著者
小川 文秀 佐藤 伸一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.349-358, 2006 (Released:2006-12-31)
参考文献数
49
被引用文献数
7 7

我々の皮膚は常に外界からの様々な刺激にさらされている.その刺激の代表的なものとして太陽光線中の紫外線があげられる.紫外線は皮膚癌の発生の誘因となる他に,紫外線の曝露により皮膚には光老化と称される変化が生じてくる.光老化の特徴的な変化として皮膚表面のびまん性の色素沈着と深い皺があげられるが,その変化を特徴づけるものとして皮膚真皮におけるsolar elastosisと称される膠原線維・弾性線維の変化がある.この皮膚光老化には紫外線による酸化ストレスが深く関与していると考えられている.一方,酸化ストレスが関与する全身疾患の一つとしてとして全身性強皮症(systemic sclerosis ; SSc)があげられる.SScは全身の皮膚硬化を主徴とする膠原病であるが,レイノー症状をはじめとする血管障害も病態形成に深く関与していると考えられている.本稿では,酸化ストレスが皮膚に与える影響を光老化とSScに関して我々の研究結果とこれまでの研究知見を中心に概説する.
著者
松下 貴史 佐藤 伸一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.333-342, 2005 (Released:2005-11-05)
参考文献数
64
被引用文献数
4 12

B細胞の生存・分化・抗体産生に重要な役割を果たすBAFF (B cell activating factor belonging to the tumor necrosis factor family)はTNFファミリーに属する分子で単球,マクロファージ,樹状細胞の細胞膜上に発現され,可溶型として分泌される.BAFFの受容体にはBAFF-R (BAFF receptor), BCMA (B-cell maturation antigen)およびTACI (transmembrane activator and calcium-modulator and cyclophilin ligand interactor)の3種類が知られておりいずれもB細胞の広範な分化段階において発現がみられる.BAFFシグナルは主にBAFF-Rを介して伝えられ,TACIは抑制性のシグナルを伝達している.BAFFはB細胞上の受容体との結合により未熟B細胞の生存と分化,成熟B細胞の増殖,自己反応性B細胞の生存を制御する.BAFF過剰発現マウスでは全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus ; SLE)やSjögren症候群に類似した症状を呈する.さらにSLE自然発症モデルマウスや関節リウマチ(rheumatoid arthritis ; RA)モデルマウスであるコラーゲン誘導関節炎においてBAFFアンタゴニストの投与にて症状が改善することが明らかにされた.そしてSLEやRA,Sjögren症候群,全身性強皮症の患者において血清BAFF濃度の上昇が報告されている.BAFFは末梢性B細胞の分化・生存に影響することから,BAFF/BAFF受容体の異常が末梢性トレランスの破綻を来たし,リウマチ性疾患の発症に関与していると推測される.近年SLEやRAにおいてB細胞をターゲットした治療が脚光を浴びており, BAFFが有望な治療標的となることが期待されている.
著者
中根 俊成 池田 徳典 佐藤 伸一 田村 直人 樋口 理 鈴木 隆二 坪井 洋人 伊原 栄吉 宋 文杰 川上 純 佐藤 和貴郎
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

自己免疫性自律神経節障害は自律神経系が免疫異常の標的となる比較的新しい疾患概念である.本症では抗自律神経節アセチルコリン受容体抗体は病原性自己抗体として病態の鍵となる役割を果たす.自己免疫性自律神経節障害は自律神経系外の症候や膠原病などの併存,小児症例が存在する.こういった「多様性」が本症の診断しにくさ,難治化につながっている.本研究では1)自己抗体の病原性検証,2)病態モデル開発,3)小児症例,膠原病症例における臨床的特徴の解析,を遂行する.「複雑な病態と臨床像=多様性」への多角的アプローチが自己免疫性自律神経節障害の診断基準作成,治療ストラテジーの確立に貢献すると考えられる.
著者
濱口 儒人 藤本 学 長谷川 稔 小村 一浩 松下 貴史 加治 賢三 植田 郁子 竹原 和彦 佐藤 伸一 桑名 正隆
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.9, pp.1837-1843, 2009-08-20 (Released:2014-11-28)

