著者
引網 宏彰 柴原 直利 村井 政史 永田 豊 井上 博喜 八木 清貴 藤本 誠 後藤 博三 嶋田 豊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.699-707, 2010 (Released:2010-10-30)
参考文献数
6

リウマチ性多発筋痛症(PMR)に対して,漢方治療が奏効した5症例について報告する。さらに,これら5症例を含む当科でのPMR治療例10例について検討した。その結果,有効症例は6症例であった。そのうち,1例はステロイド剤の投与を拒否した症例であったが,他の5症例は筋痛症状や炎症反応の出現により,ステロイド剤の減量が困難な症例であった。また,1例を除いて,CRPは3.0 mg/dl以下であった。一方,無効症例では高度の炎症反応を示しており,ステロイド剤の投与が必要であった。有効症例には駆瘀血剤(疎経活血湯,桃核承気湯,桂枝茯苓丸,腸癰湯加芍薬,薏苡附子敗醤散,当帰芍薬散)が投与されていた。以上より,PMRでステロイド剤の減量が困難な症例や炎症反応が軽度である症例には,漢方薬は治療の選択肢の一つとなりうると考えられた。さらに駆瘀血剤の積極的な使用がPMRの治療に有用である可能性が示唆された。
著者
近藤 章 鈴木 伸幸 加藤 賢治 八木 清 水谷 潤
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.741-744, 2020-04-20 (Released:2020-04-20)
参考文献数
8

第4/5腰椎間に行ったLLIF例(L群)とPLIF例(P群)で検討を行った.L群の方が,P群と比べて術後椎体前縁椎間板高や術後前弯角,獲得椎間板高,獲得前弯角が有意に大きかった.しかしながら,術後1年での前弯角の損失はL群の方が有意に大きかった.骨癒合は術後1年ではP群の方が有意に良好であった.LLIFの方がPLIFよりも脊椎矢状面アライメントの矯正はしやすいが,矯正損失や骨癒合には注意を要する.
著者
鈴木 伸幸 水谷 潤 加藤 賢治 近藤 章 八木 清
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.737-740, 2020-04-20 (Released:2020-04-20)
参考文献数
3

近年,Lateral Interbody Fusion(LIF)手技の発展により,脊椎手術の手術時間と出血量の軽減が実現されている.しかし,その合併症の1つとして分節動脈損傷がある.今まで椎体側面の分節動脈の走行は研究され,注意喚起がなされてきたが,椎体前方でも,前方レトラクターの設置やAnterior Column Realignment(ACR)手技の際には重要であり,L1/2では89.1%,L2/3では81.0%,L3/4では34.5%と高頻度に分節動脈が椎間板と交差しておりこれらの手技の際には注意が必要である.
著者
猪飼 隆明 森藤 一史 沖田 行司 吉村 豊雄 三澤 純 野口 宗親 八木 清治 北野 雄士
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、横井小楠全集(小楠遺稿、関係史料-来翰や小楠に関する当代の記録、講義録など)の刊行に向けての基礎的作業を行うことにあった。横井小楠については、1938年に刊行された山崎正董編著『横井小楠』上下2巻(うち下巻は、山崎正董編『横井小楠遺稿』として1942年に刊行)があり、以後の研究は、ほとんどこの山崎本を頼りに行われてきた。しかし、横井家には、関係史料が沢山保存されていることが分かり、かついくつかの図書館・資料館等にも、未発見の史料があることが確認され、また個人の好事家の蒐集するところともなっていることが判明した。そこで、今後の横井小楠研究のみならず、明治維新研究、立憲制の研究、欧米への関心と洋学受容、開国論、また福井藩の藩政改革論などの研究の発展のためにも、これらの史料を蒐集し、先学の研究の検証を行うことこそ重要であるとして、本研究を3年間継続してきた。1 この間蒐集した史料は、横井家所蔵の資料(ここには、小楠自筆の原稿・書翰類、来翰等が含まれる)、小楠の弟子たちの家から発見された史料(柳瀬家・安場家・徳富家など)、福岡県立九州歴史資料館柳川分館・佐賀県立図書館鍋島文庫・福岡県立伝習館文庫・熊本大学寄託文書永青文庫等から、合計2000点近くの関係史料が蒐集された。2 山崎正董編『横井小楠遺稿』についての考証作業を一通り終了した。3 小楠の弟子が記録した講義録の検討を行った。以上の成果を、なるべく早い機会に、横井小楠全集として次々と刊行していくつもりであるが、現構想では、5巻程度のものになる予定である。
著者
八木 清
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.19-25, 2012-01-31 (Released:2013-01-31)
参考文献数
32
被引用文献数
1

