著者
佐藤 志彦 末木 啓介 笹 公和 国分 宏城 足立 光司 五十嵐 康人
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

2011年3月11日に発生した東日本大震災に起因する、福島第一原発事故では環境中に大量の放射性物質が放出した。地表面に沈着した放射性物質のうち、半減期が約30年であるセシウム137の除去技術の確立は、除染に伴い発生する土壌の減容化のためにも不可欠である。本研究では2012年10月に福島県本宮市で採取した土壌に対し、強酸リーチングを含む連続化学抽出を行い、残渣中に含まれる放射性物質の存在形態を把握することで、土壌中に存在する放射性セシウムに対する基礎情報を取得した。未処理の土壌に含まれる137Csは2011年3月11日時点で8 kBq/kgだった。水溶性成分、陽イオン交換成分、有機物付着成分、強酸抽出成分を順番に抽出し、最終的に約50%の放射性セシウムが残留した。存在形態を把握するため残渣土壌のオートラジオグラフィーを取得したところ、無数のスポット状汚染が見られた。このスポット汚染を直接取り出し、透過型電子顕微鏡で観察すると球状の塊で、さらにエネルギー分散型X線分析により、鉄、亜鉛、ケイ素、酸素さらにセシウムが元素として検出された。これらの特徴は茨城県つくば市で事故直後に観測されたセシウム含有粒子(Adachi et al., 2013)に類似しており、つくば市で見つかったCs含有粒子が広範囲に分析していると考えられる。また粒子全体に占めるケイ素と酸素の割合が大きく、この特徴はSatou et al.,(2015)およびYamaguchi et al.,(2016)とも類似している。ケイ酸塩は一般的に耐酸性を示すため、同様の現象が放射性粒子にも見られたものと考えられる。
著者
Jonny Wu John Suppe Renqu Lu Ravi V.S. Kanda
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

Seismic tomography has revealed enigmatic stagnant slab anomalies under Japan, Korea and NE China (i.e. the Japan slab). The stagnant slabs flatten near the mantle transition zone around ~410 to 660 km depths and extend >2000 km westward from the NW Pacific subduction zones. The location of the outboard stagnant slabs far inland under Eurasia cannot be explained by slab rollback alone and pose a challenge to our current understanding of subducted slab dynamics, in which slabs sink vertically over time with minimal lateral motion.In this study, we use new and recently published 3D slab mapping, slab unfolding and plate reconstruction constraints (Wu et al., 2016, JGR) from MITP08 and GAP_P4 global tomography (Li et al., 2008, G3; Fukao et al., 2013, JGR). We show that the Japan stagnant slabs are best reconstructed as Pacific slabs that subducted in the Cenozoic after Pacific-Izanagi ridge subduction between 60 to 50 Ma. Mantle flow forward models reproduce our Japan slab reconstruction results (Seton et al., 2015, GRL). Our reconstruction implies the Japan slabs moved laterally westwards within the upper mantle and transition zone after subduction at near-plate tectonic rates (~2 cm/yr over 50 Ma), indicating a greater lateral mobility of slabs within the upper mantle and transition zone than previously recognized.Using our Japan slab subduction model, we re-examine the enigmatic Vityaz deep earthquakes under the Fiji Basin, which are widely thought to be a globally-unique case of seismicity within a foundered and detached slab. Our Tonga slab mapping shows the Vityaz earthquakes are actually part of a >2500 km-long mega-Wadati-Benioff zone of the northern Tonga stagnant slab. Our slab reconstruction suggests the northern Tonga slab moved laterally westward in a similar fashion to the Japan slabs, but at a faster rate of >5 cm/yr over 15 Ma within the upper ~660 km. Our results suggest that earthquakes can be produced thousands of kilometers away from a subduction zone from lateral movements of still-attached but mobile stagnant slabs within the uppermost ~660 km mantle.
著者
尾方 隆幸
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

地球惑星科学に関する教育内容は,教科間・科目間,また同一の教科内・科目内でも教科書間で用語や解説内容が異なっている場合がある。加えて,地球惑星科学の成果が適切に反映されていない内容も散見される。将来の地球惑星科学教育をよりよいものにするためには,日本における地球惑星科学と学校教育との関係を議論することが必要である。
著者
尾方 隆幸
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

