- 著者
-
新井 哲明
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.130, no.6, pp.494-498, 2007 (Released:2007-12-14)
- 参考文献数
- 34
- 被引用文献数
-
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アルツハイマー病の症状は,中核症状である認知機能障害と,周辺症状である行動および心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:BPSD)に大別される.中核症状に対しては,アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬とNMDA受容体拮抗薬の有効性が確立しており,わが国で現在使用できるのは前者に属するドネペジルのみである.AChE阻害薬については,認知機能の改善あるいは安定化作用のほか,日常生活動作の維持,向精神薬使用頻度の低下,介護者負担の軽減,施設入所時期の遅延,費用対効果の低減,などの効果が報告されている.興奮,焦燥,幻覚,妄想などのBPSDに対する薬物療法としては,非定型抗精神病薬の有効性が確立しつつあったが,2005年米国食品医薬品管理局より死亡率の増加を指摘されたことから,その適応について議論が続いている.