著者
石田 裕美 菊池 正一
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.139-145, 1991
被引用文献数
1

成人女子8人 (21~25歳) を対象に, 強制選択3滴法と一対比較強制選択全口腔法を用いて, 塩化ナトリウム水溶液の検知閾値と認知閾値の測定を行い, 測定方法間の比較及び閾値の時刻による変動を検討した。<br>1) 滴下法による測定の幾何平均値 (標準偏差) は, 検知閾値10.3(2.8)mmol/l, 認知閾値28.6(1.9)mmol/l, 全口腔法によるものは, 検知閾値4.9(2.5)mmol/l, 認知閾値16.0(1.7)mmol/lとなり, 両閾値とも全口腔法のほうが有意に低値を示した。<br>2) 滴下法, 全口腔法ともに閾値の時刻による変動は認められなかった。<br>3) 閾値の個人差が認められ, 測定方法間の Spearman の順位相関係数は, 検知閾値<i>r<sub>s</sub></i>=0.92(<i>p</i><0.01), 認知閾値<i>r<sub>s</sub></i>=0.90(<i>p</i><0.01)と有意であった。また測定方法間に, 検知閾値, 認知閾値共通の回帰式<i>y</i>=1.0<i>x</i>-0.3が得られた (<i>x</i>, 滴下法; <i>y</i>, 全口腔法, ともに対数変換値)。<br>4) 方法別にみた両閾値の変動係数に有意差は認められなかった。
著者
渡辺 シゲ
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.80-85, 1972

Surveys on relation of dining habit to General health condition were carried out by staffs of Kawasaki Health Center at three different times in 1970. Subjects of the enquêtes were workers of a department-store in Kawasaki City. This report showed a result of 794 women working in the department-store.<br>Over half of the women were under 25 years old. It was considered that the nutritional intake of the subjects in a day was not good according to the content of diet, especially in the group of taking no breakfast. One third of all subjects had habits of two meals a day without breakfast. It was found that 2-meal-group had more complaints of subjective symptoms and fatigue after standing work as sellers than 3-meal-group. And 2-meal-group took rather small kinds of diet although they answered that they took diet with sufficient consideration about health. Therefore it was not thought that they had a sufficient knowledge of nutrition.
著者
力石 サダ 志賀 康造 金子 精一
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.377-382, 1996

自然農法と慣行農法によって栽培した米の品質について, 官能検査と機器分析によって検討し, 次の結果を得た。<BR>1) 官能検査結果は, 自然農法米は香りを除き, 外観, 味, 粘りの評点が慣行農法米を上回り, おいしい米と立証できた。<BR>2) 機器分析結果では, 自然農法米はアミロース, たんぱく質の値が小さく, このことは粘りのある食味のよい米であることを示していた。
著者
高橋 徹三 松浦 義行 大沢 清二 深谷 澄 仲原 弘司 増子 和子 岩井 瑞枝
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.21-29, 1983
被引用文献数
1