日本のジオパークでは,地形学的事象,特に地形プロセス学的な事象が,適切に扱われていない事例がある。火山活動や地殻変動といった内的営力の解説は正確で充実していることが多いが,風化・侵食・運搬・堆積プロセスといった外的営力の解説が正確になされていることは少ない。また,現代の地形学では認めがたい古典的すぎる解説がなされている場合も散見される。それらの問題は,ジオパークに限らず,地形学のアウトリーチ全般に共通する可能性もあり,専門家は正しい知見の普及に努めなければならない。発表では,NHK総合「ブラタモリ」における,地すべり地形(#32沖縄・首里)および隆起準平原(#67奄美の森)を事例に,地形学的事象の解説手法について報告・議論したい。
著者
林 衛
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-05-19

2016年の熊本地震は,(1)近代以降の地震災害の経験,(2)地元の民間研究組織(NPO法人熊本自然災害研究会,第1回研究会は1992年11月27日開催)や地震カタログ,研究書類による知識の発掘と共有,(3)中央政府によるハザードマップ作成などの被害予想・警鐘,(4)熊本県や熊本市,益城町といった地方自治体による耐震化施策の進行の四つの蓄積があった地域で発生した。いわば想定される事態が蓄積にもとづく想定に沿って生じたにもかかわらず,(5)「まさか,熊本では」「前代未聞の「前震」」「余震経験則 通用せず」などと,蓄積されていたはずの内容が「想定外」だと語られている点で特徴的である。そこで本研究では,防災・減災の実現のため,上記(1)から(4)の蓄積と(5)の「想定外」の語られ方の内容を整理し,惨事伝承の困難性,すなわち,「災害は忘れた時分にくる」(寺田寅彦のことばとされる)原因をリスクコミュニケーションの観点から考察する。1889明治熊本地震では,1889年7月28日午後11時49分に本震(劇震と表示),8月3日午前2時18分に最大余震である劇震が再び発生。その間,5日あまりであった。21日間に300回足らず観測された余震分布は,二つの劇震による余震経験則に従った発生パターンを示している。1894年の「余震経験則」を発表した大森房吉ら同時代の地震学者たちも,明治熊本地震の事実を目の当たりにしていたことになる。1889年(明治22年)その年に市政誕生したばかりの熊本が,水害とその5日後が地震災害に襲われた。それを受け翌1890年に熊本にも気象台が開設されている。その翌1891年のM8級内陸直下地震(濃尾地震)を契機に震災予防調査会が設立されることになる。明治熊本地震は,近代の形成期に生じた直下地震であった(表俊一郎・久保寺章:都市直下地震 熊本地震から兵庫県南部地震まで,古今書院(1998))。1975熊本県北東部の地震では,1月22日13時40分(M5.5),1月23日23時19分(M6.1) と阿蘇地方での連発(前震→本震型)。3か月後の4月21日には大分県湯布院付近でM6.4の誘発地震が発生。『日本被害地震総覧 599-2012』(東京大学出版会(2013))では,見開きにちょうど三つの地震の震度分布図が並ぶ形で両県での地震被害とともに記録されている。南隣の鹿児島県で発生した1997年の鹿児島県北西部地震でも,3月26日(M6.5)と5月13日(M6.3)の連発が知られている。2000年6月8日の9時32分の熊本県熊本地方の地震(深さ10km,M4.8)では,嘉島町,富合町で震度5弱が記録され,熊本市,益城町など熊本県中部で住家一部破損等の被害が発生している(最大規模の余震はM3.9が3回)。「益城町建築物耐震改修計画」(2012年策定,2016年3月改訂)では,「熊本県には,上述した布田川・日奈久断層帯をはじめとする多くの活断層が県内を縦横断…今後30年の間に地震が発生する確率は0〜6%と推定…内閣府の「地震防災マップ作成技術資料」の記載されている「全国どこでも起こりうる直下の地震」(マグニチュード6.9)が益城町で発生した場合には最大震度5強~7となることが予測…福岡県など地震が少ないといわれてきた地域での大規模な地震が発生したことからも,速やかな地震対策の推進が望まれています」との認識のもと,2005度の中央防災会議報告を受け,住宅,特定建築物を2015年度までに90%耐震化する計画がうたわれている。ところが,連発型の地震発生があたかも珍しいことであるかのように,また,震度7の連続が被害をもたらした事実が震度7単独ならば安全であるかのように語られてしまっている。ここに,事実を直視しようとせず,惨事伝承を忌避しようとする「想定外」生成のしくみがみてとれる。2016熊本地震の前震→本震の二つの「震度7」が「小分け」されずに一発の「本震」として発生した場合は,現行計測震度では「震度7」1回と記録されるが,住宅倒壊は一気に進んだであろう。「本震」は就寝後の真夜中の発生であった。したがって,震度7「連発」はむしろ「不幸中の幸い」であったという視点も忘れてはならない。 誰のため何のために地球惑星科学が存在しているのか改めて問われる,科学コミュニケーションの問題でもある。
著者
谷口 宏充
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

