著者
米野 史健 中林 一樹
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.73, no.626, pp.833-838, 2008-04-30
参考文献数
19
被引用文献数
2 3

This study aims to examine the scheme for restoration of condominiums damaged by the Earthquake of 1999 in Taiwan. An outline of damages for housing, support measures for reconstruction and repair of condominiums, the application situation of support measures, and the progress of reconstruction projects are surveyed and discussed. The results are shown as follows: (1) the government attached improtance to restoration of condominiums, various support measures are enforced and expanded in stages; (2) the semipublic foundation played the importance roles in supports, especially temporary loan for owners who participate in project and purchase of ownership from nonparticipants by the foundation are effective; (3) despite these wide and sufficient supports, an progress of reconstruction projects is very slow and there still remains many condominiums without being rebuilt seven years after the earthquake.
著者
池田 浩敬 中林 一樹
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.1, pp.125-130, 1999-11
参考文献数
6
被引用文献数
3

The purpose of this study is the production of a knowledge for preparedness of recovery and reconstruction measures. In this case study of the 1995 Great Hanshin-Awaji Earthquake, we estimated the degree of social/economic damage such as the decrease of population, amount of sales, number of shops and factories, manufacturing products and so on after the earthquake by 18 municipal regions that were damaged severely. Additionally we analysed the relationship between those damages and characteristics of local economy and society. As a result, the degree of population decrease is related closely to houses damage ratio, owner-occupied house ratio and low-income ratio. The damage of manufacturing is also related to damage ratio of buildings, but not to productivity. The damage of retail is related to the decrease of population as regional consumers.
著者
中林 一樹 饗庭 伸 市古 太郎 池田 浩敬 澤田 雅浩 米野 史健 福留 邦洋 照本 清峰
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

近年、アジアでは多くの地震災害が発生した。そのうち、日本では阪神・淡路大震災(1995)、新潟県中越地震(2004)、トルコ北西地震(マルマラ地震:1999)、台湾集集地震(1999)を取り上げて、地震災害からの都市と住宅の復興過程の実態及び関連する法制度の比較研究を行ってきた。震災復興は、被災した現地での再建復興「現地復興」と、被災した地区を離れ住宅・生活を再建復興する「移転復興」がある。いずれの国でも、災害復興に当たって、現地復興と移転復興が行われているが、そこには対照的な復興過程が存在することが明らかになった。日本では自力復興を原則とし、持家層は現地復興を基本としているが、被災現地が危険な状況にあるなど移転が望ましい場合にのみ移転復興(防災集団移転事業)が行われる。他方、借家層は多くが被災した現地を離れて近傍あるいは遠隔地の借家や災害復興公営住宅に個別に移転復興を行う。また、都市部の震災復興の特徴的な課題は、土地区画整理事業・都市再開発などの都市基盤整備を伴う復興の推進と区分所有集合住宅の再建に見られたが、中山間地域の復興では、現地復興を原則としながらも、高齢化は地域復興の大きな阻害要因となり、孤立した集落などの集団移転による移転復興が選択されている実態が明らかとなった。他方トルコでは、被災現地は地盤条件が悪いために被害が大きくなったという基本認識のもと、被災現地に対して建築制限を指定するとともに、建物自己所有層に対して住戸及び事業所1戸分を郊外に新設し、特別分譲するという移転復興を基本対策として震災復興を進めてきた。その結果、自己住宅が被災したわけではない借家層に対する住宅再建に関する公的支援対策は基本的にないにも拘わらず、都市計画制限もため被災現場での集合住宅の再建は遅れ、現地復興は大幅に遅れる現状が明らかとなった。台湾では、変位した断層近傍地帯と震源域直上の中山間地域が被災地域で、その震災復興は原則として現地復興である。しかし、斜面崩壊した集落や地震に引き続き多発した台風災害による複合災害化のため、土石流などによって現地復興が不可能となった集落などは移転復興を余儀なくされている。台湾の震災復興の最大の特徴は、民営型の重建基金会(復興基金)が地域社会の生活再建や区分所有の集合住宅の再建などの取り組みをまちづくり(社区営造)として支援し、新たな復興手法を創設して、柔軟に震災復興を進めていったことである。また、このような3地域の震災復興過程における特徴を比較研究するとともに、トルコ及び台湾では、事例的に市街地の復興現状をGISに基づく写真等のデータベースを試作した。
著者
鏡味 洋史 鈴木 有 宮野 道雄 岡田 成幸 熊谷 良雄 中林 一樹 大西 一嘉 多賀 直恒
出版者
北海道大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

本研究では地震災害事象について発災を出発点とし、緊急対応、復旧対応、復興、そして次の災害に対する準備に至る時系列の中で、対象としては個人・世帯を出発点とし、地域社会、地域行政体、国、国際に至る空間軸でできる限り広く問題設定を行った。個別の災害情報管理の問題を情報の受信者である被災者・被災地の側からのアプローチと情報発信側となる行政体など各組織・セクターからのアプローチで展開し、情報管理のあるべき姿、ガイドライン構築を目指した。各分担課題は、全体の枠組みを整理するもの、情報システムの視点を被災者側におく課題、視点を対応組織の側におく課題の3種類に区分してすすめ、最終年度には研究の総括を行った。被災者側の視点からは、被災者の住環境からの情報ニーズの把握、災害弱者を対象とした情報伝達・収集システムの提案、郵便配達システムを活用した情報システムの提案、地域の震災抑制情報の有効性、住民主体の復興まちづくりにおける情報ニーズの把握がなされた。対応組織の側からは、地方行政体による被災情報の収集状況に関する時系列モデル化、地震火災については消防活動訓練システムの構築、災害医療情報については阪神・淡路大震災の事例を分析したシステム化の方向、ライフライン停止に伴う生活支障を計量化の提案、都市復興期における情報の役割、が明らかにされている。各課題では、既往の地震災害に基づく情報ニーズの整理、それに基づく情報管理のあるべき姿の提示、プロトタイプシステムの提案へ統一した形で進めた。課題によっては、問題の大きさ、複雑さなどにより到達度の差は大きいが、大きな方向を示すことができたと考えている。本計画研究は単年度の申請であるが継続して4年間研究を行い、最終年度には報告書の刊行を行った。
著者
平井 邦彦 中林 一樹 池田 浩敬 市古 太郎 澤田 雅浩
出版者
長岡造形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では新潟県中越地震によって被害を受けた中山間地域の変容過程を継続的に記録、分析するとともに被害からの復興のあり方の検討を行った。具体的には、代表的な孤立集落に関する集落への帰村状況や生業としての農業の再開状況、住宅の修理再建状況に関して、小国町法末地区や山古志村虫亀地区における全戸調査を継続的に実施している。また、孤立状況が継続する中、地域外への避難が可能となるまでの期間の避難状況に関して、山古志村全域を対象としたヒアリング調査並びに実態把握を詳細に行っている。地域外に建設された仮設住宅での生活を余儀なくされた孤立集落の中でも、避難指示が発令され集落に立ち入ることが許されなかった山古志村の各集落では、すべての復旧・復興過程が他の集落に比べて遅れていることが明らかとなり、これは今後の震災において同様の孤立集落が発生した際に留意すべき知見として見出された。その一方、避難勧告下でも道路の仮復旧等によって地域へのアクセスが確保されている集落では、住民それぞれのペースでの再建が細々とではあるが継続的に行われ、それが本格的な復興時に重要な役割を担うことも明らかとなった。また、各地で大規模な地滑りが起きたにもかかわらず、死者数を最小限に食い止めることができた要因として、集落の形成過程や、自然地形を熟知した上で計画されている宅地や峰道の存在が大きいことも明らかとなった。これらは今後発生が想定される国内の巨大地震災害時にも中山間地域の防災対策を考える上で重要な知見となる。
著者
小坂 俊吉 塩野 計司 宮野 道雄 中林 一樹 高野 公男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.275-282, 1995-11

近年の地震災害の調査から、高齢者は健常者と比べて被災しやすく、今回の阪神・淡路大震災でもこの傾向が明らかとなった。一方、わが国の高齢化速度は早く、現在、高齢化社会から高齢社会へと移行しつつある状況にある。したがって高齢者の地震時安全性の確保や地震後の応急生活における良好な環境保持は、今後の防災対策のなかで早急に取り組むべき課題の一つとなってきている。本論は、二つの現地調査報告から高齢化社会における地震防災課題の抽出したものである。第一は、阪神・淡路大震災における高齢者の被災実態報告である。これは、地震によって新たに発生する要介護者の把握と収容の問題、および被災地の老人ホームにおける介護老人の生活確保の問題について検討を試みたものである。第二は、東京に隣接する人口40万都市でおこなった、独居老人と高齢者利用施設における地震防災対策についてのアンケート調査報告である。高齢社会における地震防災の課題を以下のように抽出した。 1) 高齢者が死傷しやすいのは、身体機能の低下によるものだけでなく、居住する住宅の地震に対ずる脆弱性による影響がある。したがって高齢者向け住宅の早急の耐震的改善・公的な高齢者住宅の提供が求められる。 2) 今回の地震では、避難所における生活の質の低下が問題となった。とくにその被害を大きな影響を受けたのは高齢者・障害者といった災害弱者であった。また、防災対策調査からも高齢者の孤独な姿が浮き彫りにされた。災害時の近隣住民の支援は日常生活における相互の交流が不可欠である。 3) 高齢者の救援を的確かつ迅速に行うためには、被災情報の早期収集の重要性が指摘される。さらに高齢者の受け入れを可能にする支援ネットワーク作りが重要な課題となる。