茨城県における児童, 生徒の食物摂取の実態を把握し, 栄養指導の基礎資料を得ることを目的として, 昭和52年5月と11月の2回, 小学校89校, 中学校30校の児童・生徒計7,961名を対象に, 金, 土, 日曜日の3日間食事調査を実施し, 合わせて食品摂取と体位, 体力との関連についても検討した。牛乳, 乳製品, 緑黄色野菜に関する結果は次のとおりである。<br>(1) 家庭における1人1日当たり摂取量を5月, 11月のそれぞれ土, 日曜日の計4日の平均値でみると, 牛乳は児童55.8g, 生徒73.3g, 乳製品は児童4.9g, 生徒5.6g, 緑黄色野菜は児童23.4g, 生徒23.0gであった。<br>(2) 学校給食 (金曜日昼) を除く3日間の家庭食についてみてみる。<br>1) 食事別では, 牛乳は間食で最も多くとられ, 夕食で最も少なく, 緑黄色野菜は夕食で最も多く, 間食で最も少なかった。乳製品は間食で2/3が占められ, 朝, 昼, 夕食の摂取量は極めて少量であった。<br>2) 生徒と児童の比較では, 牛乳は生徒のほうが摂取量が多かったが, 乳製品, 緑黄色野菜は有意差がなかった。<br>3) 男子と女子の比較では, 牛乳は男子のほうが, 乳製品は女子のほうが摂取量が多かった。緑黄色野菜は有意差がなかった。<br>4) 5月と11月の比較では, 緑黄色野菜は11月のほうが多く摂取されていた。牛乳, 乳製品は有意差がなかった。<br>5) 牛乳, 乳製品および緑黄色野菜の摂取量にかなりの地域差がみられた。<br>6)摂取量の分布をみると, 3日間家庭で全く摂取しなかったものの割合は, 牛乳は児童53.7%, 生徒45.6%, 乳製品は児童79.6%, 生徒77.8%, 緑黄色野菜は児童16.7%, 生徒13.7%であった (5月)。<br>7) 各食品群の種類別では, 乳製品はヨーグルト類とアイスクリームが, 緑黄色野菜はにんじん, ほうれん草, ピーマンが約2/3を占めていた。<br>(3) 学校給食は家庭での昼 (土, 日曜日の平均) に比べ, 摂取量は, 牛乳は児童16.3倍, 生徒13.6倍, 乳製品は児童14.8倍, 生徒15.1倍, 緑黄色野菜は児童, 生徒ともに3.6倍であり, 金曜日の1日総摂取量のうち学校給食に由来する摂取量の割合は, 牛乳は児童79.0%, 生徒72.6%, 乳製品は児童62.5%, 生徒73.2%, 緑黄色野菜は児童41.8%, 生徒42.3%であった (5月, 11月の平均)。<br>(4) 牛乳, 乳製品, 緑黄色野菜の摂取量はそれぞれ独立して体位, 体力に関連するというよりはむしろこれらの総合的な摂取状況が他の因子とともに体位, 体力に影響することが示唆された。
著者
Nobuo Yoshiike Fumi Hayashi
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
The Japanese Journal of Nutrition and Dietetics (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-11, 2006-02-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
25
被引用文献数
8 8

「健康日本21」において解決すべき課題として挙げられている肥満, 糖尿病といった生活習慣病の予防の観点から, 2000年に当時の文部省・厚生省・農林水産省により策定された「食生活指針」が示す10の望ましい食生活のあり方について, 具体的に「何をどれだけ食べたらよいか」を示す視覚的媒体「食事バランスガイド」が, 2005年7月に厚生労働省・農林水産省より発表された。一方, 深刻な肥満問題に取り組む米国では, 科学的根拠に基づき5年ぶりに改定された2005年版の“アメリカ人のための食生活指針”の内容を受けて, 具体的な行動変容を促すための教育ツールであるフードガイドを十数年ぶりに改定し, 2005年4月に“マイピラミッド”を発表した。従来のフードガイドよりも, より個人を意識した内容となり, インターネットを介した情報発信やガイダンスを行っている。それぞれが国民に伝えるためにとったアプローチ手法は対照的ではあるが, シンプルに相手の興味を引き, さらに長続きできるような行動変容を支援していくことを目指している点は同じである。栄養教育に従事する管理栄養士等においては, それぞれの特徴や理論的背景等を理解し, 実践の場でぜひ柔軟に活用していただきたい。
著者
新居 昭 小笠原 親子 鈴木 慎次郎
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.95-106, 1971

A total of 56 obese persons took a high fat-high protein diet containing much of vegetable oil, animal protein and vegetables, only restricted in carbohydrate and total calories less than 1, 600 calories per day. The total calories derived from fat, protein and carbohydrate were 50%, 25% and 25% respectively.<br>Almost all the subjects could reduce their body weight by 1-7kg during one month without feeling much hunger and discomfort.
著者
岡崎 光子 矢崎 美智子 豊川 裕之
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.219-226, 1974