抗U3RNP抗体は代表的な抗核小体型抗体の1つであり,全身性強皮症に特異的とされる.今回われわれは,金沢大学皮膚科で経験した抗U3 RNP抗体陽性全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc)8例(女性6例,男性2例,発症時の平均年齢44歳)における臨床症状,治療,予後について検討した.病型分類ではdiffuse SSc(dSSc)が4例,limited SSc(lSSc)が4例だった.全例でレイノー症状を認め,指尖陥凹性瘢痕,手指の屈曲拘縮,びまん性の色素沈着を伴う例が多く,dSScでみられる皮膚症状を高率に有していた.一方,内臓病変に関しては,1例で強皮症腎を発症したものの,肺線維症や肺高血圧症,心病変など重篤な臓器病変を有する頻度は低かった.6例で皮膚硬化に対し中等量のプレドニゾロンが投与され,皮膚硬化の改善がみられた.観察期間中に死亡した症例はなかった.欧米では,抗U3 RNP抗体陽性SScはdSScの頻度が高く,肺線維症や肺高血圧症,心筋線維化による不整脈や心不全,強皮症腎などの重篤な臓器病変を有することが多いと報告されている.また,その予後は抗トポイソメラーゼI抗体陽性SScと同等で,予後不良例が少なくないことが知られている.したがって,本邦における抗U3 RNP抗体SScは欧米の症例と比較し,皮膚症状は類似しているものの臓器病変は軽症であると考えられた.しかし,抗Jo-1抗体陽性の抗ARS症候群を合併した症例や強皮症腎を生じた症例もあり,抗U3 RNP抗体SScの臨床的特徴についてさらに多数例での検討が必要と考えられた.
著者
佐藤 伸一 小川 文秀 小村 一浩 岩田 洋平
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

傷が治る過程には、様々な因子が関与するが、B細胞と呼ばれる免疫担当細胞が関わっているとは従来考えられていなかった。しかし、今回の研究で、このB細胞に発現する重要な分子であるCD19の発現を欠くマウスでは、傷の治りが悪くなり、逆にCD19を過剰に発現したマウスでは、傷の治りが良くなることから、B細胞が傷の治る過程に重要な役割を担っていることが明らかとなった。
著者
三宅 恵介 竹澤 稔裕 伊藤 潔 佐藤 伸一郎 廣瀬 伸良
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.103-113, 2022-03-31 (Released:2022-04-07)
参考文献数
36

The purpose of this study was to clarify the tactical actions of nage-waza that are effective in scoring in judo by using a notational match performance analysis, and to provide useful knowledge in the practical field of coaching. For this purpose, we examined the relationship between (1) the type of nage-waza, (2) whether there was a renraku-henka in the nage-waza, and (3) the combination of the tori and the uke’s kumite and whether an athlete scored any points. Data from a total of 441 matches in the −60kg, −81kg, and +100kg weight classes in international competitions held in 2020 were used.The tactical actions associated with whether points were scored or not were the type of nage-waza and whether they included a renraku-henka. The combination of tactical actions that influenced the points scored was a combination of henka-waza and te-waza, and in some weight classes, combinations of henka-waza and other techniques were also effective. The combination of henka-waza and sumi-otoshi, which is classified as a te-waza, showed the highest scoring ratio in all weight classes.This study suggests for the first time that henka-waza, especially sumi-otoshi, applied during or after the opponent’s attack, is an effective tactical action for scoring regardless of weight class. These new findings indicate that in current judo competitions it is important to not only pursue single techniques but to construct tactical actions relative to the opponent. They are also expected to be useful for specific guidance in coaching.
著者
佐藤 伸一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.118, no.9, pp.1691-1695, 2008-08-20 (Released:2014-12-03)

B細胞は以前考えられていたより,免疫反応の制御において多彩かつ重要な機能を有していることが明らかとなった.さらにB細胞は自己抗体とは関係なく,抗原提示細胞やサイトカイン産生細胞などとして働き,膠原病の症状発現に必須の役割を果たすことも示された.今後,皮膚自己免疫疾患に対してもB細胞をターゲットとした治療が急速に拡大することが予想される.
著者
平井 景梧 山下 博子 友重 秀介 三島 祐悟 大金 賢司 佐藤 伸一 橋本 祐一 石川 稔
雑誌
日本薬学会第142年会(名古屋)
巻号頁・発行日
2022-02-01

