著者
久保田 悦郎 堀田 博 原 利男
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.69, pp.35-41, 1989-06-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

中国産ウーロン茶と,わが国で試作したウーロン茶の香気成分を分析し,次の結果を得た。(1) 中国産ウーロン茶は日本産のものより,ネロリドール,ロンギフォレン,ファルネッセン,トリエンー3―オール,シスージャスモン,ジャスミンラクトン,ベンジルシアニド,インドールなどが多く含まれていた。これに対し,日本産ウーロン茶にはトランスー2―ヘキセナール,シスー3―ヘキセンー1オール,ベンジルアルコールなどが多く含まれていた。この結果は,中国産ウーロン茶に特有の花のような香りが強く,日本産ウーロン茶は青臭いにおいが強いという官能検査の結果とよく一致していた。(2) 中国産ウーロン茶に多く含まれるセスキテルペンとして,茶から初めてロンギフォレンを同定した。(3) 日本産ウーロン茶と中国産のものの香気形成の差異を明らかにするため,ウーロン茶に多く含まれるネロリドールと,紅茶に多く含まれるリナロールおよびシスー3―ヘキセン―1オールの含量比を調べた。その結果,日本産ウーロン茶は,中国産ウーロン茶と紅茶の中間型の香気形成を示した。この研究を行うにあたり,標品のロンギフォレンを分与していただき,同定についてご教示を賜ったお茶の水女子大学教授小林彰夫博士に厚くお礼申し上げます。また,供試材料のウーロン茶を提供していただいた,三井農林株式会社三浦宣安氏,静岡県茶業試験場高橋宇生氏,三重県茶業センター木下 〓氏に深く感謝いたします。
著者
田中 伸三 原 利男
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告
巻号頁・発行日
vol.1971, no.35, pp.84-87, 1971

茶の褐変に伴うクロロフィルの変化を調べるために,DIETRICHらの提案したクロロフィルのフェオフィチンへの変化の測定法を,茶に応用する場合の操作と計算式の検討を行なった。<BR>操作および計算式は,煎茶粉末0.3gに10%含水アセトン40mlを加え3~5時間抽出し,その上澄液の534mμおよび556mμにおける吸光度を求め,次式によってフェオフィチンへの変化率を算出.する。<BR>フェオフィチンへの変化率=R<SUB>X</SUB>-R<SUB>0</SUB>/R<SUB>100</SUB>-R<SUB>0</SUB>×100<BR>ただし<BR>R<SUB>0</SUB>:0%フェオフィチン溶液における吸光度の比(OD 534mμ/OD 556mμ)<BR>R<SUB>100</SUB>:100%フェオフィチン溶液における吸光度の比(OD 534mμ/OD 556mμ)<BR>R<SUB>X</SUB>:未知試料抽出液における吸光度の比<BR>(OD 534mμ/OD 556mμ)<BR>著者らが茶に応用した場合の計算式は次のとおりであった。<BR>フェオフィチンへの変化率=R<SUB>X</SUB>-0.96/1.29×100<BR>ただし,この計算式は分光光度計によって異なるから,それぞれの装置で確認する必要がある。<BR>この方法によって求めたフェオフィチンへの変化率と,TANらの方法に準じてカラムクロマトグラフィーで分別し,比色法で求めた変化率とが比較的よく一致することも認めた。
著者
内田 立身 河内 康憲 渡辺 礼香 西原 利男 三宅 隆明
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.123-128, 1996 (Released:2009-04-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1

鉄欠乏性貧血に対する静注療法については,投与鉄量の計算式として,わが国では古くから中尾の式が用いられてきた。中尾の式は,日本人の循環血液量を80 ml/kg, 貯蔵鉄量を17 mg/kgとして計算するが,今回,51Cr法および血清フェリチン値からの検討で,循環血液量65 ml/kg, 貯蔵鉄量500 mgが妥当であると考えられ,これらに基づき鉄投与量を3.4×(16-X)/100×65×体重+500 mg(X: 治療前のヘモグロビン値)あるいは[2.2 (16-X)+10]×体重mgと設定した。現実にこれに基づいて治療を行ったところ,ヘモグロビンの回復も順調で,その後の減少も持続出血のない例では認められないことから,鉄剤の静脈内投与量は,少なめに見積もった上式が適当であると結論した。
著者
原 利男 久保田 悦郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.625-630, 1982 (Released:2008-11-21)
参考文献数
12
被引用文献数
9 12

緑茶の貯蔵臭の原因物質を解明するために,各種緑茶の貯蔵中における香気成分の変化を,GCおよびGC-MS法によって調べた. その結果,25°Cに貯蔵した番茶および下級煎茶は1-penten-3-ol, cis-2-penten-I-ol, tvans-2,cis-4-hep-tadiena1, traps-2,trans-4-heptadienalが非常に多く生成した.中級および上級煎茶でもこれら4成分が他の化合物より多く生成するが,番茶および下級煎茶に比較するとその量は少なかった.これらの化合物はにおいの性質から緑茶の貯蔵臭の原隙物質と推定された. 緑茶貯蔵中に,カロチノイド類の酸化生成物と推定される2, 6, 6-trimethyl-2-hydroxycyclohexanone, β-cyciocitral,α-ionone, β-ionone, 5, 6-epoxy-β-ionone, dihydroactinidiolideが少し増加した. このほか, cis-3-hexen-1-ol,traas-3, cis-5-octa-lien-2-one, 6-methyl-5-hepten-2-one, n-amylalco-hol, n-octanolも貯蔵申に少し増加した.
著者
原 利男 深津 修一 伊奈 和夫
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.78, pp.61-65, 1993-12-15 (Released:2009-12-03)
参考文献数
5
被引用文献数
1 3

