著者
高木 秀雄 新井 宏嘉
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

ジオパークのストーリーとしてジオガイドが説明する時,複雑で難しいものの一つが地質構造発達史であろう.今回は下仁田ジオパークの構造発達史について,跡倉層に関する新しい情報も踏まえつつレビューし,ナップの移動を可能にした圧縮場をもたらしたテクトニックイベントにも触れたい.二重ナップの構成要素跡倉ナップ:御荷鉾緑色岩を基盤とする跡倉ナップを構成する地質体は跡倉層が大部分を占め,その他四ツ又山などに白亜紀前期花崗岩類・変成岩類が存在する.跡倉層の時代は以前より不明確で,アンモナイト等によりサントニアン階:Matsukawa and Obata, 2012)という報告がなされているが,近年ジオパークの化石発掘体験で得られたアンモナイトから,下部白亜系バレミアン階下部の可能性が指摘された(生野ほか,2016).また跡倉層を貫くとされている花崗岩類の角閃石K−Ar年代は112+/-3Ma(竹内・牧本,2003)という報告もある.一方,下仁田や寄居地域の跡倉層中の砕屑性ジルコンの最も若い年代は119+/-11Ma(中畑ほか, 2015)であるが,誤差を考慮するとその年代がバレミアン(129−125 Ma)であることを否定するものでもない.逆に,それより若い砕屑性ジルコンの年代が全く確認されていない.金勝山ナップ:跡倉ナップの上構造的上位に存在するナップで,ペルム紀の石英閃緑岩とホルンフェルスから構成され,下仁田では川井山,ふじ山に分布する.寄居地域や皆野町金沢地域にも同じ岩体があり,それらは御荷鉾緑色岩の上に直接乗る場合と,跡倉ナップを挟んでその上に乗る場合がある.関東山地におけるこのナップ境界露頭は,下仁田の大北野川でのみ認められる.対比と復元モデル ペルム紀の岩体は南部北上−黒瀬川帯に存在する花崗岩礫に,白亜紀前期の岩体は,阿武隈帯や肥後帯にそれぞれ対比されている(高木・柴田,2000).つまり,ナップの起源はである東北日本の要素が,御荷鉾緑色岩とナップ構造を北縁で切断している中央構造線(MTL)と御荷鉾緑色岩との間にかつて広く分布していた.それらの南への押し被せ(新井・高木,1998;Arai et al., 2008) が,最も重要なナップのイベントである.その断層活動に先立ち大規模な横臥褶曲が発生し,例えば四ツ又山以北の2 km四方もの跡倉層の大部分の地層の逆転をもたらしたと考えられる(新井・高木,1998).その後もナップ境界は上盤西の走向移動や最終時期には上盤北の正断層的な運動を重複した(Kobayashi, 1996).ナップの移動距離も中央構造線(MTL)以南での移動のみを考慮すると,数km程度のオーダーであったと推定される.南北圧縮をもたらしたテクトニックイベント 大規模な南への押し被せが発生した時期については,下盤の御荷鉾帯の変成年代である後期白亜紀以降,北側の下仁田層(約20Ma)を切断しているMTLによってナップ境界断層が切断されていることから,そのMTLの最終活動時期よりは前となる.日本海拡大に伴う西南日本の時計回りの回転を元へ戻した時のMTLの走向(西南日本の帯状構造の方向)をN30°Eとした時に,ナップ構造をもたらした圧縮テクトニクスの背景を考察すると,一つの可能性として太平洋プレートの移動方向がWNWのハワイ諸島の方向へと転換したイベントである50 Ma前後 (O’Connor, et al., 2013) が考えられる.この南への押し被せの時期については,解明すべき重要な課題として残されている.文献 新井宏嘉・高木秀雄,1998,地質雑,104,861-876.Arai, H., Kobayashi, K. and Takagi, H., 2008, Gondwana Res., 13, 319-330.生野賢司ほか,2016,日本古生物学会第165回例会講演要旨P.29.Kobayashi, K., 1996, Jour. Struct. Geol., 18, 563-571.Matsukawa, M. and Obata, I., 2012, Bull. Tokyo Gakugei Univ., Natr. Sci., 64, 143-152.Miyashita, A. and Itaya, T., Gondwana Res., 5, 837-848.中畑浩基ほか,2015,地学雑, 124, 633−656.O'Connor, J. M. et al., 2013, Geochem. Geophys. Geosyst., 14, 4564-4584.高木秀雄・柴田 賢,2000,地質学論集,no. 56, 1-12.竹内圭史・牧本 博,2003, 日本地質学会第110年学術大会講演要旨,69.
著者
尾方 隆幸
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

