著者
渡辺 隼矢 羽田 司 周 宇放 佐藤 壮太 張 楠楠 市川 康夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

<b>1.研究の背景</b> <br>&nbsp; 健康食品としてレンコンの需要は拡大傾向にある.こうしたレンコンを扱った地理学的研究では,産地形成の要因や農家の経営形態,土地条件とレンコン栽培の関係性が解明されている.しかし,農家の高齢化や離農に伴う農業労働力の不足が深刻化する近年において,レンコン生産地域を対象とした精緻な現地調査は管見の限り見当たらない. そこで本研究では土浦市田村地区を事例に,国内有数のレンコン生産地域である霞ヶ浦湖岸平野において継続するレンコン生産がいかに存立してきたのかを考察した.その際,生産から消費までを体系的にとらえる中で,レンコンの作物特性や農地の貸借関係,レンコンの販売戦略に着目して,レンコン生産地域の実態の把握を試みた.<br> <b>2.研究対象地域</b> <br>&nbsp; 茨城県南部に位置する土浦市はレンコンの生産量が日本一である.その中でも研究対象地域とした田村地区は,土浦市中心部から東へ約4kmに位置し,地区内の霞ヶ浦湖岸平野(沖積低地)には一面の蓮田が広がる.湖岸平野の土壌は主に粒径の細かいシルトや細砂から構成され,特に湖畔に近い低位面は反腐植土を含む柔らかな土壌となっている.この土壌条件はレンコン栽培に適しており,1940年代後半以降のコメからレンコンへの転作を促進する一翼となった.現在,レンコン生産は平野部高位面や谷津にも拡大し,2010年のレンコン栽培面積は127haとなっている.これは当地区内の経営耕地面積のうち87.8%を,田全体面積のうち98.5%を占める.<br><b></b> <b>3.調査結果<br></b>&nbsp; 本研究では,各農家の生産量や必要労働力,経営志向等を反映する指標として蓮田の貸借関係に着目し,当地区の農家を3類型に大別した.1つ目は借地型農家であり,3類型の中で最も経営規模の大きな農家群である.地区内外に蓮田の借地を持ち,当該類型の中でも経営規模が大きい農家は,外国人実習生を含む家族外労働力を導入している.2つ目の類型は自作地型農家である.家族内労働力のみで生産から出荷までの全工程が可能な1ha前後の自作地のみで営農しており,雇用労働力はみられなかった.3つ目の類型は地区内の借地型農家を中心に蓮田を貸与している貸地型農家である.貸地型農家では農業従事者の高齢化および農外就業者の増加による農業労働力の減少を契機として,レンコン生産の規模を縮小していた. <br>&nbsp; 他方,レンコンの流通においてはJA土浦による系統出荷が主な出荷形態となっていた.この系統出荷では東京市場の他,中京市場など東日本の地方都市へも積極的に出荷している.JA土浦にはかつての任意組合を単位とする複数のレンコン部会が存在し,各部会によって重点市場や販売戦略に差異がみられる.田村地区には田村蓮根部会と田村共撰部会との2つの部会が存在するが,前者に所属する農家が大半を占める.田村蓮根部会は,2004年にJA土浦に参画するまでは任意組合であり,現在も任意組合の頃の重点市場への出荷や独自の販売戦略を展開している.また,JA土浦管内のレンコンの洗浄および箱詰め作業を受託し,レンコン生産農家の出荷にかかる作業負担の軽減を目的としたJA土浦れんこんセンターが稼働し,農業労働力が不足している農家で利用が目立つ.JA土浦では系統出荷のほかに,レンコン加工にも積極的な取り組みがみられた.一方,農協を経由しない出荷の動きもみられ,個人や少人数による市場出荷,個人・小売店・飲食店への宅配,直売所の運営といった流通チャネルを駆使した個人出荷も存在する.
著者
川添 航 坂本 優紀 喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 渡辺 隼矢 松井 圭介
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.47-62, 2018

本研究は茨城県大洗町におけるコンテンツ・ツーリズムの展開に注目し,ツーリズム形態の転換に伴う観光空間への影響,及びその変容の解明を目的とした。大洗町は観光施設を数多く有する県内でも有数の海浜観光地であり,2012年以降はアニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台として新たな観光現象が生じている地域である。大洗町においては,当初は店舗・組織におけるアニメファンへの対応はまちまちであったが,多くの訪問客が訪れるにつれて,商工会の主導により積極的にコンテンツを地域の資源として取り入れ,多くのアニメファンを来訪者として呼び込むことに成功した。宿泊業においては,アニメ放映以前までは夏季の家族連れや団体客が宿泊者の中心であったが,放映以降は夏季以外の1人客の割合が大きく増加するなど変化が生じた。コンテンツ・ツーリズムの導入によるホスト・ゲスト間の関係性の変化は新たな観光者を呼ぶ契機となったことが明らかとなった。
著者
野 徹雄 佐藤 壮 小平 秀一 高橋 成実 石山 達也 佐藤 比呂志 金田 義行
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
JAMSTEC Report of Research and Development (ISSN:18801153)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.29-47, 2014
被引用文献数
8

日本海東縁では,1983年日本海中部地震(M<sub>J</sub>7.7)や1993年北海道南西沖地震(M<sub>J</sub>7.8)などのM7以上の被害地震,それらに起因する津波が繰り返し発生している.しかし,これらの地震の全体像を研究する上では地殻構造データが十分でなかった.そこで,「ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究」の一環として,2009年~2012年の4年にわたり,マルチチャンネル反射法地震探査と海底地震計による屈折法・広角反射法地震探査の地殻構造調査を実施し,地殻構造研究の側面から日本海東縁における地震発生帯の研究を進めた.調査は能登半島沖から西津軽沖にかけての沿岸域の大陸棚から大和海盆・日本海盆に至る海域にて行った.本報告では,本調査で実施された43測線のマルチチャンネル反射法地震探査によるデータ取得の概要とデータ処理の結果について記す.
著者
佐藤 壮太 渡辺 隼矢 坂本 優紀 川添 航 喜馬 佳也乃 松井 圭介
雑誌
筑波大学人文地理学研究 = Tsukuba studies in human geography
巻号頁・発行日
vol.38, pp.13-43, 2018-04

本研究にあたり,2016~17年度科学研究費(挑戦的萌芽研究)「聖地共創時代におけるオタクの癒し空間に関する応用地理学的研究」(研究代表者:松井圭介)の一部を利用した.
著者
喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 渡辺 隼矢 川添 航 坂本 優紀 卯田 卓矢 石坂 愛 羽田 司 松井 圭介
雑誌
筑波大学人文地理学研究 = Tsukuba studies in human geography
巻号頁・発行日
vol.38, pp.45-58, 2018-04

本研究には平成28年度科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究:課題番号16K13297)の一部を利用した.
著者
村上 興匡 鷲見 定信 村上 興匡 武田 道生 小熊 誠 佐藤 壮広 小熊 誠 武田 道生 佐藤 壮広
出版者
大正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

沖縄から本土への移住者の文化習慣の変化と、沖縄で進行しつつある本土的な文化慣習が普及する変化(「本土化」)とを比較することで、現在の沖縄で起きている変化は、単に本土の文化慣習が沖縄に移入しているわけではなく、それに先だって、まず本土へ移住した沖縄系移住者が、自らの文化慣習を本土に適応させて新たな形を作り出すということがあり(「沖縄化」)、それが再び沖縄に移入されるという形で、文化変容が起きていることが明らかになった。