著者
青木 琢 國土 典宏
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.262-265, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
15

膵原発神経内分泌腫瘍(P-NET)は,他臓器原発NETと比較し悪性例,転移陽性例の頻度が高いため,原則として全例治療適応となる。治療の第一選択は外科切除であり,原発巣の切除術式は腫瘍のサイズ,主膵管との位置関係,悪性の可能性に基づき決定されるが,リンパ節郭清の基準,縮小手術の適応基準はいまだ明確にはされていない。遠隔転移,特に肝転移の制御は予後の観点から臨床的には最重要課題の一つと考えられる。遠隔転移例に対しても切除可能であれば切除が推奨されるが,治癒切除率は高くなく,また切除後高率にみられる再発に対する有効な治療法が開発されていない点が問題となっている。切除単独療法による根治が困難である現在,抗腫瘍治療(ホルモン治療,抗癌剤,分子標的薬)と外科治療のさまざまな組み合わせが期待されており,長期生存から治癒を目指したストラテジーへの転換が求められている。
著者
菅原 寧彦 田村 純人 國土 典宏
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.32-36, 2015-01-05 (Released:2015-01-05)
参考文献数
19

肝移植は肝障害度Cでミラノ基準内の65歳以下の肝細胞癌症例に対して推奨されている.生体肝移植ではミラノ基準を拡大する条件でも適応とすることがある.1989年から2005年の本邦での生体肝移植653例の成績は,5年生存率でミラノ基準合致症例78%,逸脱症例60%であった.

1 0 0 0 OA 1.肝切除

著者
長谷川 潔 青木 琢 山本 訓史 竹村 信行 阪本 良弘 菅原 寧彦 國土 典宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.70-77, 2014-01-10 (Released:2015-01-10)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

肝細胞がんに対する肝切除は局所コントロールに優れており,肝機能が許す限り,治療の第一選択である.微小転移巣も系統的切除により除去可能であり,再発率を抑制しうる.脈管浸潤を伴う進行例でも肝切除により,予後改善が期待できる.ただし,術後の肝不全は致死的で,いったん発症すると回復困難なため,肝不全に至らないような厳密な術前評価と入念な準備,術中の工夫,綿密な術後管理が必須である.
著者
小林 正則 國土 典宏 関 誠 高橋 孝 柳澤 昭夫 前川 勝治郎
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.10, pp.2399-2403, 1999-10-01
参考文献数
17
被引用文献数
10

症例は66歳の女性. 他院にてS状結腸癌にて結腸切除術1年後, 肝転移を来たし当科にて肝左2区域切除, S6部分切除を施行した. 入院時血清AFP1,036.8ng/mlと異常高値を認めた. 肉眼的に根治であったが術後短期間に皮下組織内および残肝に再発し初回手術より1年4か月後(肝切除より94日後)死亡した. 病理組織像では, 原発巣および肝転移巣ともに通常の大腸癌に見られる腺腔形成部と明るい細胞質を持つ細胞がシート状に配列した部(hepatoid differentiation)よりなっていた. AFP産生性は免疫組織学的に原発巣および肝転移巣の両者で検出された. AFP産生大腸癌の報告はきわめてまれであるが, 予後不良なこのようなタイプの大腸癌の存在することを念頭に置き, 診療に当たる必要があると考えられた.
著者
國土 典宏 幕内 雅敏 中山 健夫 有井 滋樹 小俣 政男 工藤 正俊 神代 正道 坂元 亨宇 高安 賢一 林 紀夫 門田 守人
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.562-570, 2007-11-25
参考文献数
7

平成14-15年度の厚生労働省診療ガイドライン支援事業により「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン研究班」(班長:幕内雅敏)が組織され,ガイドラインを作成し,2005年2月に書籍として刊行した.発刊後ほぼ1年を経て,臨床現場でガイドラインを用いるより多くの医師による評価を目的として,日本肝癌研究会全会員に対するアンケート調査を実施した.ガイドライン内容の妥当性だけではなく,普及・利用の現状と可能性に関する評価のために16項目からなる質問票を作成し2006年3月,質問票を本研究会個人会員2,279名に送付し,843名(37.0%)から回答を得た.回答者年齢の中央値は47歳,卒後年数は93.9%が10年以上であり,中央値は20年であった.専門領域は内科系55.6%,外科系37.8%,放射線科系4.4%,病理2.0%であった.最近3カ月で診療した患者数は外来で20名以上が45.7%,入院で10名以上が44.8%であり,現在activeに肝癌診療に関わっているベテラン医師からの回答がほとんどであった.ガイドライン認知度についての質問では,「ガイドラインをみたことがある」が72%であり,日常診療に役立つかどうかの質問では,「大いに役立つ」,「役立つ」を併せて78.8%であった.ガイドラインのどの部分をよく利用するかを尋ねたところ,「治療のアルゴリズム」が77%と最も多く利用されており,次いで「診断・サーベイランス」39%,「経皮的局所療法」38%,「手術」34%と続いた.「ガイドラインを使用して治療方針に変化がありましたか」という質問には「変化した」という回答は20.8%とむしろ少なく,「変化はないがガイドラインが自分の推奨に近いことを確認し自信が持てた」が40.3%と多くを占めた.「変化した」内容については,「治療選択に時間がかからなくなった」が50%で,「時間がかかるようになった」の8%を大きく上回っていた.一方,「ガイドラインは医師の裁量を拘束すると思いますか」との質問には43.9%が拘束されると回答した.解答率が37%と高くないという問題はあるものの,本調査によって肝癌診療ガイドラインがわが国の肝癌専門医に広く認知され利用されていることが明らかになった.本アンケート調査の結果は2006年度から開始されているガイドライン改訂作業の参考資料になると期待される.<br>