Geoparks require effective outreach and education based on academic terminology. Science Council of Japan (SCJ) reported terminological variation on all geoscience textbooks used in senior high schools. Such a situation also leads to terminological confusion in lifelong education and geoscience outreach. Geoscientific terms are likely to vary among many geoparks in Japan. Geoparks should consider terminological problems, and use academically appropriate terms for geoscientific education and geotourism.
著者
山本 政一郎
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

中央教育審議会(2014)によって、「高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革」が推進されるなかで、学力の3要素の一つである「思考力・判断力・表現力」を育成する必要性が高まっている。高等学校の地理は多くの写真や図表資料を用いて思考・判断・表現を行う機会に恵まれており、それら能力の育成に適している。しかしその一方で、論理的思考力を適切に評価できていない事例も散見される。例えば、平成30年度センター入試の「地理B」の、「ムーミン問題」では,思考力等を問うはずが,適切な類推をするには十分な情報が与えられていない問題である。そのような状況のなかで、写真や図表資料を用いて適切な思考力・判断力・表現力を育成するためには何が必要であるかを議論したい。
著者
春山 成子
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

アジア太平洋地域での災害は地震・津波、洪水、地すべり、旱魃など多様であり、災害発生時において自らが考え行動できることが望まれている。このため地理・地学教育の双方から学びあいが求められる。地球を学び、地球に生きることを視野に入れ社会科と理科が合同で教育することが防災・減災に向けた情報強化につながる。さらに自然観察の技術を磨くため、現地見学会を含めた地学・地理合同の教育、地域の将来を見据え社会イノベーションを考えるためのジオパーク活用と地域活性化とを同時に考えるために地域性を加味した具体的な環境教育の拡充を実現することで、空洞化していく地域社会の抱える問題の解決策に糸口を見出すことができるような教育体系を考えることが求められている。
著者
鈴木 健太 山本 正伸1 2 Rosenheim Brad 大森 貴之 Polyak Leonid 南 承一
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

The Arctic Ocean underwent dramatic climate changes in the past. Changes in sea-ice extent and ocean currents in the Arctic Ocean cause changes in surface albedo and deep water formation, which drove global climatic changes. However, Arctic paleoceanographic studies have been limited compared to the other oceans due to chronostratigraphic difficulties. One of the reasons for this is absence of material suitable for 14C dating in the Arctic Ocean sediments deposited since the last glacial maximum. To enable improved age constraints for sediments impoverished in datable material, we apply ramped pyrolysis 14C method (Rosenheim et al., 2008) to sedimentary records from the Chukchi-Alaska margin recovering Holocene to late-glacial deposits. Samples were divided into five fraction products by gradual heating sedimentary organic carbon from ambient room temperature to 900°C. The thermographs show a trimodal pattern of organic matter decomposition over temperature, and we consider that CO2 generated at the lowest temperature range was derived from autochthonous organic carbon contemporaneous with sediment deposition, similar to studies in the Antarctic margin and elsewhere. For verification of results, some of the samples treated for ramped pyrolysis 14C were taken from intervals dated earlier by AMS 14C using bivalve shells. The ages of lowest temperature split showed older ages than the radiocarbon ages derived from bivalve shells indicating that those splits were still mixtures and not pure autochthonous organic matter. The relationship between radiocarbon ages of generated gas and pyrolysis temperature is linear. We used this empirical relationship to determine the optimal temperature yielding pure marine organic carbon and estimated age of horizons by sampling at those temperatures. We compare these ages to mixing model ages decoupling the simpler mixtures represented by our original low-temperature splits, which were consistent with the bivalve ages.
著者
櫻井 弘道 山本 正伸 関 宰 大森 貴之 佐藤 友徳
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

北海道は、東アジアモンスーン影響下の北端に位置しており、夏季モンスーンが強く吹くと、北海道に太平洋からの湿った空気が運ばれる。本研究では、別寒辺牛高層湿原から採取した 約 4mの泥炭コアに含まれるミズゴケなどの植物のセルロースの酸素同位体比を分析し、夏季東アジアモンスーンの古気候復元を試みた。ミズゴケの酸素同位体比は、ツルコケモモやチシマノガリヤスといった高等植物の酸素同位体比よりも、常に低かった。ミズゴケの酸素同位体比は降水の酸素同位体比を直接的に反映しているが、高等植物の酸素同位体比は蒸散によって高くなっているのである。よって、このミズゴケと高等植物の酸素同位体比の差は、相対湿度のプロキシとなる可能性がある。ミズゴケの酸素同位体比の変動は、約1500年前に低下し、約1100年前に上昇しており、これは暗黒寒冷期と中世温暖期に該当すると考えられる。これは、夏季モンスーンによる降水量が約1500年前に少なく、約1100年前に多いということを示唆する。また、高等植物とミズゴケの酸素同位体比の差は、ミズゴケの酸素同位体比と負の相関を持つ。これは、夏の降水量が多いときに相対湿度が高くなっていたことを示唆しており、梅雨前線の活動によって夏の北海道に長雨が降る「蝦夷梅雨」という現象に似ている。蝦夷梅雨は、夏季東アジアモンスーンが強い時に起きる典型的な現象である。したがって、約1100年前の暖かく湿った気候は、夏季東アジアモンスーンの活動が強くなったことによって、夏に頻繁に蝦夷梅雨が起きていたことを反映していると考えられる。
著者
覚張 隆史 米田 穣
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