分子振動スペクトルを計算するには,(1)ポテンシャルエネルギー曲面生成,及び(2)振動Schrödinger 方程式の効率的な解法が必要である.本稿では,我々の開発した方法論を中心に,量子化学計算による非調和ポテンシャル生成法と 3N −6 次元の量子多体問題の取り扱いを解説する.新しい非調和振動理論は 100 自由度系を分光学的な精度で扱うことができ,水素結合系の振動スペクトル計算に威力を発揮する.
著者
近藤 昌夫 藤井 まき子 八木 清仁 渡辺 善照
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.127, no.4, pp.601-609, 2007 (Released:2007-04-01)
参考文献数
47
被引用文献数
1 1

Passing of drugs across epithelial cell sheets and endothelial cell sheets is an obligatory step in the absorption of a drug. The passing routes of drugs are classified into transcellular and paracellular pathways. The transcellular route has been widely investigated and is used in clinical therapy. In contrast, drug delivery using the paracellular route has never been fully developed. Sodium caprate is the only absorption-enhancer of drugs that uses the paracellular route. Tight junctions (TJs) exist between adjacent cells in epithelial and endothelial cell sheets, and they play a role in sealing the cell sheets. Therefore, we must modulate the TJ barrier for drug delivery using paracellular route. In this review, we describe barriology, including very recent topics, and overview absorption-enhancers from the perspective of barriology.
著者
井上 博喜 岡 洋志 八木 清貴 野上 達也 小尾 龍右 引網 宏彰 後藤 博三 柴原 直利 嶋田 豊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.861-865, 2007-09-20 (Released:2008-09-12)
参考文献数
28

呉茱萸湯が奏効した難治性のあい気の一例を報告した。症例は74歳の女性。あい気, 腹部膨満感, 食欲不振のため7回の入院歴があり, 様々な方剤で加療されたが, 症状は消長を繰り返していた。呉茱萸湯を投与したところあい気はほぼ消失し, 食欲も改善した。あい気に使用される方剤は少陽病の方剤が多いが, 陰証で心下痞こうと胸脇苦満を伴うあい気には呉茱萸湯が有効である可能性が示唆された。
著者
八木 清
出版者
山梨大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2010

本研究課題は非調和振動理論を開発し,水素結合系の動的挙動の解明を目的としている。これまでに我々は孤立分子系に対する振動理論として振動擬縮退摂動論や瞬間振動状態解析法を開発してきた。本年度は,これまでの理論を周期系へ拡張した。エネルギーがサイズに対して無矛盾となる条件を見出し,それに基づき理論を定式化した。この方法をプログラムに実装し,高分子(ポリエチレン,ポリアセチレン)へ応用した。この方法により高分子の赤外スペクトルを高精度に求めることが初めて可能となった。また,非調和ポテンシャルを効率的に構築する方法論を新たに開発した。3次,4次の非調和定数からカップリングの強い振動モードを重点的に構築することで高精度かつ高効率に非調和性を評価することができる。この評価により,カップリングが強いと判断されたカップリング項は高精度な手法で構築し、一方、弱いと判断されたカップリングはレベルの低い手法で構築、あるいは無視することで、全体の精度を損なうことなく、効率よく計算することが可能となった。また,振動モードを局在化させることで効率的にポテンシャルを構築できることを理論的に明らかにした。系が大きくなるに従い基準振動モードは一般的に非局在化する傾向にある。これは系の様々なモードが偶然縮退するためであるが,このような広がった振動モードを用いてポテンシャルを多体展開すると収束が遅く不利であることを指摘した。この解決方法として,局在化した振動モードを用いることを提案した。従来の方法では異性体間におけるIRスペクトルの変化の方向性すら記述できず、定性的に破綻していたが、新しい方法は変化の方向性を正しく再現し、さらに実験精度に迫る計算が可能であることが分かった。