使い捨てカセットボンベなどの増加が見られ, 水道やガスのような生活基盤の欠如に起因する生活廃棄物の変化が顕著であった。またカセットボンベの約半数はガス抜きの穴が開けられておらず, 穴あけの徹底が求められるが, 排出量の顕著な増加を考えると, 事業者などによる別ルートの回収経路の確立も望まれる。
著者
山川 肇 植田 和広
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.245-258, 2001-07-31
被引用文献数
6 3

本稿では, ごみ有料化に関する論点を整理し, 各論点についての議論の進展と到達点, および, 今後の課題について述べた。まず家庭系ごみ有料化によるごみ流れの変化として, ごみ減量とその持続性について評価し, 減量の内容について紹介するとともに, ごみ減量の影響要因に関する研究を整理した。さらに不法投棄と自家焼却に関する調査結果を紹介した。次にごみ処理の費用負担に関連して, ごみ処理サービスの特性と費用負担の公平性の議論を整理するとともに, 提案されている費用負担のあり方について紹介した。さらに逆進性, 税の二重取りに関する議論を整理した。その後, 財政への影響として手数料収入と処理経費に関する研究を紹介し, 住民意識と住民合意についても, 合意の条件等について整理した。最後に, 粗大ごみ有料化, および, 事業系ごみの全面有料化と料金適正化について若干の研究, 報告の紹介を行った。
著者
松藤 敏彦 田中 信寿 松尾 孝之
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.133-141, 1994

家庭ごみの発生特性を明らかにするため, 札幌市内の3家族をモニターとするごみの計量調査を9年間行った。各モニターは, 排出するごみを, 厨芥, 紙くず類, プラスチック, 金属, ガラスに分けて毎日計量し, 資源回収するもの, 粗大ごみは対象としていない。<BR>厨芥, 紙くず類の排出量は, それぞれ正規分布, 対数正規分布にしたがい, 分布の代表値としてはメジアンが適当である。両者の経年変化は, 紙おむつの使用, 家族人数の変化, 年齢の変化によってほぼ説明できた。また, 季節変動パターンにはモニターごとの特徴が見られるが, 夏の厨芥, 年末, 年度末の紙くず類の増加が, 市全体のごみ量の季節変動の原因と考えられる。曜日変動には, 家庭ごとに固有な一週間の生活パターンが表われている。一方, プラスチック, 金属, ガラスは排出されない日も多く, 対数正規的な排出分布を示す。モニター間の排出量の違いは厨芥が最も大きく, 生活スタイルの差を反映している。
著者
古角 雅行
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.46-59, 1994
被引用文献数
13 1

ごみ焼却炉から排出される飛灰の処分方法として, 厚生大臣が指定した4つの方法に関し調査検討を行った。これらの方式は, 主たる目的である重金属の溶出防止についてはほぼ同等の性能を有するものの, 処理物の長期安定性, 減容化, ダイオキシン類の除去, さらには資源化の可能性について考慮した場合, 溶融固化が唯一対応可能な技術と言える。この溶融固化法は, これらの利点を有する一方において, 実用化に当たっては溶融飛灰や排ガスの処理さらには経済性に関し, 多くの課題が残されていることも事実である。<BR>調査の進展に伴い, 残された課題の一部について解決の兆しが見えつつある。しかし, 焼却灰との混合処理の可能性, 分散処理か集中処理かの選択, 広域処理や廃棄物処理センターとの関連性に加えて, 公害対策設備の再構築等々, 今後の中間処理の有り方を総合的に見直す必要性が問われている。
著者
井口 博
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.391-392, 1999-11-30

1997年4月, デポジット制度の法制化をめざし, 主婦連, 地婦連, 生活学校, 日消連などの消費者団体の代表, 市民, 学者が呼びかけ人となってデポジット法制定全国ネットワーク (デポネット) が設立された。デポネットの大きな特色は, デポジット法を, 議員立法で実現しようとするところにある。これまで国会議員との懇談会, 研究会などで法制化への準備作業が進められている。また地方自治体の議会からデポジット法制定を求める意見書が数多く採択されている。<BR>最近の循環経済法の制定や拡大生産者責任の議論の中でデポジット法をどのように組み込んでいくかがこれからの課題である。
著者
加藤 正嗣
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.161-167, 2002-05-31
被引用文献数
1 2