Not few investigators have story interest on the relation between food intake and mortality. From the viewpoint of Dr. Kondo, we have also been motivated to survey Yonaguni Island of the Ryukyu Islands.<br>Dr. Kondo suggested that food consumption in this island would be characteristic and biased to the large intake of fish and meat.<br>But nobody can exactly describe the status of food in Yonaguni Island because no dietary survey on its inhabitants has been conducted.<br>We had a happy chance to do make a dietary survey there in October 1973, in jointwork of the Yaeyama Health Center.<br>Subjects; The subjects of this survey were fifty eight families selected at random from three hamlets (Sonai, Kubra and Hikawa)<br>Results; The results are shown below.<br>1. The intake of calories, protein, fat and vitamin C was estimated to be higher than the average of the Japanese National Nutrition Survey of 1971.<br>On the other hand calcium and vitamin B<sub>2</sub> was estimated as fairly lower than national levels.<br>2. In comparison with those surveys, the amount of several food items; fish, meat, green and yellow vegetables in Yonaguni are estimated to be higher than the National Level and Okinawa Island.<br>3. Food intake patterns differ among the three hamlets, which compose the community of an isolated island.<br>4. On the other hand, there is little difference in food preparation among them.<br>5. From above it may be said that the dietary intake of the hamlets is in unity, whereas food preparation is definite as the whole island.
著者
松平 敏子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.114-120, 1974

1970年7月~10月に, 大阪府下の4病院において, 入院および外来の糖尿病患者男32例 (40歳以上23例), 女39例 (40歳以上34例) に対し面接, 実態調査用紙に記入させ, 次の結果を得た。<br>(1) 学歴は現在の義務教育以上を終えた者が男59%, 女38%で, 女の48%は旧制の義務教育である小学校卒であった。<br>(2) 労作強度はふつうの労作以下が男91%, 女92%であった。<br>(3) 既往最大体重が標準体重より20%以上の肥満者は男44%, 女56%であった。<br>(4) 遺伝関係を持つ者は男31%, 女44%であった。<br>(5) 標準体重より11%以上の肥満者のうち, 遺伝関係のある者は35%であるが, 肥満でない者のうちには55%に遺伝が認められた。<br>(6) 受診の動機となった糖尿病症状は, 煩渇, 易疲労性, 多飲, 倦怠, 体重減少であった。また, 1人平均4~5種の自覚症状を持っていた。<br>(7) 合併症は男50%, 女44%が持ち, 硬化性血管障害が20%で最も多く, 次が肝疾患であった。<br>(8) 病名判明以前の食生活は穀類を1日4209以上摂取している者が男75%, 女67%であった。肉類・牛乳・緑黄野菜の摂取回数も一般に少なく, 栄養的にバランス不良の傾向がみられた。<br>(9) 食事療法についての質問10題に対し, 入院患者の全問正解率は39%であったが, 外来患者は17%で劣っていた。また男より女が劣っていた。義務教育以上の教育を受けた者の正解率44%に比し, 義務教育までの者は16%で劣っていた。<br>以上の調査結果により, 病名判明前の患者の個々の栄養摂取状態のアンパランスを知り, それと同時に糖尿病の早期症状を一般に理解させ早期治療させたいこと, および糖尿病教室の栄養指導法の改善すなわち対象者にもよるが平易に具体的に反復指導しなければならないことを痛感した。
著者
八杉 悦子 中西 和子 梶本 雅俊 大島 美恵子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.361-368, 1996

神奈川県横浜市在住中国人の男性41人 (平均年齢58.2±19.1歳), 女性48人 (50.4±15.9歳) の血清中の脂質 (総コレステロール, HDL-コレステロール, トリグリセリド), リポプロテイン (a), 脂肪酸を測定した。<BR>横浜市在住中国人の実測値と, 北京, 台北, シンガポール在住中国人の血清脂質量 (文献値) を比較すると, 居住地により差がみられた。横浜市在住中国人の総コレステロール量は, 北京在住中国人 (男女) や台北 (女性) より高く, シンガポール (男女) より低かった。横浜市在住中国人のリポプロテイン (a) 濃度分布は, 文献値による北京, 台北, シンガポール在住中国人と類似しており, 居住地による違いはなかった。横浜市在住中国人の血清脂肪酸組成については, <I>n</I>-6系多価不飽和脂肪酸であるリノール酸が最も多く含まれ, 次いでパルミチン酸, オレイン酸であった。特にリノール酸が34.7±4.3%(男女の平均値) と日本人と比較して非常に多いのが特徴であった。また, S/M/P比は1/0.73/1.6, <I>n</I>-6/<I>n</I>-3比は6.7±2.3で, <I>n</I>-3系の多価不飽和脂肪酸を多く含む日本人の血清とは異なっていた。
著者
福岡 秀興
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
榮養學雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.3-7, 2010-02-01
被引用文献数
3 4