遺跡出土遺存体の動物考古学的・植物考古学的研究に基づくと、農耕牧畜以前のヒトはhunter-gathererの生業形態であったと考えられており、後期更新世末までのイヌは狩猟と採集の生業形態に深く関わる形でヒトのニッチェに近づいたと考えられる。特に、狩猟に有利な機能形態をもつ石器群の出土例の増加とともに、遺跡からイヌの出土例も増加する。西アジアのナトゥーフ文化期のAin Mallaha遺跡およびドイツの中石器時代のOberkassel遺跡から約1万4千年前~1万2千年前と比定された最古のイヌが出土しており、遊動性から半定住性社会の移行期において、イヌがヒトと移動を共にした可能性が指摘されている。一方、東アジアの後期更新世末において、遊動性から半定住性社会に移行する時期は、土器が出現し始める土器新石器時代に相当する。東アジアにおける土器新石器時代の遺跡からイヌが出土した最古の例は、日本列島の関東の夏島貝塚(神奈川県)から出土した犬骨破片である。夏島貝塚から出土した犬骨は、同遺跡から採取された貝および炭化物の放射性炭素年代測定に基づいて、12,117–9,281 BPと報告されている。また、中国のJiahu遺跡(9000 -7800 calBP)やDadiwan遺跡(7560-7160calBP)日本の上黒岩岩陰遺跡(7420–7266 calBP)が報告されており、少なくとも東アジアにおいてはこれらの時期以前からイヌが存在していた可能性が考えられる。特に、日本列島においてこれらの遺跡出土犬がヒトとどのような関係であったかを示した研究例はまだ少ないのが現状である。 そこで本研究では日本列島の遺跡出土犬の骨コラーゲンの炭素・窒素同位体比に基づいて、各時代の犬の食性の変遷を評価することを試みた。また、比較試料としてニホンオオカミと古人骨を分析し、ヒトと犬の関係について考察を試みた。 その結果、縄文犬は多量の海生魚類・貝類・海獣類も存在していたことがわかり、弥生時代以降に陸生食物資源に依存するという変化が明確に検出された。これは、縄文時代から弥生時代にかけてのヒトの生業活動の変化が、犬にも反映している可能性を示唆している。
著者
武村 俊介 松澤 孝紀 木村 武志 利根川 貴志 汐見 勝彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

本研究では,紀伊半島沖で発生する浅部超低周波地震のモーメントテンソルインバージョンを行った.南海トラフで発生する浅発地震では,厚く堆積した海洋堆積物(以下,付加体)が表面波の励起および伝播に大きな影響を与える(例えば,Furumura et al., 2008; Nakamura et al., 2015; Guo et al., 2016).そこで,付加体内の地震波速度構造モデルはTonegawa et al. (2017)による推定結果により構築し,付加体下の構造は全国1次地下構造モデル(Koketsu et al., 2012)としたTakemura et al. (2018)の3次元不均質構造モデルを採用し,差分法による地震動シミュレーション(Furumura and Chen, 2004; Takemura et al., 2015)によりGreen関数を評価した.Green関数計算のための震源をフィリピン海プレート上面に0.1°毎に設定し,震源時間関数は継続時間t秒のcosine関数を仮定した.陸域に敷設されたF-netの速度波形に周期20-50秒のバンドパスフィルターをかけ,モーメントテンソルインバージョンを行った.観測波形の再現性をVariance Reductionで評価し,Variance Reductionが最大となる解を探索し,浅部超低周波地震のモーメントテンソル,継続時間,セントロイド位置および時刻を推定した.手法の妥当性を検討するため,海底地震計記録を用いて推定されたSugioka et al (2012)の浅部超低周波地震に対し,本手法を適応した.本研究のモーメントテンソルインバージョンは,使用した帯域や手法の違いにより継続時間やセントロイド時刻に違いがあるが,Sugioka et al. (2012)と同様のセントロイド位置に同様な低角逆断層が最適解として得られた.一方で,全国1次地下構造モデルを仮定してモーメントテンソルインバージョンを行ったところ,異なる位置に高角逆断層が最適解として得られた.以上のことから,海底地震計の記録がない場合でも,適切な3次元不均質構造を仮定することで正確なモーメントテンソル解が得られることがわかり,DONETなどの海底地震計敷設以前の浅部超低周波地震の活動評価の高度化に資すること可能であると考えられる.謝辞F-netの広帯域速度波形記録を使用しました.スロー地震学のスロー地震データベースよりSugioka et al. (2012)のカタログをダウンロードしました.地震動計算には地球シミュレータを利用しました.
著者
武村 俊介 汐見 勝彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