20世紀最後の2年間で, 名古屋市民はごみ量を23%, 埋立量を47%削減した。次期最終処分場計画の断念を契機に, ごみ非常事態宣言, そして容器包装リサイクルに取り組んだ成果だ。文字通りの背水の陣で, 市は矢継ぎ早に新ルールを提起した。市民は, 一方的となりがちな進め方に不満を持ちつつも, 危機感を共有したがゆえに積極的に協力した。「成功させなくては」という市民の思いが強かった分だけ, 容器包装リサイクル法の不備による混乱も大きかった。われわれも「苦情こそ最大の情報源」と受け止め, 不行き届きながらも誠意をもって臨んだ。真剣なぶつかり合いの中で, 市民と市の距離は縮まった。成果を踏まえ, (1) 分別・リサイクルから発生抑制へ, (2) 本音で持続させる取り組みへそのための (3) 率直でオープンなごみ行政 (市民と行政の合意形成) , (4) 市民相互の合意形成, (5) 市民と事業者の合意形成という課題と, 正面から向き合うべき段階に入った。
著者
田中 信寿 松藤 敏彦
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.107-115, 1993
被引用文献数
5 7

廃棄物埋立層内における不飽和水分移動は埋立地内の移動現象を解明するための基本的研究課題であるが, まだ研究は進んでいない。埋立層内の水分移動現象にも土壌層内で使用される不飽和水分移動理論が適用されると思われる。そこで中粒砂を対照として焼却灰と模擬ごみを用いてそれらの充填層の不飽和水分移動パラメータ (マトリック吸引圧と体積含水率, および不飽和透水係数と体積含水率の関係) を実測した。<BR>同じ充填層を用いて, ステップ状の降雨開始や停止実験, およびランダムなパルス降雨実験の流出水量経時変化を実測し, 廃棄物層の不飽和水分移動の特徴を実験的に明らかにすると共に, 前述した特性パラメータをRichards式に代入して流出水量変化を模擬し, 日数単位で見ようとするようなタイムスケールでは, この特性パラメータおよびRichards式は有効であることを示した。
著者
酒井 伸一
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.322-335, 1997-05-31
被引用文献数
6 4

残留性, 生物蓄積性, 揮散移動性, 毒性を有する残留性有機汚染物質 (Persistent Organic Pollutants) に対して, グローバルアクションが求められつつある。POPsのうち, 非意図的副生成物の代表例であるダイオキシン類について, その発生源や環境動態などの問題の所在を要約しつつ, 1997年1月に公表されたごみ処理対策に係る新ガイドラインの論点について述べた。今回の新ガイドラインの特徴は, (1) ダイオキシン類発生抑制のためには高度技術適用とすべきであること, (2) 連続炉への転換やRDF化施設などシステム対応の重要性が示されたこと, (3) 高度廃ガス処理とともに残渣対策によりダイオキシン類の環境蓄積回避に向けた社会コントロールユニットとしての機能が期待されていること, にある。とくに, 3点目は排ガスのみでなく, 処理残渣に含有されるダイオキシン類を含めたダイオキシン類排出総量をごみ1tonあたり5μgTEQ以下とすることが将来的な目標とされた。この目標は, ごみとしてはすでに50μg TEQ/ごみton程度のダイオキシン投入負荷を有しており, これをごみ処理施設において分解低減化できるようなシステムに変革することを意味する。ダイオキシン類の環境移動と産業社会の相互関係を意識したコントロール戦略としては, 個々の発生源対策である発生抑制とともに, リサイクル循環系との協調コントロール, および環境サイクルコントロールが重要である。
著者
春風 敏之
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.373-379, 1995-09-30
被引用文献数
2

1995年1月17日早朝, 兵庫県南部を予想もしなかった地震が襲い2, 000万tonにも及ぶ災害廃棄物が発生した。<BR>われわれは, その廃棄物を概算で65.5%リサイクルし, 残りを焼却, 埋立するという対策を打ち出し, 1997年3月完了を目指して取り組んでいる。
著者
劉 庭秀
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.87-95, 2010
被引用文献数
1

