著者
川北 稔
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.12, pp.293-300, 2009-02
被引用文献数
1

格差社会などを背景として「若者の生きづらさ」を訴える声が続いている。1980年代以来,「生きづらさ」(「生きにくさ」)という言葉を用いることで,しばしば,従来の福祉や教育の枠組みに乗りづらい困難が言及されてきた。本稿では,特に精神障害を対象とする障害構造論の議論を参考に,若者の生きづらさ,特に引きこもる若者の生きづらさがどのように捉えられるのかを考える。また「ひきこもり」支援の蓄積が,幅広い若者の人間回復に寄与する可能性について検討する。
著者
松井 洋
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.101-114, 2000

国際比較調査の結果から, 日本の若者の問題点について他の国と比較検討を行った。調査対象は, 日本, アメリカ, 中国, 韓国, トルコ, キプロスの中学生と高校生5634名である。質問調査の内容は対人関係, 親子関係, 非行許容性, 愛他性, 道徳意識, 価値観学校関連についての136項目である。分析方法は, 各質問項目の回答の選択肢のうち, 最も望ましくない選択肢を選んだ割合を6ヶ国の間で比較した。結果は, 日本の若者は人間関係に顕著な問題を抱えているということが明らかなった。日本の若者は愛他性, 共感性, 社会的スキルなどの人間関係についての個人的要因に問題があり, そのために人間関係に問題や悩みを抱えることとなるようだ。このような傾向は中学生男子で最も強い。その他にも, 日本の若者は性などの非行的行為に許容的であり, 物質志向, 外的統制などの価値観に問題があり, さらに, 自制心や情緒性, 意欲等も問題があり, そのようなことが悩みや人間関係の問題の原因にもなっていると考えられる。さらに, 親子関係についても親一子間が心理的に遠いという問題があり, このことが人間関係の問題の原因ではないかと推定できる。以上のような日本の若者の問題は, 人間関係を中心としてかなり顕著なものであり, 日本の若者は悪い意味でかなり「へん」だと言え, その問題を一言でいうと「社会性」の問題と言える。このような日本の若者の問題の原因は広く日本社会全体にあるともいえるが, 若者の問題は特に親子関係の問題と関連すると考えられる。そのため, まず親子関係の改善などの対策をはじめることが必要と考える。