茎茶と煎茶の香気成分をGC及びGC-MSで調べ,また呈味成分は熱湯浸出液の13C-NMRスペクトルを測定し,その差異を比較・検討した。茎茶にはリナロールとゲラニオールが煎茶より多く含まれていたが,緑茶の主要香気成分であるネロリドール,インドール及びシスージャスモンなどは少なかった。茎茶は煎茶に比較してカテキン類,カフェイン,しょ糖などの含量が少なく,テアニンとキナ酸カリウム塩が多く含まれていた。
著者
岩堀 源五郎 原 利男
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1975, no.43, pp.39-43, 1975-08-15 (Released:2009-07-31)
参考文献数
2
被引用文献数
3

下級煎茶の最適火入れ条件を究明するため,回転型火入れ機を用い,茶火入れ中の茶温と品質との関係を調査し,凍のような結果を得た。(1) 下級煎茶の火入れ条件としては,取り出し時の茶温が110~120℃が良好な火入れで,温度範囲が狭いことが認められた。(2) 火入れ茶のHead space Vaporの香気成分の分析結果から,火入れによってジメチルサノレファイドが増加し,取り出し時の茶温約120℃くらいの時にジメチルサルファイド含量が最高となるような傾向が認められた。(3) 取り出し時の茶温と茶の表面色の関係を調べた結果,110℃以下ではほ:とんど変化はないが,それ以上に温度が上がると変化が激しく,とくに,120℃を越えると著しく褐変した。なお,この実験に際し,茶温測定の御指導をいただいた申野不二雄機械研究室長ならびにHead space Vaporのガスクロマトグラフによる分析に御助力いただいた土壌肥料研究室の池ヶ谷賢次郎技官ならびに製茶第3研究室の久保田悦郎技官に深く感謝いたします。
著者
宇井 美樹 安田 英之 柴田 柾樹 丸山 孝 堀田 博 原 利男 安田 環
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.1098-1102, 1991
被引用文献数
17

緑茶より抽出精製したカテキン類の口臭抑制効果を判定するため,CH<SUB>3</SUB>SHに対する消臭力,及び唾液にカテキン類を添加し,L-Metと共にインキュベート後発生したCH<SUB>3</SUB>SHを定量し,そのCH<SUB>3</SUB>SH産生抑制効果を測定した.また,カテキン類を添加したチューインガムを試作し,そのCH<SUB>3</SUB>SH産生抑制効果を判定した結果,以下の結論を得た.<BR>(1) カテキン類は強いCH<SUB>3</SUB>SH消臭力を有し,この効果は,従来より口腔内消臭剤として汎用されているSCCの効果をかなり上回るものであった.<BR>(2) 緑茶に含まれる4種のカテキンについて消臭力の測定を行った結果,その効果は,EC<ECg<ECG<EGCgの順に優れており,構造と消臭効果との相関関係が示唆された.<BR>(3) 唾液にカテキン類を添加し,これを24時間インキュベートした結果,L-Metを基質としたCH<SUB>3</SUB>SHの発生はコントロールと比較して,著しく抑制された.また,この効果はSCCの効果よりも強かった.<BR>(4) カテキン類を添加したチューインガムを試作し,唾液のCH<SUB>3</SUB>SH発生量を指標として,その口臭抑制効果について評価を行った結果,カテキン0.01%添加ガム咀嚼後においても,CH<SUB>3</SUB>SH発生は顕著に抑制された.<BR>以上のことからカテキン類は,口臭原因物質として注目されているCH<SUB>3</SUB>SHに対し,優れた消臭作用とその産生を抑制する作用を持つものと推定された.また,カテキン類を添加したチューインガムは,口臭抑制の目的で効果的であると考えられた.
著者
原 利男 久保田 悦郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.26, no.9, pp.391-395, 1979-09-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1 3

新茶の香気特性とその保全方法を明らかにするため,1番茶期の上級煎茶の貯蔵中の香気成分の変化をガスクロマトグラフィーGC-MS法および官能検査などで調べ,次の結果を得た。(1) 新茶に多く含まれ貯蔵中に減少する香気成分として,n-ノニルアルデヒドとシス-3-ヘキセニルヘキサノエートを同定し,官能検査の結果からシス-3-ヘキセニルヘキサノエートが新茶の香気に少し寄与しているように推定された。(2) 新茶はプロピオンアルデヒド,1-ペンテン-3-オール,シス-2-ペンテン-1-オール,2,4-ヘプタジエナールおよび3,5-オクタジエン-2-オンなどは検出されないか,あるいはごくわずかしか存在しなかった。これらの成分は貯蔵中に生成するオフ・フレーバー成分と推定された。(3) 新茶の香気保全には超低温(-70℃)貯蔵の効果が著しかった。