近年、GMS(Aoi and Fujiwara, 1999)やOpenSWPC(Maeda et al. 2017)などの地震動シミュレーションコードの発展が目覚ましい。それに加え、全国1次地下構造モデル(Koketsu et al. 2012)やMatsubara et al. (2008)など、日本列島の3次元地下不均質構造についても多くのモデルが提案されており、現実的な地下構造を用いた地震動伝播シミュレーションは身近なものとなった。しかし、3次元地下不均質構造の地震波動場への影響は未知な点が多く、特に沈み込む海洋プレート周辺の地震の地震波伝播を考える上ではその影響を把握することが喫緊の課題となる。そこで、本研究では南海トラフとその周辺で発生する地震の地震動伝播シミュレーションから、観測地震波動場に見られる3次元地下不均質構造の影響について紹介する。地震動シミュレーションは並列差分法(Furumura and Chen, 2004; Takemura et al., 2015)により実行し、3次元地下構造モデルは全国1次地下構造モデルを利用した。512×640×153.6 km3の計算領域を水平方向0.125 km、鉛直方向0.1 kmで離散化し、周期の3秒以上の地震動について、地球シミュレータ1024ノードを用いて計算を行った。シミュレーションの対象とした地震は、2016年4月1日の三重県南東沖の地震(Event A)、2016年10月21日の鳥取県中部の地震(Event B)と2016年11月19日の和歌山県南部の地震(Event C)の3つである。それぞれ、プレート境界地震、地殻内地震とスラブ内地震であり、発震機構としてF-netのMT解を用いた。陸域の観測網内で発生した地震(Event BとEvent C)は、観測地震動の再現性が非常に高く、仮定した震源モデルおよび構造モデルが妥当であると考えることができる。一方で、海域で発生したEvent Aは、観測波形の再現性が低い。これは観測網外で発生した地震の震源解の推定精度が低いことと、海域の構造モデルチューニングが未だ不十分であることが原因と考えられる。発表では、観測波形の再現性を詳細に紹介しつつ、広帯域地震波動場再現のためのモデル化手法と課題を議論する。謝辞Hi-net/F-netおよびDONETの速度波形記録を使用しました.地震動計算には地球シミュレータを利用しました.
著者
高場 智博
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

筑紫平野東部に位置する東西約20 kmの耳納山地の北麓には,70の小規模扇状地が分布する。耳納山地を含めた筑紫平野東部における発達史地形学的研究は,北野平野(黒田・黒木,2004)や筑後川扇状地(財津,1987)で若干の調査報告がおこなわれているにすぎない。そのため耳納山地北麓に分布するそれら小規模扇状地群の地形発達の解明は,筑紫平野の地形形成を理解する上でも重要である。また,研究例に乏しい西南日本における扇状地研究の進展という点でも有意義である。 はじめに,航空写真判読によって地形分類図を作成した。次いで,露頭調査をおこなった。その際,年代試料となるロームや腐植質堆積物を採取し,後者については5試料を14C年代測定に供した(分析は株式会社加速器分析研究所に依頼)。 航空写真判読の結果,本地域の小規模扇状地は複数の段丘面からなることが明らかとなった。段丘面は分布高度などを基準に1~5面の5つに大別された。最高位である1面の露頭では,段丘構成層直上にBW型ガラスが多数含まれるローム層(厚さ40 cm)が認められ,その上位に堆積する腐植質砂層(厚さ20 cm)の下端10 cm部分の14C年代値が1,181–1,056 cal BPであった。BW型火山ガラスは,テフラ降下範囲よりK–Ah(7.3 ka;町田・新井,2003)またはAT(26–29 ka;町田・新井,2003)に由来すると考えられる。3面の露頭では,段丘構成層直上に腐植質砂層(厚さ10 cm)が観察され,その14C年代値が下端5 cmの部分で7,127–7,015 cal BP,上端5 cmの部分で6,182–5,999 cal BPであった。4面の露頭では,段丘構成層を覆う腐植質砂層(厚さ20 cm)がみられ,その下端10 cmの部分に含まれる木炭の14C年代値が1,408–1,320 cal BPであった。別地点(4面)では,段丘構成層上に砂層(マサ土),腐植質砂層(厚さ20 cm)がみられ,後者下端10 cmの部分の14C年代値は1,058–938 cal BPであった。 以上により,1面は本地域にBW型火山ガラスが降下した時期,3面は約7,000年前,4面は1,000–1,400年前ごろに,それぞれ既に段丘化していたと推測される。これらの段丘面形成および段丘化には,グローバルな気候変動,水縄断層の活動(西暦679年の筑紫地震;松村,1990),あるいは人間活動などが関わってきた可能性がある。謝辞 本研究を進めるにあたり明治大学の吉田英嗣准教授には親身になってご指導いただいた。本研究には2017(平成29)年度笹川科学研究助成(29-622)の一部を使用した。参考文献 黒田・黒木(2004)日本地理学会発表要旨集,81,p.85 町田・新井(2003)東京大学出版会,50–51. 松村(1990)九州史学,98,1–23. 財津辰也(1987)大分地理,1,33–42.
著者
中島 涼輔 吉田 茂生
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