日本では生活習慣病(成人病)が著しく増加している。成人病(生活習慣病)は遺伝素因〈遺伝子多型〉と生活習慣の相互作用により生ずるといわれているが,特殊な遺伝子多型に由来する成人病はあってもこの考え方ですべての発症は説明出来ない。ここに第3の発症説として「受精時,胎芽期,胎児期または乳幼児期に,低栄養又は過栄養の環境に暴露されると,成人病の(遺伝)素因が形成され,その後の生活習慣の負荷により成人病が発症する。」という「成人病胎児期発症(起源)説 FOAD:Fetal Origins of Adult Disease」が注目されており,疫学的にこの説はほぼ正しいと認められるに至っている。その分子機序には3つあり,ひとつは低栄養で生ずる腎臓ネフロンや膵臓β細胞の減少等の解剖学的変化である。ついで低栄養・過量栄養環境に対応して生ずる代謝系の変化即ち遺伝子発現制御系(クロマチン構造変化)の変化がある。この変化は出生後も持続し,胎内と出生後環境のギャップに適応できず,やがて疾病を発症する。<br>日本で出生体重はこの 20年間に男女共に 200g以上減少し,1980年代以降に,低出生体重児頻度(%)は増加し続け,2007年は9.70%にまで達している。エネルギーや葉酸等を十分摂取している妊婦むしろ少なく,全般的に栄養は不足している。ホモシステイン高値例も多い。胎生期のエピジェネティク変化で生ずる永続的な変化を起こす上で重要なのは,DNAメチル化度の変化である。それにはメチル基の代謝回転(one carbonmetabolism)が大きく影響する。この代謝系には葉酸,ビタミンB12,ビタミンB6,亜鉛,一部アミノ酸等が関与している。二分脊椎症の多発傾向に見るごとく葉酸の不足した妊婦が多い事も想像され,胎児の遺伝子発現系の望ましくない変化が生じている可能性がある。妊婦栄養を今こそ見直す必要がある。妊娠前の栄養,妊娠中の栄養管理,授乳期の母乳哺育指導等が重要であり,疾病・健康・寿命がこの時期の栄養環境で決る事が理解され,次世代の健康を確保する重要な考え方として広まる事が期待される。<br>(オンラインのみ掲載)
著者
原田 まつ子 加藤 栄子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.41-47, 1995

糖, Ca, Pの含有量の多いと思われる食品の摂取頻度と身体的・精神的健康状態の関連を明らかにするため, 中学生264人を対象に調査研究をし, 次の結果を得た。<br>1) チョコレート及びチョコレート菓子やコーヒー・紅茶などの摂取頻度から糖の摂取傾向が高いことが, 特に女子において認められた。牛乳, チーズなどのCa含有量の多い食品の摂取頻度は全体では低く, 女子は男子よりも低い。インスタントラーメン類は女子よりも男子の摂取頻度が高い。<br>2) 全体的傾向として, 身体的自覚症状は, 眠い, 授業中あくびがでる, 頭がおもいなど疲労感を中心にした訴えが多く, また, 精神的自覚症状は, 感情的になりやすい, いらいらするなどの訴えが多い。<br>3) 睡眠を8時間以上とっている女子は, コーヒー・紅茶 (33.3%) の摂取頻度が高く,"全身がだるい"(66.7%),"足がだるい"(55.6%),"かぜをひくと寝込む"(77.8%) 訴えが多い。朝食の欠食者は, 男子でインスタントラーメン類の摂取頻度が高く (42.1%),"気が散る"(73.7%) 訴えが多い。<br>4) 摂取頻度が高い食品と自覚症状との関係をみると,"ジュース"と"物事に熱心になれない"(男子),"清涼飲料"と"気が散る"(男子),"コーヒー・紅茶を飲む時の砂糖を入れる量"(男子) あるいは"チョコレートまたはチョコレート菓子"(女子) と"冬になるとよくかぜをひく","ハンバーガー"と"かぜをひくとせきが続いて治りにくい"(男子),"インスタントラーメン類"と"物事に熱心になれない"(男子),"ちくわ・かまぼこ・はんぺん類"と"頭がおもい"(女子) または"頭がぼんやりする"(男子) などの訴えがみられ, 一方,"小魚・ひじき・わかめ"の摂取頻度の高い生徒は"息苦しい"(男子) などの訴えが少ない。
著者
小川 久恵 松本 仲子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.183-189, 1982

