著者
國土 典宏 幕内 雅敏 中山 健夫 有井 滋樹 小俣 政男 工藤 正俊 神代 正道 坂元 亨宇 高安 賢一 林 紀夫 門田 守人
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.562-570, 2007-11-25
参考文献数
7

平成14-15年度の厚生労働省診療ガイドライン支援事業により「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン研究班」(班長:幕内雅敏)が組織され,ガイドラインを作成し,2005年2月に書籍として刊行した.発刊後ほぼ1年を経て,臨床現場でガイドラインを用いるより多くの医師による評価を目的として,日本肝癌研究会全会員に対するアンケート調査を実施した.ガイドライン内容の妥当性だけではなく,普及・利用の現状と可能性に関する評価のために16項目からなる質問票を作成し2006年3月,質問票を本研究会個人会員2,279名に送付し,843名(37.0%)から回答を得た.回答者年齢の中央値は47歳,卒後年数は93.9%が10年以上であり,中央値は20年であった.専門領域は内科系55.6%,外科系37.8%,放射線科系4.4%,病理2.0%であった.最近3カ月で診療した患者数は外来で20名以上が45.7%,入院で10名以上が44.8%であり,現在activeに肝癌診療に関わっているベテラン医師からの回答がほとんどであった.ガイドライン認知度についての質問では,「ガイドラインをみたことがある」が72%であり,日常診療に役立つかどうかの質問では,「大いに役立つ」,「役立つ」を併せて78.8%であった.ガイドラインのどの部分をよく利用するかを尋ねたところ,「治療のアルゴリズム」が77%と最も多く利用されており,次いで「診断・サーベイランス」39%,「経皮的局所療法」38%,「手術」34%と続いた.「ガイドラインを使用して治療方針に変化がありましたか」という質問には「変化した」という回答は20.8%とむしろ少なく,「変化はないがガイドラインが自分の推奨に近いことを確認し自信が持てた」が40.3%と多くを占めた.「変化した」内容については,「治療選択に時間がかからなくなった」が50%で,「時間がかかるようになった」の8%を大きく上回っていた.一方,「ガイドラインは医師の裁量を拘束すると思いますか」との質問には43.9%が拘束されると回答した.解答率が37%と高くないという問題はあるものの,本調査によって肝癌診療ガイドラインがわが国の肝癌専門医に広く認知され利用されていることが明らかになった.本アンケート調査の結果は2006年度から開始されているガイドライン改訂作業の参考資料になると期待される.<br>
著者
宮木 幸一 中山 健夫 岩隈 美穂
出版者
国立国際医療研究センター
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究の主な目的はゲノム・コホート事業が開始され継続されていく中で市民の事業・研究に対する認知の現状と血液提供意思に影響を与える因子を把握し、それに基づいた市民・研究者双方への情報提供の在り方を検討することである。事業開始前の調査では、年齢階級別に無作為抽出された2000人(回収率53% : 1060部)のうち、研究参加希望者が36.3%(383名)、「わからない」と答えたものが42.3%(447名)、「血液を提供したくない」と答えたものが383名中62.7%(217名)であった。研究参加の理由は「子や孫の世代の健康づくりに役立つ」が最も多く67.5%(75名)であり、研究参加に消極的な理由は「予期しない不利益があるかもしれない」が最も多く584名中45.2%(264名)であった。消極的な層が参加に転じる条件として、「自分の解析結果の提示」を挙げたものが548名中(45.2% : 264名)と最も多かった。事業開始後1年半後に行った2500人対象の調査と聞き取り調査から、信用にたる事業者が提供する「お得な健診」として認知されていることが示唆され、ゲノム研究の認知に関しては国民性の差があることが示唆されているが、我が国でのゲノム疫学研究を進めていく上で参考とすべき事項が明らかとなった。
著者
高橋 由光 宮木 幸一 新保 卓郎 中山 健夫
出版者
Japan Association for Medical Informatics
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.83-89, 2007-05-30
被引用文献数
2