アルツハイマー病やハンチントン病などの神経変性疾患は、従来の創薬手法では対応できない凝集性タンパク質が原因であり、根治療法の開発には新たな創薬アプローチが求められる。我々はこれまで、タンパク質分解誘導薬Proteolysis Targeting Chimera(PROTAC)が凝集性タンパク質の分解を誘導でき、神経変性疾患の創薬アプローチになりうることを示してきた。しかし、PROTACは連結化合物であるため分子量や極性が高く、神経変性疾患の病巣である脳へと到達しづらいと予想される。これを解決するうえで、別のタンパク質分解誘導薬である疎水性タグ(HyT)に着目した。HyTはPROTACのE3リガンドを分子量の小さい疎水性構造に置き換えた構造を持ち、標的タンパク質の表面に疎水性構造を提示する。これがタンパク質の変性状態を模倣し、タンパク質品質管理機構による認識とユビキチン―プロテアソーム系を介した分解へと導く。これを踏まえ、我々の凝集性タンパク質に対するPROTAC 1をHyTへと変換すれば分子量と極性を低下させ、中枢移行性を向上できると考えた。PROTAC 1を基に設計・合成したHyTはいずれも、ハンチントン病の原因となる凝集性タンパク質変異huntingtinの存在量を減少させた。また、脳移行性の予測に用いられる固定化人工膜カラムにより各化合物の脳移行性を推定したところ、いずれのHyTも1よりも脳移行性が良いと示唆された。この結果を参考に、一部のHyTについてマウスを用いた脳移行性試験を行ったところ、HyT 2が脳移行性を示すことを見出した。本発表ではその他の結果も併せて報告し、PROTACからHyTへの変換による活性や薬物動態への影響についても議論する。
著者
山下 尚志 高橋 岳浩 遠山 哲夫 谷口 隆志 吉崎 歩 Trojanowska Maria 佐藤 伸一 浅野 善英 赤股 要 宮川 卓也 平林 恵 中村 洸樹 三浦 俊介 三枝 良輔 市村 洋平
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.381b, 2016

<p>  全身性強皮症は免疫異常,血管障害,線維化を主要3病態とする原因不明の膠原病である.本症の病態理解・治療開発が遅れている理由の一つとして,その病態を忠実に再現した動物モデルが存在しなかったことが挙げられるが,最近我々は転写因子Fli1の恒常的発現低下により線維芽細胞,血管内皮細胞,マクロファージにおいて強皮症特有の形質が誘導できることを示し,さらに血管内皮細胞特異的<i>Fli1</i>欠失(<i>Fli1</i> ECKO)マウスでは強皮症の血管障害に特徴的な血管の構造異常と機能異常が再現できることを明らかにした.強皮症の血管障害に対しては肺動脈性肺高血圧症治療薬が有用であり,特にボセンタン(エンドセリン受容体拮抗薬)は皮膚潰瘍の新規発症を予防する効果が2つの良質な臨床試験により証明されている.また,明確なエビデンスはないが,bFGF製剤は強皮症に伴う難治性皮膚潰瘍の治療に有用であり,実臨床において広く使用されている.しかしながら,これらの薬剤が強皮症の血管障害に及ぼす影響とその分子メカニズムは未だ不明な点が多い.そこで今回我々は,<i>Fli1</i> ECKOマウスの創傷治癒異常の分子メカニズム,およびボセンタンとbFGFがその異常に及ぼす影響について検討した.一連の研究結果により,<i>Fli1</i> ECKOマウスにおける創傷治癒異常の分子メカニズム,およびボセンタンとbFGFがFli1欠失血管内皮細胞の動態に及ぼす影響が明らかとなったので,その詳細を報告する.</p>
著者
松下 貴史 佐藤 伸一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.333-342, 2005-10-31
参考文献数
63
被引用文献数
12

&nbsp;&nbsp;B細胞の生存・分化・抗体産生に重要な役割を果たすBAFF (B cell activating factor belonging to the tumor necrosis factor family)はTNFファミリーに属する分子で単球,マクロファージ,樹状細胞の細胞膜上に発現され,可溶型として分泌される.BAFFの受容体にはBAFF-R (BAFF receptor), BCMA (B-cell maturation antigen)およびTACI (transmembrane activator and calcium-modulator and cyclophilin ligand interactor)の3種類が知られておりいずれもB細胞の広範な分化段階において発現がみられる.BAFFシグナルは主にBAFF-Rを介して伝えられ,TACIは抑制性のシグナルを伝達している.BAFFはB細胞上の受容体との結合により未熟B細胞の生存と分化,成熟B細胞の増殖,自己反応性B細胞の生存を制御する.BAFF過剰発現マウスでは全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus ; SLE)やSj&ouml;gren症候群に類似した症状を呈する.さらにSLE自然発症モデルマウスや関節リウマチ(rheumatoid arthritis ; RA)モデルマウスであるコラーゲン誘導関節炎においてBAFFアンタゴニストの投与にて症状が改善することが明らかにされた.そしてSLEやRA,Sj&ouml;gren症候群,全身性強皮症の患者において血清BAFF濃度の上昇が報告されている.BAFFは末梢性B細胞の分化・生存に影響することから,BAFF/BAFF受容体の異常が末梢性トレランスの破綻を来たし,リウマチ性疾患の発症に関与していると推測される.近年SLEやRAにおいてB細胞をターゲットした治療が脚光を浴びており, BAFFが有望な治療標的となることが期待されている.<br>
著者
平澤 由貴 倉田 昌明 中島 実千代 坂本 憲吾 小田部 耕二 佐藤 伸一 野村 護
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.38, pp.20157, 2011