近年,世界各国では拡大生産者責任を原則にリサイクル制度を整備している。たとえば,日本は,2005年に自動車リサイクル法を施行し,韓国でも2009年から生産者責任を強く求める自動車リサイクル制度を導入した。特に韓国では逆有償現象が起これば,自動車メーカーが使用済み自動車の無償回収を行うこととなっており,エアバッグ,フロンガス,ASR (Automobile Shredder Residue) がリサイクル対象である日本に比べて,非常に厳しいシステムである。しかしながら,インフラ整備の遅れと既存のリサイクル現場における情報管理の困難により,スムーズに動き出しているとはいえない。<br>広い意味で,日本と韓国の自動車リサイクル制度は,アジア諸国に様々な影響を与えた。たとえば,中国は,2010年に日本と韓国の制度を参考し,独自の自動車リサイクル制度を構築する予定である。既存の「自動車部品回復に関する技術的政策」は,自動車メーカー,解体業者,再資源化業者の活動を促すことが難しく,円滑に運用されていない状況である。また,中国と日本の間には,環境意識,自動車設計,廃棄物の減量,中古部品,再製造およびリサイクル技術のレベルに大きな差がある。さらに,地域間の様々な格差を埋めるためには,これらを考慮した政策づくりとインセンティブを与えることによって,使用済み自動車の再資源化を誘導し,促していくことが重要である。使用済み自動車の問題はアジアの差し迫った問題であり,アジアだけではなく,グローバルな視点で,パートナーシップと協力体制を構築していく必要がある。
著者
朝見 行弘
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.96-103, 1992

1985年7月25日, EC閣僚理事会は, 製造物責任の無過失責任化を定める規定の制定を加盟国に義務づける指令を採択した。そして, このEC指令の採択をきっかけとして, 製造物責任の無過失責任化は, まさに世界的な潮流となったのである。本来, 製造物責任とは, 欠陥製造物の使用によって消費者が被害を被った場合において, その製造者などが被害者に対して負担する賠償責任のことを意味している。しかし, 製造物による消費者の被害は, 製造物の使用にとどまらず, 製造物の廃棄によっても発生するものといわなければならない。すなわち, 製造物責任の問題は, 製造物の使用に伴う消費者の危険のみならず, 製造物の廃棄に伴う消費者の危険に対する賠償責任へと発展する可能性を有しているのである。そこで, 本稿においては, 製造物責任をめぐる無過失責任化の国際的動向を概観するとともに, 製造物の廃棄に伴う製造者の賠償責任のあり方について検討する。
著者
橋本 實
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.201-206, 1991

埼玉県の廃棄物は, 近年急激に増加し, その種類も多様化するなど, 適正処理に困難をきたしている。特に, 本県の場合, 首都圏の内陸県という立地性から, 中間処理施設地や最終処分場の確保が年々困難になってきている。<BR>そこで, これらの現状を踏まえ, 本県では, 減量化対策としてのリサイクルの推進と最終処分場確保策としての広域処理を2本柱として, 次のとおり廃棄物対策に取り組んでいる。<BR>(1) リサイクルの推進策は, (1) 排出された「廃棄物」を廃棄物としない対策, (2) 廃棄物そのものが出されないようにする対策を実施していく。<BR>(2) 県内広域処理対策は, 埼玉県環境整備センター, 第2広域処分場の建設についての対策を講じることとし, さらに, 都県域を越える広域処理の必要性を認識し, 廃棄物対策を講じていく。
著者
吉田 友美
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 = Journal of the Japan Society of Material Cycles and Waste Management (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.332-341, 2009-09-25
被引用文献数
1

本研究では,紙パックリサイクル行動の社会的便益を,個人トラベルコスト法 (ITCM) を用いて推計するとともに,人々が自発的に紙パックリサイクル行動を行う要因について,カウントデータモデルを用いて分析した。結果として,人々のリサイクル行動の頻度は,社会的責任感の大きさ,社会規範の高さ,紙パック回収箱までの移動コストによって決まり,女性のほうが男性よりもリサイクル行動を行う傾向にあることがわかった。これにより,環境配慮に要する費用を削減することで,人々の行動をより環境配慮型のものへと導く可能性を示すことができた。また,紙パックを1kgリサイクルすることによる消費者余剰は,234.79円であることがわかった。