[背景]アスベスト問題に関する新聞報道を定量的に分析するため,ネットワーク分析を利用したテキスト・マイニングを行い有用性を検討した.<br/> [方法]アスベストまたは石綿を含む 1945 ~ 2005 年朝日新聞見出しを対象とし,ネットワーク分析を利用したテキスト・マイニングを行った.<br/> [結果]1987 年頃と 2005 年に多かった.1987 年は 36 記事あり,汚染(40%)が高く出現し,除去と運動(26%)や除去と学校(11%)は同時に出現する単語であった.2005 年は 293 記事あり,人と死亡(9%),危険と人(8%)が多く同時に出現した.1987 年は厚生省や環境庁が関わる環境汚染に関する部分と,文部省が関わる学校からのアスベスト除去運動に関する部分があるのに対し,2005 年は人々の死亡が中心となり厚労省が関わり補償など対応策がとられた.<br/> [結論]ネットワーク分析を利用したテキスト・マイニングは情報を定量的に把握し,視覚化することを可能とした.
著者
小林 良岳 中山 健 前川 守
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.42, pp.9-16, 2003-05-08

実行中のプログラムに対し,その一部を動的に差し替えあるいは拡張するにはプログラムの実行状態を監視する手段が必要である.しかし,状態監視のためにソースコードに変更を加えることは,プログラム作成者の負担となり思わぬミスを招く.我々は,コンパイル時にPortal と呼ばれる状況監視のためのコードを,関数の呼び出しポイントに対して自動生成する Portal Creator(PoC)を実装しているが,生成の方針が静的であり,一旦Portalを生成したコードは必要がない場合でも常にPortalを通過するため処理時間に対するPortalのオーバーヘッドが加わるという欠点がある.そこで本稿では,コンパイル時にはプログラムをPortal生成に十分となるように修正するにとどめ,Portalの生成を実行時や実行中に延期できる方法を提案する.また,評価によりPortalを生成するために必要な情報を組み込んだ実行イメージのパフォーマンスが実用の範囲内であることと,実行後にPortalを組み込んだ場合のパフォーマンスが従来のPortalと同程度であることを示す.In order to dynamically replace and extend programs while they are running, some mechanisms to monitor the current status of them is necessary. However, regarding modifications to the programs for monitoring would be a burden to the programmers and error-prone. We already proposed Portal Creator(PoC) which automatically generates a Portal for each function at compile time for the above purpose. But once Portals are created, all function calls must go through Portal even if it is not used. In this paper, we propose a method for ``lazy'' Portal creation, can be postponed until execution time or run-time. At compile time, PoC just modifies program structure and creates informations to be needed for portal creation. We evaluate the performance of this method on program execution.
著者
内藤 真理子 鈴鴨 よしみ 中山 健夫 福原 俊一
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.110-114, 2004-04-30
被引用文献数
9 3

口腔疾患は,局所的な疼痛や咀聯機能障害を招くだけではなく,心理社会的,経済的に影響を及ぼす一要因として看過できないものである.近年,これらの視点から検討を行ううえで必要となるQOL尺度の重要性は増している.そこで,心理社会面の反映に優れ,かつ対象集団や状況に応じて補完項目やほかの尺度の併用を考慮できる包括的口腔関連QOL尺度開発を目的として,General Oral Health Assessment Index(GOHAI)日本語版作成に着手した.原作者から日本語版作成の許可を得た後,翻訳者による尺度の順翻訳を開始した.順翻訳された項目を基に,フォーカス・グループを通して討議を行い,暫定版尺度を作成した.この暫定版を使用して地域住民を対象にパイロット・スタディを実施し,その結果から質問紙の再検討を行った.質問文の長さや表現の難解さ,逆転項目の存在が問題点として示されたことから,可及的にオリジナルに忠実であるように配慮しながら,暫定版に修正を加えた.さらに,レイアウトや字体に関する検討を完了した後,逆翻訳作業を行った.原作者による逆翻訳の確認および最終的な了承を得て,GOHAI日本語版Version 1.0を完成させた.