We investigated waves in a stably stratified thin layer in a rotating sphere with an imposed magnetic field. This represents the stably stratified outermost Earth's core or the tachocline of the Sun. Recently, many geophysicists focus on the stratification of the outermost outer core evidenced through seismological studies (e.g. Helffrich and Kaneshima, 2010) and an interpretation of the 60-year geomagnetic secular variations with Magnetic-Archimedes-Coriolis (MAC) waves (Buffett, 2014).Márquez-Artavia et al.(2017) studied the effect of a toroidal magnetic field on shallow water waves over a rotating sphere as the model of this stratified layer. On the other hand, MAC waves are strongly affected by a radial field (e.g. Knezek and Buffett, 2018). We added a non-zero radial magnetic perturbation and magnetic diffusion to Márquez-Artavia et al.(2017)'s equations. Unlike their paper's formulation, we applied velocity potential and stream function for both fluid motion and magnetic perturbation, which is similar to the first method of Longuet-Higgins(1968).In the non-diffusive case, the dispersion relation obtained with the azimuthal equatorially symmetric field (Bφ(θ) ∝ sinθ, where θ is colatitude) is almost the same as Márquez-Artavia et al.(2017)'s result, which includes magneto-inertia gravity (MIG) waves, fast magnetic Rossby waves, slow MC Rossby waves and an unexpected instability. In particular, we replicate the transition of the propagation direcition of zonal wavenumber m=1 slow MC Rossby waves from eastward to westward with increasing Lamb parameter (ε=4Ω2a2/gh, where Ω, a, g and h is the rotation rate, the sphere radius, the acceleration of gravity and a equivalent depth, respectively) and Lehnert number (α=vA/2Ωa, where vA is Alfvén wave speed). As a consequence, fast magnetic Rossby waves and slow MC Rossby waves interact, and the non-diffusive instability occur.Next, we are examining the case with an equatorially antisymmetric background field, which is more realistic in the Earth's core. In this case, if the magnetic diffusion is ignored, the continuous spectrums appear owing to Alfvén waves resonance (similar to the continuous spectrums in inviscid shear flow, e.g. Balmforth and Morrison, 1995). To solve this difficulty, our numerical model includes the magnetic diffusion term.
著者
原口 悟 上木 賢太 桑谷 立 吉田 健太 モハメド 美香 堀内 俊介 岩森 光
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