【目的】一般毒性試験における血液凝固系検査では,血小板数,PT,APTT及びフィブリノーゲン(Fbg)がルーチンに測定されるが,これらの項目だけでは血小板機能や線溶系の異常は検出できない.薬物の血液凝固系への統合的な評価には,これらの測定を補足する必要がある.今回,ヒトに類似する実験動物であるカニクイザルについて,血小板機能検査である血小板凝集能,また血管異常も含め凝固異常を総合的に評価できる出血時間,FDPについて測定したので報告する.また,ルーチン項目に関し,産地間差(フィリピン,中国,ベトナム,インドネシア)も含め基礎的に検討した.【方法】(1)出血時間:市販の注射針を一定の深さに穿刺できるように加工して,穿刺器具とした.無麻酔下で尾背部を穿刺部位とした.湧出血を一定間隔で濾紙に吸い取り,吸着血痕が1mm以下となった時間をエンドポイントの出血時間とした.(2)血小板凝集能:無麻酔下に大腿静脈からクエン酸加採血し,遠心分離(200×g)して多血小板血漿(PRP)を分取し,さらに遠心分離(2000×g)し乏血小板血漿(PPP)を分取した.PRPの血小板数が約35×10<SUP>4</SUP>/μLになるようにPPPで希釈調製した.凝集誘発剤はADP 5,20 μmol/L及びコラーゲン3 μg/mL(いずれも最終濃度)を用い,光透過法により凝集率を測定した.(3)その他のルーチン項目(血小板数,PT,APTT,Fbg)は自動分析装置,FDPは用手法にて測定した.【結果】(1)出血時間:出血時間は1~3.5分であった.2回の繰返し穿刺でも出血時間に差はなかった.今回の方法では,穿刺傷は小さく出血量も限られており,生体に対する侵襲性は小さいと考えられた.(2)血小板凝集能:最大凝集率はADP 5 μmol/Lで約63%,ADP 20 μmol/Lで約75%,コラーゲン3 μg/mLで約75%あった.また,ADP 20 μmol/Lで誘発した凝集の日内と日差変動に大きな変動はなかった.(3)血小板数,PT及びAPTTに産地による大きな違いはみられなかった.【結論】ルーチンの血液凝固系検査項目に加えて,血小板凝集能(ADP,コラーゲン凝集)及び出血時間について基礎的なデータを得ることができた.これらの検査は侵襲性が小さく,さらに線溶系検査を組み合わせることで,一般毒性試験でより詳細かつ統合的な血液凝固異常の評価が可能である.
著者
増井 友里 浅野 善英 柴田 彩 門野 岳史 佐藤 伸一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.340a, 2012 (Released:2013-02-28)

全身性強皮症は皮膚および内臓諸臓器の線維化と血管障害を特徴とする全身性の自己免疫疾患である.その発症機序はいまだ不明であるが,炎症・自己免疫・血管障害など様々な要因により線維芽細胞が恒常的に活性化され,結果的に細胞外基質の過剰な沈着が生じると考えられている.その過程にはTGF-βをはじめとし,多くの炎症性サイトカインや成長因子が関与していることが明らかにされている.   ビスファチンは主に脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの一つで,内臓脂肪蓄積量と高度に相関し,内臓脂肪蓄積を基盤とした病態や脂肪細胞の分化・誘導に関与していると言われている.また,炎症・線維化・免疫調節への関与も報告されており,関節リウマチやベーチェット病,炎症性腸疾患などの炎症性自己免疫疾患での病態に関わることが示唆されている.   今回我々は全身性強皮症患者において血清ビスファチン濃度を測定し,臨床症状や検査データとの関連について検討を行った.さらにTHP-1細胞およびヒト皮膚線維芽細胞を用いてビスファチンが線維化の過程に及ぼす影響を検討し,全身性強皮症の線維化の病態におけるビスファチンの役割について考察した.
著者
佐藤 伸一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.779, 2020 (Released:2020-08-01)
参考文献数
4

ケミカルプロテオミクスは,共有結合修飾されたタンパク質に焦点を当てたタンパク質・アミノ酸残基の機能解析手法である.タンパク質存在量でなく活性,機能に着目した解析が可能である.例えば,セリン加水分解酵素の活性プロファイリング等では,酵素活性に基づく有益な情報が取得できる.今回Hsuらは,チロシン残基に対して選択的に共有結合を形成できるプローブを開発し,これを用いて3,700種以上のタンパク質,10,000か所以上の修飾サイトを検出,解析したので紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Liu Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 96, 14694-14699(1999).2) Hahm H. S. et al., Nat. Chem. Biol., 16, 150-159(2020).3) Dong J. et al., Angew. Chem. Int. Ed. 53, 9430-9448(2014).4) Adibekian A. et al., Nat. Chem. Biol., 7, 469-478(2011).