- 著者
-
永野 和男
大谷 尚
岡本 敏雄
吉崎 静夫
藤岡 完治
生田 孝至
- 出版者
- 鳴門教育大学
- 雑誌
- 総合研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1990
若い学問としての教育工学は,概念規定を性急に行うよりは教育分野におけるさまざまな問題解決を繰り返し,その中で徐々に,その対象や方法を明らかにしていくという方略で発展してきた。しかし,その後,コンピュ-タの普及によって,研究の対象や方法がさらに拡大し,これまでの枠組みだけでは通用しなくなってきている領域もある。そこで,この段階で,それぞれ第1線級で活躍している若手研究者が中心になって,これまでの研究をレビュ-し,研究方法論そのものについてその方向性を明確にしておくことは極めて重要な研究課題であった。研究の方法としては,分担者全員による合宿研究会を企画し,討論を中心として問題点を掘り下げていくという方法をとった。第1年次においては,2回の合宿研究会,教育工学会の自主シンポジウムなどを企画し,その内容についてまとめた記録を中間報告書「教育工学の研究方法を考える」として印刷し,検討資料として教育工学関係の研究者約200名に配布した。また、今年度は,それぞれの研究者集団を授業研究、システム開発、基礎研究の3つのグル-プにわけ、それぞれの研究方法を軸としながら、教育工学が求めている研究者像を明らかにし,その具体的な研究者養成カリキュラムを考えていくという方向で検議を進めていった。これらの討論記録は、中間報告書と最終報告書にまとめ教育工学の研究者約300名に配布した。報告書では、教育工学が単に1つの方法論をもった研究集団ではなく、別々の方法論と対象をもった研究者の集まりであることや、教育工学の研究開発と実践研究との問題、基礎研究と実用研究の問題など幅広い論議がなされているだけでなく、問題解決のための具体的な提案、研究者養成のための内容や方法などの提案もなされており、我が国の教育工学の学術的発展にとってきわめて意義深い成果が得られた。