2017年のJpGU-AGU(原口ほか,2017)で、日本国内出版文献に掲載されている地球化学データのコンパイルを行うデータベース「DODAI」を報告した。前回報告以降もデータ収集を継続し、2017年末までに224論文5818サンプルの化学データをコンパイルした。今回、これらのデータ収集を通して明らかになった、「フォーマットの統一」に関連する問題点を以下に3点報告する。1つ目は、化学組成の分析に当たって、多くの「分析装置」による様々な「分析手法」が用いられていることである。主要元素は、1970年代までは「湿式分析」が主流であったが、1980年代に入って「XRF」が急速に広まった。この過程で、従来鉄はFe2+ (FeO)とFe3+ (Fe2O3)を分けて分析されていたのが、全FeOまたはFe2O3に一本化する分析に移行した。現在でも全岩化学組成のFe2+とFe3+を分けて分析する手法は湿式分析だけであり、主要元素をXRFで分析していても、Fe2+だけを湿式分析で分析することが行われている。このような鉄の分析のバリエーションが地球化学データベースに含まれていることには注意を要する。2つ目は、分析される微量元素の組み合わせが分析機関により様々なことである。微量元素の分析は、現在ではXRFの他、ICP-MS等の質量分析装置を用いた方法、INAA等の放射化分析等が使われている。XRFは分析が簡便であるため、多くの機関で主要元素とともに分析が行われているが、分析元素の選択が機関・目的により様々である。ICP-MS, INAAは高精度の分析が可能で、多くの微量元素を網羅的に分析することが可能であるが、全ての元素をカバーする分析を恒常的に実施する例が少なく、データ数が少ない。このため、データベースを利用した多変量解析に用いる元素の組み合わせによっては、解析に使用できるサンプル数が激減することがありうる。3つ目は、研究が行われた時期、および研究者が専門とする分野によって地質の解釈が変化することである。例えば、四万十帯に代表される「付加体」の地質構造は、「付加体地質学」の導入により、形成過程の理解が急速に進んだが、個々の岩体の記載は、付加体地質学導入以前の研究に基づくものと、付加体地質学に基づいた新たな解釈によるものがあり、現在でも両者が混用されている。また、付加体中の海洋プレート起源の火山岩は、弱変成作用を受けているため、「緑色岩」とも呼ばれるが、研究者によって「火山岩」「変成岩」と見方が異なっている。シームレス地質図統一凡例(産総研,2015)のように,これらの見方を統一する試みもあるが,依然としてこのような様々な「解釈の違い」が地球化学データに含まれることはコンパイルを行う上での注意点である。本報告では、これらの「フォーマットの不統一」に関係する地球化学データベースが含む問題を取り上げるとともに、不統一の解消を図る方法について考えたい。
著者
吉田 健太 桑谷 立 安本 篤史 原口 悟 上木 賢太 岩森 光
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

Geochemical data from geological samples show compositional trends that reflect the material differentiation and assimilation occurred during certain geological processes. These trends often comprise groups in a multidimensional compositional space and are distributed in real space as geological units ranging from millimeters to kilometers in scale (e.g., Ueki and Iwamori, 2017). Therefore, spatial contextual information combined with chemical affinities could provide fundamental information about the sources and generation processes associated with the samples.However, conventional clustering algorithms such as k-means and fuzzy c-means (FCM) cluster analysis do not fully utilize the spatial distribution information of geologic samples. In this study, we propose a new clustering method for geochemical datasets with location coordinates. A spatial FCM algorithm originally constructed for image segmentation was modified to deal with a sparse and unequal-spaced dataset. The proposed algorithm evaluates the membership function modified using a weighting function calculated from neighboring samples within a certain radius.We applied new algorithm to a geochemical dataset of granitoids in the Ina-Mikawa district of the Ryoke belt that was compiled by Haraguchi et al. (2017), showing that samples collected from the same geological unit are likely to be classified as the same cluster. Moreover, overlapping geochemical trends are classified consistently with spatial distribution, and the result is robust against noise addition compared with standard FCM analysis.The proposed method can be calculated in the “GEOFCM” Excel® sheet provided as supplementary material and on our website (http://dsap.jamstec.go.jp). Geological datasets with precise location coordinates are becoming increasingly available, and the proposed method can help find overviews of complicated multidimensional data structure.
著者
桑谷 立 岡本 敦 吉田 健太 中村 謙吾 土屋 範芳 駒井 武
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

The high-dimensional and large amounts of data sets in geosciences show very complex behavior and often have large uncertainty. It is important to extract a small number of essential parameters which can explain the phenomenon from high-dimensional data in order to understand the behavior of dynamic solid earth. Under the framework of a big scientific project entitled as “Initiative for high-dimensional data-driven science through deepening sparse modelling” supported by the MEXT in Japan ( http://sparse-modeling.jp/index_e.html ), we try to introduce data-driven approaches into geosciences. In this presentation, we will share some applications in solid-earth science and discuss future prospects.
著者
安本 篤史 平島 崇男 中村 大輔 吉田 健太 桑谷 立
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