ポテトサラダ料理などのためのゆで, 蒸し調理における馬鈴薯の水さらしの効果をみるために, さらし時間を0, 10, 30, 60, 150分に設定し, 馬鈴薯の品種, 調理法をかえて試験した。さらし水中のK, Naの測定, 加熱後の馬鈴薯のテクスチュロメーターによるテクスチャーの測定および官能検査を行って相異を分散分析により検討し次の結果を得た。<br>1) さらし水中の馬鈴薯から溶出するK, Na量は, さらし時間の経過に伴い増加する傾向を示すが, さらし時間の長短による有意な差は認められなかった。<br>2) テクスチュロメーターによる硬さ, 凝集性, もろさの測定結果は, さらし時間の長短による有意な差は認められなかった。<br>3) 官能検査における外観, 香り, あくっぽい味, ごりごり, ほくほく, べたつきといったテクスチャーおよび総合評価のいずれの項目についても水さらし時間の長短による有意な差は認められなかった。以上のことから, ポテトサラダ料理などのためのゆで, 蒸し調理においては, 馬鈴薯を水さらしする必要はないということができる。
著者
岡崎 光子 柳沼 裕子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.61-69, 2001
被引用文献数
3

食物の噛みごたえ量や食べ方, 保護者の食事づくりに対する態度などが, 幼児の咀嚼能力や歯の擦り減りとどのように関連しているかについて検討した。<br>1) 歯の擦り減りが観察された幼児は22.8%であり, むし歯や不正咬合が観察された幼児の割合より多かった。<br>2) 歯の擦り減りは4歳児より5歳児, そして1~2歳の頃にタオルしゃぶり癖のあった幼児に多かった。<br>3) 擦り減りは, 口腔機能の発達を考慮して離乳食を与えられたり, 現在, 手づくりの食事を心がけられている幼児に多かった。<br>4) 擦り減りは, 外食の多い幼児に少なかった。<br>5) 歯の擦り減りあり群の幼児の咬合力は, 擦り減りなし群に比較し, 大きかった。<br>6) 外食の少ない幼児, 市販食品の使用頻度の少ない幼児の咬合力は, そのような状況にない幼児に比較し大きかった。<br>7) 咬合力に影響を及ぼす食品として, いか (煮), 豚ヒレ肉, 油揚げ, ほうれん草が選出された。<br>8) 咬合力は, 食物繊維摂取量と有意な相関関係がみられた。<br>9) 母親の離乳食の与え方や食事づくり, 食事の食べさせ方に関する態度と食物繊維摂取量に関連がみられた。
著者
新保 みさ 赤松 利恵 山本 久美子 玉浦 有紀 武見 ゆかり
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.244-252, 2012
被引用文献数
2

【目的】成人を対象とした体重管理の誘惑場面における対策について,ゲームを通して学習できるカード教材「ベストアドバイザーFORダイエット」を開発した。本稿では,カード教材の解説を行うとともに,保健医療従事者によるカード教材の評価を報告する。<br>【方法】2011年7月~10月に開催された市町村の保健医療従事者向けの研修会に参加した66名を対象にカード教材のゲーム式の使い方を実施した。ゲーム終了後に,質問紙を用いてゲームの感想や遊び方,体重管理の教材としての評価,属性をたずねた。また,質問紙の最後に意見や感想を自由記述で記載する欄を設けた。<br>【結果】解析対象者は62名(女性:57名,91.9%)だった。「ゲームは楽しかったですか」,「体重管理の教材として役立つと思いますか」という問いに対してそれぞれ57名(91.9%),49名(79.0%)が「とてもそう思う/そう思う」と回答した。自由記述では,指導者向け</TS><TS NAME="抄録">の教材として利用したいという意見があがった。一方で,教材や遊び方について,ルールや内容が難しいなどの改善すべき点もあがった。<br>【結論】体重管理の誘惑場面における対策に関する学習教材として,肯定的な意見が得られた。あげられた改善点をもとに,教材の見直しを行い,今後は一般成人を対象に実行可能性および教育効果について,検討をする必要がある。
著者
君羅 満 赤羽 正之 岸田 典子 沖増 哲
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.295-312, 1983