はじめに2003年ごろ、中国や朝鮮からの連絡を受けて、白頭山で火山活動が活発化していることを知るようになった。国内外の協力を得て検討を進めたが、一つ気になることがあった。以前、869年の貞観地震と白頭山10世紀噴火との関連を耳にしたことが有る。無関係ではないと言うのだ。そのような中で3.11巨大地震が身近で発生した。そこで生まれたのは2002年~2005年の白頭山における火山活動と3.11巨大地震との関係、また、両者の過去はどうであったのかと言う疑問である。日本、中国、朝鮮やロシアなど、広大な東北アジアにおける地震や噴火などの時間的な関係に焦点をあてた研究は少ない。しかし宇佐美(1974)は日本と朝鮮半島における有感地震を古文書に基づいて整理し、弱いながら両者の間には相関があることを示唆した。その中で最も明瞭な1700年頃には日本、朝鮮や中国でも史上最大規模の地震や富士山・白頭山での噴火が発生していた。近年の白頭山噴火の歴史町田(1981)による10世紀噴火に関する研究以降、東北アジアの研究者たちによって古文書や年代測定に基づき近年の噴火年代が報告された。“10世紀噴火”の年代についてはウイグルマッチング法や湖底堆積物などから940年前後の値(奥野他、2010など)が報告されている。また中国における噴出物の14C年代測定(Chichagov et. al., 1989)や地質調査(中川他、2004)に基づき、10世紀噴火の前860年頃に噴火(9世紀噴火)があったことが示されている。この噴火の火山灰は北海道森町においても発見されている(中川他、2012)。また10世紀以降の活動を調べるため、古文書に基づき確実だと思われる噴火年代を選び出した。その結果、最近の噴火は1373年、1597年、1702年、1898年、1903年の5回である。これらの内、1373年噴火は山麓からの玄武岩マグマによるものである。他の4回は外来水が関与した可能性の高い山頂噴火で、その内、1597年は規模が大きいが、残りのより新しい3回は極めて小規模な噴火と判断した。日本の巨大地震と白頭山噴火活動との時代的相関先に示した5回の噴火の内、1898年から一連と判断される1903年を除いた1373年、1597年、1702年と1898年の4回の活動について、日本における最近接巨大地震との時代的相関の検討を行った。どれだけ時間的に近接しているかを見るため、地震と噴火との前後関係は軽視した。その結果、年代差(噴火年代-地震年代)の平均値は1.3年、標準偏差は7.2年であり、3σでの年代差は‐20.4年~22.9年となった。東アジアで懸念された近い将来の白頭山噴火については、“日本における巨大地震と白頭山噴火との歴史経緯”、“最近のマグマ蓄積”、“日本と同じ広域応力場の変化”に基づき、可能性はあると判断した。もし2011年東北地方太平洋沖地震に関連して噴火が発生するなら、それは3σの確率で1991年~2034年となる。現実には今までに発生していないので、残りの2034年までが99%とした。しかしこの判断は、2002年からのマグマ性流体上昇による異常をどう評価するかで異なる。過去4回のケースと同じ時間関係は成立していたが、マグマ量が少ないなどの理由で噴火未遂に終わった、と考えるべきかも知れない。もう少し量が多かったら、最近3回と同じ小規模噴火になっていたのではないだろうか。この時間関係を869年の貞観地震にも適用すると、貞観地震に対応する白頭山噴火の年代は849年~892年であり、今まであまり知られていなかった“9世紀噴火”の存在とも調和的であった。
著者
大内 啓樹 中谷 響 東山 翔平 寺西 裕紀 渡辺 太郎
雑誌
GISA & IAG'i 2023
巻号頁・発行日
2023-10-11

文章には,場所に関する膨大な情報が含まれる.こうした情報をうまく構造化し整理すれば,地理に関わる多様な応用へとつながる.その基盤技術として,場所を表す言語表現(場所参照表現)の抽出と地図データベースへの接続がある.本研究では,場所参照表現の抽出とOpenStreetMapへの接続を行うシステムを開発した.その解析精度の評価および応用可能性の調査結果を報告する.