Eclogite from the Nové Dvory (ND), Czech Republic, in the Gföhl Unit of the Moldanubian Zone of the Bohemian Massif records extreme pressure and temperature conditions (>4GPa, >1000℃; Nakamura et al., 2004). The formation process of the ND eclogite is expected to give insights to understand tectonics of convergence zone at the deep depth. However, origins of the ND eclogite are controversial whether it was high-pressure cumulate (Medaris et al., 1995) or metagabbro (Obata et al., 2006). The controversy is partially due to ambiguous control factors of garnet zoning pattern in low-variant systems like bi-mineralic eclogite. For example, Nakamura et al. (2013) reported diverse zoning patterns of garnet within a thin-section scale of bi-mineralic eclogite. Their sample comprises a layer containing Fe-rich core garnet and another one containing Mg-rich core garnet. These zoned garnet grains show similar rim compositions. Nakamura et al. (2013) suggested that such zoning patterns are not only the result of changes in pressure and temperature conditions, but also in local bulk compositions. Yet, the origin of the mm-scale layering structure remained unclear. This study aims at revealing the formation process of the ND eclogite from the origin of the layering structure.The study samples are bi-mineralic eclogite composed of garnet-rich matrix and pyroxene-rich layer. Within each sample, garnet grains vary core compositions by layers, but show identical rim compositions regardless of their locations. For example, ND0207 contains a 3-mm thick pyroxene-rich layer. In ND0207, garnet grains in the garnet-rich matrix more than 10mm apart from pyroxene-rich layer has Mg-Cr-poor core (Fe:Mg:Ca=35:32:33 and Cr2O3<0.1wt%), those in the garnet-rich matrix near pyroxene-rich layer has Mg-rich Cr-poor core (Fe:Mg:Ca=23:55:22 and Cr2O3<0.1wt%), and those in pyroxene-rich layer has Mg-Cr-rich core (Fe:Mg:Ca=30:49:21, Cr2O3=1wt%). These garnet grains show similar rim compositions (Fe:Mg:Ca ≈ 28:42:30, Cr2O3 < 0.3 wt%), and contain omphacite only in their rim. Compositions of the omphacite inclusions are Na-rich in the garnet-rich matrix (Na2O=4-5wt%, Cr2O3<0.1wt%, XMg=Mg/(Mg+Fe) = 0.83-0.87), and Cr-Mg-rich in pyroxene-rich layer (Na2O=3-4wt%, Cr2O3<0.4wt%, XMg=0.85–0.90).Chemical compositions of the layering structure are determined by a quantitative mapping technique using electron probe micro analyzer (Yasumoto et al., under review). The result revealed that garnet-rich matrix increases Cr2O3 (0.0 to 0.3wt%) and XMg (0.5 to 0.8) from the relatively homogeneous part of the garnet-rich matrix to pyroxene-rich layer. This trend is concordant to the variation of chemical compositions of the minerals.The significant chemical variation of minerals suggests that the ND eclogite or its protolith was not produced only by accumulation. A comparison of (local) bulk compositions reveal that the garnet-rich matrix corresponds to the Gföhl eclogite (Beard et al., 1992; Medaris et al., 1995; Obata et al., 2006) and the gabbroic rocks from South Indian Ridge (Niu et al., 2002), whereas the pyroxene-rich layer corresponds to the Gföhl pyroxenites (Medaris et al., 1995). In addition, prograde relict amphibole is identified in the ND eclogite (Yasumoto et al., 2016), and the ND pyroxenite is considered to be accumulated from melt (Svojtka et al., 2016). These facts suggest that the ND eclogite was metagabbro that was partially infiltrated and metasomatised by pyroxenitic melt under high-pressure conditions. Chemical variation of garnet cores and lack of omphacite in the garnet cores indicate that the layering structure was present before the omphacite growth. In other words, the melt infiltrated before eclogite-facies metamorphism. Driving force of the changes in local bulk compositions can be prograde heating (Nakamura et al., 2013) or dehydration of amphibole during eclogitization.
著者
Badri Bhakta Shrestha Yusuke Yamazaki Daisuke Kuribayashi Akira Hasegawa Hisaya Sawano Yoshio Tokunaga
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

The Chao Phraya River basin is the largest river basin of Thailand and it is located in the tropical monsoon climate region with basin area of 160,000 km2. The Chao Phraya delta is a major rice production area and often experiences large flood events, which may result in widespread rice-crops damage, as most recently recorded in 2011 and 2006 floods. The flood damage is also expected to increase more in future. It is thus necessary to assess flood damage to agriculture areas for future floods considering climate change impact for implementing effective preventive measures. This study focused on assessment of future flood damage to agricultural sector (rice crops) under climate change in the Chao Phraya River basin. Flood hazard characteristics such as flood depth and flood duration were computed using rainfall runoff inundation model (RRI Model). Flood damage to rice crops was defined as a function of flood depth, duration and growth stage of rice plants. For the assessment, satellite based data such as HydroSHEDS (SRTM) topographical and global land cover data were used. First, assessment of flood damage to agriculture sector was conducted for 2011 flood. The flood damage curves developed by ICHARM were applied to assess the flood damage to rice-crops, and the comparison results between calculated damage and reported damage for 2011 flood were reasonably agreeable. The calculated results of rice crop using ICHARM's damage curves were also compared with the damage estimated using flood damage curve developed by MRCS (Mekong River Commission Secretariat). Then, flood damage assessment was conducted for both present climate (1979-2003) and future climate (2075-2099) conditions using MRI-AGCM3.2S precipitation dataset. Frequency analysis was conducted using rainfall volume to identify flood hazard intensity for 50- and 100-year return period under present climate and future climate conditions, and flood damage was assessed for both return period cases with different rainfall patterns chosen from each climate scenario. The results obtained from the damage assessment were compared for worst cases and found that economical loss in agriculture sector due to flood can increase in the future by 15 % and 16 %, in the case of 50-year flood and 100-year flood, respectively. The agricultural damage areas can increase in the future by 13 % in the both flood scale cases. The results of the flood damage assessment in this study can be useful to implement flood mitigation actions for climate change adaptation.
著者
赤井 元紀 武田 龍 駒谷 和範
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