我々と生活環境を著しく異にする海外移住者の食生活を調査することによって, 食生活の変容プロセスを明らかにしようとする目的で, ブラジルに居住する日系人についての調査を計画し, 第1回目を1978年に南部の Rio Grande de Soul 州で実施した。<br>今回は, 1981年 São Paulo 州ジャカレイ地域の日系移住地である, サクラタカモリ, イタペチ, パラティ・ド・メイオに居住する167世帯を対象として実施した。<br>生活環境, 身体状況および食生活状況調査のうち, 使用食品数および, 入手方法などに視点をあて, 主として世代別・地区別の立場から分析, 検討し, その実態について考察した結果を要約すると次のとおりである。<br>1) 各世帯における1日の使用食品数は, 30~39が最も高い比率を示した。<br>2) 世代間による使用食品数の有意差はみられなかった。<br>3) 各地区間の朝・昼・夕食相互の使用食品数には有意差は認められなかった。<br>4) 昼・夕食の食品数は朝食に比べて, 著しく多く, 食事のウェートが昼・夕食におかれていることを示した。<br>5) 朝食で使用率の高い食品は, 砂糖・コーヒー・パンで, これはブラジルでの朝食の特徴を示す。<br>6) 昼・夕食で使用率の高い食品, また, 低い食品には, ほぼ類似の食品が出現している。このことは, 各世帯間に共通の食パターンの存在しているものと思われた。<br>7) 地区別・朝昼夕食別の食品使用率からみた出現順位間には, いずれも高い正相関関係が認められた。<br>8)"毎日消費する"食品で, I世では主として日本的食品に, II世ではブラジル的食品において有意に高かった。<br>9) 食品の入手状況については, 農業地域でありながら, 一般に購入食品が多く, しかも, 一部の食品を除いて購入率の高い傾向がみられた。これは, 各移住地がジャカレイ市に隣接し, 大市場をもつサンパウロ市の衛星都市圏内に位置していること, 換金作物を中心とした経営, そして, 農業経営がある程度安定し, 経済的にゆとりのある世帯が多いためと思われた。<br>10) 日本の農業地域に比べて, パン・砂糖・油脂・その他の野菜・肉類において摂取量が高く, 味噌・豆類・魚介類において低かった。
著者
小柳津 周
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.307-315, 1986 (Released:2010-04-30)
参考文献数
17
被引用文献数
2932 4930

グルコサミン塩酸塩を遊離形にし, 37℃インキュベーターで0日から30日間放置褐変した褐変グルコサミン (BGA) の抗酸化性, 還元力, 褐変度, アミノ糖の残存量, pH, 水分量, 全窒素量を, 放置0日から5日間は毎日, 以後5日間の間隔で30日間測定した。一方, 0, 15, 30日間放置褐変したBGAをセファデックスG-15で分画し, 抗酸化性, 還元力, 褐変度, pHについて測定して, 次のような結果を得た。1) 遊離グルコサミンは, 3日間放置後より白色粉末状から褐色ペースト状に急激な変化を示した。2) 最も強い抗酸化性は, 25日間と30日間放置褐変したBGAで認められた。3) BGAのリノール酸に対する抗酸化性は, 褐変度と深い関係を示した。4) 長く放置褐変したBGAは, 分子量が比較的高い領域の褐変生成物質と, 比較的低い領域の褐変生成物質に分画された。5) 長く放置褐変したBGAでは, 高分子の褐変生成物質のフラクションと, 低分子の褐変生成物質のフラクションの中間フラクションに抗酸化性を認めた。