著者
浦田 龍之介 鈴木 満里乃 山本 真生 伊藤 将円 鈴木 皓大 伊藤 梨也花 伊藤 晃洋 飯島 進乃 屋嘉比 章紘 鈴木 彬文 井川 達也
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.188-192, 2023 (Released:2023-06-15)
参考文献数
22
被引用文献数
1

〔目的〕本邦理学療法分野の症例報告における情報の欠落の実態について調査することとした.〔対象と方法〕2019年に日本国内の学術雑誌に掲載された理学療法に関する症例報告を対象とした.医中誌Webを含む4つの電子検索データベースを用いて文献を網羅的に収集した.症例報告における情報の欠落について,CAse REport guidelinesを用いて評価した.〔結果〕253件の症例報告が選択された.患者の個人情報の項目では遵守率が100%であった.アブストラクトと本文に関する計12項目では,遵守率は50%未満であった.〔結語〕本邦理学療法に関する症例報告のなかには,必要情報の欠落により読者の誤解を招く表現が用いられている可能性が示唆された.
著者
高松 大騎 小林 江梨子 伊藤 晃成 佐藤 信範
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.139-150, 2016 (Released:2016-05-31)
参考文献数
8

医療保険制度における薬剤服用歴管理指導料の算定は, 現在, 紙形式の手帳が従来より用いられている. 薬局を対象として, 紙形式および電子化形式のお薬手帳に含まれるデータの種類などを明らかにするため, アンケート調査を行った. また, 薬局に来局した患者を対象として, お薬手帳に対する患者の意識を明らかにするため, アンケート調査を行った. 1,000薬局のうち547薬局が回答を返送してきた. 対象としたすべての薬局が “紙媒体のお薬手帳” を利用していたが, “電子化お薬手帳” を “紙媒体のお薬手帳” とともに使用している薬局は, 回答した薬局の15.9%にすぎなかった. 307人の患者に回答を依頼し227人の患者が回答した. “電子化お薬手帳” を利用している患者は, 回答した患者の0.5%にすぎなかった. また, “電子化お薬手帳” に記載されている項目は, “紙媒体のお薬手帳” に記載されている項目に比べて少なく, ばらつきがあった. お薬手帳を利用している患者のうち, 20.9%はお薬手帳に自分自身で情報を記入することがあると答えた ( “血圧”, “体調の変化” など). お薬手帳に対する患者の意識としては, お薬手帳の情報を, “みせたい医療関係者だけにみせたい” とする患者と, “医療関係者ならだれでもみてもらってよい” とする患者に考え方が二分していた. したがって, “電子化お薬手帳” の運用にあたっては, “紙媒体のお薬手帳” の項目と同様の項目を網羅して記載すること, 患者の意識に応じて閲覧の制限ができることなどが必要と考えられた.
著者
柏木 啓佑 尾賀 俊哉 伊藤 晃
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.55-59, 2023 (Released:2023-09-30)
参考文献数
10

愛知県の水稲乾田直播栽培におけるシハロホップブチル抵抗性イヌビエに対し,有効な代替除草剤を検討した。現地圃場での試験では,ペノキススラム,ビスピリバックナトリウム塩処理で高い防除効果が得られた。また,県内各地の26地点の調査では,18地点からシハロホップブチル処理で枯死率の低いイヌビエが見いだされた。いずれの集団も上記2剤に加え,フロルピラウキシフェンベンジル処理において,枯死率が100%となった。以上より,シハロホップブチル抵抗性イヌビエは愛知県内広域に発生していること,ペノキススラム,ビスピリバックナトリウム塩,フロルピラウキシフェンベンジルが有効な代替除草剤であることが示された。
著者
伊藤 晃 吉川 大弘 古橋 武 池田 龍二 加藤 孝浩
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第26回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.157, 2010 (Released:2010-11-05)

アンケートは,企業が市場の動向を調査するための重要な手段の一つであり,アンケートデータを解析し,得られた知見をもとにマーケティング戦略の立案を行うことがしばしば行われている.アンケートデータの解析には様々な手法が用いられているが,その一つにアソシエーション分析がある.アソシエーション分析とは,データに潜むルール(規則性)を,ルールに対する評価指標に基づいて抽出する手法であり,データからの知識獲得において有用な方法である.しかし,アソシエーション分析では一般的に,抽出されるルール数が膨大になり,ルール間の関係性や解析者にとって興味深いルールの把握が困難となる.そこで本稿では,階層グラフ構造を用いてルール間の関係性を可視化する手法を提案する.実際のアンケートデータに提案手法を適用し,解析者とって興味深いルールの探索を行うことが可能となることを示す.
著者
伊藤 晃 山村 千絵
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.134-144, 2010-08-31 (Released:2020-06-26)
参考文献数
35

【目的】唾液は咀嚼や嚥下に重要であり,唾液分泌が少ない場合は,マッサージや口腔の運動により分泌を促す方法がとられている.しかし,これらを適応できるのは,意識レベルが良好で自発運動が可能な人たちが主である.本研究では,患者さんの状態によらず簡便に行うことができるニオイ刺激に注目し,ブラックペッパーオイル(Black Pepper Oil, 以下BPO)とカルダモンオイル(Cardamon Oil, 以下CO)のニオイを嗅がせることにより,唾液分泌量がどう変化するかを定量的に調べることを目的とした.【対象と方法】被験者は,アレルギー,口腔乾燥症状,嗅覚障害等がない健康な成人男女43 名(男性18名,女性25 名,平均年齢±標準偏差=21.8±1.2 歳)とした.ニオイ刺激の試料はアロマオイル100%の原液を用い,BPO,CO および無臭対照試料のホホバオイル(jojoba oil, 以下JO)の3 種類とした.それらをスティック状のムエットに塗布し,被験者の鼻孔の前30 mm の位置に呈示し,通常呼吸によりニオイを嗅がせた.ニオイを嗅いでいる間の唾液分泌量を30 秒間ワッテ法にて4 回ずつ測定し,その平均値を測定値とした.認知的要因が唾液分泌に影響を及ぼす可能性を排除するため,ニオイ試料の名前の開示は実験終了後に行った.【結果】安静時やJO 刺激時に比べ,BPO 刺激時やCO 刺激時に唾液分泌量が有意に増加した.BPO 刺激時とCO 刺激時の唾液分泌増加量に有意差はなかった.また,男性と女性による増加量の差はなかった.【考察】BPO は島皮質を活性化し嚥下反射の潜時を短縮すること等がすでに明らかになっており,BPO のアロマパッチは嚥下リハビリテーションの臨床に応用されている.さらに,本研究により,BPO やCO には唾液分泌促進効果があることが定量的に示された.ニオイ刺激を用いて,唾液分泌等の口腔内環境を改善させることができる可能性が示唆された.
著者
長尾 文子 岩田 知那 伊藤 晃 下 和弘 城 由起子 松原 貴子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0326, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】国民生活基礎調査において肩こり有訴者率は男女ともに非常に高い。肩こりには身体・心理・社会的要因が関与するといわれており,身体的要因としては肥満度が高いこと,運動量が少ないこと,社会的要因としては睡眠の質が悪いことなどが報告されている(大谷2008,岸田2001)。一方,心理的要因については,ストレスとの関係性が指摘されており(沓脱2010),肩こり有訴者はストレス下に曝露されていることが示唆される。ストレスと健康を調整する機能をストレスコーピングといい,適切なストレスコーピングがなされない場合,痛みや不安・抑うつといったさまざまなストレス応答が表出され(嶋田2007,牧野2010),心身の健康に影響を及ぼすことが予測される。そこで今回,身体的・社会的要因に加え,心理的要因としてはストレスコーピングに着目し,若年者を対象に肩こりの身体・心理・社会的特性について検討した。【方法】対象は大学生470名(19.9±1.4歳)で,頚肩部痛に対して受診歴がある者,肩こりの他に慢性痛を有する者,発症後3か月未満の肩こりを有する者は除外し,肩こりのある者(肩こり群)とない者(非肩こり群)に分類した。評価項目は肩こりの程度(VAS),初発年齢,初発原因,誘発要因,罹患期間,機能障害(NDI),心理的因子の疼痛自己効力感(PSEQ),破局的思考(PCS)を肩こり群のみで,健康関連QOL(EQ-5D),身体的因子の身体活動量(IPAQ),心理的因子のストレスコーピング(TAC-24),ストレス応答(PHRF-SCL),社会的因子の睡眠状態(睡眠時間,睡眠時間の満足度,睡眠の質),家庭環境(世帯構造,家庭生活の満足度)を両群で調査した。統計学的解析には,群間比較にMann-WhitneyのU検定,またはΧ2検定,相関にSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準を5%とした。【結果】肩こり有訴者率は28.7%(肩こり群82名,非肩こり群204名)であった。肩こりの程度は42.8±21.9,初発年齢は16.1±2.5歳,罹患期間は3.0±2.1年,初発原因および誘発要因は同一姿勢が多かった。NDIは5.2±4.4点,PSEQは36.2±11.0点,PCSは「反芻」9.6±4.6点,「無力感」5.3±3.8点,「拡大視」3.6±2.8点であった。肩こり群は非肩こり群と比較して,PHRF-SCLの「疲労・身体反応」,TAC-24の「計画立案」,「責任転嫁」,「放棄・諦め」,「肯定的解釈」,家庭生活の満足度の「やや不満」が有意に高い一方,EQ-5Dの効用値,EQ VAS値,TAC-24の「カタルシス」,「気晴らし」が有意に低かった。IPAQ,睡眠時間,睡眠時間の満足度,睡眠の質,世帯構造に有意な差はなかった。肩こり群の各調査項目において中等度以上の有意な相関関係は認められなかった。【考察】今回,肩こりは中高生からの発症が多く,初発原因および誘発要因が同一姿勢であったことから,学業やVDT作業などの座位で同じ姿勢を保持する機会が増えることが肩こりの発症に関係すると考えられた。また成人(大谷2010)同様,若年者においても肩こりの存在が有訴者の健康関連QOLを低下させる可能性が考えられた。身体・心理・社会的特性を検討した結果,身体的要因は健常者と差がなかったが,心理的・社会的要因で特徴が認められた。社会的要因は,肩こり群で家庭生活に不満をもつ者が多かったことから,ストレッサーの一因となる可能性が考えられた。心理的要因のストレスコーピングでは,肩こり有訴者はストレッサーに積極的に対応しようと試みる一方,ストレッサーにより起こる情動の発散や調整ができないため,ストレッサーの解決が困難な場合はストレッサーを回避する傾向がうかがえた。回避系のストレスコーピングはストレス応答の表出を高めることが報告されており(坂田1989,尾関1991),今回の肩こり群で「疲労・身体反応」が強く表出されていたことから,肩こり有訴者はストレッサーを適切に対処できていない可能性が示唆され,また,身体面に表出されるストレス応答が肩こりを惹起,増悪させる要因となりうることが示唆された。適切なストレスコーピングにより肩こりやQOLの改善が期待されるため,若年者の肩こりマネジメントにはストレスコーピングスキルの向上を含め,心理社会的アプローチを加えることが必要と考える。【理学療法学研究としての意義】我が国で有訴者の多い肩こりに対して身体・心理・社会的側面から特性を検討した結果,肩こり有訴者は特徴的なストレスコーピングを有することがうかがえ,肩こりをマネジメントするうえで重要な所見と考える。
著者
木村 和樹 久保 晃 石坂 正大 伊藤 晃洋 塩見 誠
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.615-618, 2015 (Released:2015-09-03)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

〔目的〕Semmes-Weinstein-Monofilament(以下SWM)を使用して定量的に足底触圧覚を測定し,加齢変化を足底部位別に検討した.〔対象〕日常生活動作の遂行に支障のない男性62名,女性174名,合計236名(472肢)とした.年代を20-29歳群,55-74歳群,75-94歳群の3群に設定した.〔方法〕SWMを使用し両足底の母趾,母趾球,小趾球,踵の計8ヵ所を評価し,加齢と部位の影響を検討した.〔結果〕55歳までに足底触圧覚閾値は上昇し,部位別では踵が他の部位より触圧覚閾値が有意に高かった.〔結語〕加齢によって足底触圧覚閾値は上昇し,踵部がより高くなる事が示唆された.
著者
久保 晃 石坂 正大 貞清 香織 小野田 公 屋嘉比 章紘 原 毅 伊藤 晃洋 小林 薫 沢谷 洋平
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.719-722, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
6
被引用文献数
1

〔目的〕入試区分の相違による新入生の志願理由の違いを明らかにすること.〔対象と方法〕2018および2019年に国際医療福祉大学理学療法学科に入学し,協力の得られた199名とした.19項目の志願理由を「とても思う」,「思う」,「思わない」,「全く思わない」の4件法で調査した後,最重要項目を抽出させ入試区分との関連性を検討した.〔結果〕多くの項目で有意差が認められ,専願入学者で肯定的回答率が高かった.最重要項目上位3項目とその順位は専願および併願入学者で一致していた.〔結語〕専願と併願入学者の間には,多くの志願理由項目で有意差が認められ,志願の理由や重みづけが異なることが示唆された.
著者
小牧 瞳 伊藤 晃一
出版者
千葉大学大学院人文公共学府
雑誌
千葉大学大学院人文公共学府研究プロジェクト報告書 = Chiba University Graduate School of Humanities and Study of Public Affairs Research Project Reports (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.324, pp.41-52, 2018-02-28

[要旨] 本稿は、千葉大学教育学部藤川研究室で12年にわたり継続されている「読書会」と呼ばれる活動についての報告である。本「読書会」では、哲学書等の難解な文献を参加者で一文ずつ解釈するとともに、担当者が次回の「読書会」までに、「読書会」の中で行われた議論を論文調にまとめる、「プロトコル」と呼ばれるものを作成する。藤川研究室では、この「プロトコル」作成という営みを大切にしてきた。前半は、現在行なっている「読書会」の様子の記述し、「読書会」発足の経緯と、現在までの変遷をまとめた。後半は、本読書会と、世間一般に呼ばれている典型的な読書会と、大学等で一般的に行われている文献購読形式の演習との違いを、ゲーミフィケーションの知見を用いて比較検討した。他の読書会のゴールは文献を読み、議論することであるが、当「読書会」は「プロトコル」作成が一つのゴールと認知されており、それが参加者のモチベーションを支えている。
著者
岩佐 麻未 高沢 百香 伊藤 晃 牧野 七々美 城 由起子 松原 貴子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0425, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】疼痛に対する理学療法の有効性に関して1990年代より系統的な取りまとめが各国でなされ,その中でも運動は強く推奨されている。そのエビデンスは,近年の運動による疼痛緩和(exercise-induced hypoalgesia:EIH)に関する報告で示されているが,いずれも高強度・長時間の運動による効果であり(Julie 2010),疼痛患者に処方することは難しい。また,疼痛に対する理学療法を想定すれば低負荷の有酸素運動が適するが,歩行やランニング,自転車運動など有酸素運動の方法による効果の違いは明らかにされていない。一方,これまで我々は3METs程度の歩行,自転車エルゴメーターによる下肢運動,クランクエルゴメーターによる上肢運動の低負荷有酸素運動により広汎なEIHが得られる可能性について報告した(山形2013)。しかし,個人の運動耐性能により身体へ負荷される運動強度は異なることから,運動強度を統一したうえで運動方法の違いによるEIH効果を厳密に比較するまでには至っていない。そこで本研究では,個々の運動耐性能をもとに運動強度を統一し,歩行,下肢運動,上肢運動といった運動方法の違いによるEIH効果について比較検討した。【方法】対象は,健常成人45名(男性22名,女性23名,年齢21.4±0.7歳)とし,全身運動群,下肢運動群,上肢運動群の3群(各群15名)に無作為に振り分けた。全身運動群はトレッドミル(STM-1250,日本光電)による歩行,下肢運動群は自転車エルゴメーター(Ergociser EC-1200,キャットアイ)による下肢ペダリング運動,上肢運動群はクランクエルゴメーター(881E,Monark)による上肢ペダリング運動を各20分間行わせた。また,運動強度は予測最大心拍数を算出し,Karvonen法を用いて40%heart rate reserve(HRR)に設定した。評価項目は,圧痛閾値,心拍変動,および主観的運動強度の指標であるBorg scaleとした。圧痛閾値はデジタルプッシュプルゲージ(RX-20,AIKOH)を用い,僧帽筋,上腕二頭筋,前脛骨筋にて運動前(pre),運動終了直後(post 0)および15分後(post 15)に測定し,pre値で除した変化率を測定値とした。心拍変動は携帯型心拍変動記録装置(AC-301A,GMS)にて心電図を実験中経時的に記録し,心拍数,および心電図R-R間隔の周波数解析から低周波数成分(LF:0.04~0.15 Hz),高周波数成分(HF:0.15~0.40 Hz,副交感神経活動指標)とLF/HF比(LF/HF,交感神経活動指標)を算出し,圧痛閾値の測定に対応した時点のそれぞれ前1分間の平均値を測定値とした。統計学的解析は,経時的変化にはFriedman検定およびTukey-typeの多重比較検定,群間比較にはKruskal-Wallis検定およびDunn's法による多重比較検定を用い,いずれも有意水準は5%とした。【結果】圧痛閾値は,3群とも全ての測定部位にてpreに比べpost 0で上昇し,全身運動群では全ての測定部位,下肢運動群では上腕二頭筋と前脛骨筋,上肢運動群では前脛骨筋でpost 15においても上昇を示した。また,全身運動群は他群に比べ僧帽筋のpost 15で高値を示した。心拍変動は,3群ともpreに比べ運動中にHFが減衰,心拍数とLF/HFが増大し,群間に差はなかった。またBorg scaleも群間に差はなかった。【考察】すべての運動方法で,運動中の心拍数,自律神経活動,主観的疲労感は同程度であったことから,個々に負荷された運動強度は同一であった。運動方法にかかわらず非運動部を含め広汎な痛覚感受性の低下,およびその持続効果を認め,さらにその効果は全身運動で最も顕著であった。有酸素運動に関する先行研究では,60%HRR以上の高強度負荷によりEIHが生じ,さらに30分~2時間の負荷でその効果は大きいとされている(Kodesh 2014, Naugle 2014, Hoffman 2004)。しかし今回,低負荷・短時間の運動であっても,その方法にかかわらずEIHが生じた。さらに,歩行のようなより広範部の運動の方がEIH効果は大きかったことから,有酸素運動のEIHは全身性の運動で効果が増大する可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】有酸素運動は低負荷であっても疼痛を緩和させ,特に,誰もが簡便かつ安全に行える歩行のような全身性の運動がより大きなEIH効果をもたらす可能性が示されたことは,疼痛マネジメントとしての運動療法を確立する一助となる意義深い結果である。
著者
伊藤 晃一 イトウ コウイチ Koichi ITO
出版者
千葉大学教育学部授業実践開発研究室
雑誌
授業実践開発研究 (ISSN:18848818)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.17-26, 2009-03

子どもたちと学校に招かれた外国人とがなんらかのかかわりをするというような異文化交流の実践のほとんどは、今まで授業の中で行われていた。しかし筆者は、授業の中で行われる異文化交流の実践が、授業がもつ特徴によってむしろ制約されてしまい、本来の意味での異文化交流が出来ていないのではないかという問題意識を持つようになった。本研究は、授業の特徴が異文化交流の実践にどのような影響を及ぼしているのかを詳しく検討した上で、その問題点を指摘し、授業の枠組みをはずした場における異文化交流の実践を作成し、その成果と課題を考察し、学校における新しい異文化交流の可能性を見いだすことを目的としている。実践は、実践時間をあえて授業から切り離し、休み時間に行った。実践の成果としては、子どもたちが多様な仕方で外国人とかかわろうと試行錯誤する様子が見受けられ、それを休み時間に行った成果と結論づけた。一方で、今後このような実践を学校文化の中にどう位置づけていくのかということや、異文化交流ということばが、果たして客観的なことばとして機能するのかということや、子どもたちのかかわりを記述するとはどういうことかという問題も明らかになった。