音声対話システムでは適切なタイミングで応答することが重要である.従来の対話システムでは,状況によらずに同じように応答タイミングが決められる.これに対して,新たに対話の状況を導入することで,状況に応じて応答タイミングを推定する.本研究では,複数の処理単位を用いて現在の対話の状況と応答タイミングのそれぞれに特化した推定を行うことで,状況に応じた適切な応答タイミングを推定する.応答タイミングの推定の評価に使用するデータとして,ユーザとシステムとのインタビュー形式の対話における7名のユーザの回答音声を収集した.収集したデータを用いて,応答タイミングの推定における対話の状況の利用の有無による性能の変化を評価した.応答タイミングの推定に識別モデルと回帰モデルを用いた場合についてそれぞれ評価した結果,回帰モデルに関しては対話の状況を利用することで正解率が約9ポイント上昇した.
著者
Lucile Bruhat Paul Segall
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

Most geodetic inversions of surface deformation rates consider the depth distribution of interseismic fault slip-rate to be time invariant. However, some numerical simulations show down-dip penetration of dynamic rupture into regions with velocity-strengthening friction, with subsequent up-dip propagation of the locked-to-creeping transition. These models are particularly attractive to investigate the discrepancy between geodetically- and seismically-derived locking depths.Recently, Bruhat & Segall (GJI, 2017) developed a new method to characterize interseismic slip rates, that allows slip to penetrate up dip into the locked region. This simple model considers deep interseismic slip as a crack loaded at constant slip rate at the down-dip end. It provides analytical expressions for stress drop within the crack, slip, and slip rate along the fault. These expressions make use of an expansion of the slip distribution in Chebyshev polynomials, with a constraint that the crack-tip stress be non-singular. The simplicity of the method enables Monte Carlo inversions for physical characteristics of the fault interface, establishing a first step to bridge purely kinematic inversions to physics-based numerical simulations of earthquake cycles.This study extends this new class of solution to strike-slip fault environment. Unlike Bruhat & Segall (2017) which considered creep propagation in a fully elastic medium, we include here the long-term deformation due to viscoelastic flow in the lower crust and upper mantle. The surface predictions greatly change when including potential viscoelastic deformation and cumulative effect of previous earthquake cycles. We employ this model to investigate the long-term rates along the Carrizo Plain section of the San Andreas fault. This study reviews possible models, elastic and viscoelastic, for fitting horizontal surface rates. We improve the model presented in Bruhat & Segall (2017) to account for the coupling between creep and viscoelastic flow. Using this updated approach, we show that surface rates across the Carrizo Plain section of the San Andreas fault might be explained by slow vertical propagation of deep interseismic creep.
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

AIと安全保障技術を巡り,世界中で議論が注目されています.国連ではLAWS(自律型致死兵器)の開発・使用の規制に向けた議論が昨年から本格的に始まりました.安全保障技術をめぐる世界の潮流を理解するため,拓殖大学国際学部教授・海外事情研究所副所長佐藤丙午氏とLAWSの規制に関する国連の会議を担当されている外務省軍縮不拡散・科学部通常兵器室上席専門官の南健太郎氏をお招きして,お話を伺います.http://ai-elsi.org/archives/707
著者
江間 有沙 長倉 克枝 工藤 郁子
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

技術の設計段階からその倫理的,法的,社会的な観点について考えていくためには,技術者にとっても倫理や価値の議論が自分事として考えられるような場や環境づくりが重要となる.そのため,技術に関する倫理や価値の「中身」の議論だけではなく,多様な人々を巻き込むという「プロセス」や,コミュニティ形成の方法についても実践と記録を残していくことが,重要である.筆者らは,これまでも「人工知能と社会について考える場作り」として,様々な分野・業種の専門家を対象とした企画を行ってきた.本稿では,IEEEが公開している報告書に関するワークショップを事例として,どのように異分野・異業種の専門家による企画を組織,運営しているかを紹介する.