著者
佐藤 伸一 井本 精一 小島 正明 神 勝紀 唐澤 豊
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.227-233, 1994-06-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
19

10および20%寒天飼料と20%セルロース飼料をラットに3カ月間自由摂取させ, 食品としての寒天の栄養生理効果を検討し, 以下の結果を得た。1) 10および20%寒天群で飼料摂取量の増加がみられたが (10%p<0.05, 20%p<0.01), 飼料効率およびエネルギー消化率には低下がみられ (10%p<0.05, 20%p<0.01), 20%寒天群では体重増加に抑制傾向が認められた。また, 20%寒天群では摂水量の増加が認められた (p<0.01)。2) 10および20%寒天群で盲腸を除く全腸管の湿重量に増加傾向が認められた。3) 10および20%寒天群で排糞重量に増加がみられ (p<0.01), とくに20%寒天群では顕著であった。また, 10および20%寒天群では盲腸内のアンモニア濃度に減少が認められた (10%p<0.05, 20%p<0.01)。4) 20%寒天群で血漿中のグルコースおよび尿素窒素に減少がみられ (p<0.05), 中性脂肪にも減少傾向が認められた。5) 動物の外観, 行動および呼吸などの一般状態, 血液学的検査, 盲腸内容物のpH, 揮発性脂肪酸濃度および腸内細菌叢, 腸管の長さ, 解剖ならびに肝臓, 腎臓, 食道, 胃, 十二指腸, 空腸, 回腸, 盲腸, 結腸および直腸の病理組織学的検査には寒天の影響は認められなかった。6) 20%セルロース群では, 以上の点について20%寒天群とほぼ同様の変化がみられたが, 摂水量, アンモニア濃度, 尿素窒素には変化は認められず, 排糞重量の増加も20%寒天群ほど顕著ではなかった。
著者
田中 守 中家 美千代 佐藤 伸一
出版者
比較眼科学会
雑誌
比較眼科研究 (ISSN:02867486)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.29-33, 2013-12-27 (Released:2015-03-28)
参考文献数
6

近年、緑内障治療薬の開発の高まりにより、緑内障モデル動物が注目されている。カニクイザルは眼球構造がヒトに近く、これまでのところレーザー誘発高眼圧モデルとして多く用いられてきた。緑内障の判定は眼圧を測定することで行われてきたが、測定値にバラツキが大きいことが問題であった。さらに、最近の研究では緑内障であっても必ずしも高眼圧を呈さないことがわかっており、眼圧以外の指標による緑内障の判定法が求められていた。ヒトにおいては日本緑内障学会の「緑内障性視神経乳頭・網膜神経線維層変化判定ガイドライン(以下、ガイドライン)」1)が発行されており、眼圧に依存しない評価が利用されている。また、カニクイザルにおける無麻酔下での眼圧測定には事前に測定環境への長い馴化期間を要する2)ことから、より簡便で測定環境に影響されにくく、眼圧に替わる数的な指標による緑内障の判定は有用であると考えられる。このような背景のもと、ガイドラインのカニクイザルへの応用の可能性を検討する第一ステップとして、無処置カニクイザル97匹(♂:48匹、♀:49匹)の両眼194眼のデジタル眼底写真を撮影し、緑内障性変化有無の判定に有効とされる、質的判定及び視神経乳頭陥凹の最大垂直径と最大垂直視神経乳頭径の比(以下、垂直C/D比)3)の計測を行なった。なお、本実験の目的は眼底写真による垂直C/D比を用いた緑内障の判定であったことから、スリットランプのスリット光による視神経乳頭部周囲の凹凸については観察しなかった。その結果、カニクイザルの視神経乳頭は垂直方向に縦長の楕円形であった。視神経乳頭陥凹は視神経乳頭のほぼ中心に位置し、垂直方向にやや縦長の楕円形であった。リムの形状は乳頭の上方及び下方がやや厚いが、全周にわたってほぼ均等であった。垂直C/D比の平均は、雄の左眼で0.56±0.08、右眼で0.55±0.08、雌の左眼で0.59±0.08、右眼で0.60±0.08であった。両眼の垂直C/D比の差は、いずれの動物においても0.00~0.07であり、平均は0.02であった。これらの結果から、緑内障と判定された動物は見られなかった。以上のように垂直C/D比計測の結果、カニクイザルにおける緑内障性変化の判定に本ガイドラインを応用することは可能であると考えられた。
著者
芦田 美輪 藏岡 愛 西村 香織 芦塚 文美 牛島 信雄 本間 喜蔵 西本 勝太郎 岩田 貴子 竹中 基 佐藤 伸一
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.43-47, 2010-02-01
被引用文献数
1

15歳(中学生),地元相撲クラブの男子。体幹,四肢の鱗屑を伴う紅斑と左側頭部のBlackdot ringwormにて2007年3月に当科を受診した。<I>Trichophyton tonsurans</I>(<I>T. tonsurans</I>)を分離し,塩酸テルビナフィンの3ヵ月間内服にて治癒した。高校の相撲部に入部後も再発を繰り返し,その都度治療により治癒した。再発のたびに頭髪のhair brush法にてコロニー数を確認した。部内における皮膚の症状を認める部員は,試合や遠征合宿の後に増加する傾向にあった。アンケートによる調査で,顧問教官の指導がなく,<I>T. tonsurans</I>感染症の認識に乏しいことが分かり,再発を繰り返す原因として無症候性キャリアーの存在が考えられた。小・中学生の相撲クラブとの交流もあり,さらなる感染の拡大を防止するためにも,継続的な集団検診,指導者への啓発,治療の徹底が重要と考えた。
著者
長谷川 稔 佐藤 伸一 古瀬 忍 長谷川 洋一 森 俊典 八田 尚人 竹原 和彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.1275, 1998 (Released:2014-08-19)

症例1は69歳,男性.1年半前より手指のこわばり,四肢の関節痛があった.また,両手掌に多発性の皮下結節と手指の拘縮が出現してきたため,近医にて全身性強皮症(SSc)と診断されていた.当科での精査では皮膚硬化は認められず,リウマトイド因子(RF)が陽性であった.両手のX線像で近位指節間(PIP)関節に多発性のびらんを認めた.Palmar fibromatosisを合併したRAと診断した.Palmar fibromatosisによる手指の拘縮により慢性関節リウマチ(RA)がSScと誤診されたものと考えられた.症例2は63歳,女性.半年前より朝のこわばりと多発性の関節炎が出現し,近医にて抗トポイソメラーゼⅠ抗体が陽性とされ,SScと誤診されていた.皮膚硬化はみられず、当科での再検では抗トポソイメラーゼⅠ抗体やRFを含む自己抗体はすべて陰性であった.両手のX線像でPIP関節の腫脹を認め,sero-negative RAと診断した.ELISAによる抗トポイソメラーゼⅠ抗体の疑陽性によりSScと誤診されたものと考えられた.症例3は47歳,女性.2ヶ月前からの朝のこわばりと多発の関節炎が出現してきたものの,X線上異常が検出されなかったためRAが否定され,近医にてSScと診断されていた.当科での精査では皮膚硬化は認められず,RFが陽性であった.両足のX線像で足趾に嚢胞形成を認めた.X線での骨変化が軽いためにRAが否定され,SScと誤診されていたと考えられた.今後はこのような誤診例が増加する可能性があり,注意が必要と考えられた.
著者
竹原 和彦 白崎 文朗 佐藤 伸一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

全身性強皮症は、皮膚や肺、心、腎、消化管などに広範な線維化や血管障害をきたす結合織疾患のひとつであり、その発症に関わる重要な細胞増殖因子としてトランスフォーミング成長因子(transforming Growth Factor-β,TGF-β)、結合組織成長因子(Connective Tissue Growth Factor, CTGF)が注目されている。本研究は、TGF-βの皮下投与により誘導される新生マウスの皮膚線維化モデルをトランスジェニックマウスを用いて作製し、CTGFの皮膚線維化機構における役割について検討した。使用したマウスは、1型コラーゲンのα2鎖をコードするproα2鎖(I)コラーゲン遺伝子のプロモーター領域にレポーター遺伝子を組み込んだマウスである。このモデルにおいて、皮下にTGFβのみを注入すると4日目に線維化が誘導されるが、8日目には消失する、しかし、TGFβを3日間注入し、次にCTGFを4日間注入すると線維化が持続する。コラーゲン遺伝子の転写活性は、TGFβ単独投与群では、4日目をピークに低下し8日目にはほぼ0になったのに対し、TGFβ/CTGF連続投与群では8日目まで高値が持続し、さらにTGFβ/CTGF連続投与群でコラーゲン遺伝子が転写されている線維芽細胞数が増加していた。このことより、CTGFはコラーゲン遺伝子を発現する線維芽細胞を増加させることにより、遺伝子の転写活性を維持し、コラーゲン産生を亢進させると考えられた。今後は、この皮膚線維化モデルにおけるサイトカインやケモカインの関与についてさらに